技術図書館防爆の表示は分解して読む閉じ込めるか点火させないかの2つの考え方、機器グループと温度等級、旧表示との違いこの資料をスライドで見る資料一覧を見る

耐圧・安全増・本質安全の使い分けと、Ex d IIB T4 の読み方。機器グループの最大安全すきま、温度等級と発火温度の突き合わせ、そして旧表示の爆発等級とは機械的に読み替えられない理由まで。

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防爆機器の銘板には、記号が並んでいます。d、IIB、T4、Gb。それぞれが別のことを言っているので、分解して読めば難しくありません。この回では、記号の意味と、旧表示との違いを数値で整理します。

結論

Ex d IIB T4 は、構造・ガスの区分・温度の3つを同時に示している記号は9種類あるが、防爆構造の考え方は「閉じ込める」か「点火させない」かの2つだけ。

  • 耐圧・油入・充填・樹脂充填は「爆発を閉じ込める」側、本質安全・内圧・安全増・非点火は「点火させない」側。
  • 機器グループは最大安全すきまで分ける。IIA 0.9mm以上、IIB 0.5〜0.9mm、IIC 0.5mm以下。
  • 温度等級は機器の表面温度の上限。T4は135℃以下。ガスの発火温度より低い等級を選ぶ。
  • 旧表示の爆発等級(0.6mm・0.4mm)と機器グループ(0.9mm・0.5mm)は、ものさしが違う。

考え方は2つしかない

動く図解この記事のポイントを動く図解にまとめました(考え方 → 表示 → グループと温度 → 旧と新・くり返し再生)。ジャンル「防爆設備」で見る →

防爆構造は記号が多く、最初は覚えにくい。ただ、根っこの考え方は2つしかない。ひとつは、容器の中に爆発性の雰囲気が入ることを認めたうえで、内部で爆発しても容器が耐え、外へ火炎を出さないようにするもの。耐圧防爆がこれに当たる。

もうひとつは、そもそも点火に至らせないもの。回路のエネルギーを抑える本質安全防爆、内部にガスを入れない内圧防爆、火花や高温部を作らない安全増防爆などが含まれる。

現場で多いのは、耐圧防爆と安全増防爆、そして計装まわりの本質安全防爆である。それぞれ得意な用途が違う。開閉部を持つ機器は耐圧防爆、端子箱や接続箱は安全増防爆、センサや発信器の低電力回路は本質安全防爆、というのが典型的な組み合わせになる。

構造 記号 使えるゾーン 向いている機器 施工・保守の要点
耐圧防爆 d ゾーン1・2 開閉器、電動機、照明器具 容器の合わせ面と締付けが命。ボルトの欠品や締め忘れは致命的になる。
安全増防爆 e ゾーン1・2 端子箱、接続箱、かご形電動機 沿面距離・空間距離と締付トルク。端子の増し締めが保守の要点。
本質安全防爆 ia ゾーン0・1・2 センサ、発信器、計装の低電力回路 バリアの選定と、本安回路と非本安回路の分離。
本質安全防爆 ib ゾーン1・2 同上 iaより保護の水準が1段低い。ゾーン0には使えない。
内圧防爆 p ゾーン1・2 大型盤、分析計小屋 保護気体の供給と圧力監視。停止時のパージ手順が要る。
油入防爆 o ゾーン1・2 変圧器、開閉部を油に沈める機器 油量と劣化の管理。
樹脂充填防爆 ma / mb ma はゾーン0から 小型のソレノイド、電子部品 分解できない。故障時は交換になる。
非点火防爆 n ゾーン2のみ ゾーン2の一般機器 ゾーン1へ流用できない。区分図との突き合わせが要る。
ゾーンとの対応は代表的な組み合わせです。実際の可否は、機器の保護レベル(EPL)の表示で確認してください。
たとえるなら
防爆構造は、「閉じ込める」か「火をつけない」かです。
耐圧防爆は、中で爆発しても外へ火を出さない頑丈な箱。本質安全防爆は、そもそも火がつくほどのエネルギーを出さない回路。考え方が正反対です。
ここまでのポイント
  • 防爆構造は「閉じ込める」側と「点火させない」側に分かれる。
  • 現場で多いのは、耐圧・安全増・本質安全の3つ。
  • 機器の種類と保守のしやすさで使い分ける。


表示を分解して読む

💡 Ex/d/IIB/T4 は、それぞれ別のことを言っている

4つの要素を順に分解すると、読みやすくなります。

国際整合指針にもとづく機器には、Exで始まる表示がある。並んでいる記号はそれぞれ別のことを言っているので、順に分解すると読みやすい。

防爆表示の読み方
4つの要素が、それぞれ別のことを示している。

末尾にGa・Gb・Gcが付いていることもある。これは保護レベル(EPL)で、その機器がどのゾーンまで使えるかを直接示している。銘板にこれがあれば、いちばん手早い判断材料になる。

保護レベルとゾーンの対応
銘板末尾の Ga・Gb・Gc は、使えるゾーンを直接示している。
ここまでのポイント
  • Exで始まる表示は、国際整合指針にもとづくもの。
  • 構造・機器グループ・温度等級の3つを同時に示している。
  • 末尾のEPL(Ga・Gb・Gc)があれば、ゾーンとの対応が一目でわかる。

機器グループ ── すきまの通りやすさで分ける

💡 IICがもっとも厳しい

水素とアセチレンを扱う場所では、IICでないと使えません。

機器グループは、対象とするガスを「爆発の火炎がすきまを通り抜けるか」で分けたものである。すきまを通りやすいガスほど、容器の合わせ面を精密に作らなければならない。

機器グループと最大安全すきま
すきまが狭いガスほど、厳しいグループになる。
機器グループ 最大安全すきま 代表的なガス 使える場所
IIA 0.9mm 以上 プロパン、メタン、アセトン IIAの場所
IIB 0.5mm を超え 0.9mm 未満 エチレン、エタノール IIA と IIB の場所
IIC 0.5mm 以下 水素、アセチレン IIA・IIB・IIC すべての場所
上位グループの機器は下位の場所でも使えますが、逆はできません。
ひっかけ注意
「発火度と温度等級は同じもの」ではありません。
発火度はガスの発火温度、温度等級は機器の最高表面温度の区分です。ガスの発火温度より低い温度等級の機器を選びます。
ここまでのポイント
  • 機器グループは、火炎がすきまを通り抜けるかで分ける。
  • IICがもっとも厳しく、水素とアセチレンが該当する。
  • 上位グループの機器は下位でも使えるが、逆はできない。


温度等級 ── ガスの発火温度と突き合わせる

💡 T4は「機器の表面が135℃を超えない」という意味

ガスの発火温度がそれより高いことを確認して選びます。

温度等級は、機器の最高表面温度の上限を表す。数字が大きいほど許される温度が高く、T1がもっとも緩い。選定では、扱うガスの発火温度より低い等級を選ぶ。

温度等級と最高表面温度
数字が大きいほど許される温度は高い。T1がもっとも緩い。
温度等級 機器の最高表面温度 対応できるガスの発火温度
T1 450℃以下 450℃を超えるもの
T2 300℃以下 300℃を超えるもの
T3 200℃以下 200℃を超えるもの。ガソリン(発火点 約300℃)はここまでで足りる
T4 135℃以下 135℃を超えるもの。実務で指定されることが多い
T5 100℃以下 100℃を超えるもの
T6 85℃以下 85℃を超えるもの。もっとも厳しい
温度等級には前提となる周囲温度の範囲があります。直射日光や高温の配管に近い場所では、その前提を外していないかを確認してください。

温度等級には前提となる周囲温度の範囲がある。直射日光や高温の配管に近い場所では、その前提を外していないかを確認する。

ここまでのポイント
  • 温度等級は、機器の最高表面温度の上限を表す。
  • ガスの発火温度より低い等級を選ぶ。
  • 等級が厳しくなるほど、選べる機器は少なくなる。

旧表示と新表示は、機械的に読み替えられない

⚠️ 爆発等級のしきい値は0.6mm・0.4mm、機器グループは0.9mm・0.5mm

測り方の基準が別なので、数字が似ていてもそのまま置き換えられません。

ここが、この回でいちばん誤解されやすいところである。構造規格の表示では、爆発等級とガスの発火度で表す。国際整合指針では、機器グループと温度等級で表す。並びが似ているので、そのまま置き換えられそうに見える。

旧表示と新表示の対応
ものさしが違う。銘板を見たら、まずどちらの系統かを確かめる。
構造規格(旧) 国際整合指針(新)
ガスの区分 爆発等級 1:火炎逸走限界 0.6mm 超
爆発等級 2:0.4mm 超 0.6mm 以下
爆発等級 3:0.4mm 以下
IIA:最大安全すきま 0.9mm 以上
IIB:0.5mm 超 0.9mm 未満
IIC:0.5mm 以下
温度の区分 発火度 G1:発火温度 450℃ 超
G2:300℃ 超 450℃ 以下
G3:200℃ 超 300℃ 以下
G4:135℃ 超 200℃ 以下
G5:100℃ 超 135℃ 以下
温度等級 T1:表面温度 450℃ 以下
T2:300℃ 以下/T3:200℃ 以下
T4:135℃ 以下/T5:100℃ 以下
T6:85℃ 以下
表示の例 d2G4 Ex d IIB T4 Gb
発火度はガスの側の発火温度で分け、温度等級は機器の側の表面温度で分けます。似ていますが、測っている対象が違います。

発火度はガスの側の発火温度で分け、温度等級は機器の側の表面温度で分ける。似ているが、測っている対象が違う。

代表的なガスの分類を並べると、対応の感覚がつかみやすい。水素は発火度G1でありながら機器グループはIIC、アセチレンはG2でIIC。メタンとアセトンはG1でIIA。「発火度が緩いからグループも緩い」とは限らない。

ガス 発火度(旧) 機器グループ 温度等級
メタン G1 IIA T1
アセトン G1 IIA T1
エタノール G2 IIB T2
水素 G1 IIC T1
アセチレン G2 IIC T2
分類の例です。実際の設計では、扱う物質の資料で個別に確認してください。
ここまでのポイント
  • 爆発等級と機器グループは、しきい値の基準が違う。
  • 発火度はガスの温度、温度等級は機器の表面温度。
  • 「発火度が緩ければグループも緩い」とは限らない。

💡 この回のまとめ

表示は、機器が「どこまでなら安全か」を示した約束事である。区分図と物質の情報がそろっていれば、表示を読むだけで使えるかどうかは判断できる。逆に言えば、そのどちらかが欠けたまま機器を選ぶことはできない。


よくある質問

防爆構造には、どんな種類がありますか?

大きく2つの考え方に分かれます。内部で爆発しても外へ火炎を出さないもの(耐圧防爆 d、油入 o、充填 q、樹脂充填 m)と、そもそも点火させないもの(本質安全 ia・ib、内圧 p、安全増 e、非点火 n)です。

Ex d IIB T4 はどう読みますか?

Exが国際整合指針にもとづく表示であること、dが防爆構造(耐圧防爆)、IIBが機器グループ(対象とするガスの区分)、T4が温度等級(最高表面温度135℃以下)を表します。末尾にGa・Gb・Gcが付けば、使えるゾーンが直接わかります。

機器グループのIIA・IIB・IICは何が違いますか?

最大安全すきまで分けます。IIAは0.9mm以上(プロパン、メタン)、IIBは0.5mmを超え0.9mm未満(エチレン、エタノール)、IICは0.5mm以下(水素、アセチレン)です。IICの機器はIIA・IIBの場所でも使えますが、逆はできません。

温度等級はどう選びますか?

扱うガスの発火温度より低い等級を選びます。T1は450℃以下、T2は300℃以下、T3は200℃以下、T4は135℃以下、T5は100℃以下、T6は85℃以下です。ガソリンの発火点は約300℃なので、T3以上の等級で足ります。

旧表示の d2G4 は Ex d IIB T4 に読み替えられますか?

機械的には読み替えられません。爆発等級は火炎逸走限界0.6mm・0.4mmで分け、機器グループは最大安全すきま0.9mm・0.5mmで分けます。測り方の基準が別なので、銘板を見たらまずどちらの系統かを確かめる必要があります。

発火度と温度等級は同じものですか?

違います。発火度(G1〜G5)はガスの側の発火温度で分けた区分、温度等級(T1〜T6)は機器の側の最高表面温度で分けた区分です。水素は発火度G1でありながら機器グループはIICなど、「発火度が緩ければグループも緩い」とは限りません。

本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。数値は資料により表記に幅があります。機器の選定にあたっては、メーカーの取扱説明書と型式検定合格証、および発注者の基準を確認してください。

出典

次に読むならこれ第7回 保管庫の照明とスイッチ防爆電気設備の解説
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。