技術図書館海から遠くても起きる|距離だけで決めない付着した塩分が吸湿して導電化し絶縁低下や腐食へ。材料・施工・保守の3本柱で備えるこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
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海の近くの電柱やキュービクルで、がいしが白く汚れていたり、金具が赤くさびていたりするのを見たことはありませんか。これが塩害です。潮風が運ぶ塩が、電気の設備を少しずつ弱らせます。内線規程は、塩害を受けるおそれがある場所では耐塩工事に準じて施工するよう勧めています。この記事では、塩害のしくみを動く図でつかみ、「海から遠いから大丈夫」が危ない理由と、材料・施工・保守点検の3本柱の対策を確かめます。

①付いた塩が湿気を吸って電気を通し、漏電やさびにつながる、②材料・施工・保守点検の3本柱で備える、③耐塩工事にするかは建物側と電力会社の協議で決めます。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

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塩害のしくみ ― 湿った塩は電気の通り道になる

たとえるなら
塩は、汗をかいた手のようなものです。
乾いた手より、汗で濡れた手のほうが電気を通しやすく、感電しやすくなります。汗に塩分が溶けているからです。がいしや端子に付いた塩も同じで、乾いているうちは粉ですが、霧や夜露で湿ると塩水の膜になり、表面を電気が伝わるようになります。
潮風の塩分ががいしや端子に付き、湿気を吸って塩水の膜になると、表面を電気が漏れ、金属はさびていきます。

塩害は、次の順に進みます。

  1. 付く:潮風に乗った塩分が、がいし・端子・金属部に付く
  2. 湿る:付いた塩が霧や夜露の湿気を吸い、電気を通す膜になる
  3. 漏れる・さびる:表面を電気が漏れて絶縁が下がり、漏電・地絡につながる。金属はさびて弱くなる
  4. 雨がたっぷり降れば塩は洗い流されますが、雨が少なく霧や夜露が多い時期は、塩が残ったまま湿るので事故が起きやすくなります。

    ここまでのポイント
    • 塩が付く → 湿気で塩水の膜 → 電気が漏れる・さびる
    • 行き着く先は、絶縁低下・漏電・地絡と金属の腐食
    • 雨が少なく、霧や夜露が多いときに起きやすい

    海から遠くても油断しない

    台風や強い季節風は、塩を内陸まで運びます。海岸からの距離だけでなく、風の向きや地形、過去の事故も見て判断します。

    塩害は海のすぐそばだけの話ではありません。内線規程の注記にもあるとおり、台風や強い潮風のあとは、海岸から離れた地域でも塩害事故が起きることがあります。

  • 海からの風がまっすぐ吹き込む地形か
  • 台風の通り道になりやすいか
  • 近くの電柱や建物で、がいしの汚れや金具のさびが目立たないか
  • 電力会社がその地域を塩害地区として扱っていないか
ひっかけ注意
「海から○km離れているから、塩害対策は要らない」ではありません。
距離はひとつの目安にすぎません。風と地形しだいで、塩はずっと内陸まで届きます。機器ごとの耐塩の区分(たとえば照明器具の耐塩形・重耐塩形)も、距離に加えて環境で選びます。

屋外の機器を耐塩・重耐塩から選ぶ考え方は仕様の設計|屋外機器の塩害対策と機器選定基準(重塩害地域の目安つき)でも扱っています。

ここまでのポイント
  • 台風や強い季節風のあとは、内陸でも塩害事故が起きる
  • 距離だけでなく、風・地形・周りの様子・電力会社の扱いで判断する


対策の3本柱 ― 材料・施工・保守点検

材料で塩に強いものを選び、施工で塩と水を溜めず、保守点検で早めに見つける。3つそろえてはじめて効きます。
柱 具体的にやること
材料 ステンレスなど錆びにくい金属、溶融亜鉛めっき・防食塗装、耐塩用のがいし・機器、絶縁距離に余裕をもたせる
施工 屋外は耐塩工事に準じる、すき間の防水、水抜き・換気、塩が溜まりにくい向き・配置、確実な接地
保守点検 定期的な清掃・洗浄、絶縁抵抗の測定、さび・変色の確認、台風のあとの臨時点検
内線規程の考え方をもとに整理したもの。

耐塩工事にするかどうかは、電気設備を施設する側(建物側)と電気事業者(電力会社)が協議して決めるのが望ましいとされています。電力会社の設備(引込線や計器など)とつながる部分もあるので、計画の早い段階で相談しておきます。

ひっかけ注意
「耐食の材料にしたから、あとは何もしなくてよい」ではありません。
材料だけでは、表面に付いた塩はなくなりません。定期的に洗ったり、絶縁抵抗を測ったりして、塩が溜まっていないか、絶縁が下がっていないかを確かめ続けることが大切です。
ひとことで言うと:「湿った塩は電気の通り道。距離でなく環境で判断し、材料・施工・点検の3本柱で備える」。
ここまでのポイント
  • 材料・施工・保守点検の3本柱でそなえる
  • 耐塩工事にするかは、建物側と電力会社の協議で決めるのが望ましい
  • 材料だけでなく、点検を続けることが大切

よくある質問

塩害ってどんな現象?

潮風に乗った塩分ががいしや端子・金属部に付き、湿気を吸って電気を通す膜になる現象です。絶縁が下がって漏電・地絡につながったり、金属がさびたりします。

海から遠ければ塩害対策は要らない?

要らないとは限りません。台風や強い季節風のあとは、内陸でも塩害事故が起きることがあります。距離だけでなく、風の向き・地形・周りの様子・電力会社の扱いを見て判断します。

塩害対策の基本は?

材料の選定(錆びにくい金属・防食塗装・耐塩用のがいしなど)、施工の工夫(耐塩工事に準じる・防水・塩が溜まりにくい配置)、保守点検(清掃・洗浄・絶縁抵抗の測定)の3本柱です。

耐塩工事をするかどうかは誰が決めるの?

内線規程では、電気設備の施設者と電気事業者の協議で決めることが望ましいとされています。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
海から遠ければ対策は不要 台風・強風のあとは内陸でも起きる
塩が付いても乾いていれば平気 湿ると塩水の膜になり電気が漏れる
耐食の材料にすれば完了 材料・施工・保守点検の3本柱
要否は設計側だけで決める 建物側と電力会社の協議で決める
距離ではなく環境で見る。この一点を外さなければ、対策の抜けは防げます。

📘 この記事の根拠規程|解説の原文は内線規程(JEAC8001-2022)に掲載されています。実務で使う方は手元に1冊どうぞ → 電気設備の必携書籍おすすめ4選【2026年版】

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ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。