「この居室、非常照明は何台要る?」——確認申請の図面を前に、必要台数の根拠でつまずいたことはありませんか。基準の数字は知っていても、実際の配置に落とすと急に難しく感じるものです。

🤔 こんなモヤモヤ、ありませんか?

・非常照明は「何lx」必要?なぜLEDだけ2lx?
・器具は何台・どの間隔で置けばいい?
・そもそもどの部屋に必要なの?

この記事では、非常照明の照度基準(床面1lx/蛍光灯・LEDは2lx)から、必要台数と器具配置の考え方までを、根拠となる条文とあわせて実務目線で整理します。

非常照明は「設置基準を満たせば終わり」ではありません。実務でつまずくのは「床面で1lx(LEDは2lx)を満たすように器具をどう配置し、何台いるか」という照度計算・器具配置の部分です。この記事では、Panasonicの照明設計サポート「P.L.A.M.」の技術資料を参考に、非常照明の照度基準の確認 → 器具間隔の決め方 → 必要台数の概算 → 器具選定までを実務目線で整理します。

📌 この記事の位置づけ
非常照明の「どの建物・どこに設置するか」という設置基準の全体像は、別記事の非常照明の設置基準と計画手順で解説しています。本記事はその先の「照度計算と器具配置の実務」にフォーカスします。

🐧 ペン太: 先生、非常照明って「1lx以上」って言われても、器具を何台つければいいのか分かりません…

🦔 ハリタ先生: そこが実務のキモだね⚡ 床面の照度を満たす器具の間隔を決めれば、面積から台数が出せる。順番に見ていこう。

非常照明の照度計算と器具配置まるわかりノート
▲ 非常照明の照度・配置・台数のポイントを1枚に

非常照明はどの部屋に必要?——設置基準の主語は「居室」

照度や台数の前に、まず「どの部屋に非常照明が要るのか」。その起点は建築基準法施行令126条の4で、条文は「居室」を主語に組み立てられています。対象建築物(特殊建築物、階数3以上かつ延べ面積500㎡超、延べ面積1000㎡超、無窓の居室を有する建築物など)の居室、およびその居室から地上に通ずる廊下・階段・通路が設置対象です。

🦔 設置基準の“主語”は「居室」

流れはいつも 「居室」→ その居室からの避難経路(廊下・階段・通路)→ 非常照明。各室が居室かどうかを判定できて、はじめて「どこに何台要るか」が決まります。まずは居室判定が入口です。

ただし、一戸建住宅、共同住宅・寄宿舎の住戸、病院の病室、学校等、避難階にある居室で出口までの歩行距離が30m以下の場合、採光上有効に直接外気に開放された通路・屋外階段などは免除されます。居室の定義や判定チェックリストは「居室」とは?の記事で詳しく解説しています。

1. 非常照明の要求照度(おさらい)

非常照明は建築基準法にもとづく設備で、停電時に避難経路の床面を照らすのが目的です。要求されるのは床面の水平面照度で、次のとおりです。

  • 一般の居室・通路:1lx以上(白熱灯を基準とした値)
  • 蛍光灯・LED器具を用いる場合:2lx以上(光源特性を考慮して割増)
  • 地下街の地下道:10lx以上

また予備電源は、停電後に充電なしで30分間以上点灯できる容量が必要です(長時間定格形は60分間)。

💡 ポイント
いまはLED器具が主流なので、実務では「2lx以上」を満たすように計画するのが基本。判定はあくまで床面(水平面)で行います。
非常照明の照度・電源の基準
▲ 床面1lx(LED2lx)・地下道10lx/予備電源30分(長時間形60分)

コラム:なぜLEDは1lxでなく「2lx」なのか

「白熱灯は1lx、蛍光灯・LEDは2lx」——この差はどこから来るのでしょうか。じつは告示(昭和45年建設省告示第1830号)には数値だけが書かれていて、理由は明記されていません。キーワードは「常温下で」測定するという条件と、火災時(高温)の光束低下です。

なぜ蛍光灯・LEDは2ルクスなのか(火災時の光束低下)
▲ 白熱灯は温度で変わらず1lx、蛍光灯・LEDは高温で光束が落ちるため常温で2lxの余裕を持たせる

告示は照度を「常温下で床面において水平面照度で1ルクス(蛍光灯又はLEDランプを用いる場合は2ルクス)以上」と定めています。ここで効いてくるのが光源ごとの温度特性です。

  • 白熱灯…フィラメントを高温で光らせるしくみで、周囲の温度や多少の電圧変動では明るさ(光束)がほとんど変わりません。だから常温で1lxあれば、火災時でもほぼその明るさを保てます。
  • 蛍光灯・LED周囲温度が上がると光束(明るさ)が低下する特性があります。火災時は室温が大きく上がるため、非常点灯している最中に明るさが落ちるおそれがあります。
🔑 つまり
蛍光灯・LEDは、常温で測って2lxの“余裕”を持たせておけば、火災の高温で光束が落ちても、避難に必要な明るさ(おおむね1lx相当)を下回らずに済む、という考え方です。光源の種類による安全率の違いと言えます。

補足として、非常点灯は予備電源(バッテリー)で行うため、放電に伴う電圧低下で蛍光灯・LEDの出力が落ちやすい点も、余裕を見る理由のひとつです。LEDも素子の温度(ジャンクション温度)が上がると効率・光束が下がるため、蛍光灯と同じく2lxが求められます。

2. 器具の配置と間隔の考え方

必要な床面照度を満たせるかは、器具の配光取付高さ(天井高さ)で決まります。配置パターンごとの器具間隔の目安(天井高2.6mの例)は次のとおりです。

配置 器具間隔の目安 向いているケース
単体配置 約5〜6m 小部屋・1灯でカバーできる範囲
直線配置 約12m 廊下・細長い空間
格子(四角)配置 約14m 広い居室・事務室
📐 間隔は「配光 × 取付高さ」で変わる
上の数値はあくまで目安です。天井が高いほど床面照度は下がるため間隔は詰める必要があります。実際はメーカーの配置表・配光データ(P.L.A.M.等)で、取付高さに対する器具間隔を確認します。
器具の配置と間隔の目安
▲ 配置パターン別の器具間隔の目安(天井高2.6mの例)

3. 必要台数のざっくり計算手順

配置の考え方が分かれば、台数はおおまかに次の流れで見積もれます。

  1. 要求照度を確認(一般部1lx/LED器具2lx、地下道10lx)
  2. 器具間隔を決める(配光・取付高さから、配置表で確認)
  3. 対象面積 ÷ 1台のカバー範囲 で台数を概算
  4. 隅部・什器や内装の影を考慮して補正(暗部ができないよう追加)
🧮 概算のイメージ
例えば1台が約12m四方をカバーできるなら、1台あたり約144㎡が目安。対象床面積をこれで割ると台数のあたりが付きます。最終的には配光データで谷部の照度(器具と器具の中間)が基準を下回らないか必ず確認します。

4. 器具の選定(電池内蔵形 vs 電源別置形)

非常照明器具は、電源の持ち方で大きく2タイプに分かれます。

種類 電源 配線 向いている規模
電池内蔵形 器具内蔵バッテリー 配線規制なし・施工簡単 小〜中規模
電源別置形 専用の蓄電池設備等 耐火措置(耐火配線)が必要 大規模(信頼性・経済性)
🔌 選び方の目安
小〜中規模は電池内蔵形が手軽。大規模は電源別置形が、電源の信頼性・経済性で有利です。ただし電源別置形は器具までの配線に耐火措置(耐火配線)が必要になる点に注意しましょう。

4.5 設置方法の深掘り(技術基準)

ここでは、Panasonicの照明設計サポート「P.L.A.M.」の技術資料をベースに、非常照明の設置方法・取付・器具構造を実務目線でまとめます。

非常照明の設置方法(取付方法・取付高さ・器具構造・配線)
▲ 取付方法(直付・埋込・壁付)と取付高さ、器具構造、電源方式・配線の要点

取付方法と取付高さ

非常照明器具は、天井直付形・天井埋込形・壁付形から、天井高さや意匠に合わせて選びます。配置設計は取付高さ2.1〜7.0mの範囲で行い、逐点法で床面の水平面照度が1lx(LED・蛍光灯は2lx)以上になるよう器具間隔を決めます。

器具の構造要件

非常照明器具には、火災時にも機能するための構造要件があります。

項目 要件
主要な部品 不燃材料で造る、または覆う
耐熱・点灯 周囲温度70℃で30分間の点灯を維持
点灯 停電時に即時点灯するバッテリーを備える
取付高さ おおむね2.1〜7.0mの範囲で配置設計
🔥 なぜ「70℃で30分」なのか
火災時は室温が大きく上がります。その高温下でも点灯し続けられるよう、器具は周囲温度70℃で30分間の点灯に耐える構造が求められます。前章のコラムで触れた「LEDが2lx」の理由(高温での光束低下を見込む)とも通じる考え方です。

電源方式による施工・配線の違い

  • 電池内蔵形…器具にバッテリーを内蔵。予備電源装置が不要で配線規制がなく施工が簡単。小〜中規模建物に向きます。
  • 電源別置形…専用の蓄電池設備などから給電。器具までの配線に耐火措置が必要で、600V二種ビニル絶縁電線(HIV)など耐熱性のある電線を用います。大規模建物で経済的です。

設置が必要な場所・不要な室

設置対象は、不特定多数が利用する特殊建築物の居室、無窓の居室、それらから地上へ通じる廊下・階段・通路などです(用途・面積の詳細は非常照明の設置基準と計画手順を参照)。一方、次のような室は設置しなくてよいとされています。

  • 一戸建住宅、共同住宅・長屋の住戸
  • 病院の病室、寄宿舎の寝室、下宿の宿泊室
  • 床面積30㎡以下で地上への直接の出口を有するホテル・旅館の客室
  • 採光上有効に直接外気に開放された屋外階段・通路 など

5. 計画時のチェックポイント

  • LED器具は2lx以上で計画(1lxは白熱灯基準)
  • 判定は床面の水平面照度。什器・間仕切り・内装で暗部ができないか確認
  • 器具と器具の中間(谷部)の照度が基準を下回らないように間隔を決める
  • 電源別置形は耐火配線、予備電源は30分(長時間形60分)
  • 誘導灯(消防法)とセットで避難計画を成立させる

よくある質問(FAQ)

Q. 非常照明は何lx必要?
床面の水平面照度で1lx以上、蛍光灯・LED器具は2lx以上、地下街の地下道は10lx以上です。

Q. 器具の間隔はどう決める?
器具の配光と取付高さ(天井高さ)で決まります。メーカーの配置表で、必要照度を満たす間隔を確認します。天井が高いほど間隔は詰めます。

Q. 予備電源はどれくらい必要?
停電後、充電なしで30分間以上(長時間定格形は60分間)点灯できる容量が必要です。

Q. 電池内蔵形と電源別置形はどちらがいい?
小〜中規模は施工が簡単な電池内蔵形、大規模は信頼性・経済性で電源別置形が有利です(電源別置形は耐火配線が必要)。

まとめ

  • 非常照明の判定は床面の水平面照度(1lx/LED2lx/地下道10lx)。
  • 器具間隔は配光×取付高さで決まる(単体5〜6m・直線12m・四角14mは目安)。
  • 台数は対象面積 ÷ 1台のカバー範囲で概算し、谷部・暗部を補正。
  • 器具は電池内蔵形(小〜中規模)電源別置形(大規模・耐火配線)
  • 予備電源は30分(長時間形60分)、誘導灯とセットで計画。

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※ 本記事の照度・器具間隔・電源時間などの数値は概要・目安です。実際の設計は建築基準法施行令126条の4・5および告示、メーカーの配光・配置データ(Panasonic「P.L.A.M.」等)、所轄行政庁の運用でご確認ください。