この記事は、連載「照明設備の設計マニュアル」第6回 非常照明・誘導灯 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

「この居室、非常照明は省けない?」——確認申請の前に、そう思ったことはありませんか。非常用照明にはいくつかの免除(設置しなくてよい)規定があり、条件に当てはまれば省略できます。ただし外し方を誤ると是正指導につながるため、条件を正しく押さえておきたいところです。

🤔 こんなモヤモヤ、ありませんか?

・住宅や病室は本当に免除でいいの?
・小さい部屋・出口の近くは省ける
・免除できても廊下や階段はどうする

この記事では、非常用照明の免除規定を「用途による免除(令126条の4)」「告示1411号による免除」の2系統に整理し、早見表と判定フローでまとめます。

非常用照明の免除規定まるわかりノート
要点まとめ|免除は居室だけ/用途免除+告示1411号の2系統で判断
ペン太ペン太
非常用照明ってどの部屋にも必要なんですか?住宅には付いていない気がするんですが…
ハリタハリタ
免除規定があります。令126条の4の用途免除と告示1411号、この2系統で判定するんです。

1. 大前提:免除されるのは「居室」だけ

いちばん大事な前提です。免除の対象は「居室」であって、廊下・階段・通路などの避難経路は原則として非常用照明が必要です。むしろ告示1411号の免除では「その居室から地上に通ずる通路に非常用照明が設けられていること」が条件になっているケースもあります。「居室を省ける=経路も省ける」ではない点に注意しましょう。

🐧 ペン太:居室を免除できたら、そのフロアは全部いらない気がしちゃいます。

🦔 ハリタ先生:そこが落とし穴。免除はあくまで“居室”の話で、逃げる道=避難経路は原則そのまま必要なんだ。むしろ「通路側に非常照明がある」ことを条件に居室が免除される、という考え方だからね。

2. 用途による免除(令126条の4)

建築基準法施行令126条の4は、対象建築物の居室と避難経路に非常用照明を求めていますが、次のような用途は本文(ただし書き)で除かれます

  • 一戸建の住宅
  • 共同住宅・長屋の住戸(住戸部分。共用の廊下・階段は別途判断)
  • 病院の病室、寄宿舎の寝室、下宿の宿泊室 など就寝関連の室
  • 学校等(学校・体育館 等。保育所等の扱いは注意)
  • 採光上有効に直接外気に開放された通路 等で避難上支障がないもの

混同しやすい:ホテルの客室・病室の個室の扱い

用途による免除でとくに間違えやすいのがホテル・旅館の客室です。「就寝する部屋だから病室と同じく免除では?」と思われがちですが、ホテル・旅館の客室は免除されません(非常用照明が必要)。令126条の4で免除されるのは、住宅の住戸・病院の病室・寄宿舎の寝室・下宿の宿泊室などで、ホテルの客室はこのリストに含まれないためです。

🐧 ペン太:病室が免除なら、ホテルの客室も同じでいいんじゃ…?

🦔 ハリタ先生:そこが要注意。免除されるのは、住戸・病室・寄宿舎の寝室のように“居住・入院・管理された就寝の室”なんだ。ホテルの客室は不特定多数が使う宿泊室で、建物に不慣れな人の避難に配慮が要るから、免除の対象外なんだよ。

室の種類非常用照明補足
住宅・共同住宅の住戸免除令126条の4 第一号
病院の病室(個室・大部屋とも)免除第二号。個室でも「病室」なら免除
寄宿舎の寝室・下宿の宿泊室免除就寝関連の室
ホテル・旅館の客室必要用途では免除されない。ただし30㎡以下は告示1411号で免除可(後述)
診察室・待合室・処置室 など必要「病室」ではない居室
老健・デイサービス等の介護施設分かれる明記なし。特定行政庁で解釈が分かれる

病室の個室は、個室でも大部屋でも「病院の病室」であれば免除されます。一方、診察室・待合室・処置室などは病室ではないため、居室として非常用照明が必要です。

老健・デイサービスなどの介護施設は要注意です。介護老人保健施設(老健)・特別養護老人ホーム・デイサービス(通所介護)などは、令126条の4の免除に明記されていません。そのため、これらの居室(療養室・居室・機能訓練室など)を「病室・寝室に準じて免除」とみるか、「明記がない以上は設置」とみるかで、特定行政庁によって解釈が分かれます。判断が割れやすい典型なので、早い段階で所轄と事前協議しておくのが安全です。

ただし平成30年の改正で緩和:ホテル・旅館の整備費低減や用途変更の円滑化をねらい、床面積30㎡以下の客室で「地上への出口がある」または「地上へ通ずる通路に非常用照明がある/採光上有効に外気に開放されている」ものは、告示1411号(第三号)で免除できるようになりました(後述)。あわせて、ふすま等の随時開放できる建具で仕切られた2室を1室とみなす扱いもあります。適用は特定行政庁で確認してください。
ペン太ペン太
床面積30㎡以下なら免除って聞きました。小さい居室なら無条件でいいんですか?
ハリタハリタ
平成30年改正の第三号ですね。条件があります。採光と歩行距離による一号・二号との違いも見ましょう。

3. 告示1411号による免除(避難上支障がない居室)

用途で外れなくても、避難上支障がないと認められる居室は、平成12年建設省告示第1411号(令126条の4第四号にもとづく)によって免除されます。まず全体像を、用途免除とあわせて早見表で示します。

非常用照明の免除ケース早見表
免除ケース早見表|用途による免除(令126条の4)と告示1411号による免除

ここからは、告示1411号の中身を丁寧に見ていきます。免除される居室は、大きく2つのタイプに分けて考えると整理できます。

告示1411号の2タイプの内訳図
告示1411号|①採光+短い歩行距離、②小規模居室(30㎡以下)の2タイプ

タイプ①:採光 + 短い歩行距離

採光上有効な開口(床面積の1/20以上)をもち、避難が容易な居室です。窓が取れて出口が近い居室、とイメージするとわかりやすいです。

告示1411号の本則は、歩行距離による第一号(避難階)・第二号(直上階・直下階)と、平成30年改正で加わった第三号(小規模居室)で構成されています。まずは第一号・第二号から。

  • 【第一号】避難階の居室:各部分から避難階における屋外への出口までの歩行距離が30m以下のもの
  • 【第二号】避難階の直上階・直下階の居室:屋外への出口、または屋外に設ける避難階段までの歩行距離が20m以下のもの

タイプ②【第三号】:床面積30㎡以下の小規模居室(平成30年改正で追加)

床面積30㎡以下の居室(地階に設けるものを除く)で、次のいずれかに該当するものです。もともと小さく避難が容易な部屋を対象に、平成30年の改正(国土交通省「非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を見直します」)で加わりました。ホテル・旅館の整備費低減や、既存建築物の用途変更の円滑化がねらいです。

  • 直接、地上へ通ずる出口があるもの
  • 地上へ通ずる主たる廊下・通路に非常用照明が設けられているもの
  • その避難経路が採光上有効に直接外気に開放されているもの

面積・距離の数え方と補足

ふすま・障子など随時開放できる建具で仕切られた2室は、1室とみなして面積や歩行距離を判断します。また、採光上有効に直接外気に開放された廊下・階段などの通路も対象になり得ます。

具体例:どの居室が免除される?

避難階の一例で見てみましょう。出口が近い・小さい居室は免除でき、大きい・遠い居室は設置が必要。廊下などの避難経路は常に設置です。

どの居室が免除されるかの具体例(避難階の平面図)
具体例|小さく出口が近い居室は免除、大きい・遠い居室は設置。廊下は常に設置
数値(30m/20m/30㎡/有効採光1/20 など)や号立ては代表的な整理です。正確な条文(各号)と細目・運用は、告示第1411号の原文と特定行政庁で必ず確認してください。免除されるのはあくまで「居室」で、避難経路は原則そのまま非常用照明が必要です。

4. 免除の判定フロー

迷ったら、次の順番で確認すると整理しやすいです。

非常用照明の免除の判定フロー
判定フロー|居室か → 用途で免除 → 告示1411号で免除 → どれも×なら設置

まずその部屋が居室か(居室でなければそもそも対象外)。次に用途で免除されるか(令126条の4)。それでも残れば告示1411号で免除されるか。どれにも当たらなければ非常用照明を設置します。設置対象や居室の考え方は「居室」とは?の記事で解説しています。

5. 注意点

免除は「居室」だけ——くり返しになりますが、避難経路(廊下・階段・通路)は原則として非常用照明が必要です。また、免除の取り扱いは特定行政庁によって差があるため、判断が微妙な居室は確認申請の前に事前協議しておくのが安全です。照度・台数の考え方は非常照明の照度計算・器具配置、回路の取り方は非常照明の回路は分電盤のどこ?もあわせてどうぞ。

🦔 実務ワンポイント:角(隅)の緩和は「頼りきらない」

非常用照明では、居室の角(隅)は1m程度の範囲を除外・緩和できる取扱いがある場合があります(特定行政庁の運用による)。ただし、使いどころに注意です。

新築時:施工で器具が計画位置から動くおそれがあるため、角の緩和に頼らず、余裕をもってカバーしておくのがおすすめ。
配置が確定する改修・小さな増設:レイアウトが動かないので、角の緩和を検討してもよい

※ 角の除外範囲や可否は取扱いが分かれます。適用は特定行政庁で確認してください。

🦔 実務ワンポイント:工場は「機器の配置が決まっている部分」に注目

工場や生産施設などでは、大型の生産設備・機械が床を占有し、人が常時とどまらない部分ができます。こうした機器の配置が確定しているエリアは、その部分について非常用照明を免除・緩和できる場合があります。ただし人が通行・避難する通路部分は原則として必要です。

・判断のカギは「配置が固定されているか」。設備が動く可能性のある計画段階では緩和に頼りきらない

レイアウトが確定した既設・増設なら、機器の占有部を除いて計画してもよい。

※ 免除の可否・範囲は取扱いが分かれます。適用は特定行政庁で確認(事前協議)を。

🦔 実務ワンポイント:免除する部屋は「図面に理由を書く」

非常用照明を免除・不設置とする居室は、その根拠(用途免除か/告示1411号の何号に該当するか)を図面に明記しておくことが重要です。「なんとなく省いた」と誤解されるリスクを防げます。

確認申請の審査・事前協議で、なぜ設置しないのかの説明がスムーズになる。

・竣工後の用途変更・改修のとき、設置していない理由が後任にも正しく伝わる。

※ 記載例:「本室は令126条の4により免除」「告示1411号第○号により免除(歩行距離○m)」など、根拠条項をセットで残す。

図面にそのまま貼れる「免除理由」記載文例(コピペ用)

下の文例は図面の注記欄にそのまま貼り付けて使えるように整えたものです。○○(室名)や号数・距離・寸法は実際の計画に合わせて置き換え、条項名と適用可否は必ず特定行政庁で確認してください。行を三回クリックすると1行だけ選択できます。

① 用途による免除(令126条の4)

図中、○○(室名)は建築基準法施行令第126条の4に該当するため、非常用照明装置は設置しないものと致します。

② 告示1411号による免除

図中、○○(室名)は平成12年建設省告示第1411号第一号に該当するため(避難階の居室・屋外への出口までの歩行距離30m以下)、非常用照明装置は設置しないものと致します。
図中、○○(室名)は平成12年建設省告示第1411号第二号に該当するため(避難階の直上階・直下階の居室・避難階段等までの歩行距離20m以下)、非常用照明装置は設置しないものと致します。
図中、○○(室名)は平成12年建設省告示第1411号第三号に該当するため(床面積30㎡以下の居室)、非常用照明装置は設置しないものと致します。

③ 工場等・機器の配置が固定された範囲

図中、○○の範囲は生産設備の配置が固定され、通行・避難の用に供しないため、非常用照明装置は設置しないものと致します。

④ 隅部(角)の緩和を用いる場合

図中、○○室の隅部○mの範囲は、非常用照明の照度算定から除外するものと致します(特定行政庁協議による)。

※ 文例は雛形です。号数・距離・面積・寸法は計画値に、条項の表記は最新の法令・告示に合わせて調整してください。判断が微妙な場合は事前協議での確認を推奨します。

よくある質問(FAQ)

Q. 住宅は非常用照明がまったく不要?
A. 一戸建の住宅や共同住宅の住戸は用途で免除されます。ただし共同住宅の共用廊下・階段などは、規模・構造により別途必要になることがあります。

Q. 30㎡以下ならどんな居室でも免除?
A. 面積だけでは決まりません。地上へ直接出られる、通路に非常用照明がある、外気に開放されている、などの条件のいずれかを満たす必要があります。

Q. 居室を免除できたら、その階の廊下も省ける?
A. いいえ。免除は居室に限られ、避難経路は原則として非常用照明が必要です。

ペン太ペン太
判定フローは分かりました。免除を使うとき、最後の注意点はありますか?
ハリタハリタ
免除できるのは居室だけです。廊下・階段など避難経路は原則必要。ここを守れば大丈夫です。

まとめ

非常用照明の免除は、「用途による免除(令126条の4)」「告示1411号による免除(避難上支障がない居室)」の2系統。判断は「居室か → 用途免除 → 告示1411号」の順で確認し、どれにも当たらなければ設置します。最大の注意点は免除されるのは居室だけで、避難経路は原則そのまま必要なこと。数値や適用は特定行政庁の運用で差があるため、迷う場合は事前協議を。

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