技術図書館屋内配線は負荷からさかのぼる負荷→分岐回路→幹線→確認の順序、需要率の考え方、電圧降下の許容値の目安と小さくする工夫この資料をスライドで見る資料一覧を見る
第二種電気工事士 合格カリキュラム学科② 配電理論と配線設計
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屋内配線の設計は、「とりあえず太い電線にしておけば安心」ではうまくいきません。太すぎればお金とスペースのむだ、細すぎれば発熱や電圧不足のもとになります。大切なのは順序です。この記事では、設計の順序、需要率、電圧降下とその許容値、略算式を、図とたとえで1つずつ解説します。

結論

屋内配線は負荷 → 分岐回路 → 幹線 → 確認の順に設計します。幹線は需要率で太くしすぎないようにし、電圧降下は原則2%以下に収めます。

  • 負荷が決まらないと幹線は決められない
  • 需要率=最大需要電力÷設備容量
  • 電線が長く、電流が大きいほど電圧降下が大きい
  • 許容電流と電圧降下の両方で電線の太さをチェックする
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
屋内配線の設計の順序として、①負荷を把握、②分岐回路、③幹線、④電圧降下・保護の確認の4ステップを示した図
設計は、負荷から電源へさかのぼって進めます。

設計の順序 ― 負荷から電源へ

屋内配線の設計は、負荷(電気を使う機器)から始めて、電源の方へさかのぼります。照明・コンセント・エアコン・動力などの容量を把握し、それを分岐回路に分け、最後に分岐回路をまとめる幹線の太さを決めます。

たとえるなら料理の献立から買い物リストをつくるようなものです。何をつくるか(負荷)が決まらないと、何をどれだけ買うか(幹線)は決められません。

ペン太ペン太
幹線を先に太めに決めておけば、あとで楽なんじゃないですか?
ハリタハリタ
太すぎると材料費も工事費もかさみ、電線管や分電盤も大きくなってしまいます。負荷から順に積み上げて、ちょうどよい太さを決めるのが設計の基本ですよ。
ここまでのポイント
  • 負荷 → 分岐回路 → 幹線 → 確認の順
  • 負荷が決まらないと幹線は決められない
  • 太すぎても細すぎても困る

需要率 ― 全部が同時には使われない

照明・コンセント・エアコン・IH・給湯の設備容量の合計は14kWだが、同時に使われる最大は9kWで、需要率は約64%になることを示した動く図解
動く図解:使われる機器は、時間とともに入れ替わります。

家や建物にある機器は、すべてが同時に最大で使われることはありません。設備容量の合計で幹線を決めると、必要以上に太くなってしまいます。そこで使うのが需要率です。

📘 需要率の求め方

需要率 = 最大需要電力 ÷ 設備容量の合計
たとえば、設備容量の合計が14kWで、実際に同時に使う最大が9kWなら、需要率は 9÷14 ≒ 64% です。

たとえるなら、家族全員が同時にお風呂に入らないのと同じです。家族の人数分の大きな湯船は要りませんよね。

ここまでのポイント
  • 需要率=最大需要電力÷設備容量
  • 全部が同時に最大で使われることはない
  • 需要率で幹線を太くしすぎない

電圧降下 ― 長いほど電圧が下がる

電源から負荷まで電線が長くなると、電線の抵抗によって電圧が少しずつ下がり、100Vが負荷の端で98Vになる様子を示した図
電線の長さの分だけ、電圧が下がります。

電線にもわずかな抵抗があるので、電流が流れると電線の中で電圧が少しずつ下がります。これが電圧降下です。電線が長いほど、電流が大きいほど、電圧降下は大きくなります。

たとえるなら長いホースです。ホースが長いほど、先から出る水の勢いは弱くなります。電圧が下がりすぎると、照明が暗くなったり、モータが止まりやすくなったりします。

ここまでのポイント
  • 電線の抵抗で電圧が下がる=電圧降下
  • 長いほど、電流が大きいほど大きくなる
  • 下がりすぎると機器がうまく動かない


許容値 ― 原則2%以下

内線規程による電圧降下の許容値のめやすとして、幹線・分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下が原則で、こう長が長い場合は構内の変圧器から供給する場合と電力会社から低圧で受電する場合で許容値が異なることを示した表
電圧降下の許容値のめやす。

内線規程では、幹線と分岐回路それぞれで、電圧降下を標準電圧の2%以下とするのが原則です(構内の変圧器から供給する場合の幹線は3%以下)。こう長が長い場合は、幹線と分岐回路を合わせた値として、次のめやすが示されています。

こう長(最遠端まで) 構内の変圧器から供給 電力会社から低圧で受電
60m以下 3%以下 2%以下
120m以下 5%以下 4%以下
200m以下 6%以下 5%以下
200m超 7%以下 6%以下
内線規程をもとに作成。細かな条件は内線規程で確認する
ここまでのポイント
  • 幹線・分岐回路それぞれ2%以下が原則
  • 構内の変圧器から供給する幹線は3%以下
  • こう長が長いと合計の許容値が緩和される

小さくする工夫 ― 太く・短く・高い電圧で

電線が長くなると電圧が下がって照明が暗くなる様子と、電圧降下を小さくする方法(電線を太くする・短くする・電圧を上げる)を示した動く図解
動く図解:電線が長くなると、照明が暗くなります。
方法 理由
電線を太くする 断面積が大きいほど抵抗が小さい
電線を短くする 分電盤を負荷の近くに置けば、こう長が短くなる
電圧を上げる 同じ電力なら電流が小さくなる(100Vより200V)
一般的な考え方

電線の太さは、許容電流(「電気設備の基本知識 #014【絶縁電線の許容電流】」)と電圧降下の両方でチェックします。短い配線は許容電流で、長い配線は電圧降下で太さが決まることが多くなります。

ここまでのポイント
  • 電線を太く・短く・電圧を高くする
  • 許容電流と電圧降下の両方でチェック
  • 長い配線は電圧降下で太さが決まりやすい

計算式 ― 配電方式ごとの略算式

銅線の電圧降下の略算式として、単相2線式 e=35.6LI÷1000A、三相3線式 e=30.8LI÷1000A、単相3線式 e=17.8LI÷1000A を並べた図
配電方式によって、係数が変わります。
配電方式 略算式 意味
単相2線式 e=35.6×L×I÷(1000×A) 往復2本分の電圧降下
三相3線式 e=30.8×L×I÷(1000×A) 線間の電圧降下
単相3線式 e=17.8×L×I÷(1000×A) 電圧線と中性線の間(平衡負荷)
e:電圧降下[V]、L:こう長[m]、I:電流[A]、A:電線の断面積[mm²]

📘 計算してみよう

単相2線式、こう長20m、電流15A、断面積3.5mm²のとき
e = 35.6×20×15 ÷(1000×3.5)= 10,680 ÷ 3,500 ≒ 3.05V。100Vの約3%なので、2%に収めるには電線を太くする必要があります。

幹線の許容電流の決め方は「電気設備の基本知識 #017【屋内幹線と分岐回路】」、分岐回路の組み方は「電気設備の基本知識 #018【分岐回路の設計】」で解説しています。

ここまでのポイント
  • 単相2線式35.6、三相3線式30.8、単相3線式17.8
  • L・Iに比例し、断面積Aに反比例
  • 計算で許容値に収まるか確認する


よくある質問

屋内配線はどんな順序で設計しますか?

負荷の把握 → 分岐回路の構成 → 幹線の太さの決定 → 電圧降下や保護の確認、の順に進めます。何をどれだけ使うか(負荷)が決まらないと、幹線の太さは決められません。

需要率とは何ですか?

最大需要電力 ÷ 設備容量の合計で求める割合です。すべての負荷が同時に最大で使われることはないので、需要率を使って幹線を必要以上に太くしないようにします。

電圧降下の許容値は?

内線規程では、幹線と分岐回路それぞれ標準電圧の2%以下が原則です(構内の変圧器から供給する場合の幹線は3%以下)。こう長が長い場合は、幹線と分岐回路を合わせて、電力会社から低圧で受電する場合で120m以下4%、200m以下5%、200m超6%、構内の変圧器から供給する場合で120m以下5%、200m以下6%、200m超7%がめやすです。

電圧降下を小さくするには?

電線を太くする、電線を短くする(分電盤を負荷の近くに置く)、使う電圧を上げる(100Vより200V)、といった方法があります。

屋内配線に使える電線は?

絶縁電線・ケーブル・キャブタイヤケーブルなどを使います。裸電線は、原則として屋内配線には使えません。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。