強電設備の設計|照度計算の「照度範囲の円」とは?逐点法の基本
図面で照明器具のまわりに描かれた「円」。あれが何を表しているのか、根拠を聞かれてサッと答えられますか。器具のピッチ(間隔)を「なんとなく」で決めていないでしょうか。
🤔 こんなモヤモヤ、ありませんか?
・照明のまわりの「円」って、そもそも何を表しているの?
・器具の間隔(ピッチ)は、どうやって決めればいい?
・「1lx」「LED2lx」が届く範囲は、どう考える?
この記事は、その「円」の正体=照度範囲の円(等照度線)と、根っこにある逐点法の基本をほどいていきます。読み終えるころには、円のサイズも器具の間隔も、根拠をもって説明できるようになります。
非常照明や誘導灯の設計で出てくる「有効範囲」や「器具間隔」。その裏側にあるのが照度計算の“照度範囲の円”という考え方です。照明器具の真下がいちばん明るく、離れるほど暗くなる——だから一定の明るさを満たす範囲は「円」になる。この記事では、その基礎となる逐点法(直接照度)の式と、円を重ねて床をカバーする配置の考え方を、やさしく整理します。

1. 照度計算には2つの方法がある
照度計算には大きく2つのアプローチがあります。
- 光束法…部屋全体の“平均”照度を求める(一般照明の設計でよく使う)
- 逐点法…ある“一点”の照度を求める(非常照明・誘導灯や、暗部チェックで使う)
「照度範囲の円」を理解するカギは、後者の逐点法です。
2. 逐点法の基本式
点光源(照明器具)から、床面のある点の水平面照度Eは次の式で表せます。
E = I × cosθ / ℓ² = I × cos³θ / h²
- I:その方向の光度(cd/配光で決まる)
- h:器具の取付高さ(床面から)
- θ:真下から測った角度
- ℓ:器具から対象点までの距離(ℓ=h/cosθ)
器具の真下(θ=0)では cosθ=1 となり、直下照度 E₀ = I / h² が最大になります。真下から離れるほどθが大きくなり、cosの3乗で急に暗くなっていきます。

2.5 逐点法でやってみる|「1lx円の半径」を計算する
「円の半径って、どうやって決まるの?」——ここで一度、逐点法の式に数字を入れて手を動かしてみましょう。取付高さ2.6mの器具で、真下(直下)を仮に2lxとします。

カギは E=E0×cos³θ の式です。直下2lxが、ある角度θの方向で1lxまで落ちる条件は cos³θ=0.5。これを解くと θ≒37.5°、そこから水平距離 d=h×tanθ=2.6×tan37.5°≒2.0m。つまり「1lxの円」の半径は約2.0m、直径は約4.0m。この直径がそのまま直線配置の目安になります(→ 4.5節)。
🐧 ペン太:半径って、実測するものだと思ってました!
🦔 ハリタ先生:配光データと取付高さが分かれば、式で出せるんだよ。ただし直下照度は器具ごとに違うから、実務ではメーカーが出している円をそのまま使うのが早い(→ 5.8節)。「なぜその半径になるのか」を式で分かっておくと、仕様書の数字を疑えるようになるんだ。
3. 「照度範囲の円」とは
ここがこの記事の核心です。器具の真下を中心に、少しずつ離れながら照度を測っていくと、同じ照度になる点をつないだ線(等照度線)は「円」を描きます。
必要な照度(たとえば非常照明の1lx、LED器具は2lx)を満たす範囲は、器具直下を中心とする円になります。これが「照度範囲の円」です。円の外に出ると、その明るさを下回ります。
4. 器具配置への応用(円を重ねる)
1台でカバーできる円が分かれば、あとはその円が重なるように器具を並べるだけ。こうすれば、器具と器具の中間(谷部)でも必要照度を下回らず、暗部のない配置になります。
「円の中=基準を満たす明るさ」「円と円の谷でも基準以上」を意識して間隔を決めます。器具の必要台数は、この“1台の円”で対象面積をどう埋めるか、で概算できます。

4.5 直線配置(廊下・通路)を深掘り
細長い廊下・通路では器具を一列に並べる直線配置を使います。この直線配置のいちばんのメリットは、円を描かなくても「距離」だけで判定できることです。

メリット:距離(最大取付間隔)だけで判定できる
単灯配置は1台ごとの照度範囲(円)を作図して確認しますが、直線配置はメーカー仕様書の「最大取付間隔」以内に器具を並べるだけ。カタログには「幅2mの廊下」の場合の最大距離が載っているので、その距離を超えないように配置すれば判定は完了です。円の重なりを毎回描く必要がありません。
仕様書の最大取付間隔は、「その距離まで離しても、器具と器具の中央(いちばん暗い点)で、左右の合成照度が基準(1lx/LED2lx)を満たす」ように決められているからです。だから設計者は距離を守るだけでよく、合成照度の計算や円の作図をしなくて済みます。
条件が変わると最大距離も変わる
この「最大距離」は幅2mの廊下・ある取付高さを前提にした値です。廊下が2mより広い・天井が高い・器具の光度が小さいほど最大距離は短くなります。仕様書では取付高さ・配置パターンごとに値が分かれているので、条件に合う欄(直線配置の列、該当する取付高さの行)を読みます。配光の向きはA方向(器具を並べる向き)・B方向(廊下幅の向き)で区別されます。
まとめると、直線配置は「距離を守るだけ」でシンプルに判定できるのが強み。避難経路(廊下)の非常照明や通路誘導灯の配置に、そのまま使える考え方です。
補足:円は「等照度線」。1lx+1lx=2lx が距離の正体
ここまで「照度範囲の円」と呼んできましたが、この円は正確には等照度線(同じ照度になる点をつないだ線)です。大事なのは、円のふちでスパッと明るさが切れるのではなく、内側ほど明るく、外へ向かって少しずつ暗くなっていること。だからこそ、ある点の照度を足し引きできる(=合成照度)わけです。

ポイントは、単灯で1lxを満たす円(1lxの円)は、2lxの円より大きく(遠くまで)広がること。直線配置では、隣り合う2台の1lxの円を合成して、いちばん暗い器具間の中央で1lx+1lx=2lxをつくります。つまり「1lxの円の直径」=直線配置の最大距離(LED=2lx要求のとき)。仕様書の「最大取付間隔」は、この合成照度を数値化した値なのです。
メーカーが「1lxの円の直径(=合成すると中央で2lxになる距離)」をあらかじめ計算し、最大取付間隔として表にしてくれています。設計者はその距離を守るだけでよく、円を描いたり合成照度を計算したりしなくて済む——これが直線配置のメリットの正体です。
補足:2lx・1lx・0.5lxの円で「足し算」を見える化
いまの「1lx+1lx=2lx」を、もう少し一般化してみましょう。器具1台の等照度線を2lx・1lx・0.5lxの同心円で描くと、内側から 2lx → 1lx → 0.5lx と広がります。重なった場所で明るさを足し算(合成照度)して、どこでも2lx以上になるよう配置する——これが円を重ねる設計の核心です。

同じ「合計2lx」でも分担のしかたは3通り。単灯は2lx円の中に点を収める(1台)、直線は1lxの円を中間で重ねる(1lx+1lx=2lx、2台)、四角(格子)配置は0.5lxの円を中心で4枚重ねる(0.5lx×4=2lx、4台)。合成する台数が増えるほど1台あたりの負担が減り、器具間隔を広げられます。四角配置の詳しい考え方は四角(格子)配置の記事で解説しています。
💡 補足:最大取付間隔=「合成した明るさ」を距離にしたもの
円の半径は「その明るさに届く距離」です。だから複数の円を足し合わせて2lxを保てる範囲=“2lxを確保できる最大の距離”が、そのまま器具の最大取付間隔(配置ピッチ)になります。言いかえると、後の表に出てくる「約12m」「約14m」といった値は、合成した明るさ(合計2lx)を距離に翻訳した結果です。台数を増やして合成を厚くするほど、この“距離”を長くできます。
4.7 単体配置と直線配置の比較
ここまでの単体(単灯)配置と直線配置を、まとめて比べてみましょう。いちばんの違いは「合成照度を使うかどうか」です。

| 項目 | 単体(単灯)配置 | 直線配置 |
|---|---|---|
| 合成照度 | 使わない(1台で完結) | 使う(隣と足し算) |
| 照度の満たし方 | 各器具が単独で2lx(LED) | 中央で 1lx+1lx=2lx |
| 使う円 | 2lxの円(小さい) | 1lxの円(大きい)の直径 |
| 判定方法 | 照度範囲(円)を作図 | 距離(最大取付間隔)で判定 |
| 器具間隔 | せまい | 広い(台数を減らせる) |
| 向いている場所 | 独立した点・小部屋 | 廊下・通路など連続空間 |
単体配置は、他の器具の応援がない前提なので、1台だけで必要照度(LEDなら2lx)の円を確保します。2lxの円は小さいので、器具間隔もせまくなります。独立した点や小部屋、器具がまばらな配置に向きます。
直線配置は、隣り合う器具の合成照度を使えるので、各器具は中央で1lxを出せば足ります(1lx+1lx=2lx)。1lxの円は大きいぶん器具間隔を広くでき、台数を減らせるのがメリット。判定も円ではなく距離(最大取付間隔)だけで済みます。廊下・通路など連続した空間に向きます。
独立した点・小部屋は単体配置(2lxの円で判定)、廊下・通路など連続空間は直線配置(距離で判定・間隔広め)。同じ器具でも、連続配置にできる場所は直線配置にしたほうが器具を減らせて経済的です。
4.8 値でみる比較|配置パターン別の最大取付間隔
先ほどの違いを、実際の値で見てみましょう。Panasonicの照明設計サポート「P.L.A.M.」に載っている参考例(天井高2.6m)では、配置パターンごとの最大取付間隔はおおよそ次のようになります。

🦔 ここがいちばんの肝!
同じ器具(=同じ大きさの「1lx円」)でも、配置のしかたを変えるだけで、必要な台数と取付間隔が変わります。単灯なら1台で背負う明るさを、直線なら2台、格子なら4台で分担して合成する——だから台数を増やすほど1台あたりの負担が減り、間隔を広げられるんです。「器具を選び直す」前に、まず「配置を見直す」のが省コスト設計の第一歩ですよ。
| 配置パターン | 最大取付間隔 (天井高2.6m例) |
単灯比 | 合成する台数 | 満たし方 |
|---|---|---|---|---|
| 単灯配置 | 約5〜6m | ×1.0 | 1台 | 単独で2lx |
| 直線配置 | 約12m | ×約2倍 | 2台 | 中央で1lx+1lx=2lx |
| 四角(格子)配置 | 約14m | ×約2.5倍 | 4台 | 対角の交点で4台合成 |
ポイントは、合成に使える台数が増えるほど、取付間隔を広くできること。単灯配置は1台単独なので間隔がいちばんせまく、直線配置は左右2台、四角(格子)配置は対角の4台を合成できるため、単灯のおよそ2倍〜2.5倍まで間隔を広げられます。
取付間隔が約2倍になれば、同じ距離・面積をカバーするのに必要な器具の台数はおおよそ半分〜数分の一になります。廊下や広い居室のように連続して配置できる場所ほど、直線・格子配置にしたほうが器具を減らせて経済的です。
※ 上の数値はPanasonic「P.L.A.M.」の参考例(天井高2.6m)で、器具の種類・光源・取付高さ・廊下幅などで変わります。実際の設計では、必ず採用する器具のカタログ「配置間隔表」の値を使ってください。
5. 天井の高さと円の大きさ
直下照度は E₀ = I / h²。つまり天井(取付高さh)が高いほど直下照度が下がり、必要照度を満たす円は小さくなります。すると同じ器具でも、円が重なるようにするには器具間隔を詰める必要が出てきます。逆に天井が低ければ円は大きくなり、間隔を広げられます。
5.5 部屋のすみずみまでカバーするには(壁際・隅部)
円を重ねる考え方で見落としやすいのが部屋の「隅(コーナー)」と壁際です。器具を部屋の内側だけに並べると、円が部屋の四隅まで届かず暗部ができてしまいます。

部屋全体をカバーするには、壁際にも器具を配置して、円が壁・隅まで届くようにします。目安は次のとおりです。
- 壁からの距離は「器具間隔の約1/2」以内にする(=壁際の器具は内側の半分の距離に寄せる)
- チェックは円と円の“谷”だけでなく、部屋の“隅”(最も器具から遠い点)でも必要照度を満たすか確認する
- 天井が高い・器具が暗い(光度が小さい)ほど円が小さくなるので、間隔と壁際距離をさらに詰める
「谷」と「隅」の2か所を押さえればOK。いちばん暗くなるのは部屋の隅なので、そこで基準を満たせば部屋全体が満たせます。非常照明(床面1lx/LED2lx)の配置チェックでも同じ考え方が使えます。
5.8 実務では半径はメーカー仕様書の値を使う
ここまで逐点法の式を見てきましたが、設計の実務では半径(照度範囲)を自分で計算しません。逐点法の式は「なぜ器具直下が明るいのか」「なぜ範囲が円になるのか」を理解するためのもの。実際の値は、器具メーカーの仕様書・総合カタログに載っているからです。

メーカーの総合カタログには、器具ごとに「配置間隔表」が用意されています。これは各取付高さに対して、30分間点灯後の照度が1lx(LED・蛍光灯は2lx)となる“最大取付間隔(=照度範囲)”を示した表です。この値を読み取って、その半径で円を引く/その間隔で器具を並べるだけです。
- 単灯配置…器具1台の照度範囲(A断面・B断面方向)=円(楕円)の半径として使う
- 直線配置…廊下などで基準を満たす取付間隔
- 格子(四角)配置…対角線の交点で合成照度が基準を満たす間隔(壁から1m以上離す場合の値が別にあることも)
①器具を選ぶ → ②カタログの配置間隔表で取付高さの行を見る → ③1lx(LED2lx)の値を読む → ④その半径で円を引く(または間隔で並べる) → ⑤円が重なり、部屋の隅まで届くか確認。天井が高いほど値(円)は小さくなります。
逐点法の理屈を知っておくと、カタログ値がなぜその大きさになるのか、天井が高いとなぜ間隔が詰まるのかが腹落ちします。「理屈は逐点法、数値はメーカー仕様書」と覚えておきましょう。
5.9 配光曲線(極座標)の読み方|円のもとになるデータ
メーカー仕様書に載っている「円(等照度線)」は、もとをたどると配光曲線という1枚のグラフから生まれています。読み方を押さえておくと、器具選びの精度がぐっと上がります。

中心からの距離が、その方向の光度(cd)。真下(0°)の値が直下照度のもとで、E0=I0÷h²。カーブが横に張り出す器具ほど「広配光」で廊下や部屋を広くカバーでき、縦に細い器具は「狭配光」で足元をスポット的に照らします。同じワット数でも、この形の違いで円の大きさ=カバー範囲が変わります。
🦔 ワンポイント:「明るい器具=円が大きい」とは限りません。総光束(ルーメン)が同じでも、配光が広いほど床面を広くカバーできます。仕様書では明るさだけでなく、配光(広角/中角/狭角)も必ずチェックしましょう。
6. 非常照明・誘導灯とのつながり
この「円の重なり」で床をカバーする考え方は、非常照明(床面1lx/LED2lx)の器具配置そのものです。誘導灯の「有効範囲」(A級・B級・C級で見える距離が決まる)も、突き詰めれば同じ“範囲を重ねてつなぐ”発想です。実際の設計では、メーカーの配光データ・配置表(Panasonic「P.L.A.M.」等)で、取付高さに対する円(有効範囲)を確認します。
よくある質問(FAQ)
Q. 光束法と逐点法はどう使い分ける?
部屋全体の平均照度を出すなら光束法、非常照明のように「一番暗い点でも基準を満たすか」を確かめるなら逐点法(=照度範囲の円)です。
Q. なぜ真下がいちばん明るいの?
真下は距離が最短(=h)で、光が真上から当たる(cosθ=1)ため。離れると距離が伸び、角度もつくのでcosの3乗で急に暗くなります。
Q. 天井が高いと台数が増えるのはなぜ?
直下照度がE₀=I/h²で下がり、必要照度を満たす円が小さくなるため、円を重ねるには間隔を詰める=台数が増えます。
まとめ
- 逐点法の式はE=I×cos³θ/h²。真下が最も明るく(E₀=I/h²)、離れるとcosの3乗で暗くなる。
- 一定照度を満たす範囲は器具直下を中心とする「円」(等照度線)。
- 器具は円が重なるように並べ、谷部でも基準以上にして暗部をなくす。
- 天井が高いほど円は小さくなり、器具間隔を詰める必要がある。
- 非常照明の1lx/2lx、誘導灯の有効範囲も同じ「円の重なり」の考え方。
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※ 本記事は照度計算の考え方をやさしく整理したものです。実際の設計では、器具の配光データ・配置表(Panasonic「P.L.A.M.」等)や関連法令・基準でご確認ください。





