電気設備の基本知識 #017【屋内幹線と分岐回路】
建物の電気の通り道は、木に似ています。引込口から分電盤までの太い幹線が「幹」、分電盤から照明やコンセントへ向かう分岐回路が「枝」です。この記事では、幹線と分岐回路の違い、幹線の許容電流の決め方、幹線を守る過電流遮断器、細い幹線へ分岐するときのルールを、図とたとえで1つずつ解説します。
結論
幹線の許容電流は機器の定格電流の合計以上。モータが多いときは1.25IM+IH(IM≦50A)などで割り増します。細い幹線の遮断器は分岐点から3m以下(35%以上で8m、55%以上で制限なし)です。
- 幹線=幹、分岐回路=枝
- IM>IHなら、IMを1.25倍(50A超は1.1倍)して合計する
- 幹線の遮断器は3IM+IH以下、かつ2.5IW以下
- 細い幹線へ分岐するときは遮断器の位置に決まりがある
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幹線と分岐回路 ― 幹と枝
幹線は、引込口から分電盤まで、または分電盤どうしを結ぶ太い電線です。建物全体、あるいはフロア全体の電気をまとめて運びます。分岐回路は、分電盤の分岐ブレーカーから、照明やコンセントなどの負荷までの回路です。
たとえるなら木です。幹(幹線)が太くて丈夫でないと、たくさんの枝(分岐回路)を支えられません。設計の順序は「電気設備の基本知識 #016【屋内配線の設計】」で解説しています。
- 幹線は引込口〜分電盤、分電盤どうしを結ぶ
- 分岐回路は分電盤〜負荷
- 幹線は、つながる分岐回路全体を支える
幹線の許容電流 ― モータ分を割り増す
幹線の許容電流は、つながる機器の定格電流の合計以上にします。ただし、電動機(モータ)などが多い場合は注意が必要です。モータは始動電流が大きく、運転中も熱をもちやすいので、その分を割り増して考えます。
📘 計算してみよう
電動機などの合計IMが30A、それ以外の合計IHが20Aのとき、IM>IHで、IMは50A以下なので
IW ≧ 1.25×30+20 = 57.5A。許容電流が57.5A以上の幹線を選びます。
- 基本は定格電流の合計以上
- モータが多いときは割り増す
- IM=30A、IH=20Aなら57.5A以上
IWのルール ― 3つの場合分け
| 条件 | 幹線の許容電流 IW |
|---|---|
| IM ≦ IH | IW ≧ IM+IH |
| IM > IH で、IM ≦ 50A | IW ≧ 1.25IM+IH |
| IM > IH で、IM > 50A | IW ≧ 1.1IM+IH |
需要率や力率がわかっている場合は、それを使って補正してよいとされています。需要率については「電気設備の基本知識 #016【屋内配線の設計】」で解説しています。
- IM≦IHなら単純に合計
- IM>IHでIM≦50Aなら1.25倍
- IM>IHでIM>50Aなら1.1倍
幹線の遮断器 ― 3IM+IHと2.5IW
幹線を守る過電流遮断器の定格(IB)は、ふつうは幹線の許容電流IW以下にします。ただし、電動機などがある場合は、始動電流で遮断器が切れてしまわないよう、3IM+IH以下まで大きくできます。それでも、幹線を守れなくなっては困るので、2.5IW以下という上限があります。
📘 計算してみよう
IM=30A、IH=20A、IW=60Aのとき
3×30+20=110A、2.5×60=150A。小さいほうの110A以下から、標準の定格(100Aなど)を選びます。
- 電動機などがなければIB≦IW
- 電動機などがあればIB≦3IM+IH
- ただし2.5IWを超えない
細い幹線 ― 遮断器の位置のルール
太い幹線から細い幹線へ分岐すると、太い幹線の遮断器では細い幹線を守りきれません。そこで、細い幹線を守る過電流遮断器を、分岐点の近くに設けます。
| 分岐点から遮断器までの長さ | 条件 |
|---|---|
| 3m以下 | 細い幹線の許容電流の条件なし(負荷側に別の幹線をつながない場合) |
| 8m以下 | 細い幹線の許容電流が、太い幹線の遮断器の定格の35%以上 |
| 長さの制限なし | 細い幹線の許容電流が、太い幹線の遮断器の定格の55%以上 |
たとえるなら、細い枝ほど、幹の近くで支えが必要です。枝が太くて丈夫なら、支えは少し離れていても大丈夫です。分岐回路の過電流遮断器にも同じ考え方があり、「電気設備の基本知識 #018【分岐回路の設計】」で解説しています。
- 原則は分岐点から3m以下
- 35%以上なら8m以下
- 55%以上なら長さの制限なし
押さえる要点 ― 式と数字
過電流遮断器の動作のしくみは「電気設備の基本知識 #015【過電流遮断器】」で解説しています。
ブラウザでそのまま使える登録不要ツール
この記事の選定手順を系統全体でまとめてチェックするなら、姉妹サイト「セコサポ」の幹線つながりチェック(電線・ブレーカー整合と電圧降下の自動診断・登録不要)が便利です。
- IWは1.25IM+IH(IM≦50A)、1.1IM+IH(IM>50A)
- IBは3IM+IH以下、かつ2.5IW以下
- 細い幹線は3m・8m(35%)・制限なし(55%)
よくある質問
幹線と分岐回路の違いは?
幹線は、引込口から分電盤まで、または分電盤どうしを結ぶ太い電線です。分岐回路は、分電盤の分岐ブレーカーから照明やコンセントなどの負荷までの回路です。木にたとえると、幹線が「幹」、分岐回路が「枝」です。
幹線の許容電流はどう決めますか?
接続する機器の定格電流の合計以上とします。ただし、電動機などの定格電流の合計IMがそれ以外の合計IHより大きい場合は、IMが50A以下なら1.25IM+IH以上、50Aを超えるなら1.1IM+IH以上とします。需要率や力率がわかっている場合は、それで補正できます。
幹線を守る過電流遮断器の定格はどう決めますか?
電動機などがない場合は、幹線の許容電流IW以下とします。電動機などがある場合は、3IM+IH以下とし、その値が2.5IWを超えるときは2.5IW以下とします。
細い幹線へ分岐するときのルールは?
細い幹線を守る過電流遮断器は、原則として分岐点から3m以下の場所に設けます。細い幹線の許容電流が太い幹線の過電流遮断器の定格の35%以上なら8m以下、55%以上なら長さの制限なく離して設けられます。
IM=30A、IH=20Aのとき、幹線の許容電流は?
IM>IHで、IMは50A以下なので、1.25×30+20=57.5A以上の許容電流の幹線を選びます。
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