内線規程の解釈と解説【011】|過電流遮断器
ドライヤーと電子レンジを同時に使ったら、分電盤のブレーカーが「パチン」。これが過電流遮断器の働きです。電線に許容電流を超える電流が流れ続けると、電線が熱くなって被覆が傷み、火災につながります。過電流遮断器は、その前に電路を自動で切って電線と機器を守ります。この記事では、付ける場所、配線用遮断器とヒューズがどれだけの電流で切れるか、付けてはいけない所と遮断容量を、3つの質問に分けて動く図で確かめます。
先に言葉をそろえる
| 言葉 | ひとことで言うと |
|---|---|
| 過電流 | 電線や機器に決められた以上の電流が流れること。過負荷と短絡がある |
| 過負荷 | 機器を使いすぎて、定格より少し大きい電流が長く流れること |
| 短絡 | 電線どうしが直接つながり、とても大きな電流が一気に流れること(ショート) |
| 定格電流 | その遮断器やヒューズに、ずっと流し続けてよい電流 |
| 遮断容量 | その遮断器が安全に切れる、最大の短絡電流 |
質問① どこに付ける? ― 入口・幹線・分岐
過電流遮断器は、その先の電線を守れる位置に付けます。電線が細くなる所や枝分かれする所では、細い電線に合った遮断器が要るからです。
| 付ける所 | 決まりの内容 |
|---|---|
| 引込口の近く | 建物に入った所で、屋内の電路全体を守る(内線規程) |
| 幹線の電源側 | その幹線を守る遮断器を電源側に。許容電流が電源側の遮断器の55%以上などなら省略できる(電技解釈 第148条) |
| 分岐回路 | 幹線との分岐点から電線の長さ3m以下の所に。許容電流が幹線の遮断器の35%以上なら8m以下、55%以上なら長さの制限なし(電技解釈 第149条) |
- 引込口の近く・幹線の電源側・分岐点に付ける
- 分岐回路は分岐点から原則3m以下(35%以上なら8m以下、55%以上なら制限なし)
- その先の細い電線を守れる位置に置くのが基本
質問② どれだけ流れたら切れる?
電技解釈 第33条では、低圧の配線用遮断器とヒューズがどれだけの電流で、どのくらいの時間で切れなければならないかを決めています。
配線用遮断器:定格の1倍では動作しない/1.25倍と2倍で決まった時間内に動作
| 定格電流 | 1.25倍 | 2倍 |
|---|---|---|
| 30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
| 30A超 50A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
| 50A超 100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
| 100A超 225A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
| 225A超 400A以下 | 120分以内 | 10分以内 |
ヒューズ:定格の1.1倍に耐える/1.6倍と2倍で決まった時間内に溶断
| 定格電流 | 1.6倍 | 2倍 |
|---|---|---|
| 30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
| 30A超 60A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
| 60A超 100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
| 100A超 200A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
- 配線用遮断器は1倍で動作せず、1.25倍・2倍で決まった時間内に動作
- ヒューズは1.1倍に耐え、1.6倍・2倍で決まった時間内に溶断
- 定格が大きいほど、切れるまでの時間の上限は長い
配線用遮断器とヒューズの違い
| くらべる点 | 配線用遮断器 | ヒューズ |
|---|---|---|
| 切れ方 | 過電流を検出して接点が開く | ヒューズの金属が熱で溶けて切れる |
| 切れたあと | 原因を取り除き、レバーを戻して再使用 | 新しいものに取り替える |
| 手で入切 | できる(開閉器を兼ねられる) | できない(電源側に開閉器が要る) |
電動機だけの回路では、過負荷保護装置(電磁開閉器のサーマルなど)と短絡保護専用の遮断器やヒューズを組み合わせて、1つの過電流遮断器として使うこともできます(電技解釈 第33条第4項)。電動機は動き出すときに大きな始動電流が流れるので、過負荷はサーマルで、短絡は専用の遮断器で、と役割を分けて守ります。
- 配線用遮断器は再使用でき、手で入切もできる
- ヒューズは溶けたら取り替え。電源側に開閉器が要る
- 電動機回路は過負荷保護装置+短絡保護専用遮断器の組み合わせも使える
質問③ 付けてはいけない所と遮断容量
電技解釈 第35条では、次の箇所には過電流遮断器を付けてはいけないとしています。ここだけが切れると、接地が外れたり、単相3線式で100Vの負荷に高い電圧がかかったりして危険だからです。
| 付けてはいけない所 |
|---|
| 接地線 |
| 多線式電路の中性線 |
| 電路の一部に接地工事を施した低圧電線路の接地側電線 |
もう一つ大事なのが遮断容量です。低圧の過電流遮断器は、その場所を通る短絡電流を遮断できる能力を持っていなければなりません(電技解釈 第33条第1項)。変圧器に近い幹線ほど短絡電流は大きいので、遮断容量の大きい遮断器を選びます。最大短絡電流が10,000Aを超える場所では、10,000A以上を遮断できる配線用遮断器と、電源側でそれより大きな短絡電流を先に(または同時に)切る遮断器を組み合わせる方法も認められています。
- 接地線・多線式の中性線・接地側電線には付けない(各極同時に切れるものは可)
- 遮断器は、その場所の短絡電流を遮断できる能力を持つものにする
- 10,000Aを超える所は電源側の遮断器と組み合わせる方法もある
よくある質問
過電流遮断器はどこに付けますか?
引込口の近く、幹線の電源側、分岐回路の分岐点から原則3m以下の所など、その先の電線を守れる位置に付けます(電技解釈 第148条・第149条)。
配線用遮断器はどれくらいの電流で切れますか?
定格の1倍では自動で動作せず、1.25倍と2倍の電流で決まった時間内に動作します。定格30A以下なら1.25倍で60分以内、2倍で2分以内です(電技解釈 第33条)。
ヒューズの溶断特性は?
定格の1.1倍の電流に耐え、1.6倍と2倍の電流で決まった時間内に溶断します。定格30A以下なら1.6倍で60分以内、2倍で2分以内です。電気用品安全法の対象品は同法の基準によります。
中性線に過電流遮断器を付けてはいけないのはなぜですか?
中性線だけが切れると、単相3線式では100Vの負荷どうしが直列になり、高い電圧がかかって機器を壊すおそれがあるためです。各極が同時に切れるものなら付けられます(電技解釈 第35条)。
遮断容量とは何ですか?
その遮断器が安全に切れる最大の短絡電流です。遮断器は、付ける場所を通る短絡電流を遮断できる能力が必要です(電技解釈 第33条)。
まとめ ― 取り違えやすいところ
| 取り違えやすいところ | 正しくは |
|---|---|
| 定格を少しでも超えたらすぐ切れる | 1.25倍でも60分以内(30A以下)など、時間をかけて動作 |
| ヒューズはA種1.35倍・B種1.6倍 | 電技解釈では1.1倍に耐え、1.6倍・2倍で時間内に溶断 |
| 中性線にも遮断器を付ける | 付けない。各極同時に切れるものは可 |
| 定格電流が合えばどれでもよい | 短絡電流を遮断できる遮断容量も必要 |
| 分岐の遮断器はどこでもよい | 分岐点から原則3m以下(35%・55%の条件で緩和) |
📘 この記事の根拠規程|解説の原文は内線規程(JEAC8001-2022)に掲載されています。実務で使う方は手元に1冊どうぞ → 電気設備の必携書籍おすすめ4選【2026年版】
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