技術図書館PASのVT内蔵とSOG電源の取り方を、スライド7枚でSOGの制御電源100Vをどこから取るか。VT内蔵と低圧盤からの2方式を図で比べられます。この資料をスライドで見る資料一覧を見る

PASの内蔵VTを「制御電源の配線が省けるから便利」と説明されることがありますが、それだと選定を誤ります。内蔵VTはSOG制御装置の電源であり、短絡のときの過電流蓄勢トリップ(SO動作)が成立するかどうかを決める部品です。この記事では、内蔵VTの役割、自力電源と他力電源の選び分け、6,600V/105V・25VAという容量の制約、そして試験でVTを焼損させないための注意までを整理します。

結論

内蔵VTはSOG制御装置の電源です。制御電源はPASと一緒に停電する側から取らないと、短絡のときにPASが開きません。

  • SOG制御装置はCTの二次電流ではなく、制御線(P1・P2)からだけ電源をもらう
  • 短絡時は「制御電源が切れた=配電線が停電した」を合図に、蓄勢したエネルギーで開放する
  • だから電源は内蔵VT(自力電源)か、受電用主遮断装置の電源側(他力電源)から取る
  • 内蔵VTは 6,600V/105V・25VA 程度。他の機器へ分岐して使ってはいけない
  • 一相ごとの商用周波耐電圧試験と、別電源の共バサミは内蔵VTを焼損させる
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
この記事は⑤の一項目です。④で本体の定格が決まってから決めます。
この記事で読めるようになる用語:PAS(高圧気中開閉器)地絡電流避雷器(LA)保護協調

内蔵VTは何のためにあるのか

VT(計器用変圧器)は、高圧を計測・制御に使える低い電圧に変えるための変成器です。PASに内蔵するVTの用途はひとつで、SOG制御装置を動かすための電源をつくることです。計器に電圧を送るためのものでも、雷から機器を守るためのものでもありません(雷対策は避雷器(LA)の役目です)。

内蔵VTは配線を省くための部品ではなく、SO動作を成立させるための電源です。

SOG制御装置は、地絡を検出してPASを開放し、過電流を検出したらロックして配電線が停電してから開放します。この「停電してから」を成立させているのが制御電源です。PASそのものの選定はPASの選定方法と定格電流の計算で扱っています。

よくある説明 実際のところ
制御電源の配線工事を省けるから便利 配線が省けるのは結果。本来はSO動作を成立させるための電源
VTは計器に電圧を送るための変圧器 PAS内蔵VTの用途はSOG制御装置の電源のみ。他へ分岐しない
雷対策としてVT内蔵を選ぶ 雷対策はLA(避雷器)。VTの役割ではない
どこから電源を取っても動作は同じ 停電しない電源から取ると、短絡時にPASが開放しない
内蔵VTの説明は「コストと手間」の話に寄りがちですが、判断の軸は動作が成立するかどうかです。
ここまでのポイント
  • 内蔵VTの用途はSOG制御装置の電源をつくること
  • SOG制御装置はCTの二次電流から電源を取っていない
  • 雷対策はLAの役目で、VTの役割ではない
  • 内蔵VTは計器用の電源として分岐して使うものではない

制御電源を間違えると、短絡でPASが開かない

「無電圧になったら開く」しくみなので、停電しない電源から取ると成立しません。

PASは負荷開閉器なので、短絡電流そのものを遮断できません。そこで過電流を検出したらいったんロックし、配電用変電所の遮断器が切って配電線が停電し、制御電源が失われたことを合図に、蓄えておいたエネルギーでトリップします。これが過電流蓄勢トリップ(SO動作)です。

⚠ SO動作が成立しなくなる取り方

  1. 停電しない別系統から取る 非常用発電機やUPS、別回線など、配電線が停電しても生きている電源
  2. 受電用主遮断装置の負荷側から取る 主遮断装置が先に切れると、構内事故でもPASが開放しないことがある
  3. 2回線引込で切換開閉器の負荷側から取る 切換の状態によっては無電圧にならず、波及事故になりうる
  4. 制御電源のスイッチやヒューズが切れている 保護が効かない状態のまま運転してしまう

原則は「PASと一緒に停電する側」です。他力電源なら受電用主遮断装置の電源側から取ります。

⚠ 短絡点投入では蓄勢トリップが働かない

SOG制御装置の電源は制御線からだけ供給されます。そのため負荷側が短絡している状態でPASを投入して短絡事故になった場合、過電流蓄勢トリップは動作しません。復電操作の前に構内側の絶縁を確認しておく理由のひとつです。

ひっかけ注意
制御電源って、要は100Vが来ていればいいんじゃないんですか?
電圧があるかどうかではなく、「事故のときに一緒に消えるか」が条件です。消えない電源だとPASは開きません。
ここまでのポイント
  • 短絡時は「制御電源が切れた」を合図に蓄勢トリップで開放する
  • 停電しない別系統から制御電源を取ると、この条件が成立しない
  • 他力電源にするなら受電用主遮断装置の電源側から取る
  • 短絡点投入のときは蓄勢トリップが働かない


自力電源と他力電源の選び分け

どちらでもよいのではなく、SO動作が成立する取り方かどうかで選びます。
比べるところ 自力電源(VT内蔵) 他力電源(受電設備側から)
電源の出どころ PAS負荷側の内蔵VT 構内低圧側の専用回路
制御電源の工事 不要 PASまでの制御線が必要
SO動作 成立する 取り方しだい(電源側から取れば成立)
PAS停電中の制御電源 切れる 生かせる場合がある(試験がしやすい)
向いている現場 架空引込の標準。改修で電源が取りにくい場所 制御電源を確実に管理できる設備
注意 25VAの容量制約。他機器へ分岐しない 別系統・負荷側から取らない
既設改修や、PASから受電設備までが離れている現場では、自力電源(VT内蔵)を選ぶのが実務の定番です。
ここまでのポイント
  • 自力電源=VT内蔵、他力電源=受電設備側から制御線を引く
  • 自力電源は工事が不要で、SO動作の条件を自然に満たす
  • 他力電源は取り方しだい。電源側から取れば成立する
  • 選んだ方式を図面に明記しておくと、更新時に迷わない

内蔵VTの仕様と、やってはいけない試験

SOG制御装置の電源専用です。分岐して使うものではありません。
項目 一般的な値 意味
変圧比 6,600V / 105V 二次側は105V。SOG制御装置の電源として使う
定格負担 25VA SOG制御装置を動かすための容量。余裕はほとんどない
定格電圧 7.2kV PAS本体と同じ電圧クラス
用途 SOG制御装置の電源のみ 他の機器へ分岐すると容量超過で焼損する
値は製品によって異なります。採用品のカタログ・取扱説明書で確認してください。
内蔵VTの焼損は、試験の手順ミスで起きることがほとんどです。

⚠ 試験での禁止事項

  1. 一相ごとの商用周波耐電圧試験をしない 一相だけに試験電圧を加えると、ケーブルの対地静電容量を経由して内蔵VTに過電圧が加わり、SOG制御装置やVTの焼損、線間短絡の原因になります。耐圧試験は三相一括で行います
  2. 別電源の共バサミ(二重印加)をしない VT内蔵形のP1・P2に試験器などの別電源を重ねて加えると、二次側から加えた電圧が内蔵VTで昇圧され、高圧側に現れます
  3. 試験時はP1・P2を切り離す 外した制御線はそれぞれ絶縁処理をしておきます
  4. SO動作試験のあとはリセットする 操作ハンドルの「切」側を引かないと再投入できません
ひっかけ注意
内蔵VTが生きているかどうかは、どう確かめるんですか?
変圧比が 6,600:105 なので約63:1。一次側に100Vを加えれば二次は約1.6Vです。手順は必ず採用品の説明書に従ってください。

出典:戸上電機製作所・エナジーサポートのGR付PAS 取扱説明書および製品仕様、高圧受電設備規程(JEAC 8011)の点検事項・各種試験

ここまでのポイント
  • 内蔵VTは 6,600V/105V・25VA 程度。SOG制御装置の電源専用
  • 他の機器へ分岐すると容量を超えて焼損する
  • 一相ごとの商用周波耐電圧試験は絶対に行わない(三相一括で)
  • 別電源の共バサミも焼損の原因。試験時はP1・P2を切り離す


図面・仕様書での書き方

PASの仕様は、本体の定格と付属仕様の組み合わせで決まります。内蔵VTの有無だけでなく、制御電源をどこから取るかまで書いておくと、施工でも更新でも迷いません。

書く項目 記載例 なぜ必要か
定格電圧・定格電流 7.2kV 200A 本体の選定結果
形式 GR付PAS SOG形トリップ装置つきであることを示す
方向性 方向性あり/なし 構内ケーブル長で判断した結果
内蔵品 LA・VT内蔵 避雷器と計器用変圧器の内蔵有無
制御電源 自力式(内蔵VTより) SO動作が成立する取り方かを後から検証できる
外箱 ステンレス製(重耐塩) 設置環境に対する選定結果
記載例:「7.2kV 200A GR付PAS 方向性 LA・VT内蔵/制御電源:自力式/外箱:SUS製」。
選定したPASを、そのまま単線結線図に落とし込めます。機器の配置・接続・開閉動作まで画面上で確認できるブラウザツールです(登録不要)。

単線結線図デザインスタジオを開く

ここまでのポイント
  • 図面には内蔵品だけでなく制御電源の取り方まで書く
  • 記載例:7.2kV 200A GR付PAS 方向性 LA・VT内蔵/制御電源:自力式
  • 更新時に「なぜこの仕様か」をたどれるようにしておく

よくある質問

PASの内蔵VTは何のためにありますか?

SOG制御装置を動かすための電源をつくるためです。計器に電圧を送るためでも、雷から守るためでもありません(雷対策はLAの役目です)。

VT内蔵と、受電設備側から制御電源を引くのはどちらがよいですか?

どちらでも構いませんが、条件があります。制御電源は「PASと一緒に停電する側」から取る必要があり、他力電源にするなら受電用主遮断装置の電源側から取ります。工事が難しい現場では内蔵VT(自力電源)が確実です。

別系統から制御電源を取ってはいけないのはなぜですか?

短絡のときPASは「制御電源が切れた=配電線が停電した」を合図に開放するためです。停電しない電源から取ると、この条件が成立せずPASが開放せず、波及事故につながります。

内蔵VTから表示灯などの電源を取ってもよいですか?

いけません。内蔵VTは25VA程度でSOG制御装置の電源専用です。分岐して使うと容量を超えてVTが焼損します。

VT内蔵形で絶縁耐力試験をするときの注意は?

一相ごとの商用周波耐電圧試験は行わないでください。対地静電容量を経由して内蔵VTに過電圧が加わり、焼損や線間短絡の原因になります。三相一括で行い、制御線P1・P2は切り離して絶縁処理をします。

SO動作試験のあとに投入できなくなりました。

SO動作のあとはリセットが必要です。操作ハンドルの「切」側を引いてリセットしてから投入してください。

単線結線図にはどう書けばよいですか?

「7.2kV 200A GR付PAS 方向性 LA・VT内蔵/制御電源:自力式」のように、定格・形式・方向性・内蔵品・制御電源の取り方・外箱まで書いておくと、施工と更新の両方で迷いません。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
内蔵VTは配線を省くための部品 SOG制御装置の電源。SO動作が成立するかを決める
制御電源はどこから取ってもよい PASと一緒に停電する側から取る。別系統は不可
VT内蔵は雷対策になる 雷対策はLA(避雷器)の役目
内蔵VTから他の機器の電源も取れる 25VA程度でSOG専用。分岐すると焼損する
耐圧試験は一相ずつやればよい 一相ごとの試験は内蔵VTを焼損させる。三相一括で
試験のとき制御線はそのままでよい P1・P2を切り離し、絶縁処理をしてから試験する
実務で事故になりやすいのは、下の3つ(制御電源の取り方と試験手順)です。

📘 あわせて確認したいこと

本体の定格はPASの選定方法と定格電流の計算、方向性の要否は方向性の基準と選定方法、避雷器は避雷器LAの設置基準と接地線の太さで扱っています。引込部全体の流れは責任分界点とPAS・UGSをご覧ください。

出典:高圧受電設備規程(JEAC 8011)、JIS C 4607 引外し形高圧交流負荷開閉器、戸上電機製作所・エナジーサポートの製品資料。仕様値は製品により異なるため、採用品の取扱説明書をご確認ください。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。