PAS内蔵VTの選定と設置基準|自力電源・他力電源の違いとSO動作
PASの内蔵VTを「制御電源の配線が省けるから便利」と説明されることがありますが、それだと選定を誤ります。内蔵VTはSOG制御装置の電源であり、短絡のときの過電流蓄勢トリップ(SO動作)が成立するかどうかを決める部品です。この記事では、内蔵VTの役割、自力電源と他力電源の選び分け、6,600V/105V・25VAという容量の制約、そして試験でVTを焼損させないための注意までを整理します。
結論
内蔵VTはSOG制御装置の電源です。制御電源はPASと一緒に停電する側から取らないと、短絡のときにPASが開きません。
- SOG制御装置はCTの二次電流ではなく、制御線(P1・P2)からだけ電源をもらう
- 短絡時は「制御電源が切れた=配電線が停電した」を合図に、蓄勢したエネルギーで開放する
- だから電源は内蔵VT(自力電源)か、受電用主遮断装置の電源側(他力電源)から取る
- 内蔵VTは 6,600V/105V・25VA 程度。他の機器へ分岐して使ってはいけない
- 一相ごとの商用周波耐電圧試験と、別電源の共バサミは内蔵VTを焼損させる
内蔵VTは何のためにあるのか
VT(計器用変圧器)は、高圧を計測・制御に使える低い電圧に変えるための変成器です。PASに内蔵するVTの用途はひとつで、SOG制御装置を動かすための電源をつくることです。計器に電圧を送るためのものでも、雷から機器を守るためのものでもありません(雷対策は避雷器(LA)の役目です)。
SOG制御装置は、地絡を検出してPASを開放し、過電流を検出したらロックして配電線が停電してから開放します。この「停電してから」を成立させているのが制御電源です。PASそのものの選定はPASの選定方法と定格電流の計算で扱っています。
| よくある説明 | 実際のところ |
|---|---|
| 制御電源の配線工事を省けるから便利 | 配線が省けるのは結果。本来はSO動作を成立させるための電源 |
| VTは計器に電圧を送るための変圧器 | PAS内蔵VTの用途はSOG制御装置の電源のみ。他へ分岐しない |
| 雷対策としてVT内蔵を選ぶ | 雷対策はLA(避雷器)。VTの役割ではない |
| どこから電源を取っても動作は同じ | 停電しない電源から取ると、短絡時にPASが開放しない |
- 内蔵VTの用途はSOG制御装置の電源をつくること
- SOG制御装置はCTの二次電流から電源を取っていない
- 雷対策はLAの役目で、VTの役割ではない
- 内蔵VTは計器用の電源として分岐して使うものではない
制御電源を間違えると、短絡でPASが開かない
PASは負荷開閉器なので、短絡電流そのものを遮断できません。そこで過電流を検出したらいったんロックし、配電用変電所の遮断器が切って配電線が停電し、制御電源が失われたことを合図に、蓄えておいたエネルギーでトリップします。これが過電流蓄勢トリップ(SO動作)です。
⚠ SO動作が成立しなくなる取り方
- 停電しない別系統から取る 非常用発電機やUPS、別回線など、配電線が停電しても生きている電源
- 受電用主遮断装置の負荷側から取る 主遮断装置が先に切れると、構内事故でもPASが開放しないことがある
- 2回線引込で切換開閉器の負荷側から取る 切換の状態によっては無電圧にならず、波及事故になりうる
- 制御電源のスイッチやヒューズが切れている 保護が効かない状態のまま運転してしまう
原則は「PASと一緒に停電する側」です。他力電源なら受電用主遮断装置の電源側から取ります。
⚠ 短絡点投入では蓄勢トリップが働かない
SOG制御装置の電源は制御線からだけ供給されます。そのため負荷側が短絡している状態でPASを投入して短絡事故になった場合、過電流蓄勢トリップは動作しません。復電操作の前に構内側の絶縁を確認しておく理由のひとつです。
- 短絡時は「制御電源が切れた」を合図に蓄勢トリップで開放する
- 停電しない別系統から制御電源を取ると、この条件が成立しない
- 他力電源にするなら受電用主遮断装置の電源側から取る
- 短絡点投入のときは蓄勢トリップが働かない
自力電源と他力電源の選び分け
| 比べるところ | 自力電源(VT内蔵) | 他力電源(受電設備側から) |
|---|---|---|
| 電源の出どころ | PAS負荷側の内蔵VT | 構内低圧側の専用回路 |
| 制御電源の工事 | 不要 | PASまでの制御線が必要 |
| SO動作 | 成立する | 取り方しだい(電源側から取れば成立) |
| PAS停電中の制御電源 | 切れる | 生かせる場合がある(試験がしやすい) |
| 向いている現場 | 架空引込の標準。改修で電源が取りにくい場所 | 制御電源を確実に管理できる設備 |
| 注意 | 25VAの容量制約。他機器へ分岐しない | 別系統・負荷側から取らない |
- 自力電源=VT内蔵、他力電源=受電設備側から制御線を引く
- 自力電源は工事が不要で、SO動作の条件を自然に満たす
- 他力電源は取り方しだい。電源側から取れば成立する
- 選んだ方式を図面に明記しておくと、更新時に迷わない
内蔵VTの仕様と、やってはいけない試験
| 項目 | 一般的な値 | 意味 |
|---|---|---|
| 変圧比 | 6,600V / 105V | 二次側は105V。SOG制御装置の電源として使う |
| 定格負担 | 25VA | SOG制御装置を動かすための容量。余裕はほとんどない |
| 定格電圧 | 7.2kV | PAS本体と同じ電圧クラス |
| 用途 | SOG制御装置の電源のみ | 他の機器へ分岐すると容量超過で焼損する |
⚠ 試験での禁止事項
- 一相ごとの商用周波耐電圧試験をしない 一相だけに試験電圧を加えると、ケーブルの対地静電容量を経由して内蔵VTに過電圧が加わり、SOG制御装置やVTの焼損、線間短絡の原因になります。耐圧試験は三相一括で行います
- 別電源の共バサミ(二重印加)をしない VT内蔵形のP1・P2に試験器などの別電源を重ねて加えると、二次側から加えた電圧が内蔵VTで昇圧され、高圧側に現れます
- 試験時はP1・P2を切り離す 外した制御線はそれぞれ絶縁処理をしておきます
- SO動作試験のあとはリセットする 操作ハンドルの「切」側を引かないと再投入できません
出典:戸上電機製作所・エナジーサポートのGR付PAS 取扱説明書および製品仕様、高圧受電設備規程(JEAC 8011)の点検事項・各種試験
- 内蔵VTは 6,600V/105V・25VA 程度。SOG制御装置の電源専用
- 他の機器へ分岐すると容量を超えて焼損する
- 一相ごとの商用周波耐電圧試験は絶対に行わない(三相一括で)
- 別電源の共バサミも焼損の原因。試験時はP1・P2を切り離す
図面・仕様書での書き方
PASの仕様は、本体の定格と付属仕様の組み合わせで決まります。内蔵VTの有無だけでなく、制御電源をどこから取るかまで書いておくと、施工でも更新でも迷いません。
| 書く項目 | 記載例 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 定格電圧・定格電流 | 7.2kV 200A | 本体の選定結果 |
| 形式 | GR付PAS | SOG形トリップ装置つきであることを示す |
| 方向性 | 方向性あり/なし | 構内ケーブル長で判断した結果 |
| 内蔵品 | LA・VT内蔵 | 避雷器と計器用変圧器の内蔵有無 |
| 制御電源 | 自力式(内蔵VTより) | SO動作が成立する取り方かを後から検証できる |
| 外箱 | ステンレス製(重耐塩) | 設置環境に対する選定結果 |
- 図面には内蔵品だけでなく制御電源の取り方まで書く
- 記載例:7.2kV 200A GR付PAS 方向性 LA・VT内蔵/制御電源:自力式
- 更新時に「なぜこの仕様か」をたどれるようにしておく
よくある質問
PASの内蔵VTは何のためにありますか?
SOG制御装置を動かすための電源をつくるためです。計器に電圧を送るためでも、雷から守るためでもありません(雷対策はLAの役目です)。
VT内蔵と、受電設備側から制御電源を引くのはどちらがよいですか?
どちらでも構いませんが、条件があります。制御電源は「PASと一緒に停電する側」から取る必要があり、他力電源にするなら受電用主遮断装置の電源側から取ります。工事が難しい現場では内蔵VT(自力電源)が確実です。
別系統から制御電源を取ってはいけないのはなぜですか?
短絡のときPASは「制御電源が切れた=配電線が停電した」を合図に開放するためです。停電しない電源から取ると、この条件が成立せずPASが開放せず、波及事故につながります。
内蔵VTから表示灯などの電源を取ってもよいですか?
いけません。内蔵VTは25VA程度でSOG制御装置の電源専用です。分岐して使うと容量を超えてVTが焼損します。
VT内蔵形で絶縁耐力試験をするときの注意は?
一相ごとの商用周波耐電圧試験は行わないでください。対地静電容量を経由して内蔵VTに過電圧が加わり、焼損や線間短絡の原因になります。三相一括で行い、制御線P1・P2は切り離して絶縁処理をします。
SO動作試験のあとに投入できなくなりました。
SO動作のあとはリセットが必要です。操作ハンドルの「切」側を引いてリセットしてから投入してください。
単線結線図にはどう書けばよいですか?
「7.2kV 200A GR付PAS 方向性 LA・VT内蔵/制御電源:自力式」のように、定格・形式・方向性・内蔵品・制御電源の取り方・外箱まで書いておくと、施工と更新の両方で迷いません。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 内蔵VTは配線を省くための部品 | SOG制御装置の電源。SO動作が成立するかを決める |
| 制御電源はどこから取ってもよい | PASと一緒に停電する側から取る。別系統は不可 |
| VT内蔵は雷対策になる | 雷対策はLA(避雷器)の役目 |
| 内蔵VTから他の機器の電源も取れる | 25VA程度でSOG専用。分岐すると焼損する |
| 耐圧試験は一相ずつやればよい | 一相ごとの試験は内蔵VTを焼損させる。三相一括で |
| 試験のとき制御線はそのままでよい | P1・P2を切り離し、絶縁処理をしてから試験する |
📘 あわせて確認したいこと
本体の定格はPASの選定方法と定格電流の計算、方向性の要否は方向性の基準と選定方法、避雷器は避雷器LAの設置基準と接地線の太さで扱っています。引込部全体の流れは責任分界点とPAS・UGSをご覧ください。
出典:高圧受電設備規程(JEAC 8011)、JIS C 4607 引外し形高圧交流負荷開閉器、戸上電機製作所・エナジーサポートの製品資料。仕様値は製品により異なるため、採用品の取扱説明書をご確認ください。
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