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VVF、CV、CVT、IV、HIV——毎日使っている記号ですが、それぞれの文字が何を指しているか、規格に書いてあると思いますか。今回は「全部読める回にしよう」と思って調べ始めました。ところが実際には、規格が意味を書いている記号と、一文字も説明していない記号に、はっきり分かれていました。

結論

VVF・CV・KIVは、JISの表の注記に文字の意味が明記されています。一方でIV・OW・DV・VCTは、「記号は、IVとする」で終わり——文字を分解した説明がありません。

  • VVFのFは「平形」。JIS C 3342の注記に書いてある
  • CVTのTは「トリプレックス形」。JIS C 3606の注記に書いてある
  • IVの「I」の意味は、規格のどこにも書かれていない
  • しかも規格の説明は、すべて英語ではなく日本語の意味で書かれている
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
ケーブル記号を絶縁体・シース・形状に分解した図
記号は材質と形状を並べたもの。HKIVでは、IVが2文字でひとまとまりとして扱われます。

ここまでの7回は、数字の由来を追いかけては行き止まりに突き当たる、という展開が続きました。今回は違うつもりでした。記号なら、文字の意味は規格に書いてあるはずだと。

半分は当たっていました。そして残りの半分は、いつもの結末でした。

ペン太
VVFのFはフラットですよね。じゃあIVのIは? インシュレーテッド……でしたっけ。
ハリタハリタ
よく言われますね。でも規格を開くと、Iの説明はどこにもないんです。
ペン太
えっ。VVFは書いてあるのに?
ハリタハリタ
書いてあります。しかも「V=Vinyl」ではなく「V:ビニル」という書き方で。ここも今回の発見でした。

記号は、材質と形状を並べただけ

まず組み立て方から。ケーブルの記号は、絶縁体の材質・シースの材質・形状を、この順に並べたものです。

記号 分解すると 正式な品名
VVF ビニル+ビニル+平形 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形
VVR ビニル+ビニル+丸形 600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル丸形
CV 架橋ポリエチレン+ビニル 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル
CVT 架橋ポリエチレン+ビニル+トリプレックス形 単心3本をより合わせたもの
KIV 電気機器用+ビニル絶縁電線 電気機器用ビニル絶縁電線
絶縁体・シース・形状という並び順は、複数の記号で共通しています。ただし、この並び順そのものを定めた規程は見つかりませんでした。

この規則が分かると、初めて見る記号でも見当がつきます。CVTは、CVを3本より合わせたものVVRは、VVFの丸いほう。記号は暗記するものではなく、読むものだということになります。

ここまでのポイント
  • 記号は「絶縁体+シース+形状」の並び
  • CVTはCVのトリプレックス形、VVRはVVFの丸形
  • 並び順のルール自体を定めた規程は確認できず

規格に意味が書いてある記号、書いていない記号

ここからが今回の本題です。JISの本文に、文字の意味が書かれているかどうかを調べました。結果は、はっきり二つに分かれました。

文字の意味が規格に明記されている記号と、されていない記号の対比
同じ体系なのに、規格ごとに説明の丁寧さがそろっていません。

書いてある側から見ていきます。

💡 JISの表の注記に、そのまま書いてある

JIS C 3342(VVF・VVR)——表の注記に「記号の意味は、次による。V:ビニル、R:丸形、F:平形」。さらに「丸形を単にVVと呼ぶこともある」という一文まで入っています。

JIS C 3606(CV・CVT)——「C:架橋ポリエチレン、V:ビニル、E:ポリエチレン、T:トリプレックス形、/F:耐燃性」。CVTのTがトリプレックス形であることは、規格が明記しています。

JIS C 3316(KIV・HKIV)——「K:電気機器用」「IV:ビニル絶縁電線」「H:二種絶縁体のもの」。

ここまでは期待どおりでした。調べれば書いてある。この連載では珍しい展開です。

問題は、書いていない側です。

記号 該当するJIS 文字の意味の記載
VVF・VVR JIS C 3342 あり(表の注記)
CV・CVT JIS C 3606 あり(表の注記)
KIV・HKIV JIS C 3316 あり(表の注記)
IV JIS C 3307 なし(「記号は、IVとする」のみ)
OW JIS C 3340 なし
DV JIS C 3341 なし
VCT JIS C 3312 なし
比較的新しい規格ほど注記が丁寧で、古い規格は記号を宣言するだけで終わっています。同じ体系なのに、扱いが揃っていません。
ここまでのポイント
  • VVF・CV・KIVは、JISの注記に文字の意味が明記されている
  • IV・OW・DV・VCTは、記号を宣言するだけで説明がない
  • 新しい規格ほど注記が丁寧という傾向がある


IVの「I」は、どこにも書かれていない

いちばん身近な記号が、いちばん説明されていませんでした。

IV——600Vビニル絶縁電線。JIS C 3307です。規格を開くと、記号についての記述はこれだけです。

⚠️ 「記号は、IVとする。」で終わり

Iが何を指すのか、Vが何を指すのか、分解した説明は一文字分もありません。Vはビニルだろうと察しはつきますが、規格がそう書いているわけではないのです。

世間でよく見かけるのは「I=Insulated(絶縁)、V=Vinyl(ビニル)」という説明です。ところが、これには引っかかるところがあります。

JIS C 3307の英語タイトルは “600 V Polyvinyl chloride insulated wires”ビニルが先で、絶縁が後です。頭文字を順に拾えば「VI」になってしまいます。IVという並びとは合いません。

もうひとつ、面白い事実があります。KIVの規格(JIS C 3316)は、「IV」をひとまとまりで扱っているのです。注記には「IV:ビニル絶縁電線」とあります。IとVを分けていません。

つまり規格の世界では、IVは分解する対象ではなく、それ自体がひとつの記号として扱われている、ということになります。

ここまでのポイント
  • JIS C 3307は「記号は、IVとする」としか書いていない
  • 「I=Insulated」説は、英語タイトルの語順と合わない
  • KIVの規格では「IV:ビニル絶縁電線」とひとまとまりで扱われている

KIVの「K」は、意味は書いてあるが理由は書いていない

KIVも見ておきます。こちらは意味だけは規格に書いてあります。JIS C 3316の注記に「K:電気機器用」。

ただし、書いてあるのはそこまでです。なぜ「電気機器用」がKなのかは、どこにも説明がありません。英語タイトルは “Polyvinyl chloride insulated wires for electrical apparatus”。apparatus にも equipment にも、Kは出てきません。

そして調べていくと、まったく違う説明をしている資料に出会いました。電線を扱う商社のサイトに「KIVの(K)は可とう性の意味です」と書かれていたのです。

⚠️ 規格と食い違う説明が流通している

JIS C 3316の注記は「K:電気機器用」です。「可とう性」ではありません。KIVが柔らかい電線であることは事実なので、そこから逆に説明が作られたのかもしれません。記号の意味を確認するときは、解説サイトではなく規格の注記にあたるのが確実です。

📖 ここからは推し量り

「なぜその文字なのか」を書いた資料には、今回もたどり着けませんでした。

規格は「Vはビニルを指す」とは書いています。しかし「なぜビニルにVという文字を当てたのか」は、一度も書いていません。

Vinylの頭文字なら英語由来です。しかしKIVのKは、英語のどの単語とも対応しません。「機器」のローマ字表記からKを取ったのだとすれば、英語由来と日本語由来が同じ記号体系の中に混ざっていることになります。それらしい説明ですが、裏付けは取れませんでした。

そもそも、この記号体系を最初に設計した人がいるはずです。材質・材質・形状という並び順も、誰かが決めたはずです。ところが、それを横断的に定めた規格や規程は見つかりませんでした。各JISが個別に「記号は、○○とする」と宣言しているだけで、体系そのものを説明した文書がないのです。

毎日書いている記号なのに、設計思想が書き残されていない。この連載では、もうおなじみの結末です。


規格の説明は、すべて日本語の意味で書かれている

調べていて、いちばん意外だったのがここです。

JISの注記を並べてみてください。「V:ビニル」「R:丸形」「F:平形」「C:架橋ポリエチレン」「T:トリプレックス形」「K:電気機器用」。

すべて日本語の単語です。「V=Vinyl」でも「F=Flat」でもありません。規格が「これは英語の頭文字である」と書いている箇所は、ひとつも見つかりませんでした。

💡 英語由来と分かるのは、別のところから

英語の頭文字だと確認できるのは、規格本文ではなく英語タイトルや別団体の資料からです。

  • OW——英語タイトルが “Outdoor weatherproof …”。O・Wと対応します
  • DV——英語タイトルが “… drop service wires”。Dと対応します
  • EM-EEF の F——日本電線工業会の技術資料が「flame retardant から採用した」と明記しています
  • EM——同じ資料に「エコマテリアル(Ecomaterial)」とあります

つまり記号ごとに、確認できる場所が違うのです。統一されていません。

「V=Vinyl」という理解は、実務上はまったく問題ありません。ただしそれは規格が保証している説明ではない——という一点だけ、頭の隅に置いておくと、人に教えるときの言い方が変わります。

ここまでのポイント
  • JISの注記は、すべて日本語の意味で書かれている
  • 「英語の頭文字である」と規格が述べた箇所はない
  • 英語由来と分かるのは英語タイトルや電線工業会の資料から
  • 記号ごとに、根拠のある場所が違う

現場では、記号から何が読み取れるか

ケーブル記号から読み取れることと読み取れないことの一覧
記号が語っているのは材質と形状だけ。許容電流や使用場所は別の基準で決まります。

由来はさておき、記号が読めると実務では確実に速くなります。読み取れることを整理しておきます。

読み取れること どこを見るか
絶縁体の材質 先頭の文字。V=ビニル、C=架橋ポリエチレン、E=ポリエチレン
シースの有無と材質 2文字目。VVならシースあり、IVならシースなし
形状 末尾。F=平形、R=丸形、T=トリプレックス形
耐熱グレード 先頭のH。HIV・HKIVは二種絶縁体
環境配慮品かどうか EM-の接頭。エコマテリアル
ケーブルとして使うのか、電線として管に入れるのか。この判断が記号の2文字目で分かります。

逆に、記号から読み取れないこともあります。ここを混同すると事故につながります。

  1. 許容電流は読めない——太さと敷設条件で決まります。記号は材質と形状しか語りません。
  2. 使用可能な場所は読めない——屋外・地中・可燃性ガスのある場所などの制約は、記号ではなく施工の基準側にあります。
  3. 耐用年数は読めない——同じCVでも、環境と負荷で寿命はまるで変わります。
  4. 単線かより線かは読めない——第3回で見たとおり、そこは呼び方(mmかsqか)のほうに出ます。

記号は材質と形の名札であって、性能証明書ではありません。ここを分けて考えると、記号への信頼のかけ方がちょうどよくなります。

今回は「全部読める回」になるはずでした。実際には、読める記号と、規格が黙っている記号に分かれました。それでも収穫はあります。どこまでが規格の言葉で、どこからが業界の言い習わしなのか——その線がはっきりしたことです。

ここまでのポイント
  • 記号から読めるのは材質・シースの有無・形状・耐熱グレード
  • 許容電流、使用場所、寿命、単線かより線かは読めない
  • 記号は名札であって、性能証明ではない


よくある質問

VVFのFは何の意味ですか?

平形です。JIS C 3342の表の注記に「記号の意味は、次による。V:ビニル、R:丸形、F:平形」と明記されています。同じ注記には「丸形を単にVVと呼ぶこともある」という記述もあります。

CVTのTは何ですか?

トリプレックス形です。JIS C 3606の表の注記に「C:架橋ポリエチレン、V:ビニル、E:ポリエチレン、T:トリプレックス形、/F:耐燃性」と書かれています。CVを3本より合わせた構成を指します。

IVの「I」は何の略ですか?

規格には書かれていません。JIS C 3307の記号に関する記述は「記号は、IVとする」だけで、文字を分解した説明がありません。「I=Insulated」という説明が流通していますが、JISの英語タイトルは「600 V Polyvinyl chloride insulated wires」でビニルが先に来るため、頭文字を順に拾うと合いません。なお、KIVの規格では「IV:ビニル絶縁電線」とひとまとまりで扱われています。

KIVの「K」は何ですか?

JIS C 3316の注記に「K:電気機器用」とあります。ただし、なぜ「電気機器用」にKという文字を当てたのかは書かれていません。英語タイトルは「for electrical apparatus」でKに対応する語がなく、語源は確認できませんでした。一部のサイトには「可とう性の意味」という説明がありますが、これは規格の記載と食い違います。

記号の文字は英語の頭文字ですか?

規格がそう述べている箇所は見つかりませんでした。JISの注記はすべて「V:ビニル」「F:平形」のように日本語の意味として書かれています。英語由来だと確認できるのは、OWの「Outdoor weatherproof」やDVの「drop service」といった英語タイトル、EM-EEFのFについて日本電線工業会の資料が「flame retardant から採用した」と明記している例など、規格本文の外にある資料からです。

記号の並び順にルールはありますか?

実際には「絶縁体の材質+シースの材質+形状」の順で共通していますが、この並び順そのものを定めた規格や規程は確認できませんでした。各JISが個別に「記号は、○○とする」と規定し、比較的新しい規格では表の注記で文字の意味を補っている、という形になっています。

記号から許容電流は分かりますか?

分かりません。許容電流は導体の太さと敷設条件で決まります。記号が語っているのは絶縁体とシースの材質、そして形状だけです。使用できる場所や耐用年数も、記号からは読み取れません。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。