この記事は、連載幹線設備の設計マニュアル」第3回 幹線サイズの選定 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
第12回 幹線・ケーブルサイズの選び方の全体像
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。第4部の2回目は、前回求めた容量を安全に流すための——ケーブルサイズ(太さ)の選び方。キーワードは許容電流です。

ペンタ
先輩、図面に「CV 38sq」とか書いてありますよね。あの太さって、どうやって決めてるんですか?経験と勘…?
はりた
昔はそういう先輩もいたけど(笑)、正解は計算と表で決める。しかも4ステップの型がある。今日はその型を持って帰ってもらうよ。
ペン太ペン太
ケーブルの太さって、電流値で表を引くだけで決まりますよね?
ハリタハリタ
4ステップあります。敷設条件での補正と、最後のブレーカーとの整合確認が肝です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 図面の「CV 38sq」は、何を根拠に決まった太さでしょうか。
  • 同じ38sqでも許容電流が変わるのはなぜでしょうか。
  • ケーブルの許容電流とブレーカー定格、どちらが大きければ正しいでしょうか。

電流→太さの4ステップ

トピック1:電流→太さの4ステップ
設計電流の算出から許容電流表での選定までの4ステップフロー
【図1】サイズ決定フロー。第1回のI=P÷V、第3回の力率がここで実戦投入される
ペンタ
STEP1の式、第1回と第3回でやったやつだ…!P÷V…三相は√3と力率。本当に再登場するんですね。
はりた
第1部は全部ここへの伏線だったのだ(笑)。で、今日の主役はSTEP2〜3。ケーブルには「安全に流せる電流の上限」=許容電流があって、それは発熱の限界で決まってる。電気が流れると電線は発熱する。絶縁体が耐えられる温度を超えないギリギリのライン、それが許容電流だ。
ペン太ペン太
同じ38sqなのに、155Aが92Aまで下がるんですか!?
ハリタハリタ
束ねたり管に収めると放熱が落ちるからです。許容電流はブレーカー定格以上が原則。
STEPやること使う知識つまずきやすい点
STEP1設計電流を求めるP÷V(三相は√3と力率)力率や相を取り違える
STEP2敷設条件を確認する空中/管内、束ね本数、周囲温度条件を見ずに表の最大値を使う
STEP3表から太さを選ぶ許容電流(補正後)≧設計電流補正(低減率)を掛け忘れる
STEP4検算する許容電流≧ブレーカー定格サイズだけ決めて整合確認を飛ばす
ここまでのポイント
  • サイズ決定は、電流を求める→条件で補正→表で選ぶ→検算、の4ステップ。
  • STEP1のP÷V(三相は√3と力率)は、第1回・第3回の内容がそのまま実戦投入される場面。
  • 主役はSTEP2〜3。許容電流は「安全に流せる電流の上限」で、正体は発熱の限界。

許容電流表の読み方 ― 条件で変わるのがミソ

トピック2:許容電流表の読み方 ― 条件で変わるのがミソ
許容電流表の読み方:サイズの行と敷設条件の列で選ぶ
【図2】許容電流表の読み方(イメージ値)。同じ38sqでも、条件で155A→92Aまで変わる
ペンタ
同じ太さなのに、束ねると半分近くまで減るんですか!?
はりた
そう、ここが新人が一番驚くポイント。理由はシンプルで、束ねる・管に入れる・暑い場所=熱がこもるから。放熱できないと同じ電流でも温度が上がるので、上限を下げるしかない。真夏の天井裏なんて条件としては最悪クラス。だから「どこを・どう通るか」を決めないとサイズは決められない——施工実務編⑤⑥で見たルートの話が、計算に直結してるんだ。
ペンタ
図2の緑の枠、「許容電流≧ブレーカー定格」…これはどういう意味ですか?
はりた
ケーブルを守るのは上流のブレーカー(第9回)だったよね。もしケーブルの体力(許容電流100A)よりブレーカー定格(150A)が大きかったら、ケーブルが悲鳴を上げてもブレーカーが落ちない。守り神が守れない組み合わせは絶対NG。サイズ選定とブレーカー選定は必ずセットで整合させる。
ここまでのポイント
  • 電気が流れると電線は発熱する。絶縁体が耐えられる温度を超えないギリギリの線が許容電流。
  • 束ねる・管に収めると放熱が落ちるため、同じ38sqでも155Aが92Aまで下がる。
  • 許容電流≧ブレーカー定格が大原則。ケーブルより先にブレーカーが落ちない組み合わせはNG。

💼 実務でこう生きる

トピック3:実務でこう生きる
📋 実務活用事例:幹線サイズの選定書を書く
分電盤L-3への幹線。負荷合計×需要率→設計電流92A→電線管3本収容の条件→表から38sqを選定、主幹100AのMCCBと整合確認——この一連を計算書に残します。
→ 数年後の増設検討でも、この計算書があれば「あと何A余裕があるか」が一目瞭然。計算書は未来の自分への申し送りです。
📋 実務活用事例:計算ツールで検算する
手計算で型を覚えたら、実務では計算ツールで効率化&検算するのが定石。当サイトの無料計算ツール一覧には幹線サイズ・電圧降下などの計算ツールがあります。ツールに入れる数字の意味が分かる——それが今日の内容の価値です。
ここまでのポイント
  • 幹線の選定は、設計電流・敷設条件・選んだサイズ・主幹との整合まで計算書に残す。
  • 計算書があれば、数年後の増設検討でも「あと何A余裕があるか」がすぐ分かる。
  • 手計算で型を覚えたら、実務では計算ツールで効率化と検算をするのが定石。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック4:いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 「sq(スケア)」って何の単位?
導体の断面積で、単位はmm²(平方ミリメートル)。squareの略で、現場では「38スケ」のように読みます。太いほど断面積が大きい=電気の通り道が広い=許容電流が大きい。第1回の水のたとえなら「水路の広さ」です。ちなみに細い電線は直径(1.6mm・2.0mm)で呼ぶ流儀もあります。
🐣 ケーブルとより線、電線って全部同じもの?
「電線」は導体に絶縁被覆をしたもの(IV線など)、「ケーブル」は電線をさらに外装(シース)で束ねて保護したもの(CVケーブルなど)。導体が1本の単線と、細い素線をより合わせたより線があり、太いサイズはほぼより線です。用語編⑤(電線・配管材の呼び名)で深掘り予定!
用語中身サイズ選定での意味
sq(スケア)導体の断面積(mm²)数字が大きいほど通り道が広く、許容電流も大きい
電線導体に絶縁被覆をしたもの(IV線など)単線とより線があり、太いサイズはほぼより線
CV3心をひとつの外装に入れたケーブル幹線でも使うが、放熱ではCVTに一歩ゆずる
CVT単心のCVを3本より合わせたもの放熱が良く許容電流が大きめ。曲げやすく施工性も良い
ここまでのポイント
  • sqは導体の断面積の単位(mm²)。太いほど通り道が広く、許容電流も大きい。
  • 細い電線は直径(1.6mm・2.0mm)で呼ぶ流儀もある。
  • 「電線」は導体に絶縁被覆をしたもの、「ケーブル」はさらに外装で束ねて保護したもの。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック5:深掘りQ&A ― 会話でもっと分かる
🔎 「CVとかCVTって何が違うんですか?」と聞いてみた
はりた「CVは架橋ポリエチレン絶縁のケーブルで、3心をひとつの外装に入れたのがCV3心。CVTは単心のCVを3本より合わせたもので、放熱が良く許容電流が大きめ、曲げやすくて施工性もいい。幹線の主役はCVT——名前と得意技をセットで覚えよう」
🔎 「許容電流ぴったりで選ぶのは危険ですか?」と聞いてみた
はりた「ぴったりは避ける。将来の負荷増、想定外の高温、表の条件とのズレ——現実は計算より厳しい方に転ぶことがある。1〜2割の余裕を持たせるか、1サイズ上げるのが実務の相場。ただし太くしすぎはコストと施工性(曲げ・端子)に跳ね返るから、根拠のある余裕にすること」
🔎 「電圧が高いと電流が減るって、サイズにも効くんですか?」と聞いてみた
はりた「効く効く。同じ30kWでも、単相100Vなら300A、三相210Vなら92A——電圧が高いほど電流が小さくてサイズも細くできる。第8回の「なぜ高圧で受電するか」と同じ理屈が、建物の中の電圧選びにも生きてるんだ」
ここまでのポイント
  • CVは3心をひとつの外装に入れたもの、CVTは単心のCVを3本より合わせたもの。
  • CVTは放熱が良く許容電流が大きめで、曲げやすく施工性も良い。幹線の主役。
  • 許容電流ぴったりは避け、1〜2割の余裕か1サイズ上げるのが実務の相場。ただし太くしすぎは費用と施工性に跳ね返る。
  • 同じ30kWでも単相100Vなら300A、三相210Vなら92A。電圧が高いほど電流が小さく、太さも細くできる。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック6:新人がやりがちな注意ポイント
  • 表の条件を確認せず数字だけ引用しない:空中の値?管内の値?周囲温度は?——列と前提条件までがワンセット。
  • 低減率(補正)を忘れない:束ね本数・周囲温度の補正を飛ばすと、現場で熱いケーブルができあがります。
  • ブレーカーとの整合を最後に必ず確認:許容電流≧ブレーカー定格。サイズだけ決めて終わりにしない。
ペン太ペン太
計算値ぴったりのサイズを選べばいいですか?
ハリタハリタ
1〜2割の余裕か上位サイズを。将来の負荷増や想定外の高温に備えるのがプロです。
ここまでのポイント
  • 表は数字だけでなく、空中か管内か・周囲温度は何度かという前提条件までがワンセット。
  • 束ね本数や周囲温度の補正(低減率)を飛ばさない。
  • 最後に必ず許容電流≧ブレーカー定格を確認する。サイズだけ決めて終わりにしない。

まとめ ― 今日の1枚

トピック7:まとめ ― 今日の1枚

ケーブルの太さは、経験や勘ではなく計算と表で決まります。決め手になるのは表の数字そのものより、その数字が成り立つ条件のほうです。

判定する場面見る不等号外したときに起きること
太さを選ぶ補正後の許容電流 ≧ 設計電流ケーブルが想定より熱を持つ
ブレーカーと合わせるケーブルの許容電流 ≧ ブレーカー定格ケーブルが悲鳴を上げてもブレーカーが落ちない
余裕を見る選定サイズ > 計算値ぴったり将来の負荷増や高温でいきなり限界に届く
太さを決め切る太くしすぎない費用と施工性(曲げ・端子)に跳ね返る

手順と正体

  • サイズ選定は電流を求める→条件で補正→表で選ぶ→検算の4ステップ。
  • 許容電流の正体は発熱の限界。放熱が悪い条件ほど流せる電流は減る

整合の大原則

  • 大原則:ケーブルの許容電流 ≧ ブレーカー定格。守られる側が強くないと意味がない。
  • 許容電流ぴったりは避け、1〜2割の余裕か1サイズ上げるのが実務の相場。

記録と道具

  • 計算書に条件と根拠を残す。ツールは意味が分かってこそ武器になる。
  • 選定書に設計電流・敷設条件・選んだサイズ・主幹との整合まで残すと、数年後の増設検討がすぐできる。

図面の「CV 38sq」は、4ステップを通った結果の1行です。順番が身につくと、他人が描いた図面も根拠まで読めるようになります。

次回・第13回は、サイズ選定のもう一つの検算——電圧降下の計算。「長い距離を送ると電圧が痩せる」問題を図解します。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。