家庭の電気代がなぜ上がったのかを、過去10年の推移グラフとともに解説。電気代を構成する4つの中身(基本料金・電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金)、値上がりの理由、政府補助金の動き、今後の見通しと家庭でできる節約対策までまとめました。
家庭の電気代の推移と4つの中身の全体像
この記事について
「気づいたら電気代が上がっている」——その正体を、電気設備の設計の視点で整理します。電気代は4つの中身でできていて、上がった理由もそれぞれ違います。過去10年の推移をグラフで見ながら、なぜ上がったのか・今後どうなるのか・家庭で何ができるのかまでをわかりやすく解説します。
🐧 見習いペン太「はりた先輩、うちの電気代、数年前よりだいぶ高い気がするんです。気のせいですか…?」
🦔 はりた「気のせいじゃないよ。とくに2022〜2023年にかけて一段上がった。ただ『全部まとめて高くなった』わけじゃなくて、電気代の中身ごとに理由がある。今日はそこを分解して見ていこう」
ペン太ペン太
月の電気代、2023年には平均1万5千円くらいまで上がったんですよね。節電してるのに追いつかなくて…
ハリタハリタ
個人の努力では変えられない要因が混ざっているんです。まず料金の中身から見ていきましょう。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 電気代の請求額は、いくつの項目でできているか
  • 2022年からの値上がりを押し上げた「主役」はどの項目か
  • その中で、自分の努力で減らせるのはどこか
この記事でわかること
単価や月額は調査の前提(対象世帯・使用量・地域)で変わります。ご自身の正確な数値は検針票・料金明細で確認してください。

家庭の電気代はこの10年でどう動いた?

トピック1:家庭の電気代はこの10年でどう動いた?

まずは全体の流れから。家庭向け電気料金の平均単価(1kWhあたりの値段)の推移を見ると、長く25〜28円あたりで推移していたのが、2022年に急に跳ね上がったのがわかります。

家庭向け電気料金の平均単価の推移(2015〜2023年)

金額のイメージでいうと、標準的な家庭の月間電気代(全国の県庁所在市の平均)は、2016年で約12,000円台だったのが、2022年に約13,700円、2023年には約15,000円まで上がりました。

その後は国の補助金や燃料価格の落ち着きで少し下がっていますが、体感としては「2021年までの安かった頃」との差が大きいのが正直なところです。

数字を見るときの注意
「平均単価」も「月間電気代」も、調査の前提(対象世帯・使用量・地域)で数字が変わります。ここでの数値はおおまかな傾向をつかむための目安として見てください。正確なご自身の単価は検針票・料金明細で確認できます。
ペン太ペン太
電気代って基本料金と、使った分の電力量料金の2つだけじゃないんですか?
ハリタハリタ
あと2つ、燃料費調整額と再エネ賦課金があります。今回の値上がりの主役はこちらなんです。
ここまでのポイント
  • 家庭向けの平均単価は長く25〜28円/kWhで推移し、2022年に急に跳ね上がった
  • 標準的な家庭の月間電気代は2016年で約12,000円台、2022年約13,700円、2023年約15,000円
  • その後は補助金と燃料価格の落ち着きで少し下がったが、2021年までの水準には戻っていない
  • 「平均単価」も「月間電気代」も調査の前提で変わるため、目安として見る

電気代は「4つの中身」でできている

トピック2:電気代は「4つの中身」でできている

電気代がなぜ上がったのかを理解するには、まず料金の内訳を知るのが近道です。電気代は大きく次の4つの合計です。

内訳中身
① 基本料金契約アンペア(容量)ごとに決まる固定の料金。使わなくてもかかる部分。
② 電力量料金使った分(kWh)に応じてかかる料金。使用量が多い家庭ほど大きい。
③ 燃料費調整額発電に使う燃料(LNG・石炭・原油)の価格に連動して毎月変動。ここが2022年の値上がりの主役。
④ 再エネ賦課金再生可能エネルギーの普及を支えるため、使用量に応じて全員が負担する費用。年度ごとに単価改定
🦔 はりた「ポイントは、③燃料費調整額と④再エネ賦課金は『自分の節約努力ではどうにもならない』外部要因だってこと。この2つが同時に上がったのが、ここ数年の値上がりの正体なんだ」
電気代の中身決まり方自分で動かせるか
① 基本料金契約アンペア(容量)ごとに決まる固定の料金動かせる(契約アンペアの見直し)
② 電力量料金使った分(kWh)に応じてかかる動かせる(使用量とプランの選び方)
③ 燃料費調整額燃料の価格に連動して毎月変動する動かせない(使用量を減らせば影響は小さくできる)
④ 再エネ賦課金使用量に応じて全員が負担。年度ごとに単価改定動かせない(同上)
ここまでのポイント
  • 電気代は①基本料金②電力量料金③燃料費調整額④再エネ賦課金の4つの合計
  • ①は契約アンペアごとの固定料金、②は使った分(kWh)に応じてかかる
  • ③は燃料価格に連動して毎月変動、④は年度ごとに単価改定
  • ③と④は自分の節約努力では動かせない外部要因

なぜ上がった? 3つの理由

トピック3:なぜ上がった? 3つの理由

理由1:燃料価格の高騰と円安(③燃料費調整額)

日本の発電は今も火力が中心で、その燃料の多くを輸入に頼っています。2022年はウクライナ情勢でLNGや石炭・原油の国際価格が急騰し、さらに円安が重なって輸入コストが跳ね上がりました。

これが毎月の「燃料費調整額」を押し上げ、単価が34円前後まで上がる主因になりました。その後、燃料価格の落ち着きと補助金で一旦下がっています。

理由2:再エネ賦課金の上昇(④再エネ賦課金)

もうひとつ、じわじわ効いているのが再エネ賦課金です。制度が始まった2012年度は0.22円/kWhでしたが、再エネの普及とともに上昇し、2026年度は4.18円/kWhに。使用量400kWhの家庭なら月約1,670円・年約2万円がこの賦課金分です。

再エネ賦課金の推移(2012〜2026年度)

途中、2023年度だけ1.40円/kWhに大きく下がったのが目を引きます。これは電力の市場価格が高騰した年で、賦課金の計算上、回避できた費用(電力会社が再エネで安く調達できた分)が大きくなり、結果として賦課金が一時的に低くなったためです。翌年からはまた上昇に戻っています。

理由3:規制料金の改定

2023年には大手電力各社が、燃料高騰などを反映して規制料金(従来型のプラン)の値上げ改定を行いました。これも家庭の電気代が一段上がった要因のひとつです。

値上がりの理由どこに効くか効き方
燃料価格の高騰と円安③ 燃料費調整額毎月変動する。2022年の値上がりの主役
再エネ賦課金の上昇④ 再エネ賦課金年度ごとに改定。2012年度0.22円→2026年度4.18円/kWh
規制料金の改定① 基本料金・② 電力量料金2023年に大手電力各社が実施
ここまでのポイント
  • 理由1|2022年の燃料高騰と円安が③燃料費調整額を押し上げた
  • 理由2|再エネ賦課金は2012年度0.22円/kWhから2026年度4.18円/kWhへ上昇
  • 400kWh使う家庭なら賦課金だけで月約1,670円・年約2万円
  • 2023年度だけ1.40円/kWhに下がったのは、市場価格高騰で回避可能費用が大きくなったため
  • 理由3|2023年に大手電力各社が規制料金の値上げ改定を行った

政府の補助金(激変緩和対策)の動き

トピック4:政府の補助金(激変緩和対策)の動き

急激な値上がりをやわらげるため、国は電気・ガス代の補助金を断続的に実施してきました。1kWhあたりいくら値引き、という形で電気代を直接下げるもので、実施したり止めたりを繰り返しているのが特徴です。補助が切れる月は電気代が上がって見えるので、家計管理では要注意です。

時期低圧(家庭)の補助単価
2023年2月〜9月7.0円/kWh(開始時。以降は段階的に縮小)
2024年 夏(酷暑乗り切り支援)4.0円/kWh 前後(8〜9月)
2025年 1〜3月/7〜9月2.0〜2.5円/kWh 前後
2026年 7〜9月使用分7月 3.5円/kWh・8月 4.5円/kWh・9月 3.5円/kWh(都市ガスは1.8〜2.3円/㎥)
※補助の名称・単価・期間は年度ごとに変わります。最新の実施状況は「電気・ガス料金支援」等で各社・自治体の案内を確認してください。
ここまでのポイント
  • 国は電気・ガス代の補助を断続的に実施。1kWhあたりいくら値引きという形
  • 2023年2月〜9月は開始時7.0円/kWhで、以降は段階的に縮小
  • 2026年は7月3.5円・8月4.5円・9月3.5円/kWh(都市ガスは1.8〜2.3円/㎥)
  • 実施したり止めたりを繰り返すため、補助が切れる月は電気代が上がって見える

今後の電気代はどうなる?

トピック5:今後の電気代はどうなる?

先を正確に読むのは難しいですが、方向感としては次のように整理できます。

いまの支援は9月使用分で終わります。10月以降を続けるかどうかは、この記事の時点では決まっていません。支援が切れた月は、使い方を変えていなくても請求額が上がって見えます。8月使用分の4.5円/kWhは、月400kWh使う家庭で約1,800円ぶんです。

上げる方向の力
・再エネ賦課金は当面上昇が続く見通し(ピークは2030年前後との見方)
・補助金は恒久的でなく、切れれば実質値上がり
・燃料価格・為替は世界情勢しだいで再び上振れするリスク
下げる・和らげる方向の力
・燃料価格が落ち着けば燃料費調整額は下がる
・省エネ機器の普及で家庭の使用量そのものが減らせる
・料金プランの見直し・自家発電(太陽光)で単価の影響を小さくできる
ここまでのポイント
  • いまの支援は9月使用分で終わり、10月以降を続けるかはこの記事の時点で未定
  • 8月使用分の4.5円/kWhは、月400kWh使う家庭で約1,800円ぶんにあたる
  • 上げる方向|賦課金の上昇(ピークは2030年前後との見方)、補助の終了、燃料・為替の上振れ
  • 和らげる方向|燃料価格の落ち着き、省エネ機器での使用量削減、プラン見直しや太陽光

家庭でできる電気代対策

トピック6:家庭でできる電気代対策

③④の外部要因は変えられませんが、「使う量(kWh)」と「単価のかかり方」は自分で減らせます。効果が大きい順に整理すると次のとおりです。

対策ポイント
エアコンの使い方・買い替え家庭の電力の主役。省エネ性能の高い機種は電気代削減効果が大きい(エアコン2027年問題の記事で詳しく解説)。
料金プランの見直し生活パターンに合ったプラン・電力会社に変更。基本料金や時間帯単価を最適化。
契約アンペアの見直し大きすぎる契約は基本料金のムダ。ただし下げすぎるとブレーカーが落ちるので余裕を見て。
待機電力・照明のLED化積み重ねで効く定番。使わない機器の主電源オフ、照明のLED化。
太陽光・蓄電池初期費用はかかるが、買う電気そのものを減らせる。補助制度とあわせて検討。
🦔 はりた「値上がりの原因の半分は自分でコントロールできない。だからこそ、コントロールできる『使う量』を減らすのが一番確実な電気代対策なんだ。まずは一番大きいエアコンから見直すのがおすすめだよ」
ペン太ペン太
外部要因は変えられないなら、家庭では何をすればいいんですか?
ハリタハリタ
使用量は自分で減らせます。エアコンなど省エネ機器への更新と料金プランの見直しから始めましょう。
電力会社の見直しは、あなたの家に効くのか
「乗り換えれば安くなる」は、条件によります。電気設備の設計側から見ると、先にやるべきことがある家と、比較が効く家ははっきり分かれます。当てはまるものを見てください。
A契約アンペアが大きすぎる家
一人暮らしや二人暮らしなのに50A・60A契約、という家は珍しくありません。基本料金は契約アンペアで決まるので、下げるだけで毎月効きます。工事は電力会社が無料で行うのが一般的です。乗り換えより先に、こちらを確認してください。
B使用量が多い家・オール電化・EVがある家
月400kWhを超える、オール電化、EVを自宅で充電している——このあたりから単価と時間帯プランの差が大きく出ます。基本料金より従量料金のほうが金額として大きいので、プランと会社を比べる価値があります。
C関西・中国・四国・沖縄エリアの家
これらのエリアは最低料金制で、そもそも契約アンペアという区分がありません。Aの手が使えないので、比べるならプランと会社そのものになります。
比べるときに見落としやすいところ
  • 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
  • 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
  • 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事
ここまでのポイント
  • ③④は変えられないが、「使う量(kWh)」と「単価のかかり方」は自分で減らせる
  • 効果が大きいのはエアコンの使い方・買い替え。家庭の電力の主役
  • 料金プランの見直しと契約アンペアの適正化で、基本料金や時間帯単価を最適化できる
  • 契約アンペアは下げすぎるとブレーカーが落ちるので余裕を見る

まとめ+よくある質問

トピック7:まとめ+よくある質問

結論。値上がりの主役は、自分では動かせない③と④。だからこそ、動かせる①②から手をつけるのが確実です。

今日から確認できることどこで見るか
自分の単価と使用量検針票・料金明細(kWhと各項目の内訳)
再エネ賦課金の負担額明細の再エネ賦課金の欄。2026年度は4.18円/kWh
補助が効いている月か明細の値引き欄。2026年は7〜9月使用分が対象
契約アンペアが適正か明細の契約容量。下げすぎるとブレーカーが落ちる
プランが生活に合っているか電力会社の料金プラン一覧・時間帯別の単価

ここだけ押さえる

  • 電気代は①基本料金②電力量料金③燃料費調整額④再エネ賦課金の4つの合計
  • 2022年からの値上がりを押し上げたのは③と④という外部要因
  • 補助金は実施と停止を繰り返すため、切れた月は使い方を変えていなくても上がって見える
  • 減らせるのは「使う量」と「単価のかかり方」。まずはエアコンとプランから

電気代の値上がりは「燃料費調整額」と「再エネ賦課金」という外部要因が主役。補助金でならされてはいるものの、安かった頃との差は残っています。中身を理解したうえで、自分で減らせる「使う量」から手をつけるのが賢い対策です。

よくある質問

電気代が一番高かったのはいつですか?

単価ベースでは2022年ごろがピークです。燃料価格の高騰と円安が重なった時期でした。その後は補助金による緩和もあり単価は下がりましたが、値上がり前の水準には戻っていません。

再エネ賦課金は今後も上がりますか?

当面は上昇傾向で、2030年前後がピークとの見方があります。買った電力量に対して一律にかかるため、使う量が多い家庭ほど負担が増えます。自家消費分には賦課金がかからない点が、太陽光の隠れたメリットです。

補助金が終わると、電気代はどうなりますか?

補助分(1kWhあたり数円)がなくなるぶん、実質的に値上がりして見えます。使用量が変わらなくても請求額は増えます。補助のある月とない月で検針票を比べると、影響の大きさが具体的に分かります。

燃料費調整額とは何ですか?

発電に使う燃料(原油・LNG・石炭)の輸入価格の変動を、毎月の電気料金に反映させる仕組みです。数か月前の燃料価格をもとに算出されるため、実際の値動きから少し遅れて明細に表れます。プラスにもマイナスにもなります。

電力会社を替えれば安くなりますか?

安くなる場合もありますが、必ずではありません。燃料費調整額と再エネ賦課金は、どの会社を選んでもかかります。差がつくのは基本料金と電力量料金の部分です。自分の使用パターン(時間帯・総量)に合ったプランかどうかで判断してください。

一番効果のある節約は何ですか?

使用量の大きいエアコン・給湯・冷蔵庫の見直しです。とくにエアコンは、10年以上前の機種から省エネ機へ買い替える効果が大きくなります。待機電力の削減は取り組みやすい反面、金額への効き方は限定的です。

契約アンペアを下げれば電気代は安くなりますか?

基本料金は下がりますが、使った分の料金は変わりません。効果は月に数百円程度です。下げすぎるとブレーカーが頻繁に落ちて生活に支障が出るため、数年間落ちたことがない、家族が減った、といった条件が揃う場合に限って検討してください。

記事の数字はいつの時点のものですか?

執筆時点のものです。再エネ賦課金は毎年5月に改定され、燃料費調整額は毎月変わります。補助金の有無や単価も年度ごとに変わるため、実際の判断は資源エネルギー庁や契約中の電力会社の最新情報で確認してください。

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出典:資源エネルギー庁(再エネ賦課金の年度別単価・電気ガス価格激変緩和対策)、新電力ネット・各種電力比較サイトの家庭用平均単価/平均電気代データをもとに作成。数値は目安であり、契約・地域・使用量により異なります。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。