定格電流・規約電流・許容電流の違いとは?定格電流の求め方と、規約電流がある理由・許容電流が小さくなる理由
「定格電流」「規約電流」「許容電流」は、どれも「〇〇A」で書かれるので混ざりやすい言葉です。この記事は、3つが「誰の値か」の違い、定格電流の求め方、規約電流がわざわざある理由、許容電流が敷き方で小さくなる理由の4つにしぼって説明します。
結論
定格電流は機器の値(銘板の値)、規約電流は電動機の設計計算に使う決まった値(内線規程)、許容電流は電線が安全に流せる上限です。設計では「負荷の電流 ≦ 遮断器の定格電流 ≦ 電線の許容電流」の順に並ぶように選びます。
この記事に出てくる言葉
読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。
| 言葉 | 読み方 | やさしい説明 |
|---|---|---|
| 定格電流 | ていかくでんりゅう | 機器を決められた条件で使ったときに流れる電流。遮断器では、切れずに連続して流せる電流。 |
| 規約電流 | きやくでんりゅう | 電動機の出力ごとに内線規程が決めた、設計計算用の電流値。 |
| 許容電流 | きょようでんりゅう | 電線が熱で傷まずに流し続けられる電流の上限。 |
| 電流減少係数 | でんりゅうげんしょうけいすう | 同じ管に電線を何本も入れたとき、許容電流を割り引く係数。 |
| AT・AF | アンペアトリップ・アンペアフレーム | 遮断器の定格電流(AT)と、外形の大きさの区分(AF)。 |
この3つを頭に入れておくと、残りがすっと読めます。
定格電流は「機器」の値
電動機・変圧器・遮断器など、機器そのものに付いている値です。銘板やカタログに書いてあります。
規約電流は「計算の約束」
メーカーごとに少しずつ違う電動機の電流を、設計で同じように扱うための値です。
許容電流は「電線」の値
電線の太さで決まり、敷き方や周囲温度で小さくなります。
何が違う? ― 機器の値・設計の約束・電線の上限
3つの電流は、どれも「何A」で書かれますが、持ち主が違います。定格電流は機器(電動機・変圧器・遮断器など)、規約電流は設計の約束ごと、許容電流は電線の値です。
回路を組むときは、この3つを負荷の電流 ≦ 遮断器の定格電流 ≦ 電線の許容電流の順に並べます。電線が先に熱くならないように、電線の許容電流より小さい電流で遮断器が切れる、という並びです(電動機を含む回路には、始動電流を考えた特例があります)。
- 定格電流は機器、規約電流は設計の約束、許容電流は電線の値
- 並べ方は 負荷 ≦ 遮断器の定格 ≦ 電線の許容電流
- 遮断器はAT(定格電流)とAF(フレーム)を読み分ける
定格電流はどう求める? ― 容量と電圧から計算する
ペン太
ハリタ| 種類 | 式 | 計算例 |
|---|---|---|
| 単相の電熱器など(力率1) | I=P÷V | 2kW・200V → 10.0A |
| 単相の機器(力率あり) | I=P÷(V×力率) | 1.5kW・100V・力率0.9 → 約16.7A |
| 三相の機器(入力kW) | I=P÷(√3×V×力率) | 10kW・200V・力率0.9 → 約32.1A |
| 三相電動機(出力kW) | I=P÷(√3×V×力率×効率) | 3.7kW・200V・0.85・0.86 → 約14.6A |
| 三相変圧器(kVA) | I=S÷(√3×V) | 100kVA・210V → 約275A |
いちばん間違えやすいのが電動機です。電動機の「3.7kW」は軸から取り出す出力なので、電源から取る電力はそれより大きくなります。だから力率に加えて効率でも割ります。
- 単相は P÷V、三相は P÷(√3×V)が基本
- 力率がある機器は力率で割る
- 電動機は出力kWなので、さらに効率でも割る
規約電流はなぜある? ― メーカー差をならす「計算の約束」
同じ3.7kWの電動機でも、メーカーや形式によって定格電流は少しずつ違います。設計の段階では機器がまだ決まっていないことも多いので、出力ごとに決めた代表値で計算できるようにしたのが規約電流です。内線規程の資料に、電動機の出力ごとの値が表で示されています。
| 出力(kW) | 200V 規約電流(A) | 400V 規約電流(A) |
|---|---|---|
| 0.75 | 4.6 | 2.3 |
| 1.5 | 8 | 4 |
| 2.2 | 11.1 | 5.5 |
| 3.7 | 16.8 | 8.4 |
| 5.5 | 24.6 | 12.3 |
| 7.5 | 34 | 17 |
| 11 | 48 | 24 |
| 15 | 64 | 32 |
| 22 | 92 | 46 |
| 37 | 152 | 76 |
図2の計算では3.7kWが約14.6Aでしたが、規約電流は16.8Aです。規約電流は効率や力率が低めの機種でも足りるように、少し大きめの値になっています。だから規約電流で選んだ電線や遮断器は、どのメーカーの電動機をつないでも足ります。
電技解釈 第148条では、電動機の定格電流の合計がほかの負荷の合計より大きい低圧幹線について、その合計が50A以下なら1.25倍、50Aを超えるなら1.1倍以上の許容電流をもつものにするよう定めています。この「電動機の定格電流」に、設計段階では規約電流を当てはめます。計算の流れは動力ブレーカーの選定根拠と計算例、出力ごとのkVAは動力の負荷容量換算表にまとめています。
ペン太
ハリタ- 規約電流は、出力ごとに決めた電動機の代表値
- 定格電流より少し大きめで、どのメーカーでも足りる
- 機器が決まったら銘板の定格電流で確かめる
許容電流はなぜ小さくなる? ― 熱の逃げ方で決まる上限
許容電流は、電線に電流を流し続けたとき、絶縁物が許容温度を超えない上限です。電線は流した電流の2乗に比例して熱を出すので、熱がどれだけ逃げるかで上限が変わります。表の値は周囲温度30℃などの決まった条件での値なので、実際の敷き方に合わせて割り引きます。
| 同じ管に入れる電線の数 | 電流減少係数 |
|---|---|
| 3本以下 | 0.70 |
| 4本 | 0.63 |
| 5〜6本 | 0.56 |
| 7〜15本 | 0.49 |
| 16〜40本 | 0.43 |
| 41〜60本 | 0.39 |
| 61本以上 | 0.34 |
たとえばIV 2.0mmの許容電流は35Aですが、電線管に3本入れると35×0.70≒24Aになります。20Aの分岐回路にIV 2.0mmを使えるのは、この24Aが遮断器の20Aを上回るからです。数え方の注意は電流減少係数の記事で説明しています。
- 許容電流は、絶縁物が熱で傷まない上限
- 管に入れる本数や周囲温度で小さくなる
- IV 2.0mmは単独35A、管に3本で約24A
まとめ
結論
定格電流は機器、規約電流は設計の約束、許容電流は電線の値です。「負荷の電流 ≦ 遮断器の定格電流 ≦ 電線の許容電流」の順に並ぶように選びます。
実務で迷わないための4つの確認
- どの電流の話か(機器・設計・電線)をまず確かめる
- 電動機は出力kWなので、効率と力率で割って電流にする
- 設計段階の電動機は規約電流で計算し、機器が決まったら銘板で確かめる
- 許容電流は、管の本数や周囲温度で割り引いてから遮断器と比べる
遮断器そのものの種類は過電流遮断器と配線用遮断器の違い、ブレーカーの容量と使える電力の目安はブレーカー20Aで何ワットまで使える?で説明しています。
よくある質問
規約電流と定格電流、どちらで計算すればいいですか?
電動機を含む幹線や分岐回路の設計(電線の太さや遮断器の選定)では、内線規程の規約電流を使うのが一般的です。機器が決まっていて銘板の定格電流が分かる場合は、その値で確かめます。規約電流のほうが少し大きめの値になっているので、迷ったら規約電流で計算すれば安全側です。
ブレーカーの「定格電流」とは何の値ですか?
遮断器の定格電流(AT=アンペアトリップ)は、その遮断器が自動で切れずに連続して流せる電流の大きさです。20Aのブレーカーなら20Aまでは切れず、それを超える電流が続くと時間をおいて切れます。外形の大きさを表すフレーム(AF)とは別の値です。
許容電流は電線の太さだけで決まりますか?
太さで基本の値が決まりますが、電線管に何本入れるか(電流減少係数)、周囲の温度、ケーブルの敷き方で小さくなります。表の値をそのまま使えるのは、表の前提条件と同じときだけです。
許容電流ぎりぎりまで流しても大丈夫ですか?
許容電流は「その電流を流し続けても絶縁物が許容温度を超えない」上限なので、超えなければ規定上は問題ありません。ただし電圧降下や将来の増設を考えると、実務では余裕をもたせて太さを決めるのがふつうです。
規約電流の表の値が古い本と違うのはなぜですか?
高効率形の電動機が標準になったことに合わせて、内線規程の改定で規約電流の値が見直されているためです。設計では、手元の最新版の内線規程の値を使ってください。

ハリタ
