この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
全体像:内線規程【023】架空電線路
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出典:内線規程(JEAC8001-2022)より

架空電線路は、電柱に電線を張って電気を送る身近な配電設備です。屋外で人・車両・建物のそばを通るため、ルールは 「支持物を倒さない/電線を正しく張る/まわりと距離をとる」 の3点に集約できます。

架空電線路は支持物の安全・電線の施設・保安と離隔の3つの視点で整理できることを示す図解

⚡ 先に結論だけ言うと
要点はこの3つだけ。①支持物の安全=風圧40m/s・根入れ・支線、②電線の施設=支持・分岐・線間距離・弛度、③保安と離隔=接近状態・保安工事・離隔距離(2200-5/2200-6表)。
見習いペン太
見習いペン太
覚えることが多そう…と思ったけど、3つに分けると整理しやすいですね。
はりた
はりた
そう、まずはこの3本柱。あとは各項目の数値を押さえれば十分だよ。
この記事でわかること
✔ 基本ルール(どこに設けてよいか)
✔ ① 支持物(電柱)の安全
✔ ② 電線の施設方法
✔ ③ 保安工事と離隔距離

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ペン太ペン太
電柱って、とりあえず立てば大丈夫だと思ってました…風とか考えるんですか?
ハリタハリタ
風速40m/sの風圧と引っ張り荷重に耐える設計が前提です。根入れの深さも全長で決まっていますよ。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 使用電圧300Vを超える低圧架空電線に使えない電線は何ですか。
  • 電柱の根入れは、全長が15mを超える場合どれだけ必要ですか。
  • 線間距離と離隔距離では、参照する表がどう分かれますか。
この記事の道案内
内線規程(JEAC8001-2022)にそって、架空電線路のルールを5つの視点で整理します。

基本ルール(どこに設けてよいか)

トピック1:基本ルール(どこに設けてよいか)
  • 支持物は、原則 他人の電線路を貫通して設置しない(承諾があれば可)
  • 架空電線は、原則 他人の電線路の支持物を挟んで設置しない(同一支持物・承諾があれば可)
  • 使用電圧 300V超の低圧架空電線 には DV電線・DE電線・多心型電線を 使用しない
ここまでのポイント
  • 支持物は、原則として他人の電線路を貫通して設置しない(承諾があれば可)。
  • 架空電線は、原則として他人の電線路の支持物を挟んで設置しない(同一支持物・承諾があれば可)。
  • 使用電圧300Vを超える低圧架空電線には、DV電線・DE電線・多心型電線を使用しない。

① 支持物(電柱)の安全

トピック2:支持物(電柱)の安全

風速40m/sの風圧(人家連担は半減)、根入れは全長15m以下で1/6以上15m超で2.5m以上、5度超や引留箇所に支線、軟弱地盤は根かせという電柱の倒壊防止ポイントの図解

  • 荷重・風圧:引っ張り荷重と風速40m/sの風圧に耐える構造。人家連担地域は風圧を半減できる
  • 根入れ(2200-1表)全長15m以下=全長の1/6以上/15m超=2.5m以上。軟弱地盤は「根かせ」
  • 支線・支柱:水平角度5度超・引留箇所に設置(支柱で代替可)
  • 昇柱防止:足場金具は高い位置に。昇柱防止板・立入制限・立入困難な場所は例外
支持物の全長根入れ(2200-1表)
15m以下全長の1/6以上
15mを超える2.5m以上
軟弱地盤別途「根かせ」を施す
ここまでのポイント
  • 引っ張り荷重と風速40m/sの風圧に耐える構造とする(人家連担地域は風圧を半減できる)。
  • 根入れは2200-1表により、全長15m以下で全長の1/6以上、15m超で2.5m以上。
  • 軟弱地盤では「根かせ」を施す。
  • 支線・支柱は水平角度5度超の箇所・引留箇所に設置する(支柱で代替可)。
  • 昇柱防止のため足場金具は高い位置に設ける(昇柱防止板・立入制限・立入困難な場所は例外)。

② 電線の施設方法

トピック3:電線の施設方法

架空電線の施設は、がいし等での支持、支持点での分岐、2200-4表による線間距離、張りすぎたるみすぎを避ける弛度の4要点という図解

  • 支持がいし等で電圧に応じて支持
  • 分岐:電線の支持点で行う(張力がかからない施設は除く)
  • 線間距離:最もたるんだ点で2200-4表(スペーサ・絶縁電線・混触なし等で緩和)
  • 弛度:張りすぎ・たるみすぎを避け、温度変化を見込んで適正に
  • 多心型電線(300V以下):裸導体はB種接地の中性線/接地側、またはD種接地のメッセンジャーワイヤとする
ペン太ペン太
線間距離と離隔距離って、同じ意味で使っていいですよね?
ハリタハリタ
別物です。線間距離は電線同士、離隔距離は他物との距離。参照する表も違うので混同は禁物です。
ここまでのポイント
  • がいし等で電圧に応じて支持する。
  • 分岐は電線の支持点で行う(張力がかからない施設は除く)。
  • 線間距離は最もたるんだ点で2200-4表による(スペーサ・絶縁電線・混触なし等で緩和)。
  • 弛度は張りすぎ・たるみすぎを避け、温度変化を見込んで適正にする。
  • 多心型電線(300V以下)の裸導体は、B種接地の中性線/接地側、またはD種接地のメッセンジャーワイヤとする。

③ 保安工事と離隔距離

トピック4:保安工事と離隔距離

接近状態とは、電線が切れたり電柱が倒れたときに他物へ接触するおそれがある範囲のこと(交差・同一支持物は含まない)。次の場合は 保安工事を省略できます。

  • 屋側・屋内電線路に隣接するごく短い区間で、建物に接触しにくい場合
  • B種接地工事を施した低圧架空電線路に接近する場合
  • 切断・倒壊しても他物に接触する可能性が低く危険がない場所(山間部など)
離隔距離はどの表を見る?
・電線どうしの 線間距離 → 2200-4表
・他物と 接近 → 2200-5表
・他物の 上部で交差 → 2200-6表
離隔距離・線間距離はどの表を見る?
確認したい内容参照する表
電線どうしの線間距離2200-4表
他物と接近2200-5表
他物の上部で交差2200-6表
支持物の根入れ2200-1表
取り違えやすいところ正しくは
他人の電線路の上でも自由に設けられる支持物は原則として他人の電線路を貫通して設置しない(承諾があれば可)
300V超の低圧でもDV電線が使えるDV電線・DE電線・多心型電線は使用しない
風圧はどこでも同じ条件で設計する風速40m/sの風圧に耐える構造。人家連担地域は風圧を半減できる
支線は引留箇所だけに設ける水平角度5度超の箇所と引留箇所に設置する(支柱で代替可)
足場金具は登りやすい高さでよい昇柱防止のため高い位置に設ける(昇柱防止板・立入制限・立入困難な場所は例外)
分岐はどこで取ってもよい電線の支持点で行う(張力がかからない施設は除く)
線間距離と離隔距離は同じもの線間距離は電線どうし、離隔距離は他物との距離。参照する表も分かれる
ここまでのポイント
  • 接近状態とは、電線が切れたり電柱が倒れたときに他物へ接触するおそれがある範囲のこと(交差・同一支持物は含まない)。
  • 屋側・屋内電線路に隣接するごく短い区間で建物に接触しにくい場合は、保安工事を省略できる。
  • B種接地工事を施した低圧架空電線路に接近する場合も省略できる。
  • 切断・倒壊しても他物に接触する可能性が低く危険がない場所(山間部など)も省略できる。

よくある質問(FAQ)

トピック5:よくある質問(FAQ)

Q. 架空電線路の支持物はどんな荷重を想定するの?

A. 電線の引っ張り荷重に加え、風速40m/sの風圧荷重や気温・振動などを考慮します。人家連担地域では風圧荷重を半分に軽減して設計できます。

Q. 電柱の根入れはどれくらい必要?

A. A種鉄柱・木柱の目安(2200-1表)は、全長15m以下で全長の1/6以上、15m超で2.5m以上です。軟弱地盤では別途「根かせ」を施します。

Q. 支線はどんなときに設置するの?

A. 高圧では水平角度が5度を超える箇所や電線を引き留める箇所に設けます。支線と同等以上の効果がある支柱で代替することもできます。

Q. 他物との離隔距離はどこを見ればいい?

A. 接近する場合は2200-5表、上部で交差する場合は2200-6表によります。電線どうしの線間距離は2200-4表です。

まとめ|設置場所・支持物・電線・離隔の順で見る

架空電線路は、どこに設けてよいかを確かめ、支持物の荷重と根入れを満たし、電線を適正に支持し、離隔の表を取り違えないという順で確認すると整理しやすくなります。

確認する項目規程が示す内容
支持物の設置場所原則として他人の電線路を貫通しない(承諾があれば可)
架空電線の設置場所原則として他人の電線路の支持物を挟まない(同一支持物・承諾があれば可)
300V超の低圧で使えない電線DV電線・DE電線・多心型電線
支持物の荷重引っ張り荷重と風速40m/sの風圧に耐える構造
人家連担地域風圧を半減できる
根入れ(全長15m以下)全長の1/6以上
根入れ(全長15m超)2.5m以上
軟弱地盤「根かせ」を施す
支線・支柱水平角度5度超の箇所・引留箇所に設置(支柱で代替可)
昇柱防止足場金具は高い位置に(昇柱防止板・立入制限・立入困難な場所は例外)
電線の支持がいし等で電圧に応じて支持
分岐電線の支持点で行う(張力がかからない施設は除く)
線間距離最もたるんだ点で2200-4表による(スペーサ・絶縁電線・混触なし等で緩和)
弛度温度変化を見込んで適正に
多心型電線(300V以下)の裸導体B種接地の中性線/接地側、またはD種接地のメッセンジャーワイヤ
保安工事を省略できる場合屋側・屋内電線路に隣接するごく短い区間/B種接地の低圧架空電線路に接近する場合/切断・倒壊しても危険がない場所

設置場所で押さえること

  • 他人の電線路を貫通していないか。
  • 他人の支持物を挟んでいないか。
  • 使えない電線を選んでいないか。

支持物で押さえること

  • 風圧と引っ張り荷重への耐力。
  • 全長に応じた根入れと、軟弱地盤での根かせ。
  • 支線・支柱の設置箇所と昇柱防止。

電線と離隔で押さえること

  • 支持と分岐の方法、弛度。
  • 線間距離の表と緩和条件。
  • 接近・交差で参照する表の使い分け。

架空電線路は、支持物の強度・電線の張り方・周囲との距離という3つの要素が、そのまま公衆の安全につながる設備です。とくに線間距離と離隔距離は名前が似ていて表も別なので、図面に書き込む前に一度立ち止まって確認しておくと安心です。

📘 この記事の根拠規程|解説の原文は内線規程(JEAC8001-2022)に掲載されています。実務で使う方は手元に1冊どうぞ → 電気設備の必携書籍おすすめ4選【2026年版】

ペン太ペン太
架空電線路の設計、次は何から手を付ければいいですか?
ハリタハリタ
まず支持物の根入れから確認しましょう。全長15m以下なら全長の1/6以上、超えるなら2.5m以上が目安です。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。