加圧防排煙設備と消防用水の全体像

この記事では、消火活動上必要な施設のうち残っていた2つ——加圧防排煙設備消防用水——を扱います。性格はまったく違います。加圧防排煙設備は排煙設備に代えて用いる設備で、給気機・排煙機・起動装置・非常電源をもつ電気設備の塊です。消防用水は消防隊が使う水源で、電気的な要素はほとんどありません。

加圧防排煙設備は、根拠法令の名前を取り違えている資料がとても多い設備です。「加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める省令」という省令は存在しません

省令は「排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成21年総務省令第88号)で、「加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準」のほうは告示(平成21年消防庁告示第16号)です。

令第27条・第28条・第29条の4、平成21年総務省令第88号、平成21年消防庁告示第16号、規則第29条・第30条を条文の文言のまま整理します。

使 294 21 88 21 164使211 1,0002634294328HARITA
図1:使えるのは(四)項・(十三)項イの地階・無窓階1,000㎡以上に限られる

この3つ、すぐ答えられますか

  • 加圧防排煙設備の技術上の基準は、省令と告示のどちらにあるか
  • 排煙設備が必要な建物なら、どこでも加圧防排煙設備に置き換えられるか
  • 消防用水は、床面積だけで要否を判断してよいか
この記事でわかること
令第27条・第28条・第29条の4、平成21年総務省令第88号、平成21年消防庁告示第16号、規則第29条・第30条を条文の文言のまま整理しています。

加圧防排煙設備は「排煙設備の一種」ではない

トピック1:加圧防排煙設備は「排煙設備の一種」ではない

位置づけの根拠は令第29条の4です。

第1項 法第十七条第一項の関係者は、…設置し、及び維持しなければならない…消防用設備等(以下この条において「通常用いられる消防用設備等」という。)に代えて、総務省令で定めるところにより消防長又は消防署長が、その防火安全性能(火災の拡大を初期に抑制する性能、火災時に安全に避難することを支援する性能又は消防隊による活動を支援する性能をいう。…)が当該通常用いられる消防用設備等の防火安全性能と同等以上であると認める…設備等…を用いることができる。

第3項 通常用いられる消防用設備等(それに代えて必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等が用いられるものに限る。)については、この節の第二款から前款までの規定は、適用しない

第3項が効いています。加圧防排煙設備を用いた部分には、令第28条(排煙設備)が適用されません。「排煙設備の代わりに設置する」の法的な正体は「令第28条の不適用」です。

令第28条に「加圧防排煙設備」の語はない

令第28条は全3項で、第1項が設置対象、第2項が技術上の基準(4号)、第3項が設置免除です。第3項はこう書いています。

第一項各号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、排煙上有効な窓等の開口部が設けられている部分その他の消火活動上支障がないものとして総務省令で定める部分には、同項の規定にかかわらず、排煙設備を設置しないことができる。

この「総務省令で定める部分」は規則第29条(排煙設備の設置を要しない防火対象物の部分)で、加圧防排煙設備の規定ではありません。「令第28条第3項に加圧防排煙設備の規定がある」と書く資料がありますが、条文中に加圧防排煙設備という語は一度も出てきません。

排煙設備の設置対象(令第28条第1項)

対象
第1号 (十六の二)項=地下街で、延べ面積が1,000㎡以上のもの
第2号 (一)項の舞台部で、床面積が500㎡以上のもの
第3号 (二)項、(四)項、(十)項及び(十三)項の地階又は無窓階で、床面積が1,000㎡以上のもの

消防法の排煙設備と建築基準法の排煙設備は別物です。基準の違いは排煙設備は消防法と建築基準法で別物にまとめています。

加圧防排煙設備が使える範囲は狭い

平成21年総務省令第88号第2条第1項が、4つの号をすべて満たすことを求めています。

要件
第1号 令別表第一(四)項(百貨店・店舗等)又は(十三)項イ(駐車場。機械式のものを除く)の地階又は無窓階で、床面積が1,000㎡以上のもの
第2号 特定主要構造部が耐火構造であること
第3号 吹抜きとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分が、準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で区画されていること
第4号 スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備(いずれも移動式を除く)が、令第12条〜第18条の技術上の基準に従い、又はその例により設置されていること

つまり、地下街の排煙設備も、舞台部の排煙設備も、加圧防排煙設備には置き換えられません。第1号が(四)項と(十三)項イに限定しているためです。令第28条第1項の全対象で使えるわけではない点は、押さえておく価値があります。

第2号の「特定主要構造部」は令和6年の建築基準法改正に伴って「主要構造部」から改められた文言です。改正前の表記のままの解説は、それだけで古い資料と判断できます。

同条第2項が基本の3要件を置いています。手動起動装置を設けること排煙口・排煙用の風道その他煙に接する部分は煙の熱及び成分によりその機能に支障を生ずるおそれのない材料で造ること非常電源を附置すること

そして第3項が「消防庁長官が定める設置及び維持に関する技術上の基準に適合するものでなければならない」と告示に委任しています。

ここまでのポイント
  • 位置づけの根拠は令第29条の4。「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」の枠組み
  • 同条第3項により、用いた部分には令第28条(排煙設備)が適用されない
  • 「排煙設備の代わりに設置する」の法的な正体は「令第28条の不適用」
  • 令第28条の条文に「加圧防排煙設備」の語は一度も出てこない
  • 省令は平成21年総務省令第88号、技術上の基準は平成21年消防庁告示第16号


加圧式消火活動拠点|煙を押し返す部屋

トピック2:加圧式消火活動拠点|煙を押し返す部屋
50m 10 2110010 100 Pa40cm 2.7h3.3h3.8hm/s121437HARITA
図2:拠点は10㎡以上・水平距離50m以下。扉を開ける力は100N以下

告示第16号は「第一 趣旨」「第二 用語の意義」「第三 設置及び維持に関する技術上の基準(第一号〜第十五号)」という構成です。条建てではないので「第○条」ではなく「第三 第○号」と引用します。

第二の用語の意義が3つあります。

加圧式消火活動拠点 加圧防排煙設備を採用した、消防隊の活動拠点となる室
隣接室 加圧式消火活動拠点と連絡する室のうち階段室以外のもの
遮煙開口部 加圧式消火活動拠点と隣接室を連絡する開口部

拠点に給気して圧力を上げ、遮煙開口部から隣接室へ向かう気流をつくって煙の侵入を防ぐ、というのが基本の考え方です。拠点に入った空気の逃げ道として空気逃がし口を隣接室又は一般室に設けます(第三 九号)。

拠点の要件(第三 五号)

要件
(一) 防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一の遮煙開口部までの水平距離が50m以下となるように設けること
(二) 床面積が10㎡以上で、かつ消火活動上支障のない形状であること
(三) 外周のうち一の防火区画に接する部分の長さが、当該外周の長さの2分の1以下であること
(四) 避難、通行及び運搬以外の用途に供しないこと
(五) 耐火構造の壁及び床で区画すること。隣接室に面する壁と遮煙開口部の防火戸(特定防火設備)は、火災時予測上昇温度が100度以上とならないよう措置し、拠点内部は10度以上とならないよう措置すること
(六) 出入口に設けられた戸を開放するための力が100ニュートンを超えないための措置を講じること
(七) 防災センター等と通話することができる装置を設けること

(五)の温度条件を「100℃を超えないこと」と書いている資料がありますが、告示の文言は「百度以上とならないように措置する」です。ちょうど100度は不可、という点で結論が変わります。内部の10度も同じ書き方です。

(七)の通話装置は電気設備側の仕事です。ここでいう「防災センター等」は、規則第12条第1項第8号に規定する防災センター、建築基準法施行令第20条の2第2号の中央管理室、守衛室その他これらに類する場所で常時人がいる場所を指します。

防災センターと中央管理室の使い分けは防災センターと中央管理室で整理しました。

(六)の100ニュートンは加圧との綱引き

拠点を加圧すればするほど煙は入りにくくなりますが、扉が開けにくくなります。100Nは、消防隊が装備を着けた状態で確実に開けられる上限として置かれた数値です。

給気風量を増やす方向と、扉が開く方向は相反します。建築側の扉仕様(ドアクローザの力、開き勝手、面積)と設備側の給気量は、同時に決めなければ成立しません。

ここまでのポイント
  • 告示第16号は条建てではなく「第三 第○号」と引用する
  • 拠点は各部分から一の遮煙開口部まで水平距離50m以下、床面積10㎡以上
  • 外周のうち一の防火区画に接する部分は外周の長さの2分の1以下
  • 避難・通行・運搬以外の用途に供さない。耐火構造の壁及び床で区画する
  • 出入口の戸を開放する力は100ニュートン以下。防災センター等と通話できる装置を設ける
  • 加圧の性能は圧力差(Pa)ではなく、遮煙開口部の通過風速で規定されている


電気設計で押さえるところ

トピック3:電気設計で押さえるところ
2431214121512181219 250 1/ 250750250/750 31/ 12143030303172HARITA
図3:起動装置は手動、送風機は開口部の開放に連動。電源系はすべて他条の「例による」

起動装置は手動、送風機は連動

告示第三 十号です。

(一) 排煙口の手動起動装置は、規則第30条第4号イの規定の例によるほか、排煙機により排煙する防煙区画にあっては、排煙口の開放に伴い、排煙機が自動的に作動するよう設けること
(二) 給気口の手動起動装置は、規則第30条第4号イの規定の例によるほか、給気口の開放に伴い、給気機が自動的に作動するよう設けること

「規則第30条第4号イの規定の例による」ので、排煙設備の手動起動装置と同じ要件がかかります。

(イ) 一の防煙区画ごとに設けること
(ロ) 当該防煙区画内を見とおすことができ、かつ、火災のとき容易に接近することができる箇所に設けること
(ハ) 操作部は、壁に設けるものは床面からの高さが0.8m以上1.5m以下、天井からつり下げて設けるものは床面からの高さがおおむね1.8mの箇所
(ニ) 操作部の直近の見やすい箇所に、起動装置である旨及びその使用方法を表示すること

排煙設備(令第28条第2項第2号)が「手動起動装置又は自動起動装置」を認めているのに対し、加圧防排煙設備は省令第2条第2項第1号で「手動起動装置を設けること」とだけ書かれています。消防隊が到着してから、拠点にする部屋を選んで起動するという使い方を前提にしているためです。

電源・非常電源・配線はすべて「例による」

内容
第十一号 電源は、規則第24条第3号の規定の例により設けること
第十二号 非常電源は、規則第12条第1項第4号の規定の例により設けること
第十三号 操作回路の配線は、規則第12条第1項第5号の規定の例により設けること
第十四号 規則第12条第1項第8号の規定(総合操作盤)は、加圧防排煙設備について準用する
第十五号 排煙用の風道、給気用の風道、空気逃がし口に直結する風道、排煙機、給気機及び非常電源には、規則第12条第1項第9号に規定する措置(地震動等による震動等に耐えるための措置)を講ずること

排煙設備の細目(規則第30条)も第7号=電源、第8号=非常電源、第9号=操作回路の配線、第10号=総合操作盤の準用、第11号=地震動等の措置という同じ並びです。加圧防排煙設備の電気設計は、排煙設備の電気設計とほぼ同じと考えて差し支えありません。

総合操作盤の要否は総合操作盤はいつ義務になるかを参照してください。

非常電源の容量は告示に書かれていない

告示第三 十二号は「規則第十二条第一項第四号の規定の例により設けること」とだけ書いています。告示本文に「30分」という数値はありません。規則第12条第1項第4号ロの自家発電設備が「屋内消火栓設備を有効に30分間以上作動できるもの」と定めているので、それを「例により」読み替えて30分と運用されます。

種類の制限も同号の柱書がそのままかかります。延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物では非常電源専用受電設備は使えず、自家発電設備・蓄電池設備・燃料電池設備のいずれかになります。非常電源の4種類の違いは消防用設備の非常電源|4種類の違いにまとめました。

ちなみに連結送水管の加圧送水装置は規則第31条第7号で2時間以上と別に定められています(連結送水管と連結散水設備)。「消火活動上必要な施設だから2時間」と一律に覚えると外します。

風量は「圧力差」ではなく「通過風速」で決まる

給気機の性能は告示第三 八号(二)が定めています。

給気機の給気性能は、一の遮煙開口部の開口幅を40センチメートルとした場合における当該遮煙開口部の通過風速を、隣接室の区分に応じそれぞれ次の表の式によって計算した必要通過風速に維持しうる量の空気を供給する性能以上であること。

隣接室の区分 必要通過風速(m/s)
火災の発生のおそれの少ない室(準耐火構造の壁若しくは床又は特定防火設備である防火戸で区画され、かつ、開口部の幅の総和が当該壁の長さの4分の1以下であるもの) 2.7√h
火災の発生のおそれの少ない室(不燃材料で造られた壁若しくは床又は防火設備である防火戸で区画されたもの) 3.3√h
その他の室 3.8√h

h は遮煙開口部の開口高さ(m)です。加圧の性能を Pa(パスカル)で示す規定は、この告示には存在しません

圧力差で説明されているものは、建築基準法側の加圧防煙(平成12年建設省告示第1437号)です。消防法と建築基準法で規定の立て方が違うため、両方の資料を並べて読むときは混ざらないよう注意が必要です。

排煙側の性能

防煙区画の床面積 排煙機の排煙風量(告示 第三 四号(一))
250㎡未満 当該防煙区画の床面積に1㎥/分を乗じて得た量
250㎡以上750㎡未満 250㎥/分
750㎡以上 当該防煙区画の床面積に3分の1㎥/分を乗じて得た量

排煙口は、規則第30条第1号(イを除く)の規定の例によるほか、天井面から30cm以上下方に突出した垂れ壁等で区画された防煙区画ごとに1以上設けます(第三 一号)。給気口は加圧式消火活動拠点ごとに1以上で、給気用の風道に接続します(第三 六号)。

告示第三 四号(二)には、排煙機によらず直接外気に排出する防煙区画についての排煙口の面積の式もありますが、原典PDFから逐語で取得できませんでした。

設計で使う場合は告示原本で確認してください。同様に、第三 五号(五)の火災時予測上昇温度の計算式(ΔTw、ΔTa)の各記号の定義も逐語確認ができていません。

ここまでのポイント
  • 排煙口・給気口とも手動起動装置を設け、開放に伴って排煙機・給気機が自動的に作動する
  • 手動起動装置は規則第30条第4号イの例による(防煙区画ごと、見とおせる位置、壁は床から0.8〜1.5m)
  • 電源は規則第24条第3号、非常電源は規則第12条第1項第4号、操作回路の配線は同第5号の例による
  • 総合操作盤は規則第12条第1項第8号を準用、地震動等の措置は同第9号
  • 非常電源の容量は告示に数値がなく、規則の読み替えで30分と運用される


参考|排煙設備側の数値

トピック4:参考|排煙設備側の数値

比較のために、規則第30条第6号イが定める排煙機の性能を挙げておきます。

区分 排煙機の性能
消火活動拠点 240㎥/分(特別避難階段の附室と非常用エレベーターの乗降ロビーを兼用するものは360㎥/分
消火活動拠点以外(地下街=令第28条第1項第1号) 300㎥/分(一の排煙機が二以上の防煙区画に接続されている場合は600㎥/分
消火活動拠点以外(令第28条第1項第2号・第3号) 120㎥/分又は防煙区画の床面積に1㎥/分(二以上の防煙区画に接続されている場合は2㎥/分)を乗じて得た量のうち、いずれか大なる量

風道のダンパーについては、規則第30条第3号ホ(ハ)が「自動閉鎖装置を設けたダンパーの閉鎖する温度は、280度以上とすること」、同号ホ(ニ)が「消火活動拠点に設ける排煙口又は給気口に接続する風道には、自動閉鎖装置を設けたダンパーを設置しないこと」と定めています。

消防隊の拠点まわりだけは、途中で閉じてしまう要素を排除する考え方です。

消防用水|敷地20,000㎡以上が入口

トピック5:消防用水|敷地20,000㎡以上が入口
20,000 271120 15,0007,50010,0005,0005,0002,50031m25,0001212,500 ÷ 1× 201200.8/204.5m100m2mHARITA
図4:設置要件の面積(15,000/10,000/5,000)と、水量計算の除数(7,500/5,000/2,500)は別物

令第27条第1項です。

一 別表第一(一)項から(十五)項まで、(十七)項及び(十八)項に掲げる建築物で、その敷地の面積が二万平方メートル以上あり、かつ、その床面積が、耐火建築物にあつては一万五千平方メートル以上、準耐火建築物にあつては一万平方メートル以上、その他の建築物にあつては五千平方メートル以上のもの(次号に掲げる建築物を除く。)

二 別表第一に掲げる建築物で、その高さが三十一メートルを超え、かつ、その延べ面積(地階に係るものを除く。)が二万五千平方メートル以上のもの

第1号でいちばん落としやすいのが「敷地の面積が20,000㎡以上」という条件です。床面積だけを見て「15,000㎡あるから消防用水が要る」と判断すると誤ります。敷地が20,000㎡未満なら第1号には当たりません。

第2号には敷地面積の要件がありません。高さ31m超かつ延べ面積25,000㎡以上(地階を除く)であれば、敷地の広さにかかわらず対象になります。

第1号は「床面積」、第2号は「延べ面積」

条文の使い分けです。第1号は「その床面積が」、第2号は「その延べ面積(地階に係るものを除く。)が」。

実務では第1号の「床面積」を1階と2階の床面積の合計と読む運用が定着していますが、条文にその文言はありません。市販の解説書や自治体の審査基準はこの運用で表を作っているので、条文を直接引用するときは「床面積」とだけ書くのが安全です。

なお、この運用の一次根拠となる通知番号は特定できませんでした。協議で根拠を求められる場面では、所轄消防の審査基準を確認してください。

水量の決め方

令第27条第3項第1号です。

消防用水は、その有効水量(地盤面下に設けられている消防用水にあつては、その設けられている地盤面の高さから四・五メートル以内の部分の水量をいう。)の合計が、第一項第一号に掲げる建築物にあつてはその床面積を、同項第二号に掲げる建築物にあつてはその延べ面積を建築物の区分に従い次の表に定める面積で除した商(一未満のはしたの数は切り上げるものとする。)を二十立方メートルに乗じた量以上の量となるように設けること。この場合において、当該消防用水が流水を利用するものであるときは、〇・八立方メートル毎分の流量を二十立方メートルの水量に換算するものとする。

建築物の区分 除数となる面積
第1項第1号の建築物:耐火建築物 7,500㎡
第1項第1号の建築物:準耐火建築物 5,000㎡
第1項第1号の建築物:その他の建築物 2,500㎡
第1項第2号の建築物 12,500㎡

設置が必要になる面積(15,000/10,000/5,000)と、水量計算の除数(7,500/5,000/2,500)は別の数字です。ちょうど半分の値なので取り違えやすいところです。

残りの技術基準は第3項第2号から第5号です。

第2号 建築物の各部分から一の消防用水までの水平距離が100m以下。一個の消防用水の有効水量は20㎥未満(流水は0.8㎥/分未満)であってはならない
第3号 吸管を投入する部分の水深は、所要水量のすべてを有効に吸い上げることができる深さであること
第4号 消防ポンプ自動車が2m以内に接近することができるように設けること
第5号 防火水槽には、適当の大きさの吸管投入孔を設けること

「採水口」は令第27条に書かれていない

加圧送水装置を用いる消防用水の採水口(所要水量40㎥未満は1個、40㎥以上120㎥未満は2個、120㎥以上は3個など)は、令にも規則にも規定がありません。各消防本部の審査基準・指導基準によるものです。令第27条第3項は総務省令への委任文言をもたず、細目は政令で完結しています。

採水口の数や高さを設計に反映するときは、所轄消防の審査基準を根拠として確認してください。

空調用蓄熱槽を消防用水に使う

空調用の蓄熱槽の水を消防用水として使う場合の取扱いは、平成9年3月6日 消防予第42号「空調用蓄熱槽水を消防用水として使用する場合の取扱いについて」で示されています。大規模建築物で蓄熱槽と消防用水を兼用する計画は珍しくないので、電気設備側でも水位監視や警報の取り合いが出てくることがあります。

同一敷地内に建物が2以上ある場合の扱い(令第27条第2項)は、設置単位の話として消防用設備等の設置単位にまとめています。

ここまでのポイント
  • 共通の前提は敷地の面積が20,000㎡以上であること(令第27条第1項第1号)
  • 設置が必要になる床面積は耐火15,000㎡・準耐火10,000㎡・その他5,000㎡以上
  • 水量計算の除数は7,500/5,000/2,500㎡(高さ31m超かつ25,000㎡以上は12,500㎡)
  • 所要水量は床面積÷除数(1未満切り上げ)×20㎥。1個の消防用水は20㎥未満にできない
  • 地盤面下は地盤面から4.5m以内の部分の水量しか有効水量に算入できない
  • 各部分から一の消防用水まで水平距離100m以下、消防ポンプ自動車が2m以内に接近できること


点検の周期

トピック6:点検の周期
設備 機器点検 総合点検
加圧防排煙設備 6か月 1年
排煙設備 6か月 1年
消防用水 6か月 なし

平成16年消防庁告示第9号によります。消防用水に総合点検がないのは、作動させて性能を確認する系統をもたないためです。点検と報告の全体像は消防用設備等の点検と報告を参照してください。

ここまでのポイント
  • 加圧防排煙設備と排煙設備は機器点検6か月・総合点検1年
  • 消防用水は機器点検6か月のみで、総合点検はない
  • 消防用水に総合点検がないのは、作動させて性能を確認する系統をもたないため

よくある誤りを条文で確認する

トピック7:よくある誤りを条文で確認する
よく見かける記述 条文で確認すると
根拠は「加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める省令」 その名前の省令は存在しない。省令=平成21年総務省令第88号「排煙設備に代えて用いることができる…設備等に関する省令」、技術上の基準=平成21年消防庁告示第16号
令第28条第3項に加圧防排煙設備の規定がある 令第28条の条文に「加圧防排煙設備」の語は一度も出てこない。第3項は排煙設備の設置免除(規則第29条への委任)
加圧防排煙設備は排煙設備の一種 令第29条の4の「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」という別カテゴリ。同条第3項で令第28条が適用されない
排煙設備が必要な建物なら加圧防排煙設備に置き換えられる 使えるのは(四)項・(十三)項イの地階・無窓階で1,000㎡以上に限る(省令第2条第1項第1号)。地下街や舞台部は不可
加圧の性能は圧力差(Pa)で規定される 告示に Pa の規定はない。遮煙開口部の通過風速(m/s)で規定。圧力差は建築基準法側(平成12年建設省告示第1437号)
拠点の温度条件は「100℃を超えない」 告示の文言は「百度以上とならないように措置する」
非常電源は告示で30分と規定されている 告示は「規則第12条第1項第4号の規定の例により」と書くのみ。30分は規則の読み替えによる運用値
省令第2条第1項第2号は「主要構造部」 現行は「特定主要構造部」(令和6年の建築基準法改正に伴う改正済み)
消防用水は床面積15,000㎡以上で必要 敷地の面積が20,000㎡以上という条件が同時にかかる(令第27条第1項第1号)
水量は床面積を15,000㎡で割って20㎥を掛ける 除数は7,500/5,000/2,500/12,500㎡。設置要件の面積とは別の表
消防用水は消火設備の一種 令第7条第1項の「消防の用に供する設備」は消火設備・警報設備・避難設備の3つ。消防用水は同条第5項の独立したカテゴリ
採水口の数は令第27条に規定がある 令にも規則にも規定はない。各消防本部の審査基準による

設計で気をつけるところ

トピック8:設計で気をつけるところ

加圧防排煙は建築・機械・電気の三者で決まる

拠点の面積10㎡以上・外周の2分の1以下という条件は建築、給気風量と風道は機械、起動装置・電源・非常電源・配線・総合操作盤は電気です。そして扉を開ける力100Nは、機械の給気量と建築の扉仕様の両方で決まります。

どれか一つだけを先に固めると成立しません。基本設計の早い段階で三者を並べて検討する必要がある、数少ない設備です。

起動装置の位置は拠点ごとに

排煙口の手動起動装置は防煙区画ごと、給気口の手動起動装置は加圧式消火活動拠点ごとです。拠点は「その階の各部分から遮煙開口部まで水平距離50m以下」なので、大きな売場や駐車場では複数の拠点が必要になり、そのぶん起動装置と配線も増えます。拠点の数が電気工事量を決めます。

消防用水は外構と一緒に決める

消防ポンプ自動車が2m以内に接近できること、水平距離100m以下、吸管投入孔があること。いずれも外構計画で決まる条件です。地盤面下の水槽は地盤面から4.5m以内の水量しか算入できないので、深く掘っても有効水量は増えません。設計初期に建築・外構と調整しておく項目です。

まとめ

結論。この2設備は、根拠がどの層にあるかを取り違えやすい。令・省令・告示・審査基準を分けて持っておくのが近道です。

知りたいこと 根拠の層と条文
加圧防排煙設備の位置づけ 令第29条の4(第3項で令第28条が不適用)
使える範囲の4条件 平成21年総務省令第88号 第2条第1項
技術上の基準 平成21年消防庁告示第16号 第三(第一号〜第十五号)
拠点の要件 告示 第三 五号(位置・広さ・外周・用途・区画・扉・通話)
起動装置 告示 第三 十号(規則第30条第4号イの例による)
電源 告示 第三 十一号(規則第24条第3号の例による)
非常電源 告示 第三 十二号(規則第12条第1項第4号の例による)
操作回路の配線 告示 第三 十三号(規則第12条第1項第5号の例による)
排煙設備の設置対象 令第28条第1項(第1号〜第3号)
排煙設備の設置免除 令第28条第3項 → 規則第29条
消防用水の設置対象と水量 令第27条第1項

取り違えやすいところ

  • 「加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める省令」という省令は存在しない
  • 令第28条第3項は排煙設備の設置免除の規定で、加圧防排煙設備の規定ではない
  • 排煙設備が必要な建物ならどこでも置き換えられるわけではなく、(四)項・(十三)項イに限られる
  • 加圧の性能を圧力差(Pa)で説明しているのは建築基準法側の加圧防煙
  • 非常電源の30分は告示の数値ではなく、規則の読み替えによる運用値

消防用水で外さないところ

  • 入口は敷地の面積20,000㎡以上。床面積だけで判断すると誤る
  • 設置要件の面積(15,000/10,000/5,000)と、水量計算の除数(7,500/5,000/2,500)は別の表
  • 高さ31m超かつ延べ面積25,000㎡以上は敷地面積の要件がなく、除数は12,500㎡
  • 地盤面下は4.5m以内の水量しか算入できない
トピック9:まとめ

加圧防排煙設備は令第29条の4の代替の枠組みに乗る設備で、排煙設備の一種ではありません。使えるのは(四)項・(十三)項イの地階・無窓階で床面積1,000㎡以上、かつ特定主要構造部が耐火構造・竪穴区画・スプリンクラー設備等の設置という4条件をすべて満たす場合だけです。

技術上の基準は平成21年消防庁告示第16号にあります。省令ではありません。加圧の性能は圧力差ではなく遮煙開口部の通過風速で規定され、拠点は10㎡以上・水平距離50m以下・扉を開ける力100N以下。電源・非常電源・操作回路の配線・総合操作盤はすべて他条の「例による」構造で、排煙設備とほぼ同じです。

消防用水は敷地の面積20,000㎡以上が入口です。床面積だけで判断すると誤ります。水量は設置要件の面積とは別の除数(7,500/5,000/2,500/12,500㎡)で計算し、20㎥単位に切り上げます。地盤面下は4.5m以内の水量しか算入できません。

そして、令・省令・告示・自治体の審査基準の4層をどこまで分けて把握できているかが、この2設備ではとくに効いてきます。

参考条文・告示・通知

  • 消防法施行令 第7条(消防用設備等の種類)、第27条(消防用水)、第28条(排煙設備)、第29条の4(必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等)
  • 消防法施行規則 第12条第1項第4号・第5号・第8号・第9号、第24条第3号、第29条(排煙設備の設置を要しない部分)、第30条(排煙設備に関する基準の細目)
  • 平成21年9月15日 総務省令第88号「排煙設備に代えて用いることができる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」
  • 平成21年9月15日 消防庁告示第16号「加圧防排煙設備の設置及び維持に関する技術上の基準」(改正 平成28年消防庁告示第13号、令和6年消防庁告示第6号)
  • 平成16年 消防庁告示第9号(点検の期間・方法・報告書の様式)
  • 平成9年3月6日 消防予第42号「空調用蓄熱槽水を消防用水として使用する場合の取扱いについて」

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。