📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。今回から第4部「設計計算の基礎」——いよいよ“手を動かす”設計の世界へ。初回は容量計算の第一歩、需要率と不等率です。難しい式は出てきません。核心はたったひとつ、「全部同時には使わない」

ペンタ
先輩、第10回で作った負荷表、合計90kWでした。じゃあトランスも主幹も90kW分用意すればいいんですよね?
はりた
そう思うよね。でも実際の建物で、照明もコンセントも空調も全部が同時にフル稼働する瞬間って、あると思う? 1日の電気の使われ方を見てみよう。

1日の負荷カーブ ― 合計とピークは全然違う

設備容量の合計と実際のピークの差を示す1日の負荷カーブ
【図1】1日の負荷の山と谷。設備合計100kWでも、実際のピークは60kW
ペンタ
ほんとだ…深夜はほぼゼロで、ピークでも合計の6割。じゃあ90kW分の設備を用意したら作りすぎなんですね。
はりた
その「実際に使う割合」を係数にしたのが需要率=最大需要電力÷設備容量。図の例なら60÷100=0.6。設備は合計じゃなく実際のピークに合わせて選ぶ——これが容量設計の出発点。過大設計はお金の無駄、過小設計は危険。需要率はそのバランスを取る道具なんだ。

需要率で圧縮し、不等率で調整する

負荷種別ごとの需要率帯グラフと不等率の考え方
【図2】需要率の帯グラフ。負荷の性格で係数が違う。下段はもう1つの係数「不等率」
ペンタ
コンセントの需要率0.4って低いですね。なんで負荷によって違うんですか?
はりた
負荷の“性格”が違うから。照明は営業中ほぼ全灯つくから高め、コンセントは口数のわりに同時に使う機器が限られるから低め、空調は真夏のピークにほぼ全開になるから高め。負荷の使われ方を想像して係数を選ぶのが設計者の仕事で、標準値は設計資料に用途別でまとまってるよ。
ペンタ
「不等率」っていうのは…needs率と何が違うんですか?あ、需要率と、です(笑)
はりた
(笑)いい質問。需要率は1つのグループの中の話。不等率はグループ同士のピークがずれることを表す係数だ。1階の盤は昼がピーク、レストランのある2階は夜がピーク——全体のピークは「各盤ピークの合計」より小さくなる。だから上位の幹線やトランスは単純合計より細く・小さくできる。需要率で圧縮して、不等率で調整——2段階の“現実補正”なんだ。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:トランス容量の根拠を説明する
「なぜ動力トランスは75kVAなんですか?」と聞かれたとき——「設備容量の合計にグループごとの需要率を掛けて、最大需要を55kW程度と見込み、力率と将来増設分を織り込んで75kVAです」と答えられれば一人前。容量の数字には全部ストーリーがある。それを組み立てるのが第4部です。
📋 実務活用事例:省エネ・契約見直しにも同じ考え方
既存ビルの契約電力の見直しやデマンド管理も、実は需要率の世界。実測の最大需要(デマンド値)と設備容量を見比べれば、「作りすぎの設備」や「削れる契約」が見えてきます。新築の設計だけでなく、運用改善の提案にも使える考え方です。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 需要率って誰が決めるの?勝手に決めていいの?
設計者が根拠を持って選びます。ただしゼロから発明するのではなく、内線規程や設計資料に建物用途別・負荷種別ごとの標準値がまとめられており、それをベースに建物の実態(使われ方のヒアリング)で補正します。「なぜその値にしたか」を説明できることが大事です。
🐣 需要率を低く見積もりすぎたらどうなるの?
設備が実際のピークに耐えられず、ブレーカーが頻繁に落ちる・トランスが過負荷になる建物になります。逆に高すぎると過大投資。だから迷ったら安全側(高め)に寄せつつ、実態データがあればそれを優先——というのが実務のさじ加減です。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「負荷率という言葉も聞きますが、需要率と違うんですか?」と聞いてみた
はりた「需要率=ピーク÷設備容量。負荷率=平均÷ピーク。似てるけど視点が違って、負荷率は“設備がどれだけムラなく使われているか”を表す。負荷率が高い建物ほど設備投資の効率がいい。省エネ診断でよく出てくる指標だよ」
🔎 「将来の増設分はどう見込むんですか?」と聞いてみた
はりた「需要率で圧縮した値に、将来増設の余裕(例えば2割)を上乗せしてから機器容量を選ぶのが定石。第9回の予備回路と同じ発想だね。ただし余裕の積みすぎは過大設計——お客さんと将来計画をヒアリングして根拠のある余裕にする」
🔎 「不等率はどうやって測るんですか?」と聞いてみた
はりた「新築では測れないから、用途ごとの実績データや設計資料の値を使う。既存建物ならデマンドデータ(30分ごとの需要記録)から実測できる。理屈は“ピークの時間帯がズレるほど不等率が大きい=全体は楽になる”。ホテルと事務所の複合ビルなんかで効果てきめんだよ」

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 設備容量の合計で機器を選ばない:合計はスタート地点。需要率・不等率で現実の値に補正してから選定。
  • 係数の根拠を残さない:計算書に「需要率0.6(○○資料の事務所ビル標準値)」のように出典と判断を書く。
  • 専用回路・特殊負荷を一括りにしない:大型機器・医療機器など「必ず動く負荷」は需要率1.0で見るなど個別判断を。

まとめ ― 今日の1枚

  • 核心は「全部同時には使わない」。設備は合計でなく実際のピークに合わせる。
  • 需要率=最大需要÷設備容量。負荷の性格で値が変わる(照明高め・コンセント低め・空調高め)。
  • 不等率=グループ同士のピークのズレ。上位設備は単純合計より小さくできる。
  • 係数には根拠を。出典と判断を計算書に残すのがプロ。

次回・第12回は、決まった容量を安全に流すために——幹線・ケーブルサイズの選び方(許容電流。「電流→サイズ」の決定フローを図解します。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
📖次に読むならこれ【新人講座 第18回】消防・防災設備の設計のさわり ― “防災の電気”は用途×規模で決まる新人教育