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本連載は、電気設備の設計・施工に携わるプロが「家の電気の防災」を暮らし目線で解説するシリーズです。今回は第5回の深堀り編として、太陽光と蓄電池が災害時に「本当に生きる」条件を、組み合わせパターン別に整理します。

「太陽光も蓄電池もあるのに、停電で使えなかった」が起きる理由

大きな災害のあと、こんな声が必ず出ます。「うちは太陽光を載せているのに、停電中まったく使えなかった」「蓄電池を入れたのに、翌朝には空になっていた」。

設備が壊れていたわけではありません。設備の「組み合わせ」と「設定」が、災害時に生きる条件を満たしていなかっただけです。逆に言えば、条件さえ押さえれば同じ予算でも停電時の実力はまるで変わります。今回はその条件を、パターン別に見ていきます。

パターン別 ― 停電が3日続いたら、どこまで持ちこたえるか

太陽光・蓄電池・EVの組み合わせは、大きく4パターンに分けられます。ポイントは「発電する力(昼)」と「ためる力(夜)」がそろっているかです。

設備の組み合わせパターン別・災害時の実力の比較図。パターン1蓄電池だけは数時間〜1日、パターン2太陽光だけは昼だけ1500Wで夜はゼロ、パターン3太陽光+停電時充電対応の蓄電池は晴れが続けば無期限、パターン4太陽光+EVのV2Hは数日から1週間規模

パターン1:蓄電池だけ ― 実力は「大きなポータブル電源」

太陽光がない家に蓄電池だけを入れた場合、停電中はためた電気が減っていく一方です。系統から充電できないため、容量を使い切ればそこで終わり。5〜7kWhクラスで冷蔵庫と照明、スマホ充電に絞れば1日程度はしのげますが、エアコンを使えば数時間です。

これは「悪い選択」ではなく期待値の問題。平常時のピークカットや電気代削減が主目的で、停電対策は「1日分の保険」と割り切るなら十分に価値があります。

パターン2:太陽光だけ ― 昼は無限、夜はゼロ

太陽光だけの家は、第5回で解説した自立運転モードに切り替えれば、晴れた昼間は専用コンセントから1500Wまで使えます。燃料切れがないのは大きな強みですが、日が沈めばゼロ。夜間は完全に停電状態に戻ります。

この構成での正解は、昼のうちにモバイルバッテリーやポータブル電源へ「充電」しておくこと。太陽光を「発電機」ではなく「充電スタンド」として使い、夜はためた電気で過ごす運用です。

パターン3:太陽光+蓄電池 ― これが本命。ただし条件つき

昼に発電して余りをため、夜はためた電気で暮らす。このループが回れば、晴れが続くかぎり事実上無期限に自給自足できます。連載を通じて紹介してきた「数日単位の停電」に、唯一まともに立ち向かえる構成です。

ただし絶対条件があります。「停電中に、太陽光から蓄電池へ充電できる構成かどうか」。ここが対応していないと、せっかく両方あってもパターン1と同じ「使い切ったら終わり」になってしまいます。

パターン4:太陽光+EV(V2H)― 容量は最大、ただし車は動かせない

EVの電池容量は家庭用蓄電池の4〜8倍。太陽光と組み合わせれば数日〜1週間規模の停電にも対応できます。ただし家で使った分だけ走行距離が減るのがトレードオフ。「避難や物資調達に車を使う可能性」と「家に電気を回す量」のバランスを、家族で決めておく必要があります。

条件① ハイブリッド型か単機能型か ― 停電時の充電を分ける分岐点

パターン3の絶対条件に直結するのが、蓄電池の方式です。

ハイブリッド型単機能型
パワコン1台で太陽光と蓄電池を制御太陽光用と蓄電池用で2台
変換ロス少ない多め(機器を複数通るため)
停電時の太陽光充電基本的に対応機種・接続方法により異なる(要確認)
価格高め安め。既設の太陽光に後付けしやすい
向いている家これから両方入れる/パワコンが寿命(10年前後)を迎える家太陽光を入れて日が浅く、パワコンがまだ使える家

太陽光のパワーコンディショナは10年前後で交換時期を迎えます。ちょうどその時期に蓄電池を検討しているなら、パワコンを1台にまとめられるハイブリッド型が合理的。逆に設置して数年なら、まだ使えるパワコンを活かせる単機能型に分があります。「単機能型=停電に弱い」ではなく、停電時に太陽光から充電できる接続になっているかを個別に確認するのが正しい見方です。

条件② 全負荷型か特定負荷型か ― 停電時に生きるコンセントの範囲

もうひとつの大きな分岐が、停電時にどこまで電気が届くかです。全負荷型は家全体のコンセントが生き、特定負荷型はあらかじめ決めた回路(たとえば冷蔵庫・リビング・寝室のコンセント)だけが生きます。

特定負荷型は安く、電気を絞る分だけ長持ちするという明確なメリットがあります。危険なのは「どの回路を非常用にするか」を業者任せにしてしまうこと。冷蔵庫、情報機器を充電する場所、夜を過ごす部屋の照明——この3つが非常用回路に入っているか、契約前に図面で確認してください。

条件③ 容量(kWh)ではなく出力(kW)と200V ― 見落としがちな落とし穴

カタログでまず目に入るのは容量(kWh)ですが、停電時の使い勝手を決めるのは出力(kW・kVA)です。第2回で説明した「タンクの大きさ(kWh)と蛇口の太さ(kW)」の関係がここでも効いてきます。

自立出力の目安停電時に動かせるものの目安
2.0kVA級エアコン1台でほぼ手一杯。最低限ライン
3.0kVA級エアコン+エコキュートくらいまで
5.5kVA級エアコン+エコキュートに少し余裕。ただしIHをフルで使うには不足

さらに重要なのが200V対応です。エアコン・IH・エコキュートは200V機器。蓄電池が100V出力のみだと、容量がいくらあっても停電時にエアコンは動きません。夏や冬の停電で暑さ・寒さをしのぎたいなら、200V対応と出力は妥協できないポイントです。

参考までに、14畳のエアコン(暖房)は運転中およそ990W、起動時は1,500〜2,000Wまで跳ね上がります。ビルトインIH(3口)は最大約5,800W。起動時のピークに耐えられるかまで含めて出力を見るのがプロの見方です。

条件④ 設定 ― 「経済モードのまま」で残量ゼロの悲劇

見落とされがちですが、運転モードの設定も災害時の実力を左右します。電気代削減を優先する経済モード(深夜にためて日中に使い切る)のままだと、夕方から夜にかけて残量がほぼゼロ。その時間帯に地震が来れば、蓄電池があっても何も使えません。

防災を重視するなら、常に30%程度は非常用に残す設定にしておくこと。多くの機種で残量の下限を設定できます。また、台風など予測できる災害では接近前に手動で満充電にしておくのが鉄則です。

契約前に必ず聞く5つの質問

ここまでの条件を、そのまま業者への質問リストにまとめました。この5つを聞けば、カタログのスペック競争ではなく「わが家が停電したときの実際の姿」で各社を比較できます。

太陽光と蓄電池の契約前に必ず聞く5つの質問。停電中も太陽光で蓄電池を充電できるか、全負荷型か特定負荷型か、停電時の出力と200V対応、停電時に自動で切り替わるか、非常用の残量を何パーセント残せるか

設備を入れない、という選択も合理的です

ここまで読んで「うちには荷が重い」と感じた方へ。蓄電池は100〜200万円、V2Hは工事込みでさらに数十万円という買い物です。停電対策だけを目的に導入するのは、費用対効果としては決して良くありません。

平常時の電気代削減や太陽光の自家消費といった「ふだんのメリット」が主で、停電対策はおまけ——この順番で考えるのが健全です。防災だけが目的なら、第2回で紹介したポータブル電源+ソーラーパネルのほうが、はるかに安く同じ安心が手に入ります。賃貸でも使え、引っ越しにも持っていけます。

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まとめ

  • 停電時の実力は「昼に発電する力」と「夜にためた電気を使う力」がそろっているかで決まる
  • 太陽光+蓄電池でも、停電中に太陽光から充電できない構成なら「使い切ったら終わり」
  • 全負荷/特定負荷で停電時に生きるコンセントが変わる。特定負荷なら回路の中身を図面で確認
  • 容量(kWh)より出力(kVA)と200V対応。エアコンを動かしたいなら妥協しない
  • 残量30%を残す設定にしておかないと、いざというとき空っぽ
  • 防災だけが目的ならポータブル電源+ソーラーパネルのほうが費用対効果は上

連載「地震と停電にそなえる家の電気」:第1回第2回第3回第4回第5回最終回深堀り編:感震ブレーカー完全ガイド番外編:防災グッズ買い物リスト

参考資料:エコでんち「家庭用蓄電池の機能 ハイブリッドとは?」/エネテックラボ「蓄電池の200V対応と自立出力早見表」/ソーラーメイト「全負荷型と特定負荷型の比較」

次に読むならこれ地震と停電にそなえる家の電気【最終回】わが家の分電盤を知ろう|ブレーカーが落ちる仕組みと復旧のしかた防災・停電対策