建築消防|無窓階と収容人員|消防用設備の必要量を決める2つの判定
消防用設備等の設置基準を読んでいると、面積や階数と並んで必ず出てくる2つの言葉があります。無窓階と収容人員です。この連載でも、非常警報設備の「地階及び無窓階の収容人員が20人以上」のように、両方が同時に出てくる条文を何度も扱ってきました。
この2つは、用途と面積が同じ建物でも、設備の必要量をまったく変えてしまう判定パラメータです。ある階が無窓階と判定されただけで自動火災報知設備の設置基準が跳ね上がり、収容人員が1人違うだけで防火管理者の選任義務が生じます。
ところが、この2つの根拠条文はどちらも本文ではなくカッコ書きや別表の中に隠れていて、しかも無窓階の判定基準の条番号は、多くの解説記事が古い番号のまま書いています。この記事ではe-Gov法令APIで条文を確認しながら、判定の手順と数値、そして条文に書かれていない運用の境目までを整理します。
無窓階|定義は消火器具の条文のカッコ書きにある
「無窓階」という言葉の定義は、専用の定義条文ではなく消防法施行令第10条第1項第5号——消火器具の設置基準の中——のカッコ書きに置かれています。
五 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(略)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの
消防法施行令第10条第1項第5号
「以下同じ」とあるので、この定義が施行令全体に及びます。ポイントは3つです。
- 「地上階」に限られる——地階は無窓階の判定対象ではありません。地階はそもそも地階として別に扱われます
- 基準は「窓があるかどうか」ではなく「避難上又は消火活動上有効な開口部を有するか」
- その開口部の要件は総務省令に委任されている
判定基準の条番号は「規則第5条の5」
ここは注意が必要です。委任先の総務省令は消防法施行規則第5条の5(見出し「避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階」)です。かつては第5条の2で、平成19年の消防庁通知も第5条の2と書いています。ところが自治体資料やウェブ記事には「第5条の3」と書いているものが少なくありません。現行の規則第5条の3は「防火上有効な措置等」というまったく別の条文です。条番号だけを引き写すと、根拠を確認した相手に別の条文を見せてしまうので、必ず現行条文で確認してください。
無窓階の判定|11階以上と10階以下で違う
規則第5条の5第1項は、階数によって判定を分けています。条文は「普通階以外の階」という書き方をしていて、先に普通階の条件を定義し、それを満たさない階を無窓階とするという組み立てです。
| 階 | 普通階となる条件 |
|---|---|
| 11階以上の階 | 直径50cm以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が、その階の床面積の30分の1を超えること |
| 10階以下の階 | 上記に加えて、直径1m以上の円が内接することができる開口部、又は幅75cm以上かつ高さ1.2m以上の開口部を2以上有すること |
10階以下の階は「30分の1超」と「大型開口部2以上」の両方が必要です。片方だけでは普通階になりません。逆に11階以上は面積の条件だけです。はしご車が届く高さかどうかで、消防隊の進入を前提にするか避難を前提にするかが変わる、という設計思想が背景にあります。
数値の読み方でひとつ落とし穴があります。条文は「30分の1を超える」であって「以上」ではありません。ちょうど30分の1では普通階になりません。
開口部が満たすべき4つの要件
面積や寸法をクリアしていても、規則第5条の5第2項の4要件を満たさない開口部は、判定に算入できません。
注目すべきは第2号が11階以上の階には適用されないことです。11階以上では地上の道や空地に面している必要がない——はしご車が届かない高さなので、そもそも外部からの進入を前提にしていないという整理です。
ガラスの扱いは条文にない
実務でいちばん揉めるのがガラスです。規則第5条の5には「ガラス」「網入り」という語が一切ありません。第3号の「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」という文言の解釈として、通知と自治体の審査基準で運用されています。
普通板ガラス何mm以下、網入板ガラス何mm以下、強化ガラス何mm以下——といった表は消防庁の通知ではなく、自治体ごとの予防事務審査基準に載っているもので、数値が自治体によって違います。他の自治体の基準をそのまま持ち込まないでください。
合わせガラスについては消防庁の通知があります。平成19年3月27日 消防予第111号「合わせガラスに係る破壊試験ガイドラインの策定及び無窓階の判定等運用上の留意事項について」です。
消防予第111号の要点
- 試験体は高さ1,930mm×幅864mm
- 1次試験=70cm(外部に足場がある場合は180cm)の高さからの落錘、2次試験=工具による60秒以内の手動破壊
- 足場を要しないもの:フロート板ガラス6mm以下+PVB 30mil(0.76mm)以下+フロート板ガラス6mm以下/網入板ガラス6.8mm以下+PVB 30mil以下+フロート板ガラス5mm以下
- 外部に足場がある場合はPVB 60mil(1.52mm)まで
無窓階になると何が変わるか
無窓階は「その階だけ設置基準が厳しくなる」という効き方をします。連載で扱ってきた設備でいうと、次のような形で出てきます。
| 設備 | 無窓階の効き方 |
|---|---|
| 消火器具(令第10条) | 地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上のものが対象 |
| 非常警報設備(令第24条第2項第2号) | 収容人員50人以上のほか、地階及び無窓階の収容人員が20人以上のものが対象 |
| 避難器具(令第25条第1項第4号) | (十二)項・(十五)項では、3階以上の無窓階・地階は収容人員100人以上、その他の階は150人以上 |
| 屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備ほか | それぞれの設置基準の中で、無窓階について別の面積要件が定められている |
つまり同じ用途・同じ面積の階でも、無窓階と判定されるだけで必要な設備が増えるということです。とくに倉庫や工場、機械室が多い階、あるいはファサードをガラスカーテンウォールで固めた階では、判定が微妙になりがちです。
無窓階の判定は階ごとに行います。建物全体が無窓階になるのではなく、2階だけ無窓階、というようなことが普通に起きます。図面上は各階平面図に開口部の寸法と床面積の30分の1の値を記入しておくと、消防協議でも社内レビューでも説明が早くなります。
収容人員|「従業者の数+利用者の数」が基本形
収容人員は、防火対象物に出入りし、勤務し、又は居住する者の数です。算定方法は消防法施行規則第1条の3の表で用途ごとに定められています。委任元は令第1条の2第4項です。
表を眺めると、算定方法は①従業者の数に②利用者の数を足すという形がほとんどで、②の数え方が3通りに整理できます。
| 令別表第一の区分 | 算定方法 |
|---|---|
| (一)項(劇場等) | 従業者の数+固定式のいす席の数(長いす式は正面幅÷0.4m、1未満切捨て)+立見席は床面積÷0.2㎡+その他の部分は床面積÷0.5㎡ |
| (二)(三)項の遊技場 | 従業者の数+遊技機械器具を使用して遊技を行うことができる者の数+観覧・飲食・休憩用の固定式いす席の数(長いす式は正面幅÷0.5m) |
| (二)(三)項のその他 | 従業者の数+固定式いす席の数(長いす式は正面幅÷0.5m)+その他の部分は床面積÷3㎡ |
| (四)項(百貨店等) | 従業者の数+飲食・休憩の用に供する部分は床面積÷3㎡+その他の部分は床面積÷4㎡ |
| (五)項イ(旅館・ホテル) | 従業者の数+洋式の宿泊室はベッドの数/和式の宿泊室は床面積÷6㎡(簡易宿所及び主として団体客を宿泊させるものは÷3㎡)+集会・飲食・休憩の部分 |
| (五)項ロ(共同住宅等) | 居住者の数 |
| (六)項イ(病院等) | 医師・歯科医師・助産師・薬剤師・看護師その他の従業者の数+病室内にある病床の数+待合室の床面積÷3㎡ |
| (六)項ロ・ハ | 従業者の数+要保護者(老人・乳児・幼児・身体障害者・知的障害者その他)の数 |
| (六)項ニ(幼稚園等) | 教職員の数+幼児・児童・生徒の数 |
| (七)項(学校) | 教職員の数+児童・生徒・学生の数 |
| (八)項(図書館等) | 従業者の数+閲覧室・展示室・展覧室・会議室・休憩室の床面積÷3㎡ |
| (九)項(公衆浴場等) | 従業者の数+浴場・脱衣場・マッサージ室・休憩の用に供する部分の床面積÷3㎡ |
| (十)(十二)〜(十四)項 | 従業者の数 |
| (十一)項(神社・寺院等) | 神職・僧侶・牧師その他の従業者の数+礼拝・集会・休憩の用に供する部分の床面積÷3㎡ |
| (十五)項(事務所等) | 従業者の数+主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積÷3㎡ |
| (十七)項(重要文化財等) | 床面積÷5㎡ |
| (十六)(十六の二)項 | 各項の用途と同一の用途に供されている部分をそれぞれ一の防火対象物とみなして算定し、合算(規則第1条の3第2項) |
端数処理について。条文で「1未満のはしたの数は切り捨てる」と明記されているのは長いす式のいす席(正面幅÷0.4m/0.5m)の箇所だけです。床面積を3㎡等で除した結果の端数について、規則第1条の3に一般的な規定は見当たりませんでした。実務では切り捨てが一般ですが、その根拠はこの条文ではありません。
なお、実務書には「ダブルベッドは2人として算定する」「売場の床面積は売場内の通路を含む」といった記述がありますが、これらも条文にはない運用上の取扱いです。
収容人員がしきい値になる規定
収容人員は、防火管理者の選任・非常警報設備・避難器具といった、まったく性格の違う規定のしきい値として使われます。
とくに防火管理者の選任は、収容人員が1人動くだけで義務が生じたり消えたりします。(六)項ロ等の避難困難施設は10人以上、特定防火対象物は30人以上、非特定防火対象物は50人以上。テナントの入替えで従業者数が変わるだけで判定が変わることがあります。
また非常警報設備の令第24条第2項第2号は、「収容人員50人以上」または「地階及び無窓階の収容人員が20人以上」という書き方で、無窓階と収容人員の両方が同時に効く典型例です。この記事の2つのテーマがここで交差します。
複合用途の判定と収容人員の合算
(十六)項・(十六の二)項の収容人員は、用途ごとに分けて算定してから合算します(規則第1条の3第2項)。その前提として、そもそも複合用途防火対象物として扱うかどうかの判定があります。
異なる用途部分が混在していても、それが主たる用途の従属的な部分とみなされる場合は、複合用途ではなく主たる用途の単一用途防火対象物として扱われます。この取扱いは昭和50年3月5日 消防安第26号「消防用設備等の設置単位について」によるものです。
従属的な部分とみなされない場合の按分の考え方
共用部分の面積を、各用途の専用部分の床面積に応じて按分し、按分した面積をそれぞれの用途の面積に加算したうえで判定します。たとえば事務所ビルにレストランが入る場合、
- レストランの面積が300㎡以下
- 事務所の面積が全体の90%以上
という2つの条件を満たせば、複合用途にはならないという運用があります。数値は通知・自治体の運用によるので、必ず所轄消防本部に確認してください。
住宅を併設する場合
| 面積の関係 | 扱い |
|---|---|
| 一般住宅の床面積 > 店舗の床面積 | 店舗部分の床面積の合計が50㎡未満 → 一般住宅(防火対象物にならない) |
| 店舗部分の床面積の合計が50㎡以上 → 複合用途防火対象物 | |
| 一般住宅の床面積 < 店舗の床面積 | 複合用途防火対象物 |
| 一般住宅の床面積 ≒ 店舗の床面積 | 複合用途防火対象物 |
店舗併用住宅の相談で必ず聞かれるところです。住宅より店舗が広ければ、面積の大小にかかわらず複合用途になります。
電気設計での実務ポイント
1. 無窓階の判定は基本設計の段階で仮置きする
無窓階かどうかで自動火災報知設備の設置範囲が変わり、非常警報設備の要否も変わります。ファサードの計画が固まる前に、各階の開口部面積と床面積の30分の1を仮計算しておくと、後から設備が増えて盤やケーブルルートが足りなくなる事態を避けられます。
2. 開口部は「面積」だけでなく「高さ」と「面する場所」も確認
床面から下端まで1.2m以内、道又は幅員1m以上の通路その他の空地に面していること——この2つを見落として面積だけで判定すると、消防協議でひっくり返ります。とくにハイサイドライト(高窓)は下端の高さでアウトになりやすいので注意してください。
3. ガラス仕様は意匠と早めにすり合わせる
ガラスの種類・厚さの取扱いは自治体ごとに違います。合わせガラスやLow-Eガラスを使う計画では、意匠が仕様を決める前に所轄の審査基準を確認するのが確実です。決まってから「これでは破壊進入できない」となると、判定が変わって設備が増えます。
4. 収容人員は「従業者の数」の根拠を残す
床面積からの算定と違い、従業者の数は施主からの申告に依存します。誰が何人と言ったかを記録に残すこと、そして竣工後にテナントが入れ替わったときに再確認が必要になることを、引き渡し時に伝えておくと後々のトラブルを避けられます。
5. 用途変更の相談では収容人員の再計算から
用途が変われば算定方法そのものが変わります。事務所(従業者+従業者以外の使用部分÷3㎡)から福祉施設(従業者+要保護者の数)へ、といった具合です。遡及適用の判定と合わせて、企画段階で押さえてください。
まとめ
- 無窓階の定義は令第10条第1項第5号のカッコ書き。「地上階」に限られ、地階は対象外
- 判定基準は規則第5条の5(かつての第5条の2)。「第5条の3」と書いた資料は古い番号で、現行の第5条の3は別の条文
- 11階以上=直径50cm以上の円が内接する開口部の面積合計が床面積の30分の1を超える/10階以下=これに加えて直径1m以上、又は幅75cm以上かつ高さ1.2m以上の開口部を2以上
- 「30分の1を超える」であって「以上」ではない
- 開口部は4要件(下端の高さ1.2m以内/道等に面する(11階以上は除く)/格子等がなく外部から破壊進入できる/常時良好な状態)を満たすこと
- 条文にガラスの種類・厚さの規定はない。運用は通知と自治体の審査基準による(合わせガラスは消防予第111号)
- 収容人員の算定方法は規則第1条の3。基本形は「従業者の数+利用者の数」で、利用者は実数・いす席・床面積の3通りで数える
- 端数切捨ての明文は長いす式のいす席だけ。床面積の除算に関する一般規定は条文にない
- 防火管理者は10/30/50人、非常警報設備は20/50/300/500/800人、避難器具は10/20/30/50/100/150人がしきい値
- 令第24条第2項第2号は「収容人員50人以上、又は地階及び無窓階の収容人員が20人以上」——無窓階と収容人員が同時に効く典型例
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参考・根拠
- 消防法施行令 第1条の2(防火管理者の選任)、第10条第1項第5号(無窓階の定義)、第24条(非常警報器具・非常警報設備)、第25条(避難器具) ― e-Gov法令検索
- 消防法施行規則 第1条の3(収容人員の算定方法)、第5条の5(避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階) ― e-Gov法令検索
- 平成19年3月27日 消防予第111号「合わせガラスに係る破壊試験ガイドラインの策定及び無窓階の判定等運用上の留意事項について」
- 昭和50年3月5日 消防安第26号「消防用設備等の設置単位について」
- 防災研究会AFRI『図解入門ビジネス 最新消防法と設備がよ〜くわかる本』秀和システム(2024年)
条文の引用は趣旨を要約した箇所を含みます。複合用途の判定や按分、ガラスの種類・厚さの取扱いは通知及び自治体の審査基準によるもので、地域により運用が異なります。設計・申請にあたっては必ず最新の法令原文と所轄消防本部の運用をご確認ください。




