結論

V2H補助金の形式上の締切は2026年9月30日17時です。ただし予算55億円に対して8月10日時点の残りは約15億円9月を待たずに受付を終了するとセンター自身が告知しています。さらに交付決定より前に発注・着工・支払をすると対象外になるため、「とりあえず工事を頼んでから申請」は成立しません。

  • 最大130万円(機器75万円+工事55万円)
  • 申請 → 交付決定を待つ → 発注・着工、の順番は絶対
  • 個人宅はEV・PHEV・FCVの保有(または発注済み)が必須
  • まず予算残高の最新PDFを見る。話はそれから

「V2Hの補助金、9月末までなんですよね」——この認識のまま動くと、間に合わないどころか、補助金を受け取る権利そのものを失うことがあります。制度の中身と、自宅に設置できるかの見きわめを、電気設備設計の視点で整理します。

2026年8月14日時点の情報です。制度・料金は変更されることがあります。必ず一次情報でご確認ください。

💬 はりた&ペン太(まずは疑問から)

🐧 見習いペン太
「9月30日が締切なら、まだ1ヶ月半ありますよね。見積もりを取ってからゆっくり考えます」

🦔 はりた
「その考え方だと、たぶん間に合わないよ。この補助金は先着順で、予算がなくなった時点で終わる。しかも“見積もりを取ってから申請”じゃなくて、“申請して決定をもらってから発注”という順番なんだ」

🐧 見習いペン太
「え、順番が逆だとどうなるんですか?」

🦔 はりた
「補助対象外。1円ももらえない。ここが一番の落とし穴だから、最初に説明するね」

まず確認すること|締切より先に予算が尽きる

この補助金は「令和7年度補正予算 V2H充放電設備の導入補助金」といい、次世代自動車振興センター(CEV)が執行しています。今年度の配分額は約55億円です。

センターは予算残高を随時公表しており、直近の公表値は次の通りです。

公表日予算残額消化率(配分55億円に対して)
2026年8月4日約25億円約55%
2026年8月10日約15億円約73%

6日間で約10億円が消えています。単純に割ると1日あたり約1.7億円。この記事を書いている8月14日時点で、8月10日より新しい残高は公表されていませんが、同じペースが続いているなら残りはごくわずかということになります。

センターの公式文言

「交付申請額の累計が予算額に達した場合は、交付申請受付期限(令和8年9月30日)を待たずに受付を終了いたします」
「センターへの交付申請の到着日が、予算額に達した日以降の申請については受理されず、無効となります」

つまり「9月30日まで」は、あくまで最長でもそこまでという意味です。実際の締切は予算が決めます。検討中の方は、まずCEVのお知らせページで最新の残高PDFを開いてください。ここが「まだ残っている」かどうかで、この先を読む意味が変わります。

絶対に間違えてはいけない順番

応募要領に、こう書かれています。

応募要領 2-2 より

(8)「V2H充放電設備の発注は交付決定日以降であること」
(9)「設置工事の施工開始日、ならびにV2H充放電設備および設置工事の代金の支払は、交付決定日以降であること」

ここで注意したいのが「施工開始」の定義です。要領では「V2H充放電設備の搬入や、設備設置の基礎工事などの準備、または設置工事の一部もしくは全部の施工の開始」とされています。機材を敷地に降ろすだけ、基礎を打つだけでも「着工」です。「まだ本工事じゃないから大丈夫」は通用しません。

正しい順番はこうなります。

やること注意点
1見積もりを取る契約はまだしない。申請には本体と工事の見積書(内訳つき)が要ります
2交付申請(オンライン)発注前・着工前。到着日で先着順が決まります
3交付決定通知を待つ不備がなくてもおおむね1〜2か月。ここが一番の我慢どころ
4発注・契約・着工交付決定日以降。前払金の一部は決定前でも可
5工事完了・支払完了
6実績報告完了から30日以内が目安。期限は2027年1月29日
7補助金の振込

交付決定に1〜2か月かかると聞くと「予算がなくなるのでは」と心配になりますが、先着順を決めるのは申請の到着日です。申請さえ間に合えば、決定を待っている間に枠が消えることはありません。急ぐべきなのは申請そのもので、工事ではありません。

設置後は5年間の保有・運用義務があります。この期間内に承認なく処分すると、年10.95%の加算金を付けて返納となる可能性があります。

いくらもらえるのか

区分補助率上限
機器(V2H本体)1/275万円(型式ごとに個別設定)
設置工事費定額55万円
合計最大130万円

機器の補助額は「購入費(税抜)×1/2」と「型式ごとの上限額」の低いほうです。型式ごとの上限は補助対象V2H充放電設備一覧表で公表されており、この一覧に載っていない機器は対象外です。新品であることも条件です。

今年度は個人宅の機器上限が公共施設と同額の75万円に引き上げられました(前年度までは個人宅のほうが低く設定されていました)。制度としては条件が良くなっています。

うちに付けられるか|設計者が現地で見る7つのポイント

補助金の話より先に、そもそも自宅に設置できるのか、いくらかかるのかを見きわめる必要があります。業者に見てもらう前に、ご自身で当たりを付けられるところを挙げます。ここでの判断が、工事費が25万円で収まるか60万円を超えるかを分けます。

① 単相3線式か、単相2線式か

最初の関門です。V2Hは単相200Vで動きます。分電盤に引き込まれている電線が2本(単相2線式)の家では、200Vが取り出せません。この場合、V2H以前に引込線から分電盤までを3本(単相3線式)に変更する工事が必要になります。

見分け方は、分電盤のいちばん左にある主幹ブレーカーです。ここに入ってくる電線が3本なら単相3線式、2本なら単相2線式です。築年数が古い住宅、とくに1970年代以前の建物では2線式が残っていることがあります。すでにIHクッキングヒーターやエアコンの200V機器を使っているなら、3線式です。

② 主幹ブレーカーの容量と契約

V2Hの充放電出力は多くの機種で6kW級です。単相200Vで6kWということは、電流にすると30A。これがいままでの家の使い方に上乗せされます

主幹が40Aや50Aの家で、夜間にエアコン・給湯・IHと重なると足りません。契約アンペアの見直し、場合によっては主幹ブレーカーや分電盤ごとの交換が必要になります。これは補助対象の「電気関連工事」に含まれますが、費用は膨らみます。

逆に言えば、V2Hを入れる家は停電時に家中へ給電できるわけですから、契約や分電盤を見直す良い機会でもあります。

③ 分電盤の空き回路

V2Hには専用回路が要ります。分電盤の右側に並んでいる小さなブレーカーに、2つ分(200Vなので2極)の空きがあるか見てください。空きがなければ増設ボックスを付けるか、分電盤ごと交換になります。

また、停電時に家全体へ給電する全負荷型にするか、特定の回路だけに給電する特定負荷型にするかで、分電盤まわりの工事内容が変わります。特定負荷型は非常用分電盤に振り分ける回路をあらかじめ決めておく必要があり、「どのコンセントを生かすか」を打合せで決めることになります。

④ 分電盤からV2H設置位置までの距離とルート

工事費を最も大きく左右するのがここです。後述しますが、補助対象の工事費のうち「電気関連工事」は上限30万円と、内訳の中で突出しています。つまり制度の設計上も、配線・配管が主要なコストだと見なされています。

実際に費用が伸びるのは次のような条件です。

  • 分電盤が家の反対側にあり、配線距離が長い(外壁を回り込む距離がそのまま材工の費用になります)
  • 駐車場までの間にコンクリートやアスファルトの舗装があり、掘削と復旧が必要
  • 地中埋設が必要で、埋設配管を新設する
  • 外壁の貫通箇所が増える、または貫通しにくい構造

距離が長い場合は電圧降下も検討事項になります。6kWを流す回路ですから、細い電線で長く引くと末端で電圧が落ち、機器が本来の性能を出せません。「線を太くすれば済む」のですが、太い電線は材料費も施工手間も上がります。見積もりで電線サイズが書かれていないときは、距離とサイズを聞いてみてください。

⑤ 設置スペース

補助金の要件として、駐車スペース1台分につき1基、駐車スペースの目安は幅2.5m×奥行5mとされています。V2H本体そのものはエアコン室外機を一回り大きくしたくらいですが、基礎(土間)を打つ場所と、車から充電ケーブルが届く位置関係が要ります。

車の充電口が右前・左前・後ろのどこにあるかで、駐車の向きと本体位置の相性が変わります。ここは実際に車を停めて確認するのが確実です。

⑥ 塩害地域かどうか

海に近い地域では重塩害仕様の機種を選ぶことになります。ニチコンの場合、標準モデルが希望小売価格128万円(税抜)に対し、重塩害モデルは140万円。本体だけで12万円の差です。

屋外設置の機器は、塩害だけでなく直射日光・積雪・飛来物への配慮も要ります。なお個人宅の場合、屋根や小屋、防護用部材の費用は補助対象外です(公共施設・災害拠点では対象)。ここは自己負担になります。

⑦ 太陽光・蓄電池との関係

すでに太陽光発電があるなら、V2Hとの連携で使い方が大きく変わります。ただしパワコンの切替や系統連系の協議が発生し、工事の難易度も費用も上がります。

補助金の扱いとしては、太陽光パネル自体の費用は対象外ですが、充放電に関連する回路であればV2H専用回路でなくても部材費・労務費は対象とされています(応募要領4-11)。連携を前提にするなら、この線引きを業者と共有しておくと見積もりが整理しやすくなります。

なお、これらの工事はすべて⚠ 電気工事士の資格が必要です。ご自身で配線に触れることはできません。

工事費55万円の内訳を読み解く

補助対象の工事費55万円は、実は項目ごとに上限が決まっています。これは「標準的な工事費はこのくらい」という公的な目安として使えます。

工事項目補助上限何の費用か
基礎工事35,000円本体を据える土間コンクリート等
据付工事80,000円本体の設置・固定
本体搬入費15,000円現場までの搬入
電気関連工事300,000円分電盤からの配線・配管・盤改造
諸費用120,000円
合計550,000円

電気関連工事が30万円と、全体の半分以上を占めています。先ほど「距離とルートが費用を決める」と書いたのは、この配分からも裏付けられます。逆に言えば、分電盤と駐車場が近く、掘削も不要な家なら、この枠内に十分収まります。

見積書で確認してほしいこと

次の項目は補助対象外です。見積もりに入っていたら、その分は自己負担になります。

  • 申請手続代行費/写真管理費/客先協議費
  • 一般管理費、現場管理費・共通仮設費
  • 既設駐車スペースのアスファルト舗装
  • 既存物(既設V2H含む)の撤去・移設・処分費
  • EV充電用コンセント、V2Hから給電先のコンセント
  • 屋根・小屋・防護用部材・電灯(個人宅の場合)
  • 除雪費、アスベスト調査費

また、CEVは労務費を「一式」で計上した見積書を不備として指摘しています。人工(にんく)で書かれているのが正しい形です。値引きがある場合も、どの項目からの値引きか明記が必要です。きちんと内訳が書かれた見積書は、申請が通りやすいだけでなく、業者の姿勢を測る材料にもなります。

EV充電コンセント(5万円)とV2H(130万円)は別物

混同されやすいのですが、この2つはまったく別の制度です。

EV充電用コンセントV2H充放電設備
補助上限5万円(定額)最大130万円
できること車に充電する充電+車から家へ給電
停電時使えない車のバッテリーで家に電気を送れる
EV保有要件なし必須(発注済みでも可)
受付開始2026年3月31日2026年7月17日

V2Hの申請ではEV充電用コンセントは補助対象外の工事として明示的に除外されています。ひとつの工事にまとめて計上することはできません。

「まだEVを持っていないが、いずれ」という段階なら、まずは5万円のコンセント補助で200V回路だけ引いておくのも手です。ただしV2Hを後から入れる場合、そのコンセント工事はV2Hの補助対象になりませんEVの購入が決まっているなら、最初からV2Hを検討したほうが総額では有利になることが多いはずです。

なお車両購入のCEV補助金は別事業・別予算なので、車の補助とV2Hの補助は両方受けられます

自治体の助成との併用|申請順序の罠

国どうしの補助金は重複できませんが、国+自治体は併用できる場合があります。応募要領にも「地方公共団体の補助制度は、本補助金と重複して申請できる場合があります」と書かれています。最終的な可否は各自治体の要綱によります。

ここでは制度が大きい東京都を例に、順序の罠を説明します。

区分計算上限
通常申請対象経費×1/2 −(国等の補助金)50万円
増額申請対象経費×10/10 −(国等の補助金)100万円

増額申請には太陽光発電システムとEV/PHEVの両方を所有していることが要件です。都の受付期限は2027年3月31日17時で、国よりずっと余裕があります。ただし原則として機器の契約前に「事前申込」が必要です。

両方を受けるなら、この順番

  1. 東京都:メールアドレス登録 → 事前申込 → 受付通知を受け取る
  2. 国:交付申請交付決定通知を受け取る(1〜2か月)
  3. ここまで揃ってから 契約・発注
  4. 工事 → 支払完了
  5. 国:実績報告(2027年1月29日まで)
  6. 都:交付申請兼実績報告(事前申込受付通知日から1年以内)

都の事前申込だけ済ませて契約してしまうと、国の補助が受けられなくなります。国は「交付決定後の発注」が条件だからです。急いでいるときほど、ここを飛ばしがちです。

もうひとつ知っておきたいのが、都の助成額は国の補助額を差し引いて計算されるという点です。国の補助が大きいと都の助成額が0円になり、その場合は都には申請できません。逆に、国の予算に間に合わなかったとしても、都だけで上限まで受けられます。「国がダメなら全部ダメ」ではありません。

また都の制度は戸建住宅限定で、登記簿の種類に「居宅」が含まれることが条件です。「居宅・共同住宅」となっている二世帯住宅は対象外です。お住まいの自治体の制度も、こうした細かい要件があるはずなので、必ず要綱本文を確認してください。

申請で落とされやすいところ

CEVは「よくある不備」を公式に公表しています。個人が引っかかりやすいものを抜き出します。

  • 車検証の燃料種別が「ガソリン」になっている/申請時点で有効期限が切れている
  • 電子車検証を、「自動車検査証記録事項」とセットで提出していない
  • 注文書の販売店控えを出している(必要なのは購入者控え)
  • 本人確認書類にマイナンバーカードの裏面や個人番号入りの住民票を出している(個人番号が記載された書類は不可)
  • 連絡先メールアドレスを手続代行者のものにしている
  • 建屋全景の写真に複数の建物が写っていて、対象が特定できない
  • 駐車スペースの写真に車が写り込んでいて、全景が確認できない
  • 図面の作成日が事業開始前・未来日になっている

写真の指摘が多いのが特徴です。建屋の全景、駐車スペースの全景、設置予定場所——この3点を、車をどけた状態で、位置関係が分かるように撮っておくと手戻りが減ります。

💬 はりた&ペン太(まとめ)

🐧 見習いペン太
「思っていたより、期限より“順番”のほうが大事なんですね」

🦔 はりた
「そう。申請 → 交付決定 → 発注、この順番さえ守れば、決定を待っている間に枠が消えることはない。逆に順番を間違えると、どれだけ急いでも1円ももらえない」

🐧 見習いペン太
「今日やることは何ですか?」

🦔 はりた
「まずCEVのお知らせで残り予算を見ること。次に分電盤を開けて、主幹に入る電線が3本か、空き回路があるかを確認。この2つが分かれば、業者との話が一気に速くなるよ」

よくある質問

もう工事を発注してしまいました。申請できますか?

交付決定日より前に発注・着工・支払をした場合、補助対象外です。機器の搬入や基礎工事だけでも「施工開始」に含まれます。ただし前払金の一部の支払については、交付決定前でも可とされています。個別の判断はセンターへご確認ください。

EVをまだ買っていませんが申請できますか?

個人宅の場合、EV・PHEV・FCVの保有が要件ですが、購入の発注が完了していれば申請できます。その場合は注文書(購入者控え・納車予定日と使用者名義人の記載、捺印または署名つき)を提出し、実績報告のときに車があることを報告します。

9月30日ぎりぎりに申請すれば間に合いますか?

予算が残っていれば形式上は有効ですが、2026年8月10日時点で予算残額は約15億円(配分55億円)です。センターは予算到達時点で受付を終了すると告知しており、到達日以降に到着した申請は受理されず無効になります。最新の残高はCEVのお知らせページでご確認ください。

単相2線式の家でもV2Hは付けられますか?

単相3線式への変更工事が別途必要になります。引込線から分電盤までの変更になるため、電力会社との調整も含めて工期と費用が伸びます。まず分電盤の主幹ブレーカーに入る電線が3本か2本かを確認してください。

マンションでも対象になりますか?

住戸内の分電盤から受給電する場合は「個人宅」区分で申請します。共用分電盤から取る場合は「マンション等」区分となり、マンションであることを証する書類や、分譲済みの場合は住民総会等での決議または理事会の合意が必要です。

設置後に引っ越す予定があります

設置したV2Hには5年間の保有・運用義務があります。この処分制限期間内に承認を得ずに処分すると、加算金(年10.95%)を加えた返納となる可能性があります。

参考にした一次情報

補助金の金額・期間・要件は変更されることがあり、とくに本事業は予算到達で年度途中に終了します。申請の前に必ず一次情報でご確認ください。本記事は制度の理解を助けるためのものであり、個別の申請の可否を保証するものではありません。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

次に読むならこれ電力会社と電気工事店、どっちに連絡する?|責任分界点でわかる家の電気の境界線家庭の電気設備の設計
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。