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壁に沿って電線を隠す細長いカバーを、現場では「モール」、図面や条文では「線ぴ」と呼びます。同じものなのか、どこまでが線ぴで、どこからが金属ダクトなのか。この記事は、呼び名の対応、幅の境目、樹脂モールの扱い、使える場所の4つにしぼって説明します。

ペン太ペン太
改修の打合せで「ここはモールで」と言われたんですが、図面には「1種金属線ぴ」と書いてあります。同じものですか?
ハリタハリタ
同じものだよ。1種金属線ぴを、現場ではメタルモールと呼ぶんだ。ただ、樹脂のモールは法令上の扱いがちょっと違うから、そこは要注意だね。

結論

線ぴは法令・規程の言葉、モールは現場の通称です。1種金属線ぴ(幅4cm未満)がメタルモール、2種金属線ぴ(4cm以上5cm以下)がレースウェイで、5cmを超えると金属ダクトになります。樹脂のモールはケーブルを覆うカバーとして使い、IV線などをそのまま入れることはできません。

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
線ぴ せんぴ 電線を収めて造営材に沿わせる、細長い樋(とい)状のカバー。
メタルモール ― 1種金属線ぴの通称。幅4cm未満。
レースウェイ ― 2種金属線ぴの通称。幅4cm以上5cm以下。
金属ダクト きんぞくダクト 幅5cmを超える金属製の箱状の電線路。
樹脂モール じゅしモール 合成樹脂製の線ぴ。プラモールとも呼ぶ。
やさしい言い換えです。正式な定義は電技解釈・内線規程を確認してください。
先に3つだけ

この3つを頭に入れておくと、残りがすっと読めます。

1

名前を分けるのは「材質」と「幅」

金属か樹脂か、幅が4cm・5cmのどこに入るかで、呼び名と工事の決まりが変わります。

2

金属線ぴは電技解釈 第161条

使える場所・電圧・接地が決まっています。幅5cmを超える金属ダクトは第162条です。

3

樹脂のモールは「ケーブル工事」

電技解釈には合成樹脂線ぴ工事がないので、ケーブルを覆うカバーとして扱います。

線ぴとモールは同じもの? ― 法令の言葉と現場の通称

1種メタルモール
2種レースウェイ
樹脂プラモール
5cm超金属ダクト

「線ぴ」は電気設備の技術基準の解釈や内線規程で使われる言葉で、「モール」は現場で広く使われる通称です。モールという言葉は法令には出てこないので、図面や仕様書では線ぴの種類で書き、打合せではモールで話す、という使い分けになっています。

ややこしいのは、「モール」だけだと金属か樹脂かが分からないことです。金属ならメタルモール(1種金属線ぴ)、樹脂ならプラモール(合成樹脂の線ぴ)と言い分けると、工事の決まりを取り違えずに済みます。

たとえるなら
線ぴは「正式な名字」、モールは「あだ名」
同じ人でも、書類には正式な名前、仲間うちではあだ名で呼びます。ただ「モールくん」が金属の人なのか樹脂の人なのかで、守るルールが違うのがこの話のポイントです。
ここまでのポイント
  • 線ぴは法令の言葉、モールは現場の通称
  • 1種金属線ぴ=メタルモール、2種金属線ぴ=レースウェイ
  • 「モール」だけでは金属か樹脂か分からないので言い分ける

どこからが金属ダクト? ― 4cmと5cmが境目

4cm未満1種
4〜5cm2種
5cm超金属ダクト
根拠第161・162条

金属製のものは、幅で名前と工事の決まりが変わります。幅4cm未満が1種、4cm以上5cm以下が2種の金属線ぴで、5cmを超えると線ぴではなく金属ダクトになり、電技解釈 第162条の金属ダクト工事の決まりに移ります。

くらべるところ 金属線ぴ(第161条) 金属ダクト(第162条)
大きさ 幅5cm以下 幅5cmを超える
使える場所 乾燥した展開した場所・点検できる隠ぺい場所 乾燥した展開した場所・点検できる隠ぺい場所
使用電圧 300V以下 300Vを超えても施設できる
電線の入れ方 線ぴ内で接続しない(2種で容易に点検できる場合を除く) 断面積の合計はダクト内断面積の20%以下(制御回路などだけなら50%以下)
支持 製品・内線規程による 3m以下(取扱者以外が出入りできない場所で垂直なら6m以下)
接地 D種接地工事(省略の条件あり) 300V以下はD種、300Vを超えるとC種
出典:電気設備の技術基準の解釈 第161条・第162条をもとに作成
ペン太ペン太
レースウェイは照明を吊るのによく見ますけど、あれも線ぴなんですね。
ハリタハリタ
そう。天井から照明器具を吊りながら電線も通せるから、工場や倉庫で重宝するんだ。幅が5cm以下だから、扱いは2種金属線ぴだよ。
ここに注意!
「大きいモール」を金属線ぴのつもりで300Vを超える回路に使わない。
金属線ぴは使用電圧300V以下に限られます。400V級の回路を収めるなら、幅5cmを超える金属ダクトや金属管、ケーブル工事などを選びます。
ここまでのポイント
  • 幅4cm未満は1種、4〜5cmは2種、5cm超は金属ダクト
  • 金属線ぴは300V以下、金属ダクトは300V超も可
  • 金属ダクトは電線の断面積20%以下が目安の決まり


樹脂のモールには何を入れていい? ― ケーブルのカバーとして使う

VVF○ カバー
IV線✕
扱いケーブル工事
根拠第156・164条

今の電技解釈 第156条の工事一覧には、合成樹脂管工事や金属線ぴ工事はありますが、合成樹脂線ぴ工事はありません。そのため、IV線のような絶縁電線を樹脂モールにそのまま入れる配線はできません。

樹脂モールは、VVFなどのケーブルを覆って見た目と保護をよくするカバーとして使います。決まりはケーブル工事(第164条)によるので、使える電線はケーブル、重いものが当たるおそれがある場所には適当な防護を施す、という考え方です。くわしくは内線規程の合成樹脂線ぴ配線の記事で整理しています。

たとえるなら
樹脂モールは「ケーブルの上着」
ケーブルはもともと外装という服を着ているので、上着(モール)を重ねても問題ありません。IV線は外装のない下着姿のようなものなので、上着1枚では外に出られない、というイメージです。
ここに注意!
「樹脂モールに入れたから電線管工事と同じ」と考えない。
樹脂モールは管ではありません。電線管の代わりにはならないので、絶縁電線を使うなら合成樹脂管・金属管・金属線ぴなど、工事一覧にある方法を選びます。
ここまでのポイント
  • 電技解釈に合成樹脂線ぴ工事はない
  • 樹脂モールはケーブルを覆うカバーとして使う
  • IV線を入れるなら管や金属線ぴの工事にする

どこで使える? ― 場所・電圧・接地の決まり

場所 金属線ぴ 樹脂モール(ケーブルを覆う)
乾燥した展開した場所 ○(300V以下) ○
点検できる隠ぺい場所 ○(300V以下) ○
点検できない隠ぺい場所 ✕ ケーブル工事の決まりによる
湿気の多い場所・水気のある場所 ✕ ケーブル工事の決まりによる
屋外・屋側 ✕ ケーブル工事の決まりによる
出典:電気設備の技術基準の解釈 第156条・第161条・第164条をもとに作成

金属線ぴは、乾燥した展開した場所と点検できる隠ぺい場所だけで使えます。場所の見分け方は展開した場所・隠ぺい場所の記事で説明しています。

金属線ぴにはD種接地工事が必要ですが、線ぴの長さが4m以下の場合、または対地電圧150V以下で長さ8m以下かつ簡易接触防護措置を施すか乾燥した場所に施設する場合は省略できます。くわしくは金属線ぴ工事の記事にまとめています。

ここに注意!
「8m以下なら接地は省略できる」と覚えない。
8m以下で省略できるのは、対地電圧150V以下で、かつ簡易接触防護措置か乾燥した場所という条件がそろうときだけです。条件なしで省略できるのは4m以下です。
ここまでのポイント
  • 金属線ぴは乾燥した展開・点検できる隠ぺい場所、300V以下
  • 屋外や湿気の多い場所では使えない
  • 接地の省略は4m以下、または150V以下で8m以下(条件つき)


まとめ

結論

線ぴは法令の言葉、モールは現場の通称です。金属は幅で1種(メタルモール)・2種(レースウェイ)・金属ダクトに分かれ、樹脂のモールはケーブルを覆うカバーとして使います。

実務で迷わないための4つの確認

  1. 「モール」と言われたら、金属か樹脂かを確かめる
  2. 金属は幅で、1種・2種・金属ダクトのどれかを決める
  3. 樹脂モールに入れてよいのはケーブル。IV線は管や金属線ぴへ
  4. 金属線ぴは乾燥した場所・300V以下。接地の省略条件も確認する

金属ダクトとの違いは金属線ぴと金属ダクト工事、ダクトの大きさの決め方はケーブルダクトのサイズの決め方で説明しています。

よくある質問

線ぴは何と読みますか?

「せんぴ」と読みます。漢字では「線樋」と書き、電線を通す樋(とい)という意味です。

メタルモールとレースウェイは何が違いますか?

どちらも金属線ぴで、幅で分かれます。メタルモールは幅4cm未満の1種金属線ぴ、レースウェイは幅4cm以上5cm以下の2種金属線ぴです。メタルモールは壁のスイッチやコンセントへの配線、レースウェイは天井から照明器具を吊る用途によく使われます。

樹脂のモールにIV線を入れてもいいですか?

電気設備の技術基準の解釈の工事一覧には「合成樹脂線ぴ工事」がないため、IV線などの絶縁電線をそのまま樹脂モールに入れる配線はできません。樹脂モールは、VVFなどのケーブルを覆うカバーとして、ケーブル工事の決まりで使います。

金属線ぴは屋外で使えますか?

使えません。金属線ぴ工事は、乾燥した展開した場所か点検できる隠ぺい場所で、使用電圧300V以下に限られます。屋外や湿気の多い場所では、金属管やケーブル工事などを選びます。

金属線ぴの接地は省略できますか?

線ぴの長さが4m以下の場合、または対地電圧150V以下で長さ8m以下かつ簡易接触防護措置を施すか乾燥した場所に施設する場合は、D種接地工事を省略できます(電技解釈 第161条)。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。