技術図書館非常警報設備|自火報があっても放送設備が残る建物収容人員で決まる3段階の義務、免除が効かない第3項、スピーカーの級と配置をスライドで整理しました。この資料をスライドで見る資料一覧を見る
非常警報設備の全体像:器具と設備の違い、設置義務は3段階、免除の構造、電気側の要求

非常警報設備は、消防用設備等のなかでいちばん「入っているのが当たり前」に見える設備です。ところが設置義務の根拠を聞かれると答えに詰まる人が多い。理由は、条文が収容人員で3段階に分かれ、しかも自動火災報知設備があると要らなくなるという二重構造になっているからです。

実務では「自火報を入れるから非常警報設備は不要」で片づくことが多く、その裏側にある令第24条第3項=非常ベル等と放送設備の併設義務だけが残ります。11階建て以上、地階3以上、(十六)項イで収容人員500人以上——こうした建物では、自火報があっても放送設備は必要です。

もう一つの山場が放送設備のスピーカーです。L級92dB以上・M級87dB以上92dB未満・S級84dB以上87dB未満、放送区域100㎡超はL級、水平距離10m以下——この数字群が図面のスピーカー配置を決めます。

この記事では、消防法施行令第7条第3項第4号・第24条、施行規則第25条の2、昭和48年消防庁告示第6号をe-Gov法令APIと消防庁の資料で確認しながら、義務判定・鳴動範囲・スピーカー配置・音声警報・非常電源までを整理します。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 収容人員45人の飲食店。非常警報設備はどこまで要るか
  • 12階建てのオフィスビル。自火報があれば非常警報設備は不要か
  • 放送区域が120㎡の会議室。スピーカーはどの級を選ぶか
ペン太ペン太
自火報を入れるから非常警報設備は要らない——で終わりじゃないんですか?
はりたはりた
多くの建物はそれで合ってる。ただし令第24条第3項に当たる建物だけは別で、自火報があっても放送設備が要る。
ペン太ペン太
どんな建物ですか?
はりたはりた
地下街、地階を除く階数が11以上、地階が3以上、(十六)項イで収容人員500人以上——このあたり。ここは最初に判定しておくと、後から図面が崩れない。

「器具」と「設備」の違いは、持ち運べるかどうか

トピック1:持ち運べるかどうかで分かれる

定義は消防法施行令第24条ではなく、令第7条第3項第4号(警報設備の列挙)にあります。

区分内容性格
非常警報器具警鐘、携帯用拡声器、手動式サイレンその他の非常警報器具持ち運びできるもの
非常警報設備イ 非常ベル/ロ 自動式サイレン/ハ 放送設備建築物に固定されて一体化しているもの

器具のほうに「その他の非常警報器具」とあるとおり、警鐘・携帯用拡声器・手動式サイレンはあくまで例示です。非常時の情報を伝達できるものであれば、ゴングやブザーでもかまいません。

非常ベルと自動式サイレンは、音響装置以外の構成がまったく同じ設備です。どちらも起動装置・音響装置(ベル又はサイレン)・表示灯で構成され、鳴るものがベルかサイレンかだけが違います。

放送設備を構成するのは起動装置・表示灯・スピーカー・増幅器・操作部(操作装置)などです。

火災を発見した人が起動装置を操作して増幅器の電源を自動的に入れるか、自動火災報知設備の感知器が作動して受信機が火災信号を送ることで、非常警報の放送が始まります。

設置義務|収容人員で3段階

トピック2:収容人員で、3段階

令第24条は第1項から第5項まであり、第1項〜第3項が設置対象を定めています。

3241 20501242  20  50  20 243113  500  300  800123113HARITA
図1:令第24条は収容人員と規模で3段階。第3項だけは自火報があっても放送設備が必要

第1項|非常警報器具(収容人員20人以上50人未満)

対象は(四)項、(六)項ロ・ハ・ニ、(九)項ロ、(十二)項で、収容人員が20人以上50人未満のものです。第2項に該当するものは除かれます。

第2項|非常ベル・自動式サイレン・放送設備のいずれか

  • 第1号:(五)項イ(旅館・ホテル)、(六)項イ(病院・診療所)、(九)項イ(蒸気浴場等)で収容人員20人以上
  • 第2号:第1号以外の(一)項〜(十七)項で収容人員50人以上、又は地階及び無窓階の収容人員が20人以上のもの

第1号は就寝を伴う用途なので、20人という低い閾値になっています。第2号の「地階及び無窓階の収容人員20人以上」は、建物全体の収容人員が50人未満でも、地階・無窓階だけで20人いれば対象になるという意味です。

第3項|非常ベル等と放送設備の「併設」

ここが実務でいちばん効く規定です。「非常ベル及び放送設備」又は「自動式サイレン及び放送設備」を設置する——つまり両方が要る、という書き方になっています。

  • 第1号:(十六の二)項(地下街)・(十六の三)項(準地下街)
  • 第2号:第1号以外で、地階を除く階数が11以上のもの又は地階の階数が3以上のもの
  • 第3号:(十六)項イ(特定用途を含む複合用途)で収容人員500人以上
  • 第4号:(一)〜(四)項、(五)項イ、(六)項、(九)項イで収容人員300人以上(五)項ロ、(七)項、(八)項で収容人員800人以上

第2号の「地階を除く階数が11以上」は、非常コンセント設備の対象と同じ閾値です。11階建て以上のビルを設計する場合、非常コンセント設備非常放送設備がセットで発生すると覚えておくと見落としが減ります。

ここまでのポイント
  • 第1項=非常警報器具。収容人員20人以上50人未満の(四)項・(六)項ロハニ・(九)項ロ・(十二)項
  • 第2項=非常ベル・自動式サイレン・放送設備のいずれか。就寝を伴う用途は20人、それ以外は50人(地階・無窓階だけで20人でも対象)
  • 第3項=非常ベル等と放送設備の併設。ここだけは両方が要る

免除の構造|「自火報があるから不要」が成り立つ範囲

トピック3:消えるものと、残るもの

実務で非常警報設備が省略されるのは、令第24条のただし書と第5項によります。ここは3つを区別して覚えると迷いません。

条文免除される設備免除の条件
第1項ただし書非常警報器具自動火災報知設備又は非常警報設備が技術上の基準に従って設置されているとき、その有効範囲内の部分
第2項ただし書非常ベル・自動式サイレン・放送設備自動火災報知設備が技術上の基準に従って設置されているとき、その有効範囲内の部分
第5項非常ベル又は自動式サイレン(放送設備は免除されない)第3項の対象で、自動火災報知設備又は総務省令で定める放送設備が設置されているとき、その有効範囲内の部分

「総務省令で定める放送設備」の中身は規則第25条の2第1項にあり、非常ベル又は自動式サイレンと同等以上の音響を発する装置を附加した放送設備と定められています。

ここが設計判断の要です。第1項・第2項は自火報があれば設備そのものが不要になりますが、第3項には設置免除のただし書がありません

第5項で免除されるのは非常ベル・自動式サイレンだけで、放送設備は残ります。つまり11階建て以上のビルや地下街では、自火報を入れても非常放送設備は必ず必要ということです。

逆に言えば、非常ベル相当の音響装置を付加した放送設備を入れれば、非常ベル・自動式サイレンのほうは省略できます。大規模建物でベルが見当たらないのはこのためです

自火報で消えるもの、消えないもの
図2:自火報で消えるものと、消えないもの。第3項に免除のただし書はない
ここまでのポイント
  • 第1項・第2項のただし書=自火報等があれば、設備そのものが不要になる
  • 第5項=放送設備は残り、非常ベル・自動式サイレンだけが不要になる
  • 第3項に免除のただし書はない。だから第3項に当たる建物は、自火報があっても放送設備が必要

非常ベル・自動式サイレンの基準

トピック4:1mで90dB、水平距離25m

音響装置|1mで90dB以上、水平距離25m以下

  • 音圧:取り付けられた音響装置の中心から1m離れた位置で90デシベル以上(規則第25条の2第2項第1号イ(イ))
  • 配置:各階ごとに、その階の各部分から一の音響装置までの水平距離が25m以下(同号ハ)
  • 音色:ダンスホール・カラオケボックスその他これらに類する、音響が聞き取りにくい場所では、他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができる措置を講じる(同号イ(ロ))
  • 個室:(二)項ニ、(十六)項イ、(十六の二)項、(十六の三)項のうち、ヘッドホン・イヤホン等を客に利用させる個室があるものは、その個室で確実に警報音を聞き取れる措置(ヘッドホン音停止等)を講じる(同号イ(ハ))

区分鳴動|5階建て以上かつ3,000㎡超

規則第25条の2第2項第1号ロは、地階を除く階数が5以上で、かつ延べ面積が3,000㎡を超える防火対象物について、一斉鳴動のほかに区分鳴動もできるものとすることを求めています。

25F4F3F2F1FB1FB2FGL15F4F3F2F1FB1FB2FGL5F4F3F2F1FB1FB2FGL53,00021HARITA
図3:区分鳴動の範囲。出火階が1階のときは地階全部が鳴動対象になる

鳴動範囲は出火階の位置で変わります。とくに出火階が1階のときは、直上階だけでなく地階全部が鳴動対象になる点が特徴です。煙が地階に降りていく危険を踏まえた考え方です。

区分鳴動のままにしておくと他の階の在館者が気づかないので、一定の時間が経過した場合又は新たな火災信号を受信した場合には、全区域に自動的に警報を発することも条文で求められています。この「一定の時間」の具体値は条文にありません。

起動装置|歩行距離50m以下、床面から0.8〜1.5m

  • 各階ごとに、その階の各部分から一の起動装置までの歩行距離が50m以下(規則第25条の2第2項第2号の2イ)
  • 床面からの高さ0.8m以上1.5m以下(同ロ)
  • 起動装置の直近の箇所に表示灯を設ける(同ハ)
  • 表示灯は赤色の灯火で、取付け面と15度以上の角度となる方向に沿って10m離れた所から点灯していることが容易に識別できるもの(同ニ)
  • 11階以上の階、地下3階以下の階、(十六の二)項・(十六の三)項に設ける放送設備の起動装置には、防災センター等と通話することができる装置を付置する。ただし起動装置を非常電話とする場合を除く(同第2号)

音響装置は「水平距離25m」、起動装置は「歩行距離50m」です。数字だけでなく距離の測り方が違うので、平面図に円を描くときは注意してください。歩行距離は壁を迂回した実際の歩行経路で測ります。

なお、実務書には表示灯について「停電時は70分間点灯」という記述が見られますが、規則第25条の2には点灯時間の定めがありません。所轄消防本部の審査基準をご確認ください。

ここまでのポイント
  • 音圧は1mで90dB以上、各階で水平距離25m以下に一の音響装置
  • 区分鳴動は地階を除く階数5以上かつ延べ面積3,000㎡超。出火階が1階なら地階全部が対象
  • 起動装置は歩行距離50m以下、床面から0.8〜1.5m

放送設備|スピーカーの級と放送区域

トピック5:級と放送区域で決まる

放送設備の基準は規則第25条の2第2項第3号にあり、「イ及びロ又はハ並びにニからヲまで」という構成です。イ・ロが級別と配置による方法、ハが音圧計算による方法で、どちらかを選べるようになっています。

1mL92dB M87dB 92dB S84dB 87dB 使 100 L50 100 L M50 LM S 10m 6308m15mL11m75dBHARITA
図4:スピーカーはL級・M級・S級に分かれ、放送区域の面積で使える級が決まる

放送区域とは

放送区域は、防火対象物の2以上の階にわたらず、かつ床・壁又は戸で区画された部分と定義されています。単純な「部屋」ではなく、階をまたがないこと・区画されていることが要件です。

可動間仕切りや常時開放の開口部がある場合の扱いは、所轄消防本部の運用によります。

スピーカーを設けないことができる場合

小さな放送区域まですべてにスピーカーを付けるのは現実的でないため、規則第25条の2第2項第3号ロ(ロ)にただし書があります。

  • 居室及び居室から地上に通ずる主たる廊下その他の通路6㎡以下の放送区域
  • その他の部分30㎡以下の放送区域

いずれも、隣接する放送区域に設けられたスピーカーからの水平距離が8m以下であることが条件です。トイレや小さな倉庫のスピーカーを省略できる根拠がここにあります。

階段・傾斜路は垂直距離15mにつきL級1個以上

階段室は水平距離ではなく垂直距離15mにつきL級1個以上という別ルールです。階高4mのビルなら3〜4層に1個の割合になります。イ・ロの方法でもハの音圧計算方法でも同じ規定が置かれています。

音圧計算による方法(ハ)

級別によらず、放送区域ごとに床面からの高さ1mの箇所で75dB以上となるように設けることもできます。

ただし残響時間が3秒以上となる場合は、床面から1mの箇所から一のスピーカーまでの距離が条文の計算式で制限されます。天井が高くて残響の長い空間(体育館・アトリウム等)では、この方法での検討が必要になります。

スピーカーを設けないことができる場合
図5:スピーカーを設けないことができる場合。面積と、水平距離8mが条件
ここまでのポイント
  • スピーカーはL級・M級・S級。放送区域が100㎡超ならL級
  • 居室・通路6㎡以下、その他30㎡以下で、水平距離8m以下に他の放送区域のスピーカーがあれば設けないことができる
  • 階段・傾斜路は垂直距離15mにつきL級1個以上

操作部・増幅器と配線

トピック6:配線だけ、数値が違う
  • 音量調整器を設ける場合は三線式配線とすること(規則第25条の2第2項第3号ニ)
  • 操作部及び遠隔操作器の操作スイッチは、床面からの高さ0.8m(いすに座って操作するものは0.6m)以上1.5m以下(同ホ)
  • 操作部及び遠隔操作器は、起動装置又は自動火災報知設備の作動と連動して、作動した階又は区域を表示できるものであること(同ヘ)
  • 他の設備と共用するものは、火災の際に非常警報以外の放送を遮断できる機構を有すること(緊急地震速報等に係る放送を除く)(同リ)
  • 他の電気回路によって誘導障害が生じないように設けること(同ヌ)
  • 操作部又は遠隔操作器のうち一のものは防災センター等に設けること(同ル)
  • 操作部・遠隔操作器が2以上ある場合は、相互間で同時に通話できる設備を設け、いずれからも全区域に放送できること(同ヲ)

配線|絶縁抵抗は直流250Vで測る

規則第25条の2第2項第4号が配線の基準です。ここは他の設備と数値が違うので注意が要ります。

項目内容
絶縁抵抗直流250ボルトの絶縁抵抗計で、対地電圧150V以下は0.1MΩ以上、150V超は0.2MΩ以上
他の電線との共用配線電線と他の電線は同一の管・ダクト・線ぴ・プルボックス等に設けない(いずれも60V以下の弱電流回路であれば可)
短絡・断線対策火災により一の階のスピーカー又はその配線が短絡・断線しても、他の階への火災の報知に支障がないように設ける
耐熱配線操作部・起動装置からスピーカー・音響装置まで、又は増幅器・操作部から遠隔操作器までの配線は、規則第12条第1項第5号に準じた耐熱配線
電源規則第24条第3号の例(蓄電池又は交流低圧屋内幹線から他の配線を分岐させずにとる)

絶縁抵抗の測定電圧が直流250Vである点に注意してください。ガス漏れ火災警報設備や非常コンセント設備は直流500Vで測ります。竣工検査の測定器設定を間違えると、機器を痛めるおそれがあります。

また「一の階のスピーカー又はその配線が短絡・断線しても他の階に支障がない」という要求は、階ごとの回路分けとヒューズ・保護素子の配置で担保します。設計図でスピーカー系統を階別に分けておくのが基本です。

配線の基準は他の設備と数値が違う
図6:配線の基準。絶縁抵抗は直流250Vで測る

音声警報|シグナルとメッセージ

トピック7:火災放送だけ、男声で10分

放送設備の音声警報は、昭和48年2月10日 消防庁告示第6号「非常警報設備の基準」で細かく決まっています。放送はシグナル音と音声メッセージの組み合わせで構成され、3種類あります。

31 1 12112 101 1 124861740Hz0.5 494Hz0.5 1323002,000Hz0.5 0.5 31.5 HARITA
図7:感知器発報放送・火災放送・非火災報放送。火災放送だけが男声で、10分以上繰り返す

声の使い分けにも意味があります。火災放送だけが男声で、感知器発報放送と非火災報放送は女声です。まだ確認中の段階(発報)と、確定して避難を促す段階(火災)を、聞いた瞬間に区別できるようにした設計です。

操作者によるマイクロホン放送も可能で、その場合は音声警報音を中止して放送できます。実際の火災では、自動音声で避難を開始させたうえで、状況に応じた肉声の指示に切り替えるという運用になります。

ここまでのポイント
  • 音声警報は感知器発報放送・火災放送・非火災報放送の3種類
  • 火災放送だけが男声で、10分以上繰り返す

非常電源は10分|自火報と同じ条文を借りている

トピック8:非常電源は、10分

規則第25条の2第2項第5号は、非常電源を規則第24条第4号(自動火災報知設備の非常電源)に準じて設けるとしています。

防火対象物使える非常電源容量
延べ面積1,000㎡以上の特定防火対象物蓄電池設備(直交変換装置を有するものを除く)有効に10分間作動できる容量以上
その他非常電源専用受電設備 又は 蓄電池設備

自家発電設備が選択肢に入っていない点が特徴です。警報設備は火災の初期に確実に動く必要があり、発電機の起動を待てないという考え方が背景にあります。消防用設備等ごとの非常電源の違いは非常コンセント設備の記事にまとめた早見表もあわせてご覧ください。

総合操作盤の準用と、資格・届出

トピック9:総合操作盤と、資格・届出

規則第25条の2第2項第6号は、規則第12条第1項第8号(総合操作盤)を非常警報設備について準用しています。総合操作盤が義務になる規模の建物では、非常警報設備も総合操作盤に載ります。

資格と届出の扱いは、これまで扱ってきた設備と比べると次のようになります。

設備消防設備士による工事着工届点検できる点検資格者
自動火災報知設備必要(甲種第4類・電源部分を除く)必要第2種
ガス漏れ火災警報設備必要(甲種第4類・電源部分を除く)必要第2種
消防機関へ通報する火災報知設備必要(甲種第4類・電源部分を除く)必要第2種
非常警報器具・非常警報設備不要(令第36条の2に不掲載)不要第2種

同じ「警報設備」でも、非常警報設備だけは消防設備士の独占業務ではありません。着工届も不要です。ただし設置届と検査は必要で、点検は第2種消防設備点検資格者(又は甲種・乙種第4類、乙種第7類の消防設備士)が行います。点検区分は機器点検6か月+総合点検1年の両方が対象です。

電気設計での実務ポイント

トピック10:図面に落とすときの5点

1. まず「第3項に当たるか」を判定する

第1項・第2項は自火報を入れれば消えます。設計判断として本当に重要なのは第3項に該当するかどうか——つまり非常放送設備が必要かです。地階を除く階数11以上、地階の階数3以上、地下街・準地下街、(十六)項イで500人以上、特定用途で300人以上。基本設計の段階でここを確定させてください。

2. 収容人員の算定を早めに固める

この設備の判定はほぼすべて収容人員で決まります。収容人員は令別表第一の用途ごとに算定方法が違い、レイアウト変更で簡単に増減します。テナントビルでは、想定用途が変わると非常放送設備の要否が変わることがあるので、余裕をみた計画にしておくと後で助かります。

3. スピーカー配置は放送区域を確定してから

スピーカーの級は放送区域の面積で決まります。間仕切り計画が固まらないうちに配置すると、区画が変わるたびに級と数が変わります。先に放送区域の割り付け図を作り、そのうえで10m円を描くのが確実です。6㎡・30㎡の省略ルールも、放送区域が確定していないと使えません。

4. 階段室のスピーカーは垂直距離で数える

平面の10mルールと混同しやすいところです。階段・傾斜路は垂直距離15mにつきL級1個以上。階高からの逆算で個数が決まるので、断面図で確認します。

5. 業務用放送と共用するなら遮断機構を明記する

BGMや館内放送と共用する場合、火災の際に非常警報以外の放送を遮断できる機構が必須です。アンプの選定と系統の組み方に直結するので、放送設備業者と早い段階で仕様を詰めてください。緊急地震速報に係る放送は遮断の例外とされています。

ペン太ペン太
結局、いちばん最初に見るのはどこですか?
はりたはりた
令第24条第3項に当たるかどうか。ここが決まれば放送設備を入れるかどうかが決まる。あとは収容人員と放送区域を固めれば、スピーカーの級と数は自然に出てくる。

まとめ

トピック11:ここまでの整理
  • 定義は令第7条第3項第4号。器具=持ち運べるもの、設備=建物に固定されたもの(非常ベル・自動式サイレン・放送設備)
  • 設置義務は令第24条で3段階。第1項=器具(20人以上50人未満)、第2項=設備のいずれか、第3項=非常ベル等+放送設備の併設
  • 第1項・第2項は自火報があれば不要。しかし第3項には設置免除のただし書がなく、放送設備は残る
  • 第5項で免除されるのは非常ベル・自動式サイレンだけ。条件は自火報又は「非常ベル等と同等以上の音響装置を附加した放送設備」があること
  • 音響装置は1mで90dB以上水平距離25m以下。起動装置は歩行距離50m以下床面から0.8〜1.5m、表示灯は赤色・15度以上の方向から10mで識別可能
  • 区分鳴動は地階を除く階数5以上かつ延べ面積3,000㎡超出火階が1階なら地階全部が鳴動対象
  • スピーカーはL級92dB以上/M級87dB以上92dB未満/S級84dB以上87dB未満放送区域100㎡超はL級水平距離10m以下
  • 居室等6㎡以下・その他30㎡以下の放送区域は、隣接区域のスピーカーから8m以下なら省略可。階段は垂直距離15mにつきL級1個以上
  • 音声警報は感知器発報放送(女声)・火災放送(男声)・非火災報放送(女声)の3種類。火災放送は10分以上繰り返す
  • 非常電源は10分。絶縁抵抗は直流250Vで測る(他設備の500Vと違う)
  • 消防設備士の独占業務ではなく着工届も不要。ただし設置届・検査は必要、点検は第2種消防設備点検資格者

関連記事

トピック12:あわせて読みたい

参考・根拠

トピック13:根拠にした条文
  • 消防法施行令 第7条第3項第4号(警報設備の種類)、第24条(非常警報器具又は非常警報設備に関する基準)、第36条の2 ― e-Gov法令検索
  • 消防法施行規則 第25条の2(非常警報設備に関する基準)、第24条第3号・第4号(電源・非常電源)、第12条第1項第5号(耐熱配線)・第8号(総合操作盤) ― e-Gov法令検索
  • 昭和48年2月10日 消防庁告示第6号「非常警報設備の基準」(平成6年告示第1号ほかによる改正を含む)
  • 平成16年消防庁告示第10号(点検を行うことができる者の区分)
  • 防災研究会AFRI『図解入門ビジネス 最新消防法と設備がよ〜くわかる本』秀和システム(2024年)

条文の引用は趣旨を要約した箇所を含みます。音声メッセージの文言は告示が定める内容に基づく例で、実機の文言は製品により細部が異なります。設計・申請にあたっては必ず最新の法令原文と所轄消防本部の運用をご確認ください。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。