【新人講座 第14回】ブレーカー(遮断器)選定のきほん ― 守り神は2つの顔と3つの数字で選ぶ

こんにちは、HARITAの設計室です。第4部の4回目は、シリーズに何度も登場してきたブレーカー(遮断器)を、ついに“選ぶ側”の目線で。第9回で「守り神」と呼び、第12回で「ケーブルはブレーカーに守られる」とやった、その守り神の落ちる仕組みと選び方です。


ペン太
ハリタこの3つ、すぐ答えられますか
- 20Aのブレーカーは、20Aを少し超えたら即落ちるのか。
- 盤図の「225AF/100AT」は、何と何を表しているか。
- 遮断容量(kA)が足りないと、実際に何が起きるか。
- 落ちる仕組み ― 過負荷と短絡、2つの顔
- 定格ラベルの読み方と、選定3条件
- 盤図のブレーカー欄をチェックする
- アンペアブレーカー・MCCB・ELCBの違い
- 遮断容量、保護協調、30mAの根拠
- 新人がやりがちな注意ポイント
落ちる仕組み ― 過負荷は「ゆっくり」、短絡は「瞬時」



ペン太
ハリタ| 過負荷 | 短絡(ショート) | |
|---|---|---|
| どんな事故か | じわじわ電流が超過する | ドカンと大電流が流れる |
| 落ち方 | 温まってから、ゆっくり動作する | 電磁力で瞬時に切る |
| なぜそうするか | モーターの起動電流のような一瞬の山をやり過ごすため。エアコンの起動でいちいち落ちたら困る | 定格の何百倍という電流が流れ得るので、1秒も待てない |
| だから | 20Aちょうどでは落ちない | 遮断容量(kA)という「切れる体力」が要る |
- ブレーカーには2つの顔がある。過負荷は温まってからゆっくり、短絡は電磁力で瞬時。
- 過負荷側は「温まってから落ちる」ので、ちょっとの超過ならしばらく耐える。だから20Aぴったりでは落ちない。
- この「じわじわ特性」は、モーターの起動電流のような一瞬の山をやり過ごすためでもある。
- 一方、短絡(ショート)の大電流は1秒も待てないので、電磁力で瞬時にバチン。役割で落ち方を変えている。
定格ラベルの読み方 ― AT・AF・kA





| ラベル | 意味 | 読み方の例 |
|---|---|---|
| AT(トリップ) | 落ちる基準の設定値 | 「225AF/100AT」なら、落ちる設定は100A |
| AF(フレーム) | 器械の箱の大きさ | 同じ225AFの箱に125AT・150AT・175AT…と中身違いのラインナップがある |
| kA(遮断容量) | 短絡の大電流を安全に切り離せる体力 | 体力不足だと、切れずにアークで壊れる |
| 選定3条件 | ①設計電流 ≦ AT ②AT ≦ ケーブル許容電流 ③kA ≧ その地点の短絡電流 | この順に確かめる |
- AT(トリップ)は落ちる基準の設定値、AF(フレーム)は器械の箱の大きさ。同じ225AFの箱に125AT・150AT・175AT…と中身違いのラインナップがある。
- 盤図に「225AF/100AT」とあれば「箱は225用、落ちる設定は100A」と読む。将来ATだけ上げたいとき、箱ごと変えなくて済むという使い方もある。
- 短絡時は定格の何百倍という電流が流れ得る。その大電流を安全に切り離せる体力が遮断容量kA。
- 体力不足のブレーカーで短絡を切ろうとすると、切れずにアークで壊れる——守り神が最初の犠牲者になる。だからその地点の短絡電流より大きいkAを選ぶ。
💼 実務でこう生きる
- 盤図の主幹「225AF/150AT/25kA」なら、選定3条件の順にチェックする。①設計電流≦150AT? ②150AT≦ケーブル許容電流? ③25kA≧受電点近くの短絡電流?
- メーカー任せにせず自分の目で3条件を追えると、盤図承認の質が変わる。
- 水回り・屋外・人が直接触れる機器の回路には、感度30mAのELCBが定番。「どの回路をELCBにするか」は設計判断。
- 全部ELCBにすると誤動作(もらい漏電)でかえって不便になることもある。メリハリのある配置が腕の見せどころ。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
- 「落ちる」は、昔の開閉器がレバーを上げてONで、切れると重力でレバーが下に落ちる構造だったことに由来すると言われる。英語でもtrip(つまずく・外れる)と表現する。
- 家の分電盤には3種類が並ぶ。アンペアブレーカー(サービスブレーカー)は電力会社との契約電流を守るもの、配線用遮断器(MCCB)は回路と電線を守るもの、漏電ブレーカーは漏電から人を守るもの。
- 役割で見分ける。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
- 遮断容量が足りないと、短絡電流を切れずにアークが持続し、ブレーカー自身が焼損・爆発的に壊れる恐れがある。守るどころか火元になる最悪パターン。
- だから受電に近い(短絡電流が大きい)場所ほど大きいkAが要る。変圧器の容量とインピーダンスから短絡電流を計算して選ぶ。
- 事故回路にいちばん近い下流だけが落ちて、上流は生き残る——これが理想で、保護協調と呼ぶ。特性カーブを重ねて確認する専門領域。
- 30mAという値は、人体に電流が流れたときの危険度から決まっている。数十mAが長く流れると心室細動のリスクがあるため、その手前の30mA・0.1秒以内で切る高感度形が普及した。ぬれた場所用にはさらに敏感な15mAもある。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- ATとケーブルの整合を忘れない:AT>ケーブル許容電流は「守れない組合せ」。第12回とセットで必ず確認。
- kAを「どこでも同じ」と思わない:短絡電流は場所で違う。受電近くは大きく、末端は小さい。
- 落ちたブレーカーを原因調査なしに入れ直さない:第7回の鉄則再掲。過負荷か短絡か漏電か、見当をつけてから復旧。
ペン太
ハリタ- ATとケーブルの整合を忘れない。AT>ケーブル許容電流は「守れない組合せ」。
- kAを「どこでも同じ」と思わない。短絡電流は場所で違い、受電近くは大きく、末端は小さい。
- 落ちたブレーカーを原因調査なしに入れ直さない。過負荷か短絡か漏電か、見当をつけてから復旧する。
まとめ ― 今日の1枚
ブレーカーは、電流の大きさではなく「事故の種類」で落ち方を変えています。その仕組みが分かると、ラベルの3つの数字も、選定の3条件も一本につながります。
| 盤図で確かめる順番 | 見るところ | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 設計電流 ≦ AT | その回路の設計電流と、ブレーカーのAT | 負荷を止めずに守れるか |
| ② AT ≦ ケーブル許容電流 | ブレーカーのATと、幹線・分岐のケーブルサイズ | AT>許容電流は「守れない組合せ」 |
| ③ kA ≧ その地点の短絡電流 | ブレーカーの遮断容量と、受電点からの距離 | 足りないと、切れずにアークで壊れる |
| ④ ELCBにするか | 水回り・屋外・人が直接触れる機器の回路か | 感度30mA。全部に付けると誤動作でかえって不便 |
落ちる仕組み
- ブレーカーは過負荷(じわじわ→ゆっくり)と短絡(ドカン→瞬時)の2つの顔で守る。
ラベルと選定
- ラベルはAT=落ちる基準/AF=箱の大きさ/kA=切れる体力。
- 選定3条件:設計電流≦AT≦ケーブル許容電流、kA≧その地点の短絡電流。
人を守る仲間
- 漏電ブレーカー(30mA)は人を守る仲間。配置は設計判断。
盤図のブレーカー欄は、慣れないうちは記号の羅列に見えます。でもAT・AF・kAの意味が分かった瞬間、その1行が「この回路をどう守るつもりか」という設計者の宣言に変わります。次に盤図を開いたら、主幹の1行だけでも3条件をなぞってみてください。
次回・第15回は第4部の締めくくり——接地(アース)のきほんと接地線サイズ。施工実務編④で埋めた接地極の“設計側の物語”です。お楽しみに!
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