漏電遮断器に書かれた「30mA」。これが定格感度電流です。用語集では一言で説明されますが、「30mAまでは切れないのか」「高感度形と中感度形はどう違うのか」「高調波対応形とは何か」までは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
漏電ブレーカーの「30mA」って、30mAまでは切れないってことですか?
ハリタハリタ
逆なんだ。30mAは「必ず切る」値。切らないと決まっているのは、その半分くらいまでなんだよ。

結論

定格感度電流は、この漏れで必ず切る値です。切らない値(定格不動作電流)は、多くの製品でその50%です。感電を防ぐ回路は30mA以下の高感度形、上位は中感度形で、インバーター機器の回路には高調波対応形を選びます。

  • 30mAの漏電遮断器は、15mAまで切らず、30mAで必ず切る
  • 高感度形は30mA以下、中感度形は30mAを超え1,000mA以下
  • 上位は中感度・時延形、分岐は高感度・高速形で、切れる順番をそろえる
  • インバーター機器の漏れで切れすぎるなら、高調波対応形
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

定格感度電流と不動作電流 ― 「必ず切る値」と「切らない値」

ペン太ペン太
15mAと30mAのあいだだと、どうなるんですか?
ハリタハリタ
切れることも、切れないこともある。だから、たまに切れるのは故障とは限らないんだ。

漏電遮断器は、行きと帰りの電流の差、つまりどこかへ漏れた電流を見張っています。定格感度電流は、漏れた電流がこの大きさになったら必ず切る値です。もう1つ、定格不動作電流という、ここまでの漏れでは切らない値があり、多くの製品で定格感度電流の50%です。

定格感度電流この漏れで必ず切る
定格不動作電流ここまでは切らない
あいだ切ることも切らないことも
0.1秒切るまでの動作時間
漏れ電流(30mAの漏電遮断器) 動き
15mAまで(定格不動作電流以下) 切らない
15mAを超え30mA未満 切ることも、切らないこともある
30mA以上(定格感度電流以上) 必ず切る(高速形なら0.1秒以内)

本体の「30mA 0.1秒」は、定格感度電流が30mA、その漏れで切るまでの動作時間が0.1秒以内という意味です。漏電遮断器の見分け方やテストボタンは、漏電ブレーカーの見分け方で説明しています。

たとえるなら
定格感度電流と不動作電流は、体温計の「平熱」と「熱がある」のようなもの
36℃台なら平熱、38℃なら熱がある、と言えても、37℃前後は人によって判断が分かれますよね。漏電遮断器も、15mAまでは切らない、30mAで必ず切る、と決まっていて、そのあいだは切れたり切れなかったりします。
ここに注意!
「30mAの漏電遮断器は、30mAまでは絶対に切れない」ではありません。
30mAは「必ず切る」値で、「切らない」ことが決まっているのは不動作電流(多くの製品で15mA)までです。15mAを超えると、30mAに届かなくても切れることがあります。
ここまでのポイント
  • 定格感度電流は、この漏れで必ず切る値
  • 定格不動作電流は、ここまでは切らない値(多くは50%)
  • あいだの漏れでは、切れたり切れなかったりする


高感度形と中感度形 ― 感電を防ぐか、上位で全体を守るか

ペン太ペン太
主幹も分岐も、全部30mAにしておけば安心ですよね?
ハリタハリタ
全部同じだと、どこで漏れても上まで一緒に切れてしまうことがあるんだ。上は中感度で少し遅く、が基本だよ。

漏電遮断器は、定格感度電流の大きさで区分されます。人が触れる機器の感電を防ぐには高感度形、幹線や上位で広い範囲を見張るには中感度形を使います。

高感度形30mA以下
中感度形30mA超1,000mA以下
上位中感度・時延形
分岐高感度・高速形
区分 定格感度電流 主な使いみち
高感度形 30mA以下(15mA・30mAなど) 分岐回路、人が触れる機器の感電防止
中感度形 30mAを超え1,000mA以下(100mA・200mA・500mAなど) 幹線・上位、漏電火災の防止
低感度形 1,000mAを超える 大きな設備の地絡保護など

動作時間でも分けられます。高速形は0.1秒以内に切り、時延形はわざと少し遅らせて切ります。上位を中感度・時延形、分岐を高感度・高速形にすると、漏電した分岐が先に切れ、上位まで止まらずに済みます。これを、切れる順番をそろえる「保護協調」と呼びます。

たとえるなら
上位を遅らせるのは、火事のときに部屋の消火器から使うのと同じ
小さな火なら、その部屋の消火器で消せます。いきなり建物全体のスプリンクラーを動かすと、関係のない部屋まで水びたしです。漏電も、まずその回路の高感度形が切り、上位の中感度形は少し待つことで、ほかの回路を止めずに済みます。
ここに注意!
「感度が高いほど安全だから、主幹も上位も全部15mAにすればいい」ではありません。
感度を上げすぎると、ふだんの小さな漏れの合計で切れやすくなり、関係のない回路まで止まります。感電を防ぐ所は高感度形、上位は中感度形や時延形、と役目で選びます。
ここまでのポイント
  • 高感度形は30mA以下、中感度形は30mAを超え1,000mA以下
  • 感電を防ぐ所は高感度・高速形
  • 上位は中感度・時延形にして、切れる順番をそろえる


高調波対応形 ― インバーター機器の漏れで、切れすぎないように

ペン太ペン太
エアコンを替えたら、漏電ブレーカーがよく切れるようになりました。
ハリタハリタ
インバーター機器は、ふだんから高い周波数の漏れがあるんだ。高調波対応形の漏電遮断器なら、切れすぎを防げるよ。

エアコンやポンプのように、インバーターでモーターを回す機器の回路では、電線と大地のあいだの静電容量を通って、高い周波数の漏れ電流がふだんから流れます。一般形の漏電遮断器はこれも漏電として拾うため、本当の漏電がなくても切れてしまうことがあります。

インバーターふだんから漏れがある
一般形拾って切れることがある
高調波対応形高い周波数を拾いにくい
本当の漏電どちらも切る

高調波対応形(高調波・サージ対応形)の漏電遮断器は、この高い周波数の成分を拾いにくくして、切れすぎを防ぎます。商用周波数の本当の漏電は、もちろん切ります。雷などのサージで切れにくくした製品もあります。インバーター機器を増やしたら漏電遮断器がよく切れるようになった、というときに見直す点です。漏電遮断器が理由なく切れる原因は、ELCB(漏電遮断器)が誤動作する主な原因でまとめています。

ここに注意!
「インバーター機器で切れるなら、感度を下げればいい」ではありません。
感度を下げると、本当の漏電で感電を防げなくなるおそれがあります。インバーター機器の回路には、高い周波数の漏れを拾いにくくした高調波対応形の漏電遮断器を選びます。
ここまでのポイント
  • インバーター機器は、ふだんから高い周波数の漏れがある
  • 一般形は、それを拾って切れることがある
  • 高調波対応形なら、切れすぎを防ぎつつ本当の漏電は切る

まとめ|結論

結論

定格感度電流は「必ず切る値」、定格不動作電流は「切らない値」で、そのあいだは切れたり切れなかったりします。感電を防ぐ所は30mA以下の高感度・高速形、上位は中感度・時延形にして切れる順番をそろえ、インバーター機器の回路には高調波対応形を選びます。

漏電遮断器を選ぶときは、この順で確かめます。

  1. その回路で、人が触れる機器の感電を防ぐ必要があるか(あれば高感度形)
  2. 上位や幹線か(なら中感度形・時延形で、下位より遅く切る)
  3. インバーター機器がつながるか(なら高調波対応形)
  4. 本体の「○mA ○秒」の表示が、選んだ区分になっているか


よくある質問

定格感度電流とは何ですか?

漏電遮断器が「この大きさの漏れなら必ず切る」と決められた漏電電流の値です。住宅でよく使う30mAの漏電遮断器なら、30mAの漏れで必ず切れます。

定格不動作電流とは何ですか?

「この大きさまでの漏れでは切らない」値です。多くの製品で定格感度電流の50%で、30mAの漏電遮断器なら15mAです。15mAから30mAのあいだは、切ることも切らないこともあります。

高感度形と中感度形は、どう使い分けますか?

人の感電を防ぐ回路には、30mA以下の高感度形を使います。幹線や上位の漏電遮断器、漏電火災の防止などには、30mAを超え1,000mA以下の中感度形を使い、時延形にして下位より遅く切れるようにすることがあります。

高調波対応形の漏電遮断器は、どんなときに使いますか?

インバーターでモーターを回すエアコンやポンプなどの回路です。電線と大地のあいだを通る高い周波数の漏れ電流で、一般形の漏電遮断器が不要に切れることがあるため、その成分を拾いにくくした高調波対応形を使います。

漏電遮断器がたまに切れるのは、故障ですか?

故障とは限りません。漏れ電流が定格不動作電流と定格感度電流のあいだにあると、切れたり切れなかったりします。インバーター機器の漏れや、雷などのサージで切れることもあります。何度も切れるときは、電気工事店に漏れ電流を測ってもらいます。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。