あなたの変圧器、でかすぎます
変圧器容量の計算方法について知りたい
- 変圧器容量の計算方法について知りたい方
- 需要率の採用方法について知りたい方
- 単相変圧器容量の計算方法
- 三相変圧器容量の計算方法
- kW⇒kVAの換算方法
- 需要率の適用方法
- 📚 参考文献について
- 🏢変圧器容量の算定とは?~受変電設備設計の第一歩~
- 🔢 変圧器容量の算出フローはこの4ステップ!
- STEP 1:電気負荷の種類ごとに容量(VA)を算出する
- ⚙ 補正係数とは?|同時使用の可能性を考慮した変圧器容量の調整
- 📘 補正係数の考慮で、変圧器容量をムダなく最適化
- 🔍 電灯負荷の分類|負荷の種類ごとに整理するのがポイント
- 📌負荷区分の見分け方|どうやって判断する?
- ❓ファンコイルって何?|FCUの見分け方
- ✅負荷を分類して適切な需要率をかけよう
- 電灯負荷の補正係数
- 🔧 単相変圧器の容量計算手順
- 🔧 動力負荷の場合の計算方法を確認しよう!
- 🤔需要率を掛ける理由は?
- ✅
- 🧠 用途別に変わる!動力負荷ごとの設計ポイント
- ⚙ 三相変圧器の容量計算|負荷ごとに需要率をかけて合理的に算定しよう
- 📦 三相負荷の分類と容量
- 🔍 需要率を掛けて変圧器容量を求める
- 🧾 計算結果と選定例
- ツールの紹介|需要率を計算してみよう!
- 需要率のまとめ
📚 参考文献について
本記事の内容は、「建築設備設計基準(国土交通省)」の記載内容をもとに、電灯・コンセント系統の変圧器容量算定に関する考え方をわかりやすく整理・解説したものです。
なお、実際の設計にあたっては、用途や施設規模に応じた補正係数の判断や、最新の設計基準・法令等を参照のうえ適切に対応することが求められます。
🏢変圧器容量の算定とは?~受変電設備設計の第一歩~
受変電設備の設計において、最初に押さえておくべき重要なステップが 「変圧器容量の算定」 です。
この作業は、建物内で使用される照明、コンセント、動力機器など各種負荷をもとに、適切な変圧器の容量(kVA)を導き出すことを目的としています。
変圧器の容量を誤って設定してしまうと、供給不足や過剰設計につながり、設備コストや安全性に大きな影響を及ぼします。そのため、確実で合理的な算定方法を知っておくことは、設計担当者にとって不可欠です。
🔢 変圧器容量の算出フローはこの4ステップ!
受変電設備の設計において、変圧器の容量を適切に決定するためには、以下の4つのステップを順を追って行うことが重要です。
1. 負荷の拾い出し
まず、建物内で使用される機器や照明・コンセントなど、すべての電気負荷を洗い出します。
2. 負荷容量の合計を算出
拾い出した各負荷に対して、それぞれの使用容量(VA・W)を集計し、系統ごとの合計を求めます。
3. 補正係数の適用
同時使用率や負荷の特性に応じて補正係数をかけ、実際に必要となる想定容量を調整します。
4. 変圧器容量の決定
最終的に、補正後の合計容量から、適正な変圧器容量(kVA)を選定します。
STEP 1:電気負荷の種類ごとに容量(VA)を算出する
⚙ 補正係数とは?|同時使用の可能性を考慮した変圧器容量の調整
建物に設置された電気設備は、すべての機器が常に同時に稼働するとは限りません。たとえば、会議室の照明とコピー機、冷蔵庫などでは使用タイミングが異なります。
このような実際の運用状況を反映するために活用されるのが、**補正係数(需要率)**です。算出した合計負荷容量に補正係数を掛けることで、より現実的な変圧器容量を求めることができます。
💡 設計のポイント
-
使用容量の計算では、**予備回路を除いた「実際に使う分」**のみを見積もりましょう。
-
長時間稼働が見込まれるOA機器(PC・サーバーなど)には、基本的に補正係数 f₄ = 1.0を適用すると安全です。
-
用途や建物の規模によって係数の適用は変化します。施設の使用目的や運用方法に応じて柔軟に調整しましょう。
📘 補正係数の考慮で、変圧器容量をムダなく最適化
変圧器の容量を決定する際に重要なのは、単に負荷を合算するのではなく、「どの程度の負荷が同時に動作するか」=需要率を見極めることです。
この補正を加えることで、
-
変圧器を必要以上に大きくしなくて済む
-
コストの削減
-
設置スペースの圧縮
といったメリットが生まれます。
🔍 電灯負荷の分類|負荷の種類ごとに整理するのがポイント
受変電設備の設計において、負荷の種類ごとに分類・整理することは非常に重要です。
中でも、電灯回路にかかる負荷は設計時に見落とされがちですが、適切に把握することで容量計算の精度が大きく向上します。
まずは、電灯系統の負荷について、どのような分類で集計するのが適切かを確認しておきましょう。
これらを正しく分類・集計することで、後の補正係数適用や変圧器容量の算定がスムーズに進みます。
電灯負荷→ 照明器具に接続される負荷
コンセント負荷→ 雑用・汎用のコンセント(OAやFCU用を除く)
ファンコイル用コンセント負荷→ FCU(ファンコイルユニット)専用のコンセント
OA負荷→ オフィス内のPCやネットワーク機器など
その他→ 上記に当てはまらない特殊用途の負荷
📌負荷区分の見分け方|どうやって判断する?
「コンセント負荷とOA負荷って、どう違うの?」
この疑問、電気設備の設計現場ではよくある話です。
負荷区分の種類とその見分け方
🔹照明負荷
→ 明確に照明器具として接続されている負荷(天井照明、ダウンライトなど)
🔹コンセント負荷
→ 掃除機や家電など、汎用的な用途で使用されるコンセントに接続される機器
🔹ファンコイル用コンセント
→ 空調機器(FCU:ファンコイルユニット)専用の電源として設けられたコンセント
🔹OA負荷(オフィスオートメーション負荷)
→ パソコン・サーバー・ルーターなど、オフィス機器専用のコンセントに接続される負荷
❓ファンコイルって何?|FCUの見分け方
オフィスビルやホテル、病院などの空調設備でよく使われている機器のひとつが**ファンコイルユニット(FCU)**です。
これは、中央空調システムの末端機器として、室内に温風や冷風を送り出す装置です。
🔧 FCUの特徴と電源
-
使用場所:病院、ホテル、オフィスビル、商業施設など
-
用途:冷水や温水を使って風を送り、部屋の温度を調整
-
電源仕様:単相100Vまたは200Vで稼働する小型空調機器
📝 設備図での見分け方
設計図面の中でFCUは、以下のように表記されていることが多いです。
-
【FCU】
-
【FAN COIL】
-
【FANCOIL UNIT】
など
ポイント!
機器名だけで判断できない場合は、【空調設備】や【換気設備】のカテゴリに含まれているか、または単相で記載された空調機器であるかどうかをチェックしましょう。
ファンコイルユニットは、照明やOA機器とは異なる専用のコンセント負荷として扱われるため、負荷区分や補正係数の設定でも個別に考慮が必要です。
適切に見分けることで、設計の精度と安全性が大きく向上します✨
✅負荷を分類して適切な需要率をかけよう
変圧器容量の計算において、負荷の分類と需要率の設定は設計の基礎中の基礎です。
「どの機器がどの負荷区分に該当するか」を丁寧に整理し、基準に則った需要率で安全かつ効率的な電力供給設計を行いましょう。
電灯負荷の補正係数
負荷が表の中間にある場合は表から読み取ろう!
🔍【例】照明負荷の容量が「60kVA」のケース
需要率を適用するために、参考となるテーブルから該当する係数を確認していきます。
✅ Step 1:負荷容量(kVA)の確認
今回の例では、照明設備の負荷容量として 「60kVA」 を想定しています。
この数値をもとに、適切な需要率を選定していきましょう。

✅ Step 2:負荷容量に対応する補正係数(需要率)を確認
負荷容量が「60kVA」の場合、以下のような補正係数(f値)を参照します。
容量(kVA) | f1 | f2 | f3 |
---|---|---|---|
60 | 0.79 | 0.32 | 0.82 |
📌 ポイント
「f1・f2・f3」は用途や負荷の性質に応じて使い分ける係数です。
どの係数を使うかは、設計対象の回路種別や機器構成に応じて判断しましょう。

✅ Step 3 各係数の読み取り結果
以下のように、照明負荷・コンセント負荷・FCU用コンセント負荷に対する補正係数が決まります。
-
f1(照明負荷):0.79
-
f2(コンセント負荷):0.32
-
f3(ファンコイル用コンセント負荷):0.82

⚙ 補正係数 f1, f2, f3 の解説
変圧器容量の計算において、各係数はそれぞれ異なる負荷に対して用いられます。
補正係数 f1 を使って、電灯負荷の実効容量(kVA)を計算します。
🔢 計算式の概要
✅ 計算例
-
電灯負荷容量:60kVA
-
補正係数 f1:0.79
→ 60 × 0.79 = 47.4kVA
📌 注意点
補正係数 f1 は、負荷容量の規模によって変動します。
必ず、該当する表や設計資料を確認し、正しい値を使用しましょう。
🔧 単相変圧器の容量計算手順
📌 負荷の分類と記号
単相変圧器の容量を求めるには、下記3つの負荷に分けてそれぞれの合計容量を出すのが基本です。
-
L :電灯負荷の合計容量【kVA】
-
C :コンセント負荷の合計容量【kVA】
-
FC:ファンコイル用コンセント負荷の合計容量【kVA】
次に、具体的な例で見ていきましょう。
この容量を先ほどの表に当てはめます
- 『L』 :80kVA ⇒ 0.76%
- 『C』 :20kVA ⇒ 0.3%
- 『FC』:20kVA ⇒ 0.78%
kのパーセントを負荷容量にかけ合わせたものが変圧器容量となります
- 『L』 :80kVA × 0.76% =61kVA
- 『C』 :20kVA × 0.3% =12kVA
- 『FC』:20kVA × 0.78% =16kVA
✅ 計算結果から導く変圧器容量の選定
単純に負荷容量を合計すると、
80kVA(電灯)+20kVA(コンセント)+20kVA(ファンコイル)=120kVA
この値から判断すると、150kVAの単相変圧器を選定するのが一般的です。
補正係数を適用した実効容量は以下の通りです:
-
電灯負荷:80kVA × f₁(0.79)= 63.2kVA
-
コンセント負荷:20kVA × f₂(0.32)= 6.4kVA
-
ファンコイル用負荷:20kVA × f₃(0.82)= 16.4kVA
▶ 合計:63.2 + 6.4 + 16.4 = 約89kVA
このように、**需要率を考慮すれば「89kVA」**という実効値に抑えられます。
したがって、100kVAの単相変圧器で十分に対応できるというわけです。
🔧 動力負荷の場合の計算方法を確認しよう!
単相負荷(電灯・コンセント等)に続いて、動力負荷の容量算定方法について見ていきましょう。
変圧器を選定する際には、動力設備の把握も非常に重要です。
📦 動力負荷の種類別分類と集計方法
変圧器に接続される動力設備は、使用用途ごとに分類して集計することで、後の需要率設定がしやすくなります。
動力負荷の主な分類
-
冷凍機(冷凍・冷蔵設備など)
-
パッケージ型空調機(業務用エアコン等)
-
エレベーター負荷(昇降設備)
-
空調・換気関係の機器(送風機、ダクトファンなど)
-
衛生設備(揚水ポンプ、汚水ポンプ、ブロワ等)
-
その他負荷(厨房機器、機械設備など)
これらの分類に沿って、それぞれの機器容量(kWやkVA)を整理し、合計値を算出していきます。
この後、それぞれの**動力負荷に対する需要率(補正係数)**をかけて実効容量を導き出します。
🤔需要率を掛ける理由は?
すべての機器が同時に最大出力で運転されることはまれです。
そのため、負荷に応じて適切な需要率を設定することで、過剰な容量設計を避けるとともに、安全性と経済性を両立させることができます。
✅
🧠 用途別に変わる!動力負荷ごとの設計ポイント
動力設備は「どのような機器が、どれくらいの頻度で使われるのか?」を考慮して、**用途ごとに需要率(稼働率)**を変える必要があります。
ぜんぶ一緒にしちゃダメなのかな?
🔍 代表的な動力負荷ごとの設計上の注意点
それでは、代表的な機器ごとにどんな需要率(稼働率)が使われているのか見てみましょう。
用途別|稼働率の目安と設計ポイント
🧊 冷凍機・エレベーター・パッケージ型空調機
➡ 高頻度で稼働する設備のため、需要率は 0.94 と非常に高く設定されます。
冷房や昇降機など、常に稼働している前提での設計が必要です。
🚿 衛生設備(ポンプ・ブロワ等)
➡ 運転は定期的かつ短時間であることが多く、同時稼働も少ないため、需要率は 0.21 と低め。
ただし、水使用が集中する時間帯を意識した設計も重要です。
🧯 その他負荷(厨房機器、特殊設備など)
➡ 使用頻度・稼働タイミングがバラバラなため、設計者の判断で個別に需要率を設定します。
用途や施設運用方法をよくヒアリングして調整しましょう。
次は、実際の集計例を使って変圧器容量を算出してみようか!
需要率を概ねの表にまとめると(参考値)
【kVA】 | f5 | f6 | f7 |
0 | 1 | 0.83 | 0.21 |
10 | 1 | 0.82 | 0.21 |
20 | 0.99 | 0.81 | 0.21 |
30 | 0.99 | 0.8 | 0.21 |
40 | 0.98 | 0.79 | 0.21 |
50 | 0.98 | 0.79 | 0.21 |
60 | 0.97 | 0.78 | 0.21 |
70 | 0.97 | 0.77 | 0.21 |
80 | 0.96 | 0.76 | 0.21 |
90 | 0.96 | 0.76 | 0.21 |
100 | 0.96 | 0.76 | 0.21 |
110 | 0.96 | 0.76 | 0.21 |
120 | 0.95 | 0.75 | 0.21 |
130 | 0.95 | 0.75 | 0.21 |
140 | 0.95 | 0.75 | 0.21 |
150 | 0.95 | 0.75 | 0.21 |
160 | 0.94 | 0.75 | 0.21 |
⚙ 三相変圧器の容量計算|負荷ごとに需要率をかけて合理的に算定しよう
建物の動力負荷が増えると、変圧器も適切な容量で設計する必要があります。
ここでは、冷凍機や空調機、ポンプなどの三相負荷をもとに、需要率を考慮した三相変圧器容量の算定手順を解説します。
📦 三相負荷の分類と容量
まずは動力機器を用途別に分類し、それぞれの合計負荷容量(kVA)を確認します。
-
Pa(高稼働率負荷):120kVA
-
Pb(空調・換気負荷):120kVA
-
Pc(衛生機器等):60kVA
🔍 需要率を掛けて変圧器容量を求める
用途ごとの**想定稼働率(需要率)**を以下のように設定します。
🧾 計算結果と選定例
合計値をまとめると…
-
単純合計(負荷の合計):300kVA
-
需要率を考慮した合計:217kVA
結果
🔹 単純に負荷容量を集計した場合は、300kVAの三相変圧器が必要。
🔹 しかし需要率を考慮すると、217kVAの実使用容量で済むため、300kVA変圧器を選定しても余裕があり、将来的な設備増設にも対応可能です。
ツールの紹介|需要率を計算してみよう!
需要率のまとめ
単相変圧器|負荷を用途別に分ける
電灯負荷
コンセント負荷(OA負荷とファンコイルを除く)
ファンコイル用コンセント負荷
OA負荷コンセント
その他
単相変圧器|集計した容量を需要率表に当てはめる

負荷区分 | 需要率【最大】 |
電灯負荷 | 0.68% |
コンセント負荷 | 0.27% |
ファンコイル用コンセント負荷 | 0.75% |
OA負荷 | 実状に応じて適宜考慮する |