主遮断装置 ― CB形と PF・S形 設計マニュアル ⑥ ① 主遮断装置は「構内の事故をここで止める」ための機器 事故電流を切る 短絡・地絡の大電流を、 決められた時間内に遮断する 点検のために切る 作業前に構内全体を 無電圧にする 保護継電器の手足になる OCR・DGR が「切れ」と 命じ、実際に切るのがここ ② CB形 ― VCB(真空遮断器)+ OCR 構成 VCB + 過電流継電器 OCR + CT 切り方 真空バルブ内でアークを引き伸ばし、 電流のゼロ点で消弧する 再投入 遮断後、そのまま再投入できる 適用 受電設備容量 4,000kVA 以下 長所 動作値・時限を自由に設定でき、 保護協調が組みやすい 短所 機器が大きく、価格も高い ③ PF・S形 ― 高圧限流ヒューズ PF + LBS 構成 高圧交流負荷開閉器 LBS + PF 切り方 短絡電流でヒューズが溶断し、 電流の頭を抑えて(限流)切る 再投入 溶断したら交換が必要 適用 受電設備容量 300kVA 以下 長所 小形・安価。遮断速度が速い 短所 1本だけ溶断すると欠相運転になる (必ず3本セットで交換する) ④ どちらを選ぶか ― 受電設備容量が目安(高圧受電設備規程 JEAC 8011) PF・S形が使える CB形(VCB) 0 300kVA 4,000kVA ※ 300kVA を超えたら CB形。4,000kVA を超える場合は特別高圧受電の検討へ 「切る力」だけでなく「何度切れるか」「切ったあと戻せるか」で選ぶ。それが主遮断装置の選定です。
図解まとめ:主遮断装置は「構内の事故をここで止める」機器。CB形(VCB+OCR)と PF・S形(LBS+PF)を、受電設備容量で選び分けます。 こんにちは、HARITAの設計室 です。第6回は受変電設備の心臓部 、主遮断装置です。
キュービクル の構成を左右する最大の分かれ道が、主遮断装置をCB形にするか、PF・S形にするか 。ここが決まると、盤の大きさも、保護の考え方も、点検のやり方も、そして値段も変わります。
物件によって、真ん中にVCBがあったりLBSとヒューズだったり…あれって設計者の好みですか?
好みじゃなくて容量で決まる んだ。まず「受電設備容量がいくつか」。そのうえで、保護をどこまで作り込みたいかで選ぶ。今日はその判断の中身をやろう。
主遮断装置とは何か
主遮断装置 は、受電点で事故電流を切り離す中心機器 です。第1回で挙げた6つの役割のうち「守る」の主役にあたります。
構成のしかたは2つ。CB形 とPF・S形 です。
CB形(遮断器形)
│ ╲ DS │ ◉ VCB 7.2kV 400A │ 12.5kA CT●──[51]OCR │ ▼ 高圧母線
VCB+OCR で構成。CTで電流を見て、OCRがVCBに引外し指令を出す。受電設備容量 4,000kVA以下 が目安。
PF・S形(ヒューズ・開閉器形)
│ ▯ PF 7.2kV │ (限流ヒューズ) ╱ LBS 7.2kV 200A │ (ストライカ引外し) │ ▼ 高圧母線
PF+LBS で構成。ヒューズが溶断して切る。受電設備容量 300kVA以下 が目安。
見分け方: 受電の主回路に◉(遮断器)とCT+51 があればCB形。▯(ヒューズ)と╱(開閉器) だけならPF・S形。図面を開いて最初に確認するポイントです。
📖 受電設備容量とは
変圧器・進相コンデンサなど、受電設備に接続される機器容量の合計(kVA) です。契約電力(kW)とは別物なので混同しないでください。 この容量が主遮断装置の形式を決め、キュービクルの仕様(JIS C 4620)にも影響します。
📐 図1 事故発生から遮断完了までの流れ
短絡事故が起きてから、主遮断装置が切るまで ① 短絡事故 構内で相間が 短絡した ② CT が検出 大電流を測れる 大きさに変換 ③ OCR が動作 整定値を超えた 時間で接点を閉じる ④ 引外しコイル 遮断器へ トリップ指令 ⑤ 接点が開離 真空バルブ内に アークが発生 ⑥ ゼロ点で消弧 電流の自然ゼロ点 で切れる=遮断完了 およその時間の目安 0 約0.01秒 約0.03秒 約0.05〜0.1秒 継電器の動作時間 トリップ〜接点開離 アーク〜消弧(電流ゼロ点) 遮断時間 = 継電器の動作時間 + 遮断器の動作時間 図面に書く「VCB 7.2kV 600A 12.5kA」の 12.5kA は、この遮断を成立させられる短絡電流の上限(定格遮断電流)です。 系統の短絡容量がこれを超える現場では、遮断器は「切ろうとして壊れる」ため、必ず短絡電流計算で確認します。 図1:遮断時間は「継電器の動作時間+遮断器の動作時間」の合計です。図面に書く定格遮断電流(例 12.5kA)は、この遮断を成立させられる短絡電流の上限を表します。
VCBはどうやって電流を切るのか
VCB(真空遮断器) は、接点を真空のバルブ(真空バルブ)の中 に置いた遮断器です。接点を開いたときに生じるアークを、真空中で急速に消します。
図面で読む3つの数字
定格電圧 7.2kV …6.6kVの回路に使う機器の定格。常時電圧より少し上に取る定格電流 400A・600A …連続して流せる電流。受電容量から決める定格遮断電流 12.5kA・8kA・20kA …切れる事故電流の大きさ 。受電点の短絡容量以上でなければならない 3つ目がいちばん重要です。短絡電流より小さい遮断電流の機器を選ぶと、事故のときに遮断器自身が壊れます 。
VCBは「自分では判断しない」
VCBは切る力を持っていますが、いつ切るかは自分で決めません 。CTが電流を測り、OCR(51)が判断し、引外しコイル(52T )に指令を送って初めて動きます。 つまりCB形は「検出するCT」「判断するOCR」「実行するVCB」の3点セット 。1つでも欠けると保護は成立しません。
⚡ 停電中でもVCBを切れるか ― トリップ電源
引外しコイルを動かすには電源が要ります。停電と同時に事故が起きたとき、電源がなければ遮断器を切れません 。そのため次のいずれかを備えます。 ・直流電源装置(蓄電池) …確実。中〜大規模で採用 ・コンデンサトリップ(CTD) …コンデンサに貯めた電荷で引外す。小〜中規模の主流 ・変流器引外し(CT引外し) …事故電流そのものをエネルギーに使う 図面上は小さな記載ですが、「停電しても保護が生きているか」を決める重要な選択 です。
📐 図2 切り方の違い ― VCBは「ゼロ点を待つ」、PFは「頭を押さえる」
VCB ― 電流のゼロ点を待って切る 電流 接点開離 ゼロ点で消弧 アーク 事故発生 遮断完了 ・電流が自然にゼロになる瞬間を狙って切るので、 遮断に 2〜3 サイクル(0.03〜0.05秒)かかる ・切ったあとも真空バルブは再使用でき、再投入できる PF ― 頭を押さえて、半サイクル以内に切る 電流 予想短絡電流(ヒューズが無ければ) 溶断開始 遮断完了 この分を「限流」して通さない 事故発生 半サイクル以内 ・ピーク電流に達する前に溶断するので、機器や ケーブルが受ける電磁力・発熱を大きく減らせる ・溶断したら交換が必要。必ず 3 本セットで取り替える 図2:VCBは電流の自然ゼロ点で消弧するため2〜3サイクルかかりますが、再投入できます。PFはピークに達する前に溶断する(限流)ので速い代わりに交換が必要です。
PFはどうやって切るのか
PF(電力ヒューズ・限流ヒューズ) は、短絡電流が流れるとエレメントが溶断 して回路を切ります。ポイントは「限流」 という性質です。
限流ヒューズの強み
遮断器は交流の電流ゼロ点を待って 切ります。これに対し限流ヒューズは、電流がピークに達する前に溶断して電流そのものを抑え込みます 。 結果として、後段の機器にかかる電気的・機械的ストレスが小さくなります。小型・安価なうえに、短絡遮断性能は非常に高い。これがPF・S形が広く使われる理由です。
⚡ ストライカ引外し ― 欠相を防ぐ仕組み
ヒューズは相ごとに入っているので、1相だけ溶断する ことがあります。そのまま運転を続けると欠相運転 になり、三相モータが焼損します。 これを防ぐのがストライカ です。ヒューズが溶断すると小さなピンが飛び出し、LBSを三相同時に開放 します。 PF・S形の図面で「LBS(ストライカ引外し付)」と書かれているのは、この機能を指しています。PFとLBSは必ずセット だと覚えてください。
ヒューズって切れたら交換ですよね。それってデメリットじゃないですか?
そこがCB形との一番の違い。VCBは原因を直せば再投入できるけど、PFは在庫がないと復旧できない 。だから病院やデータセンターみたいに止められない施設ではCB形を選ぶことが多いんだ。
どちらを選ぶか ― 比較表
項目 CB形(VCB+OCR) PF・S形(PF+LBS)
受電設備容量の目安 4,000kVA以下 300kVA以下
切る仕組み OCRが判断してVCBが遮断 ヒューズが溶断(限流)
過負荷保護 OCRの限時要素で対応できる 苦手(短絡保護が主)
整定の自由度 高い。上位・下位と協調を取りやすい 低い。ヒューズ特性で決まる
事故後の復旧 原因除去後に再投入できる ヒューズ交換が必要 (在庫必須)
大きさ・価格 大きい・高い 小さい・安い
制御電源 必要(直流電源・CTDなど) 不要(機械的に動作)
向いている施設 病院・工場・大規模ビル、将来増設のある物件 小規模店舗・小工場・容量が確定している物件
選定の考え方(順番に判断する)
① 受電設備容量を出す …300kVAを超えるなら自動的にCB形② 将来の増設があるか …増える見込みならCB形に余裕を持たせる③ 止められない施設か …復旧の速さを求めるならCB形④ 保護協調をどこまで作り込むか …下位のMCCBまで協調を取るならCB形⑤ 予算とスペース …上の条件がすべて緩いならPF・S形が合理的
📐 図3 単線結線図での描き分け ― CB形と PF・S形
CB形(VCB)の描かれ方 PF・S形(LBS+PF)の描かれ方 高圧引込 DS CT OCR 51 VCB 7.2kV 12.5kA トリップ指令 高圧母線 高圧引込 LBS 負荷開閉器 PF 限流ヒューズ (3本とも入れる) ストライカで LBS を引外し 高圧母線 図面での見分け方 ・四角に「×」があり、そばに CT と OCR(51)が描かれていれば CB形。 ・開閉器の刃のそばに細長い箱(ヒューズ)が3つ並んでいれば PF・S形。継電器は付かない。
図3:四角に「×」+CT+OCR(51)があれば CB形。開閉器の刃のそばに細長い箱(限流ヒューズ)が並んでいれば PF・S形です。
単線結線図では、こう描かれる
主遮断装置まわりの記載要素
CB形 ・VCB…定格電圧・定格電流・定格遮断電流 (例:7.2kV 400A 12.5kA) ・CT…変流比(例:150/5A)と個数(CT×2 など) ・OCR…器具番号51。整定値(タップ・レバー)を注記する図面もある ・トリップ電源…直流電源装置/CTDの記載PF・S形 ・PF…定格電圧と定格電流(例:7.2kV 100A) ・LBS…定格(例:7.2kV 200A)と「ストライカ引外し付」の注記 ・地絡保護…PAS側のDGRで受け持つか、キュービクル側にZCT+GRを置くか
新人がやりがちなミス 3選
① 定格電流だけ見て遮断電流を確認しない
「400Aだから足りる」は連続で流せる電流の話 。事故のときに切れるかどうかは定格遮断電流 で決まります。受電点の短絡容量を計算し、それ以上の機器を選んでください。
② PF・S形で過負荷まで守れると思う
限流ヒューズが得意なのは短絡 です。じわじわ増える過負荷は苦手で、気づいたときには変圧器が過熱していることも。過負荷保護が必要なら、変圧器二次側のMCCBや温度監視 で補います。
③ 容量が300kVAぎりぎりの計画をPF・S形で組む
竣工後に変圧器を1台増やした瞬間に、主遮断装置ごと入れ替え になります。将来計画がある物件では、最初からCB形にしておくほうが結果的に安く済むことが多いです。
まとめ
第6回のまとめ
・主遮断装置はCB形(VCB+OCR) とPF・S形(PF+LBS) の2択 ・目安はPF・S形=300kVA以下、CB形=4,000kVA以下 ・CB形は検出(CT)・判断(OCR)・実行(VCB)の3点セット で成立する ・VCBで見るべきは定格遮断電流 。短絡容量以上でなければ意味がない ・停電中でも切れるようにトリップ電源 (直流電源・CTD)を用意する ・PFは限流 で切る。1相溶断による欠相はストライカ引外し で防ぐ ・PFは交換しないと復旧できない 。止められない施設はCB形
📝 理解度チェック(全3問クイズ)
Q1. PF・S形の主遮断装置が使える受電設備容量の目安は?
A. 150kVA以下B. 300kVA以下C. 4,000kVA以下
答えと解説を見る 正解:B 高圧受電設備規程では、PF・S形は300kVA以下、CB形は4,000kVA以下が目安とされています。容量が大きいほどCB形が必要になります。
Q2. VCB(真空遮断器)が電流を切る原理は?
A. 真空中でアークを拡散させて消弧するB. 絶縁油でアークを冷却するC. エレメントが溶断する
答えと解説を見る 正解:A 真空バルブ内で電極を開き、アークを真空中に拡散させて電流ゼロ点で消弧します。小型で保守性がよく、繰り返し開閉できます。
Q3. PF(高圧限流ヒューズ)の特徴として正しいものは?
A. 動作しても何度でも再投入できるB. 動作したら交換が必要で、1相だけ溶断すると欠相のおそれがあるC. 過負荷保護に優れている
答えと解説を見る 正解:B PFは短絡遮断には強い一方、動作=溶断なので交換が必要です。1相だけ溶断すると欠相運転になるため、欠相対策や過負荷保護は別に考えます。
※ まず自分で答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてみてください。
よくある質問
Q. 300kVA以下でもCB形にしてよいのですか?
問題ありません。容量の数値は上限の目安 であって、下限ではありません。小容量でもCB形にすれば、過負荷保護や保護協調の自由度が上がり、事故後の復旧も早くなります。判断材料は「その分のコストとスペースを払う価値があるか」です。
Q. LBSとVCBは何が決定的に違うのですか?
LBSは負荷電流は切れるが短絡電流は切れない 開閉器、VCBは短絡電流まで切れる 遮断器です。だからLBSは短絡を切るPFとセットで使い、VCBは単独で主遮断装置になれます。第3回の「S=Switch、B=Breaker」の分解がそのまま効いてきます。
Q. 遮断電流はどうやって決めるのですか?
受電点の短絡容量 から計算します。電力会社に配電線の短絡容量(%インピーダンス)を照会し、そこに構内のインピーダンスを加えて短絡電流を求めます。実務では余裕を見て12.5kA を選ぶ物件が多く、系統が強い地域では20kAが必要になることもあります。
Q. PFが1本だけ溶断していたら、その1本だけ替えればいいですか?
溶断していない相のヒューズも熱的なダメージを受けている可能性 があります。特性がずれると保護協調が崩れるため、実務では三相まとめて交換する のが一般的です。
次回予告
参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備/電気設備の技術基準の解釈/JEM 1090 制御器具番号
次に読むならこれ 【引込・受電設備の設計マニュアル④】責任分界点とPAS・UGS ― 分界点の先で起こしたことは、こちらの責任になる 設計マニュアル
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