Yahoo!知恵袋に投稿された電気設備の質問を分析し、「設計・施工の実務者に有効」なものを選び、根拠条文付きで回答をブラッシュアップする企画です。

こんにちは、HARITAの設計室です。

知恵袋の電気設備カテゴリを分析してみると、面白い傾向が見えてきました。知恵袋で回答が割れやすいテーマには共通点があります。

回答が割れやすいパターン代表例
「規定上は可」と「設計としては不可」の混同VVF1.6mmに20Aブレーカー
係数を掛けるのか割るのか変圧器容量需要率力率
条文根拠を誰も示さない幹線サイズの需要率適用
旧条番号のまま引用接地工事の「解釈19条」(現17条)
複数の規程にまたがるキュービクルの離隔(電技解釈+JEAC+火災予防条例)

つまり「経験則では答えられるが、根拠を問われると割れる」質問こそ、きちんと条文と数値で整理する価値があるということ。今回は有効性が高いと判断した15の疑問を、テーマ別にブラッシュアップしてまとめました。


① 幹線・ケーブル編

Q1. 動力盤の幹線サイズは「定格電流の合計」で選ぶ?「需要率を掛けた値」でいい?

知恵袋での状況:「皮相電力で計算」「需要率は変動するから定格合計が無難」と意見が割れ、割増係数に触れた回答なし。

ブラッシュアップ回答:根拠は電技解釈第148条。電動機負荷がある場合、電動機定格電流の合計ΣIMが50A以下なら1.25倍、50A超なら1.1倍し、他の負荷電流を加えた値以上の許容電流が必要です。需要率の適用は内線規程上、需要率・力率が「明確な場合」に限り認められます(根拠のない需要率設定は不可)。実務では「MCCBのAT値 ≦ ケーブル許容電流」を先に固定し、増設余裕を持たせるのが定石。

Q2. 電圧降下の許容値2%は「どの電圧」に対する2%?(単相3線100/200Vの場合)

知恵袋での状況:「標準電圧に掛かる」までは正解が出るが、60m超の緩和や単相3線式の実務的な扱いには誰も触れず。

ブラッシュアップ回答:内線規程1310-1により、幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下。こう長60m超は120m以下4%、200m以下5%、200m超6%まで緩和(構内変圧器供給なら各+1%)。単相3線式では対中性線(100V)ベースの式 e'=17.8LI/(1000A) で計算し、100Vに対する%で判定するのが安全側で実務標準です。

Q3. 電圧降下の簡易式に入れる長さは「片道」?「往復」?

知恵袋での状況:「片道のみ」の結論は出るが、係数の由来まで説明した回答がなく根拠が弱い。

ブラッシュアップ回答片道こう長のみです。基礎係数17.8(軟銅の抵抗率由来)に対し、単相2線式の35.6=17.8×2(往復分)、三相3線式の30.8=17.8×√3(線間換算)と、往復・相数の効果は係数に織り込み済み。なお簡易式は抵抗分のみの近似なので、太物(目安60sq超)や低力率負荷ではインピーダンス法で検算を。

Q4. CV単心3条(455A)が、なぜCVT(380A)より許容電流が大きいの?

知恵袋での状況:熱バランスの説明はあるが、カタログ値の前提条件が整理されず数値の出典が曖昧。

ブラッシュアップ回答:許容電流はJCS 0168に基づき布設条件ごとに決まります。単心3条455Aは「離隔配置」の値で、俵積み(密着)なら約405A、CVT(トリプレックス)は380A——放熱面積と相互加熱の差がそのまま許容電流差です。管路収容ならさらに概ね0.7前後の低減。カタログの気中1条の値をそのまま使わず、必ず布設条件を確認して低減後の値で選定が鉄則です。

Q5. ルートの一部だけラックで敷き詰めになる場合、低減率は全長に適用する?

知恵袋での状況:「安全側で70%」と方向性は出るが、判定原則を明言した回答がない。

ブラッシュアップ回答:ケーブルの許容電流はルート中で最も放熱条件の悪い区間で決まります(導体温度は局所でも制限値90℃を超えてはならないため)。一部でも多条接触区間があれば、その区間の低減率(多段多列で0.87〜0.6程度、敷き詰め接触で概ね0.7)を適用した値がそのケーブルの許容電流。EPS立上りは将来増設で密集しやすいので、0.7で選定しておくのが無難です。

Q6. 1本の電線管に複数のケーブルを入れるとき、管サイズはどう決める?

知恵袋での状況:占積率が「40%」「32%」と回答間で食い違い。

ブラッシュアップ回答:ケーブル1条なら「管の内径 ≧ ケーブル仕上外径の1.5倍」。複数条は規程の明文がないため、金属管配線(内線規程3110節)の考え方を準用し被覆込み断面積の合計が管内断面積の32%以下で選定するのが実務標準です。屈曲が多い・こう長が長い場合は1ランクアップ。FEP管の呼びは内径表示なので混同注意。


② 分電盤・分岐回路・接地編

Q7. VVF1.6mm(許容電流約19A)に20Aブレーカーって、電線が燃えない?

知恵袋での状況:ヒューズとの歴史的比較で説明する回答が主流で、直接根拠の条文を示した回答なし。「1.6mmは不適合」と断定する誤答も。

ブラッシュアップ回答:電技解釈第149条(内線規程3605節)で「20A配線用遮断器の分岐回路は1.6mm以上」と明記されており、法令上は適合です。配線用遮断器は定格の1.25倍で60分以内、2倍で2分以内に動作する特性(電技解釈第33条)で、コンセント回路の負荷分散を前提にすれば短時間過負荷で電線温度は許容値を超えない設計思想。ただしエアコン等、定格20Aを連続消費する機器をつなぐのは別問題——許容電流≧負荷電流(電技解釈第146条)に反するため、専用回路はVVF2.0mm(約24A)にするのが正解。「分岐回路の最小太さ」と「実負荷に対する許容電流」は別々に両方チェックが判断ポイントです。

Q8. 主幹ブレーカーは「分岐ブレーカーの合計」より小さくていいの?

知恵袋での状況:「最大負荷電流で決める」という方向は正しいが、幹線保護という主幹の役割や条文根拠が示されない。

ブラッシュアップ回答:主幹の目的は幹線の過電流保護であり、分岐定格の合計とは無関係。手順は (1)想定負荷×需要率(内線規程3705節の用途別需要率)で幹線の必要許容電流を算出 → (2)幹線サイズ決定 → (3)主幹は「最大負荷電流以上かつ幹線の許容電流以下」で選定。40AT×3の盤でも主幹60〜75ATは普通にあり得ます。将来増設分は主幹でなく幹線サイズ側に織り込むこと(主幹だけ大きくすると幹線保護が破綻します)。

Q9. D種接地は500Ωまでよい場合があるって本当?

知恵袋での状況:内容は正しい回答があるものの「解釈第19条」と旧条番号のまま引用されている。

ブラッシュアップ回答:現行の電技解釈第17条が根拠。D種は原則100Ω以下、「地絡時に0.5秒以内に自動遮断する装置を施設するとき」は500Ω以下でOK。内線規程1350-3はこれを「定格感度電流100mA以下・動作時間0.5秒以内の漏電遮断器」と具体化しています(C種の10Ω→500Ω緩和も同条件)。緩和を使う場合は、当該回路のELB感度・動作時間を竣工図書で証明できるようにしておくのが実務ポイント。

Q10. 主幹も分岐も15mAの漏電遮断器にしたらダメ?

知恵袋での状況:「主幹が一緒に落ちて全停電になる」という結論は出るが、協調の取り方が断片的。

ブラッシュアップ回答:漏電遮断器は定格感度電流の50%超〜100%で動作する(JIS C 8201-2-2)ため、同感度ではどちらが先に切れるか不定になります。正しくは地絡保護協調:分岐に高感度高速形(30mA・0.1秒以内、水気のある場所は15mA)、主幹に中感度(100〜500mA)の時延形。「感度差」と「時延差」の両方を確保すること。主幹側を100mA以下にすればQ9のD種500Ω緩和条件も同時に満たせます。

Q11. 接地線の太さは、なぜ「過電流遮断器の定格電流」から選ぶの?

知恵袋での状況:ベストアンサーは丁寧だが、係数0.052の導出条件が省かれている。

ブラッシュアップ回答:内線規程1350-3表の根拠は「地絡時に遮断器定格の20倍の電流が0.1秒間流れても接地線が溶断・過熱しない」条件から導かれる A ≧ 0.052×In(mm²)。例:In=60Aなら3.12mm²→規格品5.5sqを採用。地絡電流は故障回路の遮断器を通って流れるため、その回路の遮断器定格が基準になる、という理屈です。実務では盤の接地母線・共用接地線は大きめ(14〜22sq等)で統一し、機器側は表で個別選定する二段構えが効率的。


③ 受変電・法規編

Q12. 変圧器容量の計算——需要率は「掛ける」?力率は「割る」?

知恵袋での状況:ベストアンサーが「kW÷力率÷需要率」と需要率の扱いを誤っており(過大設計になる)、別回答との併記で読者はさらに混乱。

ブラッシュアップ回答:正しくは 変圧器容量(kVA) ≧ 設備容量(入力kW) × 需要率 ÷ 負荷力率。需要率(≦1)は「掛けて」容量を圧縮、力率は「割って」kW→kVA換算です。例:入力120kW・需要率0.8・力率0.9なら 120×0.8÷0.9≒107kVA → JIS C 4304の標準容量から150kVA(負荷率約71%)を選定。冷凍機など同時フル運転があり得る負荷は需要率0.9〜1.0で安全側に。始動方式(直入なら始動電流6〜7倍の電圧降下)と将来増設余裕も併せて確認を。

Q13. V結線の出力はなぜ「√3×1台容量」? 2台あるのに2倍じゃないの?

知恵袋での状況:理論的に正しい回答はあるが断片的で、実務(異容量V結線)への接続がない。

ブラッシュアップ回答:V結線では巻線電圧と電流に30°の位相差が生じるため、2台合計の出力は 2VIcos30°=√3VI。設備利用率は√3/2=86.6%、Δ結線3台と比べると57.7%です。実務では「三相負荷kVA÷√3」が1台あたり必要容量。灯動共用の異容量V結線なら、共用変圧器=単相負荷+三相負荷/√3、専用変圧器=三相負荷/√3で選定するのが基本です。

Q14. 内線規程って法律なの?「勧告」「推奨」を守らないとどうなる?

知恵袋での状況:「民間規格で罰則なし」は正しいが、事実上の拘束力を持つ仕組みの説明が抜けている。

ブラッシュアップ回答:法的義務は電気事業法に基づく「電気設備の技術基準(省令)」への適合のみ。電技解釈は省令適合の具体例、内線規程(JEAC 8001)はさらに実務仕様へ落とした民間自主規格です。ただし電力会社の供給約款が需要設備に内線規程準拠を求めるため、竣工調査で不適合なら受電できず、事実上の強制力があります。条文は「義務」「勧告」「推奨」の3ランクで、実務運用は「勧告までは原則遵守、推奨は費用対効果で判断」が現実的。事故時には勧告・推奨も過失判断の基準として引用され得る点は要注意です。

Q15. 屋上にキュービクルを置くとき、フェンスの高さに基準はある?

知恵袋での状況:「1.1m以上」等の数値は出るが出典が明示されず、消防の視点が欠落。

ブラッシュアップ回答:根拠は三系統あります。①電技解釈第38条:さくの高さ+さくから充電部までの距離の和を5m以上+危険表示(施錠構造のキュービクル式は緩和あり)。②高圧受電設備規程(JEAC 8011):保有距離は点検面0.6m以上・操作面1.0m+扉幅以上、屋上設置はさく高さ1.1m以上が目安。③市町村の火災予防条例:建築物から3m以上の離隔、不能な場合は不燃材の壁または消防庁告示適合キュービクル。人が近づきやすい用途(学校・保育園等)では施錠+さく1.8m程度とし、所轄消防と電気主任技術者への事前協議を忘れずに。


まとめ:知恵袋分析から見えたこと

  1. 「規定上の最小値」と「設計上の適正値」の混同が誤解の最大の発生源(VVF1.6mm問題が典型)
  2. 需要率・力率・低減率など「係数の扱い」は、ベストアンサーですら間違っていることがある
  3. 条文根拠が示されない回答が大半で、旧条番号のままの引用も残っている

「経験則では答えが出るが、根拠を問われると割れる」——このゾーンこそ、条文と数値例で整理した解説記事の価値が高い領域です。今回の15問は、今後の解説記事・計算ツールのテーマとしても展開していきます。

出典(分析対象としたYahoo!知恵袋の質問)

Q1: q1145420356 / Q2: q10323051025 / Q3: q10316184885 / Q4: q12318076362 / Q5: q10309410310 / Q6: q10155090955 / Q7: q14172422269q10233116080 / Q8: q13256078973 / Q9: q12159707032 / Q10: q14259141254 / Q11: q11316715581 / Q12: q14252590429q13295307338 / Q13: q11103202301 / Q14: q13302963663 / Q15: q14122500949

※本記事は知恵袋の質問を要約・再構成したもので、原文の転載はしていません。数値・条文は執筆時点の内線規程(JEAC 8001-2022)・電技解釈に基づきます。設計にあたっては必ず最新の規程・基準の原文をご確認ください。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。