第3回 防爆構造の種類と、表示の読み方
耐圧・安全増・本質安全の使い分けと、Ex d IIB T4 の読み方。機器グループの最大安全すきま、温度等級と発火温度の突き合わせ、そして旧表示の爆発等級とは機械的に読み替えられない理由まで。
防爆機器の銘板には、記号が並んでいます。d、IIB、T4、Gb。それぞれが別のことを言っているので、分解して読めば難しくありません。この回では、記号の意味と、旧表示との違いを数値で整理します。
結論
Ex d IIB T4 は、構造・ガスの区分・温度の3つを同時に示している記号は9種類あるが、防爆構造の考え方は「閉じ込める」か「点火させない」かの2つだけ。
- 耐圧・油入・充填・樹脂充填は「爆発を閉じ込める」側、本質安全・内圧・安全増・非点火は「点火させない」側。
- 機器グループは最大安全すきまで分ける。IIA 0.9mm以上、IIB 0.5〜0.9mm、IIC 0.5mm以下。
- 温度等級は機器の表面温度の上限。T4は135℃以下。ガスの発火温度より低い等級を選ぶ。
- 旧表示の爆発等級(0.6mm・0.4mm)と機器グループ(0.9mm・0.5mm)は、ものさしが違う。
考え方は2つしかない
防爆構造は記号が多く、最初は覚えにくい。ただ、根っこの考え方は2つしかない。ひとつは、容器の中に爆発性の雰囲気が入ることを認めたうえで、内部で爆発しても容器が耐え、外へ火炎を出さないようにするもの。耐圧防爆がこれに当たる。
もうひとつは、そもそも点火に至らせないもの。回路のエネルギーを抑える本質安全防爆、内部にガスを入れない内圧防爆、火花や高温部を作らない安全増防爆などが含まれる。
現場で多いのは、耐圧防爆と安全増防爆、そして計装まわりの本質安全防爆である。それぞれ得意な用途が違う。開閉部を持つ機器は耐圧防爆、端子箱や接続箱は安全増防爆、センサや発信器の低電力回路は本質安全防爆、というのが典型的な組み合わせになる。
| 構造 | 記号 | 使えるゾーン | 向いている機器 | 施工・保守の要点 |
|---|---|---|---|---|
| 耐圧防爆 | d | ゾーン1・2 | 開閉器、電動機、照明器具 | 容器の合わせ面と締付けが命。ボルトの欠品や締め忘れは致命的になる。 |
| 安全増防爆 | e | ゾーン1・2 | 端子箱、接続箱、かご形電動機 | 沿面距離・空間距離と締付トルク。端子の増し締めが保守の要点。 |
| 本質安全防爆 | ia | ゾーン0・1・2 | センサ、発信器、計装の低電力回路 | バリアの選定と、本安回路と非本安回路の分離。 |
| 本質安全防爆 | ib | ゾーン1・2 | 同上 | iaより保護の水準が1段低い。ゾーン0には使えない。 |
| 内圧防爆 | p | ゾーン1・2 | 大型盤、分析計小屋 | 保護気体の供給と圧力監視。停止時のパージ手順が要る。 |
| 油入防爆 | o | ゾーン1・2 | 変圧器、開閉部を油に沈める機器 | 油量と劣化の管理。 |
| 樹脂充填防爆 | ma / mb | ma はゾーン0から | 小型のソレノイド、電子部品 | 分解できない。故障時は交換になる。 |
| 非点火防爆 | n | ゾーン2のみ | ゾーン2の一般機器 | ゾーン1へ流用できない。区分図との突き合わせが要る。 |
- 防爆構造は「閉じ込める」側と「点火させない」側に分かれる。
- 現場で多いのは、耐圧・安全増・本質安全の3つ。
- 機器の種類と保守のしやすさで使い分ける。
表示を分解して読む
💡 Ex/d/IIB/T4 は、それぞれ別のことを言っている
4つの要素を順に分解すると、読みやすくなります。
国際整合指針にもとづく機器には、Exで始まる表示がある。並んでいる記号はそれぞれ別のことを言っているので、順に分解すると読みやすい。
末尾にGa・Gb・Gcが付いていることもある。これは保護レベル(EPL)で、その機器がどのゾーンまで使えるかを直接示している。銘板にこれがあれば、いちばん手早い判断材料になる。
- Exで始まる表示は、国際整合指針にもとづくもの。
- 構造・機器グループ・温度等級の3つを同時に示している。
- 末尾のEPL(Ga・Gb・Gc)があれば、ゾーンとの対応が一目でわかる。
機器グループ ── すきまの通りやすさで分ける
💡 IICがもっとも厳しい
水素とアセチレンを扱う場所では、IICでないと使えません。
機器グループは、対象とするガスを「爆発の火炎がすきまを通り抜けるか」で分けたものである。すきまを通りやすいガスほど、容器の合わせ面を精密に作らなければならない。
| 機器グループ | 最大安全すきま | 代表的なガス | 使える場所 |
|---|---|---|---|
| IIA | 0.9mm 以上 | プロパン、メタン、アセトン | IIAの場所 |
| IIB | 0.5mm を超え 0.9mm 未満 | エチレン、エタノール | IIA と IIB の場所 |
| IIC | 0.5mm 以下 | 水素、アセチレン | IIA・IIB・IIC すべての場所 |
- 機器グループは、火炎がすきまを通り抜けるかで分ける。
- IICがもっとも厳しく、水素とアセチレンが該当する。
- 上位グループの機器は下位でも使えるが、逆はできない。
温度等級 ── ガスの発火温度と突き合わせる
💡 T4は「機器の表面が135℃を超えない」という意味
ガスの発火温度がそれより高いことを確認して選びます。
温度等級は、機器の最高表面温度の上限を表す。数字が大きいほど許される温度が高く、T1がもっとも緩い。選定では、扱うガスの発火温度より低い等級を選ぶ。
| 温度等級 | 機器の最高表面温度 | 対応できるガスの発火温度 |
|---|---|---|
| T1 | 450℃以下 | 450℃を超えるもの |
| T2 | 300℃以下 | 300℃を超えるもの |
| T3 | 200℃以下 | 200℃を超えるもの。ガソリン(発火点 約300℃)はここまでで足りる |
| T4 | 135℃以下 | 135℃を超えるもの。実務で指定されることが多い |
| T5 | 100℃以下 | 100℃を超えるもの |
| T6 | 85℃以下 | 85℃を超えるもの。もっとも厳しい |
温度等級には前提となる周囲温度の範囲がある。直射日光や高温の配管に近い場所では、その前提を外していないかを確認する。
- 温度等級は、機器の最高表面温度の上限を表す。
- ガスの発火温度より低い等級を選ぶ。
- 等級が厳しくなるほど、選べる機器は少なくなる。
旧表示と新表示は、機械的に読み替えられない
⚠️ 爆発等級のしきい値は0.6mm・0.4mm、機器グループは0.9mm・0.5mm
測り方の基準が別なので、数字が似ていてもそのまま置き換えられません。
ここが、この回でいちばん誤解されやすいところである。構造規格の表示では、爆発等級とガスの発火度で表す。国際整合指針では、機器グループと温度等級で表す。並びが似ているので、そのまま置き換えられそうに見える。
| 構造規格(旧) | 国際整合指針(新) | |
|---|---|---|
| ガスの区分 | 爆発等級 1:火炎逸走限界 0.6mm 超 爆発等級 2:0.4mm 超 0.6mm 以下 爆発等級 3:0.4mm 以下 |
IIA:最大安全すきま 0.9mm 以上 IIB:0.5mm 超 0.9mm 未満 IIC:0.5mm 以下 |
| 温度の区分 | 発火度 G1:発火温度 450℃ 超 G2:300℃ 超 450℃ 以下 G3:200℃ 超 300℃ 以下 G4:135℃ 超 200℃ 以下 G5:100℃ 超 135℃ 以下 |
温度等級 T1:表面温度 450℃ 以下 T2:300℃ 以下/T3:200℃ 以下 T4:135℃ 以下/T5:100℃ 以下 T6:85℃ 以下 |
| 表示の例 | d2G4 | Ex d IIB T4 Gb |
発火度はガスの側の発火温度で分け、温度等級は機器の側の表面温度で分ける。似ているが、測っている対象が違う。
代表的なガスの分類を並べると、対応の感覚がつかみやすい。水素は発火度G1でありながら機器グループはIIC、アセチレンはG2でIIC。メタンとアセトンはG1でIIA。「発火度が緩いからグループも緩い」とは限らない。
| ガス | 発火度(旧) | 機器グループ | 温度等級 |
|---|---|---|---|
| メタン | G1 | IIA | T1 |
| アセトン | G1 | IIA | T1 |
| エタノール | G2 | IIB | T2 |
| 水素 | G1 | IIC | T1 |
| アセチレン | G2 | IIC | T2 |
- 爆発等級と機器グループは、しきい値の基準が違う。
- 発火度はガスの温度、温度等級は機器の表面温度。
- 「発火度が緩ければグループも緩い」とは限らない。
💡 この回のまとめ
表示は、機器が「どこまでなら安全か」を示した約束事である。区分図と物質の情報がそろっていれば、表示を読むだけで使えるかどうかは判断できる。逆に言えば、そのどちらかが欠けたまま機器を選ぶことはできない。
よくある質問
防爆構造には、どんな種類がありますか?
大きく2つの考え方に分かれます。内部で爆発しても外へ火炎を出さないもの(耐圧防爆 d、油入 o、充填 q、樹脂充填 m)と、そもそも点火させないもの(本質安全 ia・ib、内圧 p、安全増 e、非点火 n)です。
Ex d IIB T4 はどう読みますか?
Exが国際整合指針にもとづく表示であること、dが防爆構造(耐圧防爆)、IIBが機器グループ(対象とするガスの区分)、T4が温度等級(最高表面温度135℃以下)を表します。末尾にGa・Gb・Gcが付けば、使えるゾーンが直接わかります。
機器グループのIIA・IIB・IICは何が違いますか?
最大安全すきまで分けます。IIAは0.9mm以上(プロパン、メタン)、IIBは0.5mmを超え0.9mm未満(エチレン、エタノール)、IICは0.5mm以下(水素、アセチレン)です。IICの機器はIIA・IIBの場所でも使えますが、逆はできません。
温度等級はどう選びますか?
扱うガスの発火温度より低い等級を選びます。T1は450℃以下、T2は300℃以下、T3は200℃以下、T4は135℃以下、T5は100℃以下、T6は85℃以下です。ガソリンの発火点は約300℃なので、T3以上の等級で足ります。
旧表示の d2G4 は Ex d IIB T4 に読み替えられますか?
機械的には読み替えられません。爆発等級は火炎逸走限界0.6mm・0.4mmで分け、機器グループは最大安全すきま0.9mm・0.5mmで分けます。測り方の基準が別なので、銘板を見たらまずどちらの系統かを確かめる必要があります。
発火度と温度等級は同じものですか?
違います。発火度(G1〜G5)はガスの側の発火温度で分けた区分、温度等級(T1〜T6)は機器の側の最高表面温度で分けた区分です。水素は発火度G1でありながら機器グループはIICなど、「発火度が緩ければグループも緩い」とは限りません。
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。数値は資料により表記に幅があります。機器の選定にあたっては、メーカーの取扱説明書と型式検定合格証、および発注者の基準を確認してください。



