この記事は、連載幹線設備の設計マニュアル」第2回 負荷容量の集計 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
第11回 負荷容量と需要率・不等率の全体像
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。今回から第4部「設計計算の基礎」——いよいよ“手を動かす”設計の世界へ。初回は容量計算の第一歩、需要率と不等率です。難しい式は出てきません。核心はたったひとつ、「全部同時には使わない」

ペンタ
先輩、第10回で作った負荷表、合計90kWでした。じゃあトランスも主幹も90kW分用意すればいいんですよね?
はりた
そう思うよね。でも実際の建物で、照明もコンセントも空調も全部が同時にフル稼働する瞬間って、あると思う? 1日の電気の使われ方を見てみよう。
ペン太ペン太
変圧器の容量って、全部の負荷の合計で選べばいいんですよね?
ハリタハリタ
全部同時には使いません。負荷カーブを見ると、合計とピークは全然違うんです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 負荷表の合計が90kWなら、トランスも90kW分そろえるべきでしょうか。
  • 照明とコンセントで需要率が違うのはなぜでしょうか。
  • 需要率と不等率は、どこが違うのでしょうか。

1日の負荷カーブ ― 合計とピークは全然違う

トピック1:1日の負荷カーブ ― 合計とピークは全然違う
設備容量の合計と実際のピークの差を示す1日の負荷カーブ
【図1】1日の負荷の山と谷。設備合計100kWでも、実際のピークは60kW
ペンタ
ほんとだ…深夜はほぼゼロで、ピークでも合計の6割。じゃあ90kW分の設備を用意したら作りすぎなんですね。
はりた
その「実際に使う割合」を係数にしたのが需要率=最大需要電力÷設備容量。図の例なら60÷100=0.6。設備は合計じゃなく実際のピークに合わせて選ぶ——これが容量設計の出発点。過大設計はお金の無駄、過小設計は危険。需要率はそのバランスを取る道具なんだ。
ペン太ペン太
需要率と不等率って、同じ意味の言葉じゃないんですか?
ハリタハリタ
需要率は1グループ内のピーク比、不等率はグループ間のズレ。例では合計100kWでピーク60kWです。
ここまでのポイント
  • 照明もコンセントも空調も、全部が同時にフル稼働する瞬間はない。
  • 図1の例では、設備合計100kWに対して実際のピークは60kW。深夜はほぼゼロ。
  • 需要率=最大需要電力÷設備容量。図の例なら60÷100=0.6。
  • 過大設計は費用の無駄、過小設計は危険。需要率はそのバランスを取る道具。

需要率で圧縮し、不等率で調整する

トピック2:需要率で圧縮し、不等率で調整する
負荷種別ごとの需要率帯グラフと不等率の考え方
【図2】需要率の帯グラフ。負荷の性格で係数が違う。下段はもう1つの係数「不等率」
ペンタ
コンセントの需要率0.4って低いですね。なんで負荷によって違うんですか?
はりた
負荷の“性格”が違うから。照明は営業中ほぼ全灯つくから高め、コンセントは口数のわりに同時に使う機器が限られるから低め、空調は真夏のピークにほぼ全開になるから高め。負荷の使われ方を想像して係数を選ぶのが設計者の仕事で、標準値は設計資料に用途別でまとまってるよ。
ペンタ
「不等率」っていうのは…needs率と何が違うんですか?あ、需要率と、です(笑)
はりた
(笑)いい質問。需要率は1つのグループの中の話。不等率はグループ同士のピークがずれることを表す係数だ。1階の盤は昼がピーク、レストランのある2階は夜がピーク——全体のピークは「各盤ピークの合計」より小さくなる。だから上位の幹線やトランスは単純合計より細く・小さくできる。需要率で圧縮して、不等率で調整——2段階の“現実補正”なんだ。
係数何を表すかどこに効くか値が大きいと
需要率1つのグループの中の、ピーク÷設備容量そのグループの機器選定設備容量の合計に近い容量が必要になる
不等率グループ同士のピークのズレ上位の幹線・トランスピークがずれるほど上位設備は小さくできる
負荷率平均÷ピーク設備の使われ方の評価設備投資の効率が良い建物といえる
ここまでのポイント
  • 照明はほぼ全灯つくから高め、コンセントは口数のわりに同時使用が限られるから低め、空調は真夏にほぼ全開で高め。
  • 不等率はグループ同士のピークがずれることを表す係数。1階は昼、2階のレストランは夜がピーク。
  • 全体のピークは各盤ピークの合計より小さくなるので、上位の幹線やトランスは単純合計より細く・小さくできる。
  • 需要率で圧縮して、不等率で調整する2段階の現実補正。

💼 実務でこう生きる

トピック3:実務でこう生きる
📋 実務活用事例:トランス容量の根拠を説明する
「なぜ動力トランスは75kVAなんですか?」と聞かれたとき——「設備容量の合計にグループごとの需要率を掛けて、最大需要を55kW程度と見込み、力率と将来増設分を織り込んで75kVAです」と答えられれば一人前。容量の数字には全部ストーリーがある。それを組み立てるのが第4部です。
📋 実務活用事例:省エネ・契約見直しにも同じ考え方
既存ビルの契約電力の見直しやデマンド管理も、実は需要率の世界。実測の最大需要(デマンド値)と設備容量を見比べれば、「作りすぎの設備」や「削れる契約」が見えてきます。新築の設計だけでなく、運用改善の提案にも使える考え方です。
ここまでのポイント
  • 「なぜこの容量か」を、設備容量→需要率→最大需要→力率と将来増設、の順で説明できるようにしておく。
  • 容量の数字には必ずストーリーがある。それを組み立てるのが設計計算。
  • 既存ビルの契約電力の見直しやデマンド管理も同じ考え方。実測の最大需要と設備容量を見比べる。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック4:いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 需要率って誰が決めるの?勝手に決めていいの?
設計者が根拠を持って選びます。ただしゼロから発明するのではなく、内線規程や設計資料に建物用途別・負荷種別ごとの標準値がまとめられており、それをベースに建物の実態(使われ方のヒアリング)で補正します。「なぜその値にしたか」を説明できることが大事です。
🐣 需要率を低く見積もりすぎたらどうなるの?
設備が実際のピークに耐えられず、ブレーカーが頻繁に落ちる・トランスが過負荷になる建物になります。逆に高すぎると過大投資。だから迷ったら安全側(高め)に寄せつつ、実態データがあればそれを優先——というのが実務のさじ加減です。
ここまでのポイント
  • 需要率は設計者が根拠を持って選ぶ。内線規程や設計資料に用途別・負荷種別の標準値がある。
  • 標準値をベースに、建物の実態をヒアリングして補正する。「なぜその値か」を説明できることが大事。
  • 低く見積もりすぎるとブレーカーが頻繁に落ちる・トランスが過負荷になる。高すぎると過大投資。
  • 迷ったら安全側に寄せつつ、実態データがあればそれを優先する。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック5:深掘りQ&A ― 会話でもっと分かる
🔎 「負荷率という言葉も聞きますが、需要率と違うんですか?」と聞いてみた
はりた「需要率=ピーク÷設備容量。負荷率=平均÷ピーク。似てるけど視点が違って、負荷率は“設備がどれだけムラなく使われているか”を表す。負荷率が高い建物ほど設備投資の効率がいい。省エネ診断でよく出てくる指標だよ」
🔎 「将来の増設分はどう見込むんですか?」と聞いてみた
はりた「需要率で圧縮した値に、将来増設の余裕(例えば2割)を上乗せしてから機器容量を選ぶのが定石。第9回の予備回路と同じ発想だね。ただし余裕の積みすぎは過大設計——お客さんと将来計画をヒアリングして根拠のある余裕にする」
🔎 「不等率はどうやって測るんですか?」と聞いてみた
はりた「新築では測れないから、用途ごとの実績データや設計資料の値を使う。既存建物ならデマンドデータ(30分ごとの需要記録)から実測できる。理屈は“ピークの時間帯がズレるほど不等率が大きい=全体は楽になる”。ホテルと事務所の複合ビルなんかで効果てきめんだよ」
ここまでのポイント
  • 需要率=ピーク÷設備容量、負荷率=平均÷ピーク。負荷率は設備がどれだけムラなく使われているかを表す。
  • 将来増設は、需要率で圧縮した値に余裕(例えば2割)を上乗せしてから機器容量を選ぶのが定石。
  • 余裕の積みすぎは過大設計。将来計画をヒアリングして根拠のある余裕にする。
  • 不等率は新築では測れないので用途別の実績データや設計資料の値を使う。既存建物ならデマンドデータから実測できる。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック6:新人がやりがちな注意ポイント
  • 設備容量の合計で機器を選ばない:合計はスタート地点。需要率・不等率で現実の値に補正してから選定。
  • 係数の根拠を残さない:計算書に「需要率0.6(○○資料の事務所ビル標準値)」のように出典と判断を書く。
  • 専用回路・特殊負荷を一括りにしない:大型機器・医療機器など「必ず動く負荷」は需要率1.0で見るなど個別判断を。
ペン太ペン太
係数は、どうやって決めればいいんですか?
ハリタハリタ
設計資料の標準値を建物実態で補正し、出典と理由を計算書に。増設余裕2割もお忘れなく。
ステップやること計算書に残すもの
① 標準値を引く用途別・負荷種別の標準値を設計資料から選ぶ使った資料と選んだ値
② 実態で補正する建物の使われ方をヒアリングして寄せる補正した理由
③ 特殊負荷を分ける必ず動く負荷は個別に扱う個別判断の対象と考え方
④ 増設余裕を乗せる将来計画に応じて余裕を上乗せする余裕の根拠にした将来計画
ここまでのポイント
  • 設備容量の合計はスタート地点。需要率・不等率で現実の値に補正してから機器を選ぶ。
  • 計算書に「需要率0.6(○○資料の事務所ビル標準値)」のように出典と判断を書く。
  • 大型機器・医療機器など「必ず動く負荷」は需要率1.0で見るなど、専用回路・特殊負荷は個別に判断する。

まとめ ― 今日の1枚

トピック7:まとめ ― 今日の1枚

容量設計の核心は、合計ではなくピークに合わせること。合計はスタート地点で、そこから2段階の現実補正を通してはじめて機器の容量になります。

段階見ている数字ここでの問い
負荷表の合計設備容量どれだけの設備があるか
需要率をかけるグループの最大需要実際にどれだけ同時に使うか
不等率で調整する建物全体の最大需要各グループのピークはずれているか
余裕を乗せる選ぶ機器の容量将来の増設をどこまで見込むか

出発点と需要率

  • 核心は「全部同時には使わない」。設備は合計でなく実際のピークに合わせる。
  • 需要率=最大需要÷設備容量。負荷の性格で値が変わる(照明高め・コンセント低め・空調高め)。

不等率とその効果

  • 不等率=グループ同士のピークのズレ。上位設備は単純合計より小さくできる。
  • 既存建物ならデマンドデータから実測でき、新築では用途別の実績データや設計資料の値を使う。

根拠を残す

  • 係数には根拠を。出典と判断を計算書に残すのがプロ。
  • 「需要率0.6(○○資料の事務所ビル標準値)」のように、出典と判断をセットで書き残す。

容量の数字は、誰かに聞かれたときに理由を答えられてはじめて設計になります。第4部はその理由を組み立てる練習です。

次回・第12回は、決まった容量を安全に流すために——幹線・ケーブルサイズの選び方(許容電流)。「電流→サイズ」の決定フローを図解します。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
引込・受電の計画のなかで読む
この内容は、連載「引込・受電設備の設計マニュアル」の 第2回 契約電力の想定 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。