第二種電気工事士 合格カリキュラム学科① 電気に関する基礎理論
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第二種電気工事士の学科試験で、計算問題はおよそ5〜6問。そのうち半分ほどは、この記事で扱う「電気理論」から出ます。使う公式は10本もありません。オームの法則を軸に、合成抵抗・電力・交流・三相の順に広げていけば、見たことのある形の問題はほぼ解けます。

結論

電気理論はV=I×R(オームの法則)と P=V×I(電力)の2本が土台です。あとは「並列は積÷和」「直径2倍で抵抗1/4」「実効値×√2=最大値」「Yは÷√3、Δは×√3」を足せば、出題パターンの大半をカバーできます。

  • オームの法則は3つの形(I=V÷R/V=I×R/R=V÷I)で使う
  • 並列の合成抵抗は「積÷和」。答えは一番小さい抵抗より小さい
  • 電線の抵抗は長さに比例し、断面積に反比例する
  • 三相は Y と Δ で電流の求め方が変わる
電池100Vと抵抗20Ωの回路に電流が流れ、I=100÷20=5Aになる様子を示す動く図解
電流の粒が回路を回ります。電圧が「押す力」、抵抗が「流れにくさ」、その結果として流れる量が電流です。

オームの法則 ― すべての計算の入口

電気の計算は、ほぼすべてここから始まります。水道にたとえると、電圧は水圧、電流は流れる水の量、抵抗はホースの細さです。水圧が高いほどたくさん流れ、ホースが細いほど流れにくくなります。これを式にしたのがオームの法則です。

V = I × R電圧を求める
I = V ÷ R電流を求める
R = V ÷ I抵抗を求める

覚え方は「V を上、I と R を下に並べた三角形」。求めたい文字を指で隠すと、残りが答えの形になります(上下なら割り算、横並びなら掛け算)。

例題で確かめる
100V の電源に 20Ω の抵抗をつないだ。流れる電流は?
I = V ÷ R = 100 ÷ 20 = 5 A。試験では「電流計の値」「抵抗の両端の電圧」など聞き方が変わるだけで、使う式はこの3つのどれかです。
ここまでのポイント
  • V=I×R の3つの形を、求めたいものから選ぶ
  • 単位は V(ボルト)・A(アンペア)・Ω(オーム)
  • 聞き方が変わっても使う式は同じ

直列・並列の合成抵抗 ― 足すか、積÷和か

直列は1本道です。抵抗が続けて並ぶので、そのまま足し算になります。並列は分かれ道です。道が増えるぶん流れやすくなるので、合成抵抗は一番小さい抵抗より小さくなります。2本の並列なら「積÷和」、3本以上なら 1/R = 1/R₁ + 1/R₂ + 1/R₃ で求めます。

直列は10Ω+15Ω=25Ω、並列は150÷25=6Ωになることを比べた図
つなぎ方 覚え方
直列 R = R₁ + R₂ + … 足すだけ
並列(2本) R = R₁×R₂ ÷(R₁+R₂) 積÷和
並列(同じ値が n 本) R = r ÷ n 10Ωが2本なら5Ω
並列(3本以上) 1/R = 1/R₁ + 1/R₂ + … 逆数を足して、最後にまた逆数
例題で確かめる
30Ω の抵抗1本と、20Ω・20Ω の並列を直列につないだ。全体の抵抗は?
先に並列部分をまとめます。同じ値2本なので 20 ÷ 2 = 10Ω。これに 30Ω を足して 40 Ω並列の部分を先に1本にまとめてから、直列を足すのが手順です。

回路の途中でスイッチを「閉じる」問題もよく出ます。スイッチを閉じると、その部分は抵抗0の線(短絡)になり、並んでいる抵抗には電流が流れなくなります。図を描き直して、電流が通らない抵抗を消してから計算すると間違えません。

ここまでのポイント
  • 直列は足す、並列は積÷和
  • 複雑な回路は並列部分を先にまとめる
  • 閉じたスイッチと並列の抵抗は、無いものとして描き直す


電力・電力量・熱量 ― 「どれだけ仕事をしたか」

電力は1秒あたりの仕事の大きさ、電力量はそれを時間でためた合計です。電気料金の請求書にある「kWh」が電力量です。電力の式は、オームの法則と組み合わせて3つの形で使います。

求めるもの 使う場面
電力 P [W] P = V × I 電圧と電流が分かっているとき
電力 P [W] P = I² × R 電流と抵抗が分かっているとき(電線の損失など)
電力 P [W] P = V² ÷ R 電圧と抵抗が分かっているとき(ヒーターなど)
電力量 W [kWh] W = P [kW] × t [h] 何時間使ったか
熱量 Q [kJ] Q = 3,600 × W [kWh] 1 kWh = 3,600 kJ
例題で確かめる
消費電力 1.2 kW の電熱器を 30 分使った。発生する熱量は?
電力量は 1.2 × 0.5 = 0.6 kWh。熱量は 0.6 × 3,600 = 2,160 kJ。分は時間に直してから掛けます(30分=0.5時間)。

ヒーターの電圧を変える問題では、抵抗は変わらないことに注目します。P = V² ÷ R なので、電圧を 0.9 倍にすると電力は 0.9 × 0.9 = 0.81 倍、つまり約2割下がります。

ここまでのポイント
  • P=V×I を軸に、I²R と V²/R を使い分ける
  • 電力量は kW×時間。分は時間に直す
  • 1 kWh = 3,600 kJ

電線の抵抗 ― 長いほど大きく、太いほど小さい

電線にもわずかな抵抗があります。長いホースほど水が流れにくく、太いホースほど流れやすいのと同じです。式は R = ρ × L ÷ A。ρ(ロー)は材料で決まる値で、銅は約 1/58 Ω·mm²/m です。

電線の長さを2倍にすると抵抗2倍、直径を2倍にすると抵抗1/4倍になることを示した棒グラフ

試験でねらわれるのは直径と断面積の違いです。断面積は直径の2乗に比例するので、直径 1.6mm と 3.2mm では断面積が4倍、抵抗は1/4になります。「直径が2倍だから抵抗は半分」と答えると不正解です。

例題で確かめる
直径 1.6mm・長さ 10m の銅線と、直径 3.2mm・長さ 20m の銅線。抵抗は何倍?
長さは2倍で抵抗2倍、直径は2倍で抵抗1/4倍。合わせて 2 × 1/4 = 1/2 倍。長さと太さを別々に倍率にして、最後に掛けます。
ここまでのポイント
  • R=ρL/A。長さに比例、断面積に反比例
  • 直径が2倍なら断面積は4倍
  • 長さと太さは別々に倍率を出して掛ける


交流 ― 実効値・リアクタンス・力率

家庭のコンセントは、電圧が1秒間に50回(西日本は60回)プラスとマイナスを行き来する交流です。「100V」は実効値で、同じ仕事をする直流に置き換えた値です。波の山(最大値)は実効値の √2 倍、約141V になります。

交流の波形に最大値約141Vと実効値100Vの線を引き、波の上を点が動く動く図解
点が波の上を進みます。コンセントの100Vは波の平均的な強さ(実効値)で、山のてっぺんは約141Vです。

コイルとコンデンサは、交流の流れを邪魔する

交流では、抵抗のほかにコイル(L)とコンデンサ(C)も電流を邪魔します。この邪魔の大きさをリアクタンスといい、単位は抵抗と同じ Ω です。

部品 周波数を上げると
コイル(誘導性リアクタンス) XL = 2πfL 大きくなる(50Hz→60Hzで1.2倍)
コンデンサ(容量性リアクタンス) XC = 1 ÷ 2πfC 小さくなる(50Hz→60Hzで1/1.2倍)
抵抗とリアクタンスの合計(インピーダンス) Z = √(R² + X²) 直角三角形の斜辺

抵抗 R とリアクタンス X は、直角三角形の2辺のように足し合わせます。R=8Ω・X=6Ω なら Z = √(64+36) = 10Ω。「3・4・5」「6・8・10」の三角形がよく出るので、見たら反射的に斜辺を出せるようにしておきます。

力率 ― 送った電気のうち、仕事をした割合

力率 cosθ は R ÷ Z で求めます。上の例なら 8 ÷ 10 = 0.8。実際に仕事をする電力(有効電力)は P = V × I × cosθ です。ジョッキのビールにたとえると、泡を含めた全体が皮相電力(V×I)、飲めるビールが有効電力で、その割合が力率です。

例題で確かめる
抵抗 8Ω とリアクタンス 6Ω の直列回路に 100V を加えた。電流と消費電力は?
Z = 10Ω なので I = 100 ÷ 10 = 10 A。力率は 8 ÷ 10 = 0.8 で、P = 100 × 10 × 0.8 = 800 W。電力を消費するのは抵抗だけなので、I² × R = 10² × 8 = 800 W でも同じ答えになります。
ここまでのポイント
  • コンセントの100Vは実効値。最大値は約141V
  • XLは周波数に比例、XCは反比例
  • Z=√(R²+X²)、力率=R÷Z、P=VIcosθ


三相交流 ― Y結線とΔ結線

工場やビルの動力で使う三相交流は、3本の電線で電気を送ります。負荷のつなぎ方には Y(スター)と Δ(デルタ)があり、√3(約1.73)がどこに付くかが違います。

線間電圧200V・1相10ΩのときのY結線とΔ結線の電流と電力を比べた図
Y結線 Δ結線
1相にかかる電圧 線間電圧 ÷ √3 線間電圧そのまま
線電流 相電流と同じ 相電流 × √3
三相電力 P = √3 × V × I × cosθ(どちらも同じ式) 同左

どちらのつなぎ方でも、三相電力は P = √3 × 線間電圧 × 線電流 × 力率で求められます。抵抗負荷だけなら力率は1です。同じ抵抗を Y から Δ につなぎ替えると、1相にかかる電圧が √3 倍になり、電力は3倍になります。

√3 の近似値は 1.73
  1. 200 ÷ 1.73 ≒ 115.6 V(Y結線の相電圧)
  2. √3 × 200 × 10 ≒ 3,460 W(三相電力の計算)
  3. 試験の選択肢は近い値が並ぶので、1.73 で計算して一番近いものを選ぶ
ここまでのポイント
  • Y は電圧を √3 で割る、Δ は電流に √3 を掛ける
  • 三相電力は √3VIcosθ
  • Y→Δ のつなぎ替えで電力は3倍
第二種電気工事士 合格カリキュラム:この記事は「学科①基礎理論」の1本目です。次は 計算問題をどこまで取るか で、捨ててよい問題の見分け方を確認します。受験日を入れると週ごとの計画が出る 学習ページ もあります。

よくある質問

計算問題が苦手です。全部捨てても合格できますか?
学科は50問中30問(60点)で合格なので、計算を全部捨てても理屈の上では合格できます。ただし余裕がなくなるため、この記事のオームの法則・合成抵抗・電力の基本3パターンだけは取りにいくのがおすすめです。見たことのある形なら1問1〜2分で解けます。
関数電卓は持ち込めますか?
持ち込めません(CBT方式・筆記方式とも)。√3=1.73、√2=1.41、π=3.14 を使った手計算で解ける数字になるように出題されています。
√2 と √3 はどう覚えればいいですか?
√2=1.41(ひとよひとよ)、√3=1.73(ひとなみにおごれや)の語呂合わせが定番です。実効値↔最大値で √2、三相で √3 と、使う場面で分けて覚えると取り違えません。
周波数を 50Hz から 60Hz に変えると、何が変わりますか?
コイルのリアクタンスは1.2倍に増え、コンデンサのリアクタンスは1/1.2倍に減ります。抵抗は周波数では変わりません。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。