こんにちは、HARITAの設計室です。第6回は受変電設備の心臓部、主遮断装置です。
キュービクルの構成を左右する最大の分かれ道が、主遮断装置をCB形にするか、PF・S形にするか。ここが決まると、盤の大きさも、保護の考え方も、点検のやり方も、そして値段も変わります。
物件によって、真ん中にVCBがあったりLBSとヒューズだったり…あれって設計者の好みですか?
好みじゃなくて容量で決まるんだ。まず「受電設備容量がいくつか」。そのうえで、保護をどこまで作り込みたいかで選ぶ。今日はその判断の中身をやろう。
主遮断装置とは何か
主遮断装置は、受電点で事故電流を切り離す中心機器です。第1回で挙げた6つの役割のうち「守る」の主役にあたります。
構成のしかたは2つ。CB形とPF・S形です。
CB形(遮断器形)
│
╲ DS
│
◉ VCB 7.2kV 400A
│ 12.5kA
CT●──[51]OCR
│
▼ 高圧母線
VCB+OCRで構成。CTで電流を見て、OCRがVCBに引外し指令を出す。
受電設備容量 4,000kVA以下が目安。
PF・S形(ヒューズ・開閉器形)
│
▯ PF 7.2kV
│ (限流ヒューズ)
╱ LBS 7.2kV 200A
│ (ストライカ引外し)
│
▼ 高圧母線
PF+LBSで構成。ヒューズが溶断して切る。
受電設備容量 300kVA以下が目安。
見分け方:受電の主回路に◉(遮断器)とCT+51があればCB形。▯(ヒューズ)と╱(開閉器)だけならPF・S形。図面を開いて最初に確認するポイントです。
📖 受電設備容量とは
変圧器・進相コンデンサなど、受電設備に接続される機器容量の合計(kVA)です。契約電力(kW)とは別物なので混同しないでください。
この容量が主遮断装置の形式を決め、キュービクルの仕様(JIS C 4620)にも影響します。
VCBはどうやって電流を切るのか
VCB(真空遮断器)は、接点を真空のバルブ(真空バルブ)の中に置いた遮断器です。接点を開いたときに生じるアークを、真空中で急速に消します。
図面で読む3つの数字
定格電圧 7.2kV…6.6kVの回路に使う機器の定格。常時電圧より少し上に取る
定格電流 400A・600A…連続して流せる電流。受電容量から決める
定格遮断電流 12.5kA・8kA・20kA…
切れる事故電流の大きさ。受電点の短絡容量以上でなければならない
3つ目がいちばん重要です。短絡電流より小さい遮断電流の機器を選ぶと、事故のときに遮断器自身が壊れます。
VCBは「自分では判断しない」
VCBは切る力を持っていますが、いつ切るかは自分で決めません。CTが電流を測り、OCR(51)が判断し、引外しコイル(52T)に指令を送って初めて動きます。
つまりCB形は「検出するCT」「判断するOCR」「実行するVCB」の3点セット。1つでも欠けると保護は成立しません。
⚡ 停電中でもVCBを切れるか ― トリップ電源
引外しコイルを動かすには電源が要ります。停電と同時に事故が起きたとき、電源がなければ遮断器を切れません。そのため次のいずれかを備えます。
・直流電源装置(蓄電池)…確実。中〜大規模で採用
・コンデンサトリップ(CTD)…コンデンサに貯めた電荷で引外す。小〜中規模の主流
・変流器引外し(CT引外し)…事故電流そのものをエネルギーに使う
図面上は小さな記載ですが、「停電しても保護が生きているか」を決める重要な選択です。
PFはどうやって切るのか
PF(電力ヒューズ・限流ヒューズ)は、短絡電流が流れるとエレメントが溶断して回路を切ります。ポイントは「限流」という性質です。
限流ヒューズの強み
遮断器は交流の電流ゼロ点を待って切ります。これに対し限流ヒューズは、電流がピークに達する前に溶断して電流そのものを抑え込みます。
結果として、後段の機器にかかる電気的・機械的ストレスが小さくなります。小型・安価なうえに、短絡遮断性能は非常に高い。これがPF・S形が広く使われる理由です。
⚡ ストライカ引外し ― 欠相を防ぐ仕組み
ヒューズは相ごとに入っているので、1相だけ溶断することがあります。そのまま運転を続けると欠相運転になり、三相モータが焼損します。
これを防ぐのがストライカです。ヒューズが溶断すると小さなピンが飛び出し、LBSを三相同時に開放します。
PF・S形の図面で「LBS(ストライカ引外し付)」と書かれているのは、この機能を指しています。PFとLBSは必ずセットだと覚えてください。
ヒューズって切れたら交換ですよね。それってデメリットじゃないですか?
そこがCB形との一番の違い。VCBは原因を直せば再投入できるけど、PFは在庫がないと復旧できない。だから病院やデータセンターみたいに止められない施設ではCB形を選ぶことが多いんだ。
どちらを選ぶか ― 比較表
| 項目 |
CB形(VCB+OCR) |
PF・S形(PF+LBS) |
| 受電設備容量の目安 |
4,000kVA以下 |
300kVA以下 |
| 切る仕組み |
OCRが判断してVCBが遮断 |
ヒューズが溶断(限流) |
| 過負荷保護 |
OCRの限時要素で対応できる |
苦手(短絡保護が主) |
| 整定の自由度 |
高い。上位・下位と協調を取りやすい |
低い。ヒューズ特性で決まる |
| 事故後の復旧 |
原因除去後に再投入できる |
ヒューズ交換が必要(在庫必須) |
| 大きさ・価格 |
大きい・高い |
小さい・安い |
| 制御電源 |
必要(直流電源・CTDなど) |
不要(機械的に動作) |
| 向いている施設 |
病院・工場・大規模ビル、将来増設のある物件 |
小規模店舗・小工場・容量が確定している物件 |
選定の考え方(順番に判断する)
① 受電設備容量を出す…300kVAを超えるなら自動的にCB形
② 将来の増設があるか…増える見込みならCB形に余裕を持たせる
③ 止められない施設か…復旧の速さを求めるならCB形
④ 保護協調をどこまで作り込むか…下位のMCCBまで協調を取るならCB形
⑤ 予算とスペース…上の条件がすべて緩いならPF・S形が合理的
単線結線図では、こう描かれる
主遮断装置まわりの記載要素
CB形・VCB…定格電圧・定格電流・
定格遮断電流(例:7.2kV 400A 12.5kA)
・CT…変流比(例:150/5A)と個数(CT×2 など)
・OCR…器具番号51。整定値(タップ・レバー)を注記する図面もある
・トリップ電源…直流電源装置/CTDの記載
PF・S形
・PF…定格電圧と定格電流(例:7.2kV 100A)
・LBS…定格(例:7.2kV 200A)と「ストライカ引外し付」の注記
・地絡保護…PAS側のDGRで受け持つか、キュービクル側にZCT+GRを置くか
新人がやりがちなミス 3選
① 定格電流だけ見て遮断電流を確認しない
「400Aだから足りる」は連続で流せる電流の話。事故のときに切れるかどうかは定格遮断電流で決まります。受電点の短絡容量を計算し、それ以上の機器を選んでください。
② PF・S形で過負荷まで守れると思う
限流ヒューズが得意なのは短絡です。じわじわ増える過負荷は苦手で、気づいたときには変圧器が過熱していることも。過負荷保護が必要なら、変圧器二次側のMCCBや温度監視で補います。
③ 容量が300kVAぎりぎりの計画をPF・S形で組む
竣工後に変圧器を1台増やした瞬間に、主遮断装置ごと入れ替えになります。将来計画がある物件では、最初からCB形にしておくほうが結果的に安く済むことが多いです。
まとめ
第6回のまとめ
・主遮断装置はCB形(VCB+OCR)とPF・S形(PF+LBS)の2択
・目安はPF・S形=300kVA以下、CB形=4,000kVA以下
・CB形は検出(CT)・判断(OCR)・実行(VCB)の3点セットで成立する
・VCBで見るべきは定格遮断電流。短絡容量以上でなければ意味がない
・停電中でも切れるようにトリップ電源(直流電源・CTD)を用意する
・PFは限流で切る。1相溶断による欠相はストライカ引外しで防ぐ
・PFは交換しないと復旧できない。止められない施設はCB形
よくある質問
Q. 300kVA以下でもCB形にしてよいのですか?
問題ありません。容量の数値は上限の目安であって、下限ではありません。小容量でもCB形にすれば、過負荷保護や保護協調の自由度が上がり、事故後の復旧も早くなります。判断材料は「その分のコストとスペースを払う価値があるか」です。
Q. LBSとVCBは何が決定的に違うのですか?
LBSは負荷電流は切れるが短絡電流は切れない開閉器、VCBは短絡電流まで切れる遮断器です。だからLBSは短絡を切るPFとセットで使い、VCBは単独で主遮断装置になれます。第3回の「S=Switch、B=Breaker」の分解がそのまま効いてきます。
Q. 遮断電流はどうやって決めるのですか?
受電点の短絡容量から計算します。電力会社に配電線の短絡容量(%インピーダンス)を照会し、そこに構内のインピーダンスを加えて短絡電流を求めます。実務では余裕を見て12.5kAを選ぶ物件が多く、系統が強い地域では20kAが必要になることもあります。
Q. PFが1本だけ溶断していたら、その1本だけ替えればいいですか?
溶断していない相のヒューズも熱的なダメージを受けている可能性があります。特性がずれると保護協調が崩れるため、実務では三相まとめて交換するのが一般的です。
次回予告
参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備/電気設備の技術基準の解釈/JEM 1090 制御器具番号
次に読むならこれ【コンセント設備の設計マニュアル⑥・最終回】図面化と拾い・積算 ― 「あとで拾える図面」で締めくくる設計マニュアル
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