この記事は、連載コンセント設備の設計マニュアル」第3回 回路分割 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
全体像:ブレーカー選定のきほん(2つの顔と、AT・AF・kA、選定3条件)
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。第4部の4回目は、シリーズに何度も登場してきたブレーカー遮断器を、ついに“選ぶ側”の目線で。第9回で「守り神」と呼び、第12回で「ケーブルはブレーカーに守られる」とやった、その守り神の落ちる仕組みと選び方です。

ペンタ
先輩、第9回で「20Aブレーカーは20Aちょうどでは落ちない」って言ってましたよね。あれ、ずっと気になってたんです。なんで基準ぴったりで落ちないんですか?
はりた
お、ちゃんと覚えてたね。答えは今日の主役——ブレーカーが持つ2つの顔にある。図で見よう。
ペン太ペン太
20Aのブレーカーって、20Aを少しでも超えたら即落ちるんですよね?
ハリタハリタ
過負荷はじわじわ温まってから動作します。短絡は瞬時。2つの顔があるんです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 20Aのブレーカーは、20Aを少し超えたら即落ちるのか。
  • 盤図の「225AF/100AT」は、何と何を表しているか。
  • 遮断容量(kA)が足りないと、実際に何が起きるか。
この記事でわかること
※ 本記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の第14回です。全カリキュラムは記事冒頭のリンクからご覧いただけます。

落ちる仕組み ― 過負荷は「ゆっくり」、短絡は「瞬時」

トピック1:落ちる仕組み ― 過負荷は「ゆっくり」、短絡は「瞬時」
過負荷保護と短絡保護の2つの動作と動作時間の特性概念図
【図1】2つの顔。じわじわ超過は温まってからゆっくり、短絡のドカンは瞬時に落ちる
ペンタ
なるほど…過負荷側は「温まってから落ちる」から、ちょっとの超過ならしばらく耐えるんだ。だから20Aぴったりでは落ちない!
はりた
そのとおり、第9回の答え合わせ完了(笑)。この「じわじわ特性」はモーターの起動電流みたいな一瞬の山をやり過ごすためでもある。エアコンの起動でいちいち落ちたら困るからね。一方、短絡(ショート)の大電流は1秒も待てないから、電磁力で瞬時にバチン。役割で落ち方を変えている——賢い守り神なんだ。
ペン太ペン太
ラベルのATとAF、同じ意味の数字だと思って読み飛ばしてました…!
ハリタハリタ
ATはトリップ設定値、AFは箱の大きさ。kAの遮断容量まで読めて選定です。
過負荷短絡(ショート)
どんな事故かじわじわ電流が超過するドカンと大電流が流れる
落ち方温まってから、ゆっくり動作する電磁力で瞬時に切る
なぜそうするかモーターの起動電流のような一瞬の山をやり過ごすため。エアコンの起動でいちいち落ちたら困る定格の何百倍という電流が流れ得るので、1秒も待てない
だから20Aちょうどでは落ちない遮断容量(kA)という「切れる体力」が要る
ここまでのポイント
  • ブレーカーには2つの顔がある。過負荷は温まってからゆっくり、短絡は電磁力で瞬時。
  • 過負荷側は「温まってから落ちる」ので、ちょっとの超過ならしばらく耐える。だから20Aぴったりでは落ちない
  • この「じわじわ特性」は、モーターの起動電流のような一瞬の山をやり過ごすためでもある。
  • 一方、短絡(ショート)の大電流は1秒も待てないので、電磁力で瞬時にバチン。役割で落ち方を変えている

定格ラベルの読み方 ― AT・AF・kA

トピック2:定格ラベルの読み方 ― AT・AF・kA
MCCBの定格ラベルとAT・AF・遮断容量の意味、選定3条件
【図2】ラベルの3つの数字と選定3条件。これで盤図のブレーカー欄が読める
ペンタ
「100AT・225AF」…ATとAFで数字が違うのはどういうことですか?
はりた
AT(トリップ)は落ちる基準の設定値、AF(フレーム)は器械の箱の大きさ。同じ225AFの箱に、125AT・150AT・175AT…と中身違いのラインナップがあるイメージ。盤図に「225AF/100AT」とあれば「箱は225用、落ちる設定は100A」と読む。将来ATだけ上げたい時に箱ごと変えなくて済む、なんて使い方もあるよ。
ペンタ
3つ目の「遮断容量25kA」って、100Aのブレーカーなのに25,000A…?桁が違いすぎませんか?
はりた
それが短絡の世界。ショート時は定格の何百倍という電流が流れ得る。その大電流を安全に切り離せる体力が遮断容量kAだ。体力不足のブレーカーで短絡を切ろうとすると、切れずにアークで壊れる——守り神が最初の犠牲者になってしまう。だからその地点の短絡電流より大きいkAを選ぶ。これが選定3条件の③だよ。
ラベル意味読み方の例
AT(トリップ)落ちる基準の設定値「225AF/100AT」なら、落ちる設定は100A
AF(フレーム)器械の箱の大きさ同じ225AFの箱に125AT・150AT・175AT…と中身違いのラインナップがある
kA(遮断容量)短絡の大電流を安全に切り離せる体力体力不足だと、切れずにアークで壊れる
選定3条件①設計電流 ≦ AT ②AT ≦ ケーブル許容電流 ③kA ≧ その地点の短絡電流この順に確かめる
ここまでのポイント
  • AT(トリップ)は落ちる基準の設定値、AF(フレーム)は器械の箱の大きさ。同じ225AFの箱に125AT・150AT・175AT…と中身違いのラインナップがある。
  • 盤図に「225AF/100AT」とあれば「箱は225用、落ちる設定は100A」と読む。将来ATだけ上げたいとき、箱ごと変えなくて済むという使い方もある。
  • 短絡時は定格の何百倍という電流が流れ得る。その大電流を安全に切り離せる体力が遮断容量kA
  • 体力不足のブレーカーで短絡を切ろうとすると、切れずにアークで壊れる——守り神が最初の犠牲者になる。だからその地点の短絡電流より大きいkAを選ぶ。

💼 実務でこう生きる

トピック3:実務でこう生きる
📋 実務活用事例:盤図のブレーカー欄をチェックする
盤図の主幹「225AF/150AT/25kA」、幹線CVT60sq——チェックは選定3条件の順で:①設計電流≦150AT? ②150AT≦ケーブル許容電流?(第12回) ③25kA≧受電点近くの短絡電流?
→ メーカー任せにせず自分の目で3条件を追えると、盤図承認の質が変わります。
📋 実務活用事例:漏電ブレーカー(ELCB)の配置設計
水回り・屋外・人が直接触れる機器の回路には感度30mAのELCBが定番。「どの回路をELCBにするか」は設計判断です。全部ELCBにすると誤動作(もらい漏電)でかえって不便になることも——メリハリのある配置が腕の見せどころ。
ここまでのポイント
  • 盤図の主幹「225AF/150AT/25kA」なら、選定3条件の順にチェックする。①設計電流≦150AT? ②150AT≦ケーブル許容電流? ③25kA≧受電点近くの短絡電流?
  • メーカー任せにせず自分の目で3条件を追えると、盤図承認の質が変わる。
  • 水回り・屋外・人が直接触れる機器の回路には、感度30mAのELCBが定番。「どの回路をELCBにするか」は設計判断
  • 全部ELCBにすると誤動作(もらい漏電)でかえって不便になることもある。メリハリのある配置が腕の見せどころ。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック4:いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 ブレーカーはなんで「落ちる」って言うの?
昔の開閉器はレバーを上げてON、切れると重力でレバーが下に落ちる構造だったことから「落ちる」が定着したと言われます。英語でもtrip(つまずく・外れる)と表現します。ちなみに「ブレーカーが上がる」と言う人もいて、地域や人で言い方が揺れる——通じればOKですが、報告書では「動作した」と書くのが確実です。
🐣 家の「アンペアブレーカー」も同じもの?
役割が違います。アンペアブレーカー(サービスブレーカー)は電力会社との契約電流を守るためのもの。配線用遮断器(MCCB)は回路と電線を守るためのもの。漏電ブレーカーは漏電から人を守るもの。家の分電盤にはこの3種類が並んでいます——役割で見分けましょう。
ここまでのポイント
  • 「落ちる」は、昔の開閉器がレバーを上げてONで、切れると重力でレバーが下に落ちる構造だったことに由来すると言われる。英語でもtrip(つまずく・外れる)と表現する。
  • 家の分電盤には3種類が並ぶ。アンペアブレーカー(サービスブレーカー)は電力会社との契約電流を守るもの、配線用遮断器(MCCB)は回路と電線を守るもの、漏電ブレーカーは漏電から人を守るもの
  • 役割で見分ける。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック5:深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
🔎 「遮断容量が足りないと、実際どうなるんですか?」と聞いてみた
はりた「短絡電流を切れずにアークが持続して、ブレーカー自身が焼損・爆発的に壊れる恐れがある。守るどころか火元になる最悪パターン。だから受電に近い(短絡電流が大きい)場所ほど大きいkAが要る。変圧器の容量とインピーダンスから短絡電流を計算して選ぶんだ」
🔎 「上流と下流、どっちが先に落ちるべきなんですか?」と聞いてみた
はりた「事故回路にいちばん近い下流だけが落ちて、上流は生き残る——これが理想で、保護協調と呼ぶ。第9回の“分岐だけ落ちて主幹は生きてる”はこの協調のおかげ。特性カーブを重ねて確認する専門領域で、キュービクルまで含めた協調は上級編。今日は言葉だけ持ち帰って」
🔎 「30mAって、なぜその値なんですか?」と聞いてみた
はりた「人体に電流が流れたときの危険度から決まっている。数十mAが長く流れると心室細動のリスクがあるから、その手前の30mA・0.1秒以内で切る高感度形が普及した。ぬれた場所用にはさらに敏感な15mAもある。“人を守る”ための数字なんだ」
ここまでのポイント
  • 遮断容量が足りないと、短絡電流を切れずにアークが持続し、ブレーカー自身が焼損・爆発的に壊れる恐れがある。守るどころか火元になる最悪パターン
  • だから受電に近い(短絡電流が大きい)場所ほど大きいkAが要る。変圧器の容量とインピーダンスから短絡電流を計算して選ぶ。
  • 事故回路にいちばん近い下流だけが落ちて、上流は生き残る——これが理想で、保護協調と呼ぶ。特性カーブを重ねて確認する専門領域。
  • 30mAという値は、人体に電流が流れたときの危険度から決まっている。数十mAが長く流れると心室細動のリスクがあるため、その手前の30mA・0.1秒以内で切る高感度形が普及した。ぬれた場所用にはさらに敏感な15mAもある。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック6:新人がやりがちな注意ポイント
  • ATとケーブルの整合を忘れない:AT>ケーブル許容電流は「守れない組合せ」。第12回とセットで必ず確認。
  • kAを「どこでも同じ」と思わない:短絡電流は場所で違う。受電近くは大きく、末端は小さい。
  • 落ちたブレーカーを原因調査なしに入れ直さない:第7回の鉄則再掲。過負荷か短絡か漏電か、見当をつけてから復旧。
ペン太ペン太
選定の練習、まず何から始めればいいですか?
ハリタハリタ
設計電流≦AT≦ケーブル許容電流の条件を盤図でなぞる。これが第一歩です。
ここまでのポイント
  • ATとケーブルの整合を忘れない。AT>ケーブル許容電流は「守れない組合せ」
  • kAを「どこでも同じ」と思わない。短絡電流は場所で違い、受電近くは大きく、末端は小さい。
  • 落ちたブレーカーを原因調査なしに入れ直さない。過負荷か短絡か漏電か、見当をつけてから復旧する。

まとめ ― 今日の1枚

トピック7:まとめ ― 今日の1枚

ブレーカーは、電流の大きさではなく「事故の種類」で落ち方を変えています。その仕組みが分かると、ラベルの3つの数字も、選定の3条件も一本につながります。

盤図で確かめる順番見るところ根拠
① 設計電流 ≦ ATその回路の設計電流と、ブレーカーのAT負荷を止めずに守れるか
② AT ≦ ケーブル許容電流ブレーカーのATと、幹線・分岐のケーブルサイズAT>許容電流は「守れない組合せ」
③ kA ≧ その地点の短絡電流ブレーカーの遮断容量と、受電点からの距離足りないと、切れずにアークで壊れる
④ ELCBにするか水回り・屋外・人が直接触れる機器の回路か感度30mA。全部に付けると誤動作でかえって不便

落ちる仕組み

  • ブレーカーは過負荷(じわじわ→ゆっくり)と短絡(ドカン→瞬時)の2つの顔で守る。

ラベルと選定

  • ラベルはAT=落ちる基準/AF=箱の大きさ/kA=切れる体力
  • 選定3条件:設計電流≦AT≦ケーブル許容電流、kA≧その地点の短絡電流。

人を守る仲間

  • 漏電ブレーカー(30mA)は人を守る仲間。配置は設計判断。

盤図のブレーカー欄は、慣れないうちは記号の羅列に見えます。でもAT・AF・kAの意味が分かった瞬間、その1行が「この回路をどう守るつもりか」という設計者の宣言に変わります。次に盤図を開いたら、主幹の1行だけでも3条件をなぞってみてください。

次回・第15回は第4部の締めくくり——接地(アース)のきほんと接地線サイズ。施工実務編④で埋めた接地極の“設計側の物語”です。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
照明設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「照明設備の設計マニュアル」の 第5回 回路分割と分電盤 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
幹線設備の計画のなかで読む
この内容は、連載「幹線設備の設計マニュアル」の 第5回 保護と幹線分岐 でも扱っています。
連載の目次は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?

タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。

次に読むならこれ非常用発電機・UPS・蓄電池の仕様書と系統図の読み方|kVA と kW・ATS・27・常時インバータ・バイパス・制御弁式・浮動充電を分解する【図面の見方・読み方⑥】新人教育
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。