この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
全体像:内線規程【082】興行場
📚 内線規程の解説シリーズ(全119条文+テーマ解説)|条文・テーマから探せる 総合インデックスはこちら →

出典:内線規程(JEAC8001-2022)より

劇場やホールなどの興行場では、舞台・奈落(ならく)・オーケストラボックス・映写室といった、人や舞台道具が触れやすい場所に電気設備が集まります。感電や火災を防ぐため、内線規程では使用電圧・配線方法・接地について細かな基準が定められています。ここでは興行場の電気設備の要点を整理します。

興行場の電気設備の3つのポイント(使用電圧・配線・接地)を整理した図解

結論

興行場の電気設備は、使用電圧は原則300V以下に制限し、配線・電球線・移動電線はキャブタイヤケーブル等で確実に施設、金属製外箱はD種接地工事+専用の開閉器過電流遮断器を設けるのが基本です。

この記事でわかること
✔ 使用電圧の制限
✔ 配線・電球線・移動電線
✔ 接地工事と開閉器・過電流遮断器
ペン太ペン太
劇場の舞台裏って、電気設備が特別扱いなんですか?
ハリタハリタ
人や道具が触れやすい場所に設備が集中するからです。舞台や奈落では使用電圧が原則300V以下です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 舞台や奈落などでの使用電圧は、原則いくつ以下か
  • 300Vを超える低圧が認められるのは、どんな場合か
  • 奈落の電球線には、どんなコードを使うか
この記事でわかること
例外が認められる条件は、1つ目の項にまとめています。

使用電圧の制限

トピック1:使用電圧の制限
  • 舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室など、人や舞台道具が触れる可能性のある場所では、低圧屋内配線・電球線・移動電線の使用電圧を原則300V以下に制限します。
  • 舞台機構設備の屋内配線・移動電線を、これらの場所以外で取扱者以外の人や舞台道具が触れないように施設する場合は、300Vを超える低圧(対地電圧300V以下)とすることができます(JESC E6003(2016)による)。
  • 「舞台機構設備」とは、幕・床などの昇降・移動を目的に劇場・ホールなどへ固定設備として施設されるものを指します。
ペン太ペン太
舞台の電球線も普通のコードでいいんでしょうか?
ハリタハリタ
電球線には防湿コードを使います。配線は金属管やキャブタイヤケーブルで確実に施設します。
場所・条件使用電圧
舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室など、人や舞台道具が触れる可能性のある場所原則300V以下
舞台機構設備の屋内配線・移動電線を、上記以外で取扱者以外の人や舞台道具が触れないように施設する場合300Vを超える低圧(対地電圧300V以下)
ここまでのポイント
  • 舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室など、人や舞台道具が触れる可能性のある場所では、低圧屋内配線・電球線・移動電線の使用電圧を原則300V以下に制限する
  • 舞台機構設備の屋内配線・移動電線を、これらの場所以外で取扱者以外の人や舞台道具が触れないように施設する場合は、300Vを超える低圧(対地電圧300V以下)とすることができる(JESC E6003(2016)による)
  • 「舞台機構設備」とは、幕・床などの昇降・移動を目的に劇場・ホールなどへ固定設備として施設されるものを指す

配線・電球線・移動電線

トピック2:配線・電球線・移動電線
  • 奈落の配線は、金属管配線・合成樹脂管配線(厚さ2mm未満の合成樹脂製電線管およびCD管を除く)・ケーブル配線・キャブタイヤケーブル配線のいずれかにより施設します。
  • 奈落の電球線には防湿コード・ゴムキャブタイヤコード等を使用し、アーク灯付近など加熱のおそれのある電線は耐熱性被覆が望ましいとされています。
  • 移動電線は、使用電圧300V以下なら一種キャブタイヤケーブル以外のキャブタイヤケーブル、300V超(対地300V以下)ならさらに種類が限定されます。
  • ボーダーライト・フットライトなど温度が著しく上昇する器具は、可燃物と隔離し、金網等で接触を防止します。
取り違えやすいところ正しくは
舞台の電球線も普通のコードでよい防湿コード・ゴムキャブタイヤコード等を使用する
奈落の配線方式は自由に選べる金属管・合成樹脂管(薄いものとCD管を除く)・ケーブル・キャブタイヤケーブルのいずれか
移動電線はどのキャブタイヤでもよい300V以下では一種キャブタイヤケーブル以外を用いる
興行場では一律に300V以下舞台機構設備には条件付きで300V超の低圧が認められる
照明器具は可燃物の近くでも問題ない温度が著しく上昇する器具は隔離し、金網等で接触を防止する
ここまでのポイント
  • 奈落の配線は、金属管配線・合成樹脂管配線(厚さ2mm未満の合成樹脂製電線管およびCD管を除く)・ケーブル配線・キャブタイヤケーブル配線のいずれかにより施設する
  • 奈落の電球線には防湿コード・ゴムキャブタイヤコード等を使用する
  • アーク灯付近など加熱のおそれのある電線は耐熱性被覆が望ましい
  • 移動電線は、使用電圧300V以下なら一種キャブタイヤケーブル以外のキャブタイヤケーブル、300V超(対地300V以下)ならさらに種類が限定される
  • ボーダーライト・フットライトなど温度が著しく上昇する器具は、可燃物と隔離し、金網等で接触を防止する

接地工事と開閉器・過電流遮断器

トピック3:接地工事と開閉器
  • 舞台用コンセントボックス・フライダクト・ボーダーライトの金属製外箱には、D種接地工事を施します。
  • 舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室の電灯その他の負荷に電気を供給する電路には、専用の開閉器及び過電流遮断器(多線式電路の中性極を除く)を施設します。
  • 過電流遮断器が開閉機能を有する場合は、過電流遮断器のみとすることもできます。

たとえ話でイメージ

興行場の電気設備は「表舞台と楽屋」の関係に似ています。観客や演者(取扱者以外の人)が触れる表舞台では安全第一で電圧を低く抑え、スタッフだけが扱う舞台機構(取扱者だけの区画)では条件を満たせば少し高い電圧も認められる、というイメージです。

見習いペン太
見習いペン太
先生、舞台まわりの電圧って必ず300V以下にしないとダメなんですか?
はりた
はりた
原則はそうだね。ただし舞台機構設備を取扱者以外が触れないようにきちんと施設すれば、対地電圧300V以下の範囲で300V超の低圧も使えるんだ。
見習いペン太
見習いペン太
なるほど!接地や開閉器はどうすればいいんですか?
はりた
はりた
コンセントボックスやフライダクト、ボーダーライトの金属製外箱はD種接地。電路には専用の開閉器と過電流遮断器を入れるのが基本だよ。
ここまでのポイント
  • 舞台用コンセントボックス・フライダクト・ボーダーライトの金属製外箱にはD種接地工事を施す
  • 舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室の電灯その他の負荷に電気を供給する電路には、専用の開閉器及び過電流遮断器(多線式電路の中性極を除く)を施設する
  • 過電流遮断器が開閉機能を有する場合は、過電流遮断器のみとすることもできる

よくある質問(FAQ)

トピック4:よくある質問
Q. 興行場の使用電圧は必ず300V以下ですか?
A. 原則は300V以下です。ただし舞台機構設備の屋内配線・移動電線を、取扱者以外の人や舞台道具が触れないように施設する場合に限り、対地電圧300V以下の範囲で300Vを超える低圧も使用できます(JESC E6003(2016)による)。
Q. 奈落の配線はどんな方法で施設しますか?
A. 金属管配線、合成樹脂管配線(厚さ2mm未満の合成樹脂製電線管およびCD管を除く)、ケーブル配線、またはキャブタイヤケーブル配線のいずれかにより、配線の規定に準じて施設します。人が通行せず外傷のおそれがない場所では、がいし引き配線に準じて施設することもできます。
Q. どの部分にD種接地工事が必要ですか?
A. 舞台用コンセントボックス、フライダクト、ボーダーライトの金属製外箱にD種接地工事を施します。あわせて、舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室の負荷の電路には専用の開閉器および過電流遮断器が必要です。

まとめ|触れる場所か、取扱者だけの場所か

興行場の電気設備は「人や舞台道具が触れる場所は300V以下」「取扱者以外が触れない舞台機構設備は条件付きで300V超も可」という線引きで整理されています。配線方式と電球線の種類、そしてD種接地をあわせて確認します。

確認する順番見るところ基準
Step1設置場所舞台・奈落・オーケストラボックス・映写室かどうか
Step2触れる可能性取扱者以外の人や舞台道具が触れないように施設できるか
Step3使用電圧原則300V以下、条件を満たせば300V超の低圧
Step4配線と電球線奈落は4方式から、電球線は防湿コード等
Step5接地と保護金属製外箱にD種接地、専用の開閉器と過電流遮断器

舞台まわりは可動部と照明が集中するため、電圧の区分だけでなく、加熱する器具と可燃物の距離も設計時に押さえておきたい部分です。仕込みのたびに配線が変わる現場ほど、移動電線の種類を仕様書で明確にしておくと安心です。

📘 この記事の根拠規程|解説の原文は内線規程(JEAC8001-2022)に掲載されています。実務で使う方は手元に1冊どうぞ → 電気設備の必携書籍おすすめ4選【2026年版】

ペン太ペン太
仕上げに確認すべきことはありますか?
ハリタハリタ
金属製外箱のD種接地と、負荷ごとの専用開閉器・過電流遮断器です。ここまで揃えば安心ですよ。

📎 関連するおすすめアイテム

内線規程の実務では、規程集や技術資料を手元に置いておくと確認がぐっと早くなります。

30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?

タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。

次に読むならこれ【そうだったのか小ネタ④】絶縁抵抗0.1MΩはどこから来たのか ― 1mAという「感じ始める境界」から逆算された数字電気設計の解説
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。