
改修工事の総額は「新築と同じ拾い項目+改修だけの項目」の足し算。撤去費・仮設費・夜間休日の割増・調査費という、新築にはない4つの費目を見落とさない拾い方を、会話形式で解説します。積算編、これで全6回完結です。
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!こんにちは、HARITAの設計室です。積算編⑤で内訳書の読み方・見積比較を見てきました。内訳の階層と、総額差の分解の仕方が分かると、いよいよ積算編も最終回です。
今回のテーマは改修・増設の積算。新築の拾い方はここまでの5回でひと通り身につきましたが、改修工事には新築にはない費目が必ず発生します。「新築と同じつもりで拾うと必ず外す」――そう言われる理由を、会話形式で見ていきます。
この3つ、すぐ答えられますか
- 改修の拾いで、新築にはない費目を4つ挙げられますか。
- 撤去は「外すだけ」で終わりますか。
- 改修で最初にやるべき拾いは、どれですか。

先輩、初めて改修工事の拾いをやったんですけど、新設する器具の数量だけ拾って先輩に見せたら「これじゃ全然足りない」って言われました…。

あるある。改修は新設する部分とそれ以外の部分の両方を拾わないといけない。新築の感覚のままだと、後者をまるごと忘れる。

それ以外の部分…って、具体的に何を拾えばいいんですか?

大きく4つ。撤去・仮設・割増・調査。どれも新築には出てこない費目だから、今日はこの4つを1つずつ潰していこう。
この記事でわかること
新築の拾い方は前回までで身につきました。改修には、新築にはない費目が必ず発生します。
新築と改修の拾い項目差分
図1|改修の内訳は「新築の項目+改修だけの項目」の足し算
この図の右側、全部知らない言葉です…。

だよね、最初はみんなそう。でも仕組みはシンプルで、改修の総額=新築と同じ拾い項目+改修だけの項目。右側の4項目を先に洗い出しておけば、あとは今まで通り新築の拾い方でいい。

右側だけ意識すればいいなら、少し気が楽になりました。

そう。それに右側は図面に描かれない「見えない数量」が多い。だからこそ、現地を見ないと分からないことが多いんだ。
| 新築の拾い | 改修で追加になるもの |
| 対象 | これから付ける器具・配線 | 新設分 + 既存を外す分 |
| 費目 | 材料費・労務費 | 撤去費・仮設費・夜間休日の割増・調査費 |
| 数量の出どころ | 図面から拾える | 図面に描かれない「見えない数量」が多い |
| 進め方 | 図面 → 拾い書 → 内訳書 | 現地調査 → 図面 → 拾い書 → 内訳書 |
ここまでのポイント
- 改修の総額=新築と同じ拾い項目+改修だけの項目
- 右側の4項目を先に洗い出せば、あとは今まで通りの新築の拾い方でいい
- 右側は図面に描かれない項目が多いので、現地を見ないと分からない
撤去費を拾う ― 既存設備の処分にもお金がかかる

撤去って、古い器具を外すだけですよね?そんなに手間もかからなそうですけど。

外すだけじゃない。
撤去した後の産業廃棄物としての処分費も必要になる。古い
分電盤や
幹線ケーブルは重量もあるから、運搬・処分だけでそれなりの金額になるよ。

新設する器具の数だけじゃなくて、撤去する器具の数も数えないといけないんですね。

その通り。「撤去〇〇個」「撤去〇〇m」と、新設とは別行で拾うのが基本。新設と撤去を1行にまとめてしまうと、あとで数量が合わなくなる。
ここまでのポイント
- 撤去は「外すだけ」ではない。撤去後の産業廃棄物としての処分費も必要になる
- 古い分電盤や幹線ケーブルは重量もあり、運搬・処分だけでそれなりの金額になる
- 「撤去〇〇個」「撤去〇〇m」と、新設とは別行で拾うのが基本
仮設費を拾う ― 稼働中の現場で工事をする難しさ

仮設電源とか養生費って、新築でも仮設工事ってありましたよね?何が違うんですか?

新築の仮設は「まだ何もない場所」に建てるための仮設。改修は稼働中の建物・使用中の設備の近くで工事をするための仮設だから、性質が違う。

稼働中だと、何が大変なんですか?

たとえば、停電できない系統があれば仮設電源を引いて別ルートで給電しながら工事する必要がある。周囲の什器や床を傷つけないための養生も、新築より神経を使う場面が多い。ここを軽く見積もると、現場で追加費用が発生しやすい。
ここまでのポイント
- 新築の仮設は「まだ何もない場所」に建てるための仮設
- 改修の仮設は、稼働中の建物・使用中の設備の近くで工事をするための仮設
- 停電できない系統には仮設電源、什器や床には養生。軽く見積もると現場で追加費用が出る
夜間・休日作業の割増を拾う

夜間や休日に工事する理由って、そんなにあるんですか?

改修は稼働中の施設が相手だから、営業中・使用中は工事できないケースが多い。店舗やオフィスなら閉店後の夜間、病院や工場なら休日にしか止められない設備もある。

じゃあ、昼間の工事費とは別に考えないといけないんですね。

その通り。夜間・休日は労務単価そのものに割増がかかるのが一般的。同じ作業量でも、いつ・誰が・どんな条件でやるかで金額が変わることを、拾いの段階で意識しておく必要がある。
ここまでのポイント
- 改修は稼働中の施設が相手なので、営業中・使用中は工事できないケースが多い
- 夜間・休日は労務単価そのものに割増がかかるのが一般的
- 同じ作業量でも「いつ・誰が・どんな条件でやるか」で金額が変わる
調査費を拾う ― 図面だけでは分からないことが多い

調査費ってどういう意味ですか?現地調査は無料でやるものだと思ってました。

新築と違って、改修は竣工図が古い・実際と違う・そもそも残っていないということがよくある。図面が信用できない以上、現地で実測・現況確認する工数そのものがコストになる。

現地に行かないと分からないことって、たとえばどんなことですか?

配線ルートが図面と違う、既存の盤に空き回路がない、天井裏に想定外の障害物がある……こういうのは行ってみないと分からない。だからこそ調査費を最初から見込んでおくことが大事なんだ。
ここまでのポイント
- 改修は竣工図が古い・実際と違う・そもそも残っていないことがよくある
- 図面が信用できない以上、現地で実測・現況確認する工数そのものがコストになる
- 配線ルート・盤の空き回路・天井裏の障害物は、行ってみないと分からない
実践 ― 改修工事のコスト構成
図2|撤去費・仮設費・調査費だけで全体の約4割を占める例
この帯グラフ、材料費と労務費を足しても6割にしかならないんですね。

そう、残りの4割が新築にはない費目。これを最初から見込んでおかないと、後から「予算が全然足りない」ということになる。

この4項目、拾う順番ってあるんですか?

おすすめは現地調査を最初にやること。調査で撤去数量・仮設の必要性・作業可能時間帯が分かれば、残り3つの拾いが一気に楽になる。順番を間違えると、二度手間になりやすいよ。

新築の積算とはだいぶ考え方が違うんですね。

新築と同じつもりで拾うと必ず外す――今日のタイトル通り。改修は「新築の拾い+4つの追加項目」とセットで覚えておこう。
ここまでのポイント
- 撤去費・仮設費・調査費だけで全体の約4割を占めることがある
- 材料費と労務費を足しても6割にしかならない、という構成を先に知っておく
- 拾う順番は現地調査が最初。調査で撤去数量・仮設の要否・作業可能時間帯が分かる
💼 実務でこう生きる
📋 実務活用事例:改修見積のヒアリング項目を最初から用意できる
見積依頼を受けた時点で「稼働中の設備はありますか」「夜間・休日しか止められない系統はありますか」と聞けると、撤去・仮設・割増の見積もり精度が上がります。後出しの追加費用トラブルを防げます。
📋 実務活用事例:現地調査の必要性を上司や客先に説明できる
「図面だけで概算は出せますが、正確な金額には現地調査が必要です」と根拠を持って言えるようになります。調査を省略した見積が後で大きくブレるリスクを、事前に共有できます。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 撤去した古い器具って、そのまま捨てていいんですか?
いいえ、産業廃棄物として法令に沿って処分する必要があります。処分費用は撤去費の中に含めて計上するのが一般的です。勝手に不法投棄することは絶対にできません。
🐣 改修と増設って、積算の考え方は同じですか?
基本的な考え方は共通ですが、増設は「今ある設備に追加する」ため撤去費が発生しないケースが多く、改修は「入れ替える」ため撤去費が発生しやすい、という傾向があります。どちらも新築にはない項目が発生する点は共通です。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
🔎 「夜間・休日作業の割増って、どのくらい変わるものですか?」と聞いてみた
はりた:会社や地域によって差はあるけど、平日昼間の労務単価に対して1.2〜1.5倍程度の割増を見込むことが多い。深夜帯だとさらに上がることもある。正確な率は自社の実績や協力業者の見積で確認するのが確実だよ。
🔎 「調査費って、
見積書のどこに書くんですか?」と聞いてみた
はりた:内訳書の中に独立した科目として立てることが多い。積算編⑤で見た「
工事区分→科目→細目」の階層でいうと、撤去・仮設・調査はそれぞれ独立した科目として扱われることが多いよ。
🔎 「小さな改修工事でも、この4項目は全部拾う必要がありますか?」と聞いてみた
はりた:規模が小さくても考え方は同じ。ただし金額的なインパクトが小さければ、簡略化して概算で計上することもある。大事なのは「存在を忘れない」こと。金額の大小は現場の規模に応じて判断すればいい。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 新設器具の数量だけを拾って満足する … 撤去・仮設・割増・調査を見落とすと、見積が大きく不足します。
- 撤去と新設を同じ行にまとめる … 数量が合わなくなる原因になります。必ず別行で拾います。
- 仮設電源の必要性を現地確認せずに済ませる … 稼働中設備の有無は現地で必ず確認します。
- 夜間・休日の割増を昼間と同じ単価で見積もる … 労務単価の割増を見込み忘れると赤字の原因になります。
- 古い図面をそのまま信用する … 竣工図と現況が違うことは珍しくありません。現地調査で必ず裏を取ります。
- 調査費をサービスだと思い込む … 調査そのものに工数がかかる以上、コストとして計上する意識を持ちます。
まとめ ― 今日の1枚
新築と同じつもりで拾うと、必ず外します。改修の総額は「新築と同じ拾い項目+改修だけの項目」の足し算。右側の4項目を先に洗い出せば、左側はこれまで通りの拾い方で構いません。
改修だけの4項目を、1枚で見る
| 費目 | 何にかかるお金か | 見落とすとどうなるか |
| 撤去費 | 既存設備を外す手間 + 産業廃棄物としての処分費 | 重量物の運搬・処分費がまるごと抜ける |
| 仮設費 | 稼働中の設備を止めずに工事するための仮設電源・養生 | 現場で追加費用が発生する |
| 夜間・休日の割増 | 営業中・使用中に工事できないぶんの労務単価の割増 | 同じ作業量なのに、金額が足りなくなる |
| 調査費 | 図面が信用できないぶんの実測・現況確認の工数 | 想定外の障害物や空き回路不足が、着工後に判明する |
総額の考え方
足し算で捉える
- 改修の総額は新築と同じ拾い項目+改修だけの項目の足し算。
- 改修だけの項目は撤去費・仮設費・夜間休日の割増・調査費の4つ。
4項目の中身
ひとつずつ
- 撤去費は既存設備の処分費まで含めて考える。
- 仮設費は稼働中の設備・施設を止めずに工事するための費用。
- 夜間・休日作業は労務単価そのものに割増がかかる。
- 調査費は図面が信用できない改修特有の必要経費。
拾う順番
現地調査が最初
- これら4項目は図面に描かれない「見えない数量」のため、現地調査を最初に行うのが効率的。
最後に ― 見積依頼の時点で聞いておく
「稼働中の設備はありますか」「夜間・休日しか止められない系統はありますか」。この2つを見積依頼の時点で聞けるかどうかで、撤去・仮設・割増の精度が変わります。後出しで発覚するより、最初に押さえておく方がずっと早く済みます。
これで積算編は全6回、拾い出しから内訳書・改修積算までひと通り扱いました。あわせて第21回 拾い出しのきほんや第22回 積算・見積のきほん、積算編⑤の内訳書の読み方・見積比較もあわせてどうぞ。
積算編はこれで全6回、完結です。拾い方から単価の中身、内訳書の比較、改修特有の費目まで、積算の基礎を一通り見てきました。引き続き、全カリキュラム(目次)から、他のトラックもぜひ読んでみてください。
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