この記事は連載「連載」(全5回)の1本です。

連載第4回で、屋根に何kW載るかを判断する材料が揃いました。ここで多くの人が次の質問にぶつかります。

「載せられるだけ載せたほうが得なのでは?」

答えはいいえです。この記事では、まずkWとkWhの違いという基本を押さえたうえで、屋根の最大容量ではなく自分の使用量から適正容量を逆算する手順を、第3回と同じ計算モデルで検証します。

結論:適正容量は「年間使用量 ÷ 1,100」が出発点

先に結論と計算式を出します。

目安容量(kW)= 年間の電気使用量(kWh)÷ 1,100

年間4,800kWh使う家庭なら 4,800 ÷ 1,100 = 約4.4kW。ここに屋根の制約と将来計画を足し引きして決めます。実際の試算ではこの目安の1〜1.3倍あたりが投資効率のピークになります。

まず整理:kWとkWhは何が違うのか

ここを混同していると、業者の説明も試算表も正しく読めません。

単位 意味 たとえると
kW(キロワット) 瞬間の能力。設備の大きさ 蛇口の太さ
kWh(キロワットアワー) 量。1kWを1時間使った電力量 溜まった水の量

見積書に出てくる「5kW」はパネルの能力、検針票の「450kWh」は使った量です。太陽光の話では、この2つが同じ文章の中に混在するので混乱が起きます。

もうひとつ、パネルのkWは公称最大出力(STC条件下の値)です。気温25度・日射1,000W/㎡という試験室の条件なので、実際の屋根で5kWのシステムが5kWちょうど発電することはほぼありません。真夏はパネルが高温になって出力が落ちるため、実際のピークは公称の8割前後になります。

パネル容量とパワコン容量は別物

見積書には2つの容量が出てきます。

  • パネル(モジュール)容量:直流側の合計。「5.0kW」などと表記
  • パワコン容量:交流側の変換能力。「4.5kW」などと表記

パネル容量がパワコン容量を上回る構成を過積載と呼びます。住宅用では「パネル5kW+パワコン4.5kW」程度の軽い過積載は昔から常識的に行われてきました。ピーク時にパワコンの上限で切られる(ピークカット)損失より、朝夕や曇天時に発電量が増える効果のほうが大きいためです。

ただし注意点があります。多くのメーカー保証はパワコン容量の1.2倍程度までしか適用されません。それを超える構成を提案されたら、保証範囲を書面で確認してください。


「載せられるだけ載せる」がなぜ得ではないのか

ここが本題です。第3回と同じ計算モデルで、容量だけを3kWから8kWまで動かして回収年数を計算しました。前提は年間使用量4,800kWh・発電量1,100kWh/kW・買電31円・パワコン交換費25万円込み、設置費は容量が大きいほどkW単価が下がる相場を反映しています。

容量別の回収年数を比較したグラフ。自家消費が容量に比例すると仮定すると大容量ほど回収が早く見えるが、日中に使える量に上限があると5kWが最短13年で6kW以上は14年で横ばいになる
図13:容量を増やしても回収年数は縮まない

2本の線の違いが、この記事でいちばん伝えたいことです。

オレンジの線=営業試算に多い「自家消費率30%固定」

容量が増えても自家消費率を30%のまま計算すると、大容量ほど回収が早く見えます(8kWで12年)。しかしこれは、8kWにすれば昼間の消費量が2,640kWhに増えるという意味です。家族の生活は容量に合わせて変わりません。

青の線=現実「日中に使える量には上限がある」

年間4,800kWhのうち、日中(おおむね9〜16時)に消費するのは全体の3〜3.5割、つまり1,700kWh程度が自家消費の上限です。この上限を入れると結果は変わります。

容量 設置費用 自家消費 売電 回収年数 20年収支
3kW 87万円 990kWh 2,310kWh 20年 +2.2万円
4kW 110万円 1,320kWh 3,080kWh 14年 +17.3万円
5kW 132万円 1,650kWh 3,850kWh 13年(最短) +33.4万円
6kW 153万円 1,700kWh(上限) 4,900kWh 14年 +39.5万円
7kW 175万円 1,700kWh(上限) 6,000kWh 14年 +42.7万円
8kW 197万円 1,700kWh(上限) 7,100kWh 14年 +46.0万円

6kWを超えると、増えた発電はすべて8.3円の売電に流れます。自家消費できる量が1,700kWhで飽和するからです。だから回収年数は14年で横ばいになります。

ただし「大きく載せても損」ではない

誤解しないでいただきたいのは、20年収支は容量とともに増え続ける点です(+33.4万→+46.0万)。大きく載せれば総額では得します。変わるのは投資の効率です。

容量ごとの投資効率を示した棒グラフ。20年収支を初期費用で割った比率は3kWで3%、5kWで25%、6kWで26%とピークになり、7kW24%、8kW23%と下がる
図14:容量ごとの投資効率(20年収支÷初期費用)

投じたお金1円あたりのリターンで見ると、ピークは5〜6kW(25〜26%)。8kWでは23%まで落ちます。65万円多く払って収支は12.6万円しか増えない——この差が投資効率です。

3kWの3%という数字も重要です。小容量はkW単価が高いうえに固定費(工事費・申請費・パワコン)が薄まらないため、極端に効率が悪くなります。「小さく始める」は太陽光では合理的でありません。


適正容量を決める4ステップ

ステップ1:年間使用量を出す

検針票またはWeb明細で12か月分の使用量(kWh)を合計します。これが唯一の出発点です。この数字を持たずに容量を決めるのは不可能です。

ステップ2:目安容量を計算する

年間使用量 ÷ 1,100 が目安。地域によって1,000〜1,300で割ってもかまいません。

年間使用量 目安容量 投資効率のよいレンジ
3,000kWh(単身・夫婦のみ) 2.7kW 3〜4kW
4,000kWh 3.6kW 4〜5kW
4,800kWh(4人家族の標準) 4.4kW 5〜6kW
6,000kWh(オール電化など) 5.5kW 6〜7kW
8,000kWh(EV+オール電化) 7.3kW 7〜9kW

ステップ3:将来の増加を見込むか判断する

ここが実務的な判断ポイントです。EV購入・オール電化・エコキュート導入の予定があるなら、その分を先に見込んで大きく載せる価値があります。使用量が増えれば自家消費の上限も上がり、大容量の効率が改善するからです。

逆に、予定が不確かなら見込まないほうが安全です。「将来EVを買うかもしれないので8kWにしましょう」という提案は、EVを買わなければ効率の悪い構成が残るだけです。パネルは後から増設もできます(費用は割高になりますが)。

ステップ4:屋根の制約と突き合わせる

第4回のとおり、1kWあたり5〜7㎡が必要で、離隔と割り付けで2〜3割は載りません。目安容量が載らない場合は、載る範囲で最大を取るのが基本。逆に目安の1.3倍以上載る屋根なら、その全部を埋める必要はありません。

実際の数字は第3回の回収年数シミュレーターで容量を動かして確かめてください。設置費用も容量に応じて変えるのがポイントです。

シミュレーターで上の表を再現するときの注意:ツールは自家消費を固定して計算するため、5kWまでは「30%」でそのまま一致しますが、6kW以上は自家消費量が1,700kWhで飽和するので率が下がります(6kW→約26%、7kW→約22%、8kW→約19%)。6kW以上を試すときは自家消費率を1段下げて選んでください。30%のまま計算すると、図13のオレンジの線(過大な試算)になります。


2026年の実勢:平均5.3kW

参考として、住宅用で選ばれている容量は3〜5kWが一般的、多くの家庭では4〜5kW。2025年の施工実績では平均5.3kWとされ、使用量の多い家庭では6〜8kWの例も増えています。

この「4〜5kWが標準」という数字には根拠があります。日本の平均的な世帯の年間使用量(4,000〜5,000kWh)を1,100で割ると3.6〜4.5kW。そこに投資効率のピークが目安の1〜1.3倍という性質を掛けると、ちょうど4〜6kWに収まるのです。相場は偶然ではなく、使用量から導かれた結果だと理解しておくと、極端な提案に気づきやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. 屋根に8kW載るのに5kWを勧められました。損していませんか?

A. 損はしていません。20年の総額では8kWのほうが13万円ほど多く残ります。ただし65万円多く投資した結果なので、投資効率では5kWのほうが有利です。手元資金に余裕があり、将来EVなどで使用量が増える見込みがあれば8kW、そうでなければ5kW——これが妥当な整理です。

Q. 逆に「屋根いっぱいの8kWで」と強く勧められています。

A. 試算表の自家消費率がどう設定されているかを確認してください。容量を増やしても30%固定で計算していれば、その試算は過大です。「8kWにすると昼間の消費量が2,600kWhに増える前提になっていますが、根拠は何ですか」と聞くのが有効です。

Q. あとから増設できますか?

A. 技術的には可能ですが、足場を再度組む必要があり、パワコンの容量も足りなくなるため割高になります。またFITの認定は容量変更の手続きが必要で、増設分の売電単価はその年度の価格が適用されます。最初に決めるほうが有利です。

Q. 「公称5kW」なら晴れた日に5kW発電しますか?

A. しません。公称値は気温25度・日射1,000W/㎡という試験条件の値です。実際は配線損失やパワコンの変換損失、そしてパネルの温度上昇による出力低下があり、真夏のピークでも公称の8割前後です。意外にも、春先の晴れて涼しい日が最も発電します。

Q. 目安容量より小さくしか載りません。やめるべきですか?

A. 3kW以下になるなら要検討です。図14のとおり3kWの投資効率は3%まで落ちます。ただし補助金の有無で大きく変わるので、シミュレーターに補助金額を入れて確認してください。


まとめ:屋根の最大容量ではなく、使用量から逆算する

  • kW=設備の大きさ(蛇口の太さ)、kWh=使った量(水の量)。見積書と検針票で単位が違うことを意識する。
  • 目安容量は年間使用量 ÷ 1,100。実際の投資効率のピークはその1〜1.3倍
  • 自家消費できる量には日中需要という上限がある。それを超える容量分は8.3円の売電に流れるだけ。
  • 使用量4,800kWhなら5〜6kWが投資効率のピーク(25〜26%)。8kWでは23%に低下。
  • 3kW以下は極端に効率が悪い(3%)。固定費が薄まらないため。
  • 大容量が有利になるのはEV・オール電化などで使用量が増える確定的な計画があるときだけ。

次回(第6回)は「【2026年版】補助金完全ガイド」——国の制度と自治体の制度の違い、蓄電池・断熱リフォームとの併用条件、申請のタイミングを整理します。図14で見たとおり、補助金は回収年数を最も大きく動かすレバーです。

連載を通して読む:第1回 仕組み第2回 2026年に載せ得か?第3回 回収年数シミュレーター第4回 向いている屋根

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※本記事の試算は2026年7月時点の相場をもとにした概算です。前提は年間使用量4,800kWh・発電量1,100kWh/kW・買電31円・2026年度FIT(1〜4年目24円/5年目以降8.3円)・15年目にパワコン交換費25万円。kW単価は容量が大きいほど下がる相場を反映しています。自家消費の上限1,700kWhは日中消費が年間使用量の約35%という想定です。発電量の経年劣化・金利・税金は含みません。実際の判断は3社以上の見積もりと自宅の検針票をもとに行ってください。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。