結論

Wi-Fiが2階で弱いという悩みの多くは、機器の性能ではなくルーターの置き場所が原因です。新築なら家の中心付近に、電源と光回線を集約した場所を1か所つくること。そのうえで各室へLANを引いておけば、10年先の通信環境まで持ちます。壁の中の配線は後から通せないので、間取りの段階で決めるテーマです。

  • ルーター置き場は玄関収納の隅ではなく、家の中心付近に
  • 電源・光回線引込・各室へのLANを1か所に集約する
  • 2階の廊下天井にアクセスポイント用のLANと電源を1か所
  • ケーブルはCat6A以上。空配管を併設すれば将来やり直せる
  • 後付けなら、メッシュWi-Fiや既存配管の活用で改善できる

在宅勤務、オンライン授業、動画配信、スマート家電。家の中の通信量はこの数年で一気に増えました。ところが家づくりの打ち合わせで、ネットワークの話が出てくることはほとんどありません

「Wi-Fiルーターを置けばいい」で済ませてしまうと、住んでから「2階の部屋だけ遅い」「web会議が切れる」という悩みに直面します。この記事では、新築で仕込んでおくべき配線と、すでに住んでいる家でできる改善策を整理します。

なぜ2階でWi-Fiが弱くなるのか

電波は距離だけでなく、間にある物で弱まります。とくに住宅で影響が大きいのが次の要素です。

電波を弱める要因 影響
床・天井(構造材) 上下方向は横方向より届きにくい
金属・鏡 電波を反射する。冷蔵庫・金属製の棚・大型ミラー
水まわり 浴室・洗面の水は電波を吸収する
コンクリート・土壁 減衰が大きい
ルーターが収納の中 扉と壁で二重に遮られる
ルーターを玄関収納や納戸に置くと、この条件が重なりやすくなります。

💡 ここがポイント

光回線の引込口は外壁のどこからでも入れられるわけではありません。多くの場合、電話線の引込位置に合わせて決まります。何も指定しないと玄関脇や納戸に決まってしまい、そこがルーター置き場になる——というのが「2階が弱い家」の典型的な成り立ちです。引込位置とルーター置き場は、間取りの段階で相談してください。

新築で仕込む|ルーター置き場を先に決める

理想は、次の条件を満たす場所を1か所つくることです。

条件 理由
家の中心付近 上下左右に電波が届きやすい
1階と2階の中間になる高さ 階段下収納や、階段まわりの壁面が候補
コンセントが2口以上 ルーター・ONU・ハブで3口使うこともある
光回線の引込が届く 引込位置からの配管ルートを確保しておく
各室へのLANを集約できる ここを起点に配線する
熱がこもらない 機器は発熱する。密閉した箱の中は避ける
点検・交換ができる 機器は5〜10年で入れ替わる
この場所を「情報分電盤」としてまとめる方法もあります。

電気の分電盤と同じように、通信機器を1か所に納める情報分電盤(マルチメディアポート)という製品があります。見た目がすっきりする一方、内部が狭くて発熱しやすい、電波が金属箱で遮られるという弱点もあります。この箱の中にルーターまで収めるのではなく、ONUとハブだけ収めて、ルーターは外に出すという構成が現実的です。


どの部屋にLANを引くか

場所 優先度 用途
書斎・ワークスペース web会議は有線が最も安定する
2階廊下の天井 アクセスポイント設置用。電源とセットで
リビング(テレビ裏) テレビ・ゲーム機・レコーダー
子ども部屋 オンライン授業。将来の分割も想定
寝室 使う人がいれば
玄関・門柱まわり インターホン・防犯カメラ
迷ったら「有線が要る部屋」ではなく「アクセスポイントを置きたい場所」から考えると外しません。

💡 ここがポイント

いちばん効くのは2階廊下の天井にLANと電源を1か所用意することです。ここに天井取付のアクセスポイントを設ければ、2階全体の電波が安定します。1本のLANで家全体の体感が変わるので、優先度は非常に高い配線です。電源とセットで頼むのを忘れないでください。

ケーブルの種類と、空配管という保険

規格 目安 備考
Cat5e 1Gbps 今から新設する理由は少ない
Cat6A 10Gbps 住宅の新築ではこれが実用的な標準
Cat7・Cat8 それ以上 住宅では過剰になりやすく、施工性も落ちる
回線契約が1Gbpsでも、宅内配線を先に上げておく意味はあります。

そしてもうひとつ、空配管(CD管)を一緒に通しておくことを強くおすすめします。通信規格は10年単位で変わりますが、配管さえあればケーブルだけを入れ替えられます。壁を壊さずに将来へ対応できる、最も費用対効果の高い保険です。

この考え方は電気設備全般に共通します。住まいづくりで後悔しない電気設備の決め方でも、EV充電の空配管として同じ話をしています。

すでに住んでいる家でできること

配線をやり直せない場合でも、打てる手はあります。効果が大きい順に並べます。

方法 効果 注意点
ルーターの置き場所を変える ◎ 費用ゼロで最も効く 床置き・収納内・壁際を避け、高い位置の開けた場所へ
メッシュWi-Fi ◎ 2階の弱さを解消しやすい 中継機を置く位置が重要。電波が届く範囲に置く
既存の配管を使ってLANを通す ○ 有線化できれば最も安定 電話線やテレビ線の配管に余裕があるか要確認
モールで露出配線 ○ 確実に有線化できる 見た目が気になる場合がある
中継機(単体) △ 手軽だが速度が落ちやすい 親機との距離が遠いと効果が薄い
電力線通信(PLC) △ 環境に左右される 分電盤をまたぐと大きく低下することがある
まずは無料でできる「置き場所の変更」から試してください。


よくある失敗

失敗 対策
光回線の引込が玄関脇に決まり、2階が弱い 引込位置とルーター置き場を間取り段階で相談する
情報分電盤にルーターまで入れて電波が遮られた ONU・ハブのみ収納し、ルーターは外に出す
ルーター置き場にコンセントが1口しかない 2口以上。機器は複数台になる
LANは引いたが、アクセスポイント用の電源がない 天井のLANと電源はセットで依頼する
配管がなく、規格変更に対応できない LANと一緒に空配管を通しておく
子ども部屋を分割したら片側にLANがない 将来の間仕切り位置の両側に配線する
いずれも、間取り確定の段階で相談すれば防げます。

よくある質問

Wi-Fiがあれば有線LANは要りませんか?

日常の利用ならWi-Fiで足りることが多いですが、web会議や大容量のやり取りでは有線の安定性が効きます。とくに書斎とアクセスポイント設置場所の2か所は、引いておく価値が高い配線です。無線の品質そのものが、アクセスポイントまでの有線に支えられています。

ルーターはどこに置くのがいいですか?

家の中心付近で、床から1〜2mの高さ、周囲が開けた場所が基本です。避けたいのは収納の中、床に直置き、金属棚の近く、水まわりの隣。置き場所を変えるだけで改善するケースは多いので、まず試してみてください。

情報分電盤は付けたほうがいいですか?

配線を1か所に集約できる利点があります。ただし内部は狭く発熱しやすいうえ、金属製の箱は電波を遮ります。ONUやハブを収める用途に留め、ルーターやアクセスポイントは箱の外に設置する構成がおすすめです。

ケーブルはどの規格を選べばいいですか?

新築ならCat6Aが実用的な標準です。Cat7以上は住宅では過剰になりやすく、曲げにくいため施工性も落ちます。それよりも、空配管を併設して将来ケーブルを入れ替えられるようにしておくほうが有効です。

後から壁の中にLANを通せますか?

既存の配管に余裕があれば可能な場合があります。難しい場合はモールでの露出配線か、メッシュWi-Fiでの無線化が現実的です。リフォームで壁を開ける予定があるなら、そのタイミングで一緒に通すのが最も安く済みます。

メッシュWi-Fiと中継機は何が違いますか?

中継機は親機の電波を中継するだけで、経由するほど速度が落ちやすくなります。メッシュWi-Fiは複数の機器が1つのネットワークとして動き、端末が自動で最適な機器につながります。家全体をカバーしたいならメッシュのほうが扱いやすい選択です。

電力会社の見直しは、あなたの家に効くのか
「乗り換えれば安くなる」は、条件によります。電気設備の設計側から見ると、先にやるべきことがある家と、比較が効く家ははっきり分かれます。当てはまるものを見てください。
A契約アンペアが大きすぎる家
一人暮らしや二人暮らしなのに50A・60A契約、という家は珍しくありません。基本料金は契約アンペアで決まるので、下げるだけで毎月効きます。工事は電力会社が無料で行うのが一般的です。乗り換えより先に、こちらを確認してください。
B使用量が多い家・オール電化・EVがある家
月400kWhを超える、オール電化、EVを自宅で充電している——このあたりから単価と時間帯プランの差が大きく出ます。基本料金より従量料金のほうが金額として大きいので、プランと会社を比べる価値があります。
C関西・中国・四国・沖縄エリアの家
これらのエリアは最低料金制で、そもそも契約アンペアという区分がありません。Aの手が使えないので、比べるならプランと会社そのものになります。
比べるときに見落としやすいところ
  • 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
  • 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
  • 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

次に読むならこれ賃貸の電気でできること・できないこと|アンペア変更・コンセント増設・原状回復の線引き家庭の電気設備の設計
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。