【単線結線図の見方③】VCTと電力量計 ― 分かれる前に小さくして測り、乗率をかけて戻す取引用の計器を読む
家の電気メーターは、使った電気をそのまま数えています。でも高圧で受電するビルでは、6,600Vの電気をそのままメーターに通すことはできません。そこでいったん小さくしてから測るしくみを使います。それがVCTと電力量計(Wh)です。第3回は、責任分界点のすぐ内側にある取引用の計器の読み方を見ていきます。
結論
PASのすぐ下、回路が分かれる前にVCTがあり、細い線の先に電力量計(Wh)があります。VCTで小さくして測り、乗率をかけて元に戻すのが読み方の基本です。
- VCTと電力量計は電力会社の支給品で封印される
- 置き場所と配線は需要家が用意する
- 電力量計は最大需要電力(デマンド)も記録する
- 取引用の二次側は構内の計器に使わない
VCTと電力量計は「料金を決める計器」
高圧受電の電気料金は、キュービクルの入口にある電力量計の値で決まります。電力量計は、使った電気の量(kWh)を積算するだけでなく、30分ごとの平均電力のいちばん大きい値(最大需要電力)も記録します。
| 機器 | 名前 | していること |
|---|---|---|
| VCT | 計器用変圧変流器 | VT(電圧を小さく)とCT(電流を小さく)を1つの箱に入れたもの |
| Wh | 電力量計(取引用) | 使った電力量を積算する。最大需要電力も記録する |
| デマンド | 最大需要電力 | 30分ごとの平均電力の最大値。基本料金のもとになる |
水道にたとえると、VCTと電力量計は建物の入口にある水道メーターです。取引の証拠になるので、持ち主は電力会社です。契約電力の決め方は引込・受電設備の設計マニュアル②、電気代が上がる理由の分け方はこちらの記事で扱っています。
- 使った量を積算する
- デマンドも記録する
- 料金の証拠になる計器
図面では「分かれる前にVCT、細い線の先にWh」
単線結線図では、責任分界点とPAS(UGS)のすぐ下に、点線の箱で囲んだVCTがあります。箱から細い線が出て、その先に丸で囲んだ「Wh」があります。
| 図面の表記 | 読み方 |
|---|---|
| 点線の箱と「VCT」 | VTとCTが1つの箱に入っている。中にVTとCTの記号を描くこともある |
| 変成比の傍記(例 6,600/110V・20/5A) | どれだけ小さくしているか。乗率のもとになる |
| 細い線と丸に「Wh」 | 計器用の二次側の線と、取引用の電力量計 |
| 「電力会社支給」「封印」 | 電力会社の持ち物で、需要家は触らない |
| 「パルス出力」「デマンド監視」 | 電力量計からパルスを取り出して最大需要電力を見張る |
- PASのすぐ下にVCT
- 細い線の先にWh
- 注記で支給品とわかる
小さくして測り、乗率で戻す
6,600Vや数十アンペアの電気を、そのまま計器に通すことはできません。VCTの中のVTが電圧を110Vに、CTが電流を5Aに小さくしてから電力量計に送ります。小さくした分は、乗率をかけて元に戻します。
| 項目 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| VTの変成比 | 6,600/110V | 電圧を60分の1にする |
| CTの変成比 | 20/5A | 電流を4分の1にする |
| 乗率 | 60×4=240 | 計器の値を240倍すると実際の値になる |
| 使用量の例 | 計器の差125×240 | =30,000kWh |
- VTは電圧、CTは電流を小さく
- 変成比をかけたものが乗率
- 計器の値×乗率=実際の量
計器は電力会社、場所と配線は自分
VCTと電力量計は料金の根拠になるので、電力会社が支給して封印します。一方で、置き場所と配線は需要家の仕事です。
| だれ | すること |
|---|---|
| 電力会社 | VCTと電力量計を支給する。取り付けたら封印し、検針して料金を計算する |
| 需要家(自分) | 置き場所(計器箱やキュービクル内のスペース)を用意し、取付と二次側の配線を行う |
| 需要家(自分) | デマンドを見張るなら、電力量計のパルスを取り出して監視装置へつなぐ |
- 支給と封印は電力会社
- 場所と配線は自分
- 支給品は見積に入れない
間違えやすいところ
よくある読み違い
- 取引用VCTに構内の計器をつなぐ:電圧計・電流計や保護継電器には、別にVT・CTを設けます。
- 計器の値をそのまま使用量と読む:乗率をかけるのを忘れると、何百分の1の値になってしまいます。
- 支給品を見積に入れる:VCTと電力量計は電力会社の支給品です。入れるのは計器箱や配線です。
- VCTを分岐の後ろに描く:全部の電気を測るため、回路が分かれる前に置きます。
- 封印を切って点検する:封印された計器は、需要家側で開けたり触ったりしません。
次回は、VCTの下に続くDS(断路器)とLA(避雷器)の読み方です。前回の引込とPAS/UGSもあわせてどうぞ。
- 取引用は計量専用
- 乗率を忘れない
- 支給品は見積に入れない
よくある質問
VCTとは何ですか?
計器用変圧変流器のことで、電圧を小さくするVTと、電流を小さくするCTを1つの箱に入れたものです。高圧6,600Vの電気を、電力量計で測れる110Vや5Aの大きさにします。
VCTと電力量計はだれが用意しますか?
電気料金の根拠になるので、電力会社が支給して封印します。需要家(建物側)は、置き場所(計器箱やキュービクル内のスペース)と、取付・二次側の配線を用意します。
単線結線図ではどこに描かれていますか?
責任分界点とPAS(UGS)のすぐ内側、回路が分かれる前です。VCTの箱から細い線が出て、その先に丸で囲んだ「Wh」があります。「電力会社支給」「封印」などの注記が付くことが多いです。
乗率とは何ですか?
VCTで小さくした分を元に戻すための倍率です。VTの変成比とCTの変成比をかけた値で、たとえば6,600/110Vと20/5Aなら60×4で240になります。計器の値に乗率をかけると実際の使用量になります(表示のしかたは計器によるので、計器の銘板や検針票で確かめます)。
最大需要電力(デマンド)とは何ですか?
30分ごとの平均電力のうち、いちばん大きい値のことです。高圧受電の基本料金はこの値をもとに決まるため、一度でも大きな値を出すと料金に響きます。デマンド監視装置で見張るときは、電力量計からパルスで取り出します。
取引用のVCTの二次側に、自分の電圧計や継電器をつないでもいいですか?
つなぎません。取引用のVCTと電力量計は計量専用で、電力会社が封印しています。構内の電圧計・電流計や保護継電器には、別にVT・CTを設けます(この連載の第6回で扱います)。
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