1社ずつの深掘り、第2回はきんでん。売上高・時価総額とも電気設備サブコンで現在トップ、関西電力系の最大手だ。関電工と同じく、会社が何をやっていて、どう稼ぎ、どこに投資しているのかを、株主・投資家向け資料(決算説明会資料・中期経営計画・有価証券報告書)だけを使って読み解く。きんでんには、2026年に起きた大型の資本再編という見逃せないトピックもある。

この記事の結論

事業の柱は「一般電気工事」で単体完成工事高の約68%。ビル・工場・商業施設・データセンターなどの電気設備が主力だ。次いで配電工事(送配電インフラ)が約13%、環境関連(空調・管)約8%、情報通信約7.5%。さらに海外(アジア・ハワイ/グアム)が連結売上の約1割弱を占める。

業績はこの5年で急拡大。連結売上高は5,668→7,507億円、営業利益は371→903億円(約2.4倍)、営業利益率は6.5→12.0%、ROEは11.0%まで上がった。自己資本比率72.4%の実質無借金という強い財務体質も特徴だ。

「人財を軸とした成長投資」で約1,400億円を投資。中期経営計画で、首都圏の新事業所(約800億円)、教育施設「きんでん学園」の移転・建替え(約400億円)、事業出資・M&A(約200億円)に投じる計画を掲げる。

2026年4月、約2,237億円の大型自社株買いを決議。関西電力グループが保有株の全部を応募し、約3,350万株を消却。資本関係を大きく見直し、2027年3月期は配当240円(特別配当100円を含む)へ大幅増配する。

会社の基本情報

きんでんは1944年8月26日(近畿電気工事として設立)、本社は大阪市北区。資本金264.1億円(26,411百万円)、連結子会社21社で構成され、連結従業員は15,440人(2026年3月末)と業界最大規模だ。筆頭株主は関西電力で、きんでんは同社の「その他の関係会社」にあたる(議決権ベースで約36.5%を保有:後述のとおり2026年に大きく変化)。提出会社(単体)の平均年間給与は約849万円(2024年3月期の有価証券報告書。平均41.7歳・勤続19.9年)。

連結売上高
(2026年3月期)
7,507億円
連結従業員数
(2026年3月末)
15,440
ROE
(2026年3月期)
11%
自己資本比率
(2026年3月末)
72.4%
きんでんの施工形態別 完成工事高構成(2025年3月期)

1. 何をやっている会社か

きんでんの会計上の報告セグメントは「設備工事業」の単一区分だが、投資家向け資料では施工形態別に開示している。図1のとおり、最大は一般電気工事で完成工事高の約7割(4,046億円)。オフィスビル・工場・商業施設・データセンターなど、建物の電気設備がここに入る。次いで配電工事(約13%)で、これは電柱や地中線など送配電インフラの工事で、関西電力向けが多く含まれる。環境関連(空調・管)、情報通信と続く構成だ。

関電工との違いとして目立つのが海外事業だ。アジア(東南アジア中心)とハワイ・グアムで完成工事高が約606億円、連結売上の約8.6%を海外で稼いでいる。国内サブコンのなかでは海外比率が高いほうで、きんでんの規模の大きさは、この国内+海外の広がりに支えられている。

きんでんの連結売上高と営業利益の推移

2. 業績-5年で増収増益、無借金の強い財務

図2は連結の売上高と営業利益の推移だ。売上高は5年で5,668億円→7,507億円、営業利益は371億円→903億円と約2.4倍。営業利益率も6.5%から12.0%へと大きく改善した。データセンター・工場・物流施設の建設需要や、再生可能エネルギー関連の工事が伸びをけん引している。純利益は694億円、ROEは11.0%だ。

きんでんの強みは財務の堅さにある。自己資本比率は72.4%と高く、長期借入や社債を持たない実質無借金の状態だ。受注残高(次期繰越工事高・単体)も約5,818億円と厚く、当面の仕事量が見通せる。会社は2027年3月期に売上8,100億円・営業利益970億円を見込む。この潤沢な自己資本が、次に述べる大型投資と大型還元を可能にしている。

きんでんの中期経営計画の投資計画 約1,400億円

3. これからの投資-人と拠点に約1,400億円

会社の「これから」を映すのが投資だ。きんでんは中期経営計画で「人財を軸とした成長投資」として約1,400億円規模を掲げる。図3のとおり、内訳は首都圏の新事業所(約800億円)教育施設『きんでん学園』の移転・建替え(約400億円)、事業出資・M&A等(約200億円)だ。

目を引くのは、技術者を育てる『きんでん学園』に約400億円を投じる点だ。電気工事は人がつくる仕事であり、人手不足が続くなかで、教育・訓練の拠点そのものに大きく投資するのは、会社が『人』を競争力の源泉と位置づけている表れといえる。首都圏の新事業所は、関西電力系でありながら成長する首都圏市場での事業基盤を固める狙いだ。なお、各期の歴史的な設備投資額は本稿執筆時点で年度別の一次開示が一部確認できなかったため、ここでは公表された投資計画の金額を示している。

4. 2026年の資本再編-関西電力の資本引き揚げと大型還元

きんでんで2026年に起きた最大の変化が大型の自社株買いと資本関係の見直しだ。2026年4月、きんでんは総額約2,237億円(1株6,677円)の自己株式取得(公開買付け)を決議した。これに関西電力グループが保有株の全部を応募し、取得した約3,350万株は2026年6月に消却される。つまり、筆頭株主だった関西電力が資本を引き揚げ、きんでんが自ら買い取って消す、という大きな動きだ。

この再編は株主還元も大きく変える。2027年3月期の配当は240円(普通140円+特別配当100円)と、前期の130円から大幅な増配になる。中期経営計画では総還元性向50〜60%を目安に掲げており、潤沢な自己資本を背景に、配当と自社株買いの両面で株主に大きく報いる方針だ。自社株を消すと1株あたりの利益が高まるため、増配の余地も広がる。関西電力への依存度が下がり、独立した成長企業としての性格を強めている局面といえる。

主要指標の5年推移

指標2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期
連結売上高(億円)5,6686,0916,5457,0517,507
連結営業利益(億円)371374427610903
営業利益率6.5%6.1%6.5%8.6%12%
経常利益(億円)400402460645945
当期純利益(億円)264287336472694
ROE5.2%5.4%5.9%8.1%11%
1株配当(円)37406390130
出典:きんでん 決算短信・IR公表値(連結)。2022〜2024年3月期の一部はIR公表値(各社有報等にもとづくIR集計)を含む。億円は百万円を100で除して四捨五入。2027年3月期は会社予想で売上8,100億円・営業利益970億円・1株配当240円(普通140+特別100)。

5. 就活・転職でどう読むか

規模と財務の安定

きんでんは売上・従業員数とも業界最大規模で、自己資本比率72%・実質無借金という財務の堅さが際立つ。受注残も厚く、景気に左右されやすい建設・設備業界のなかで、経営の安定感は高い。大きな会社で幅広い案件(国内の大型物件から海外まで)に関わりたい人には合う環境だ。

海外で働く可能性

国内サブコンのなかでは海外事業の比率が高いのがきんでんの特徴だ。アジアやハワイ・グアムに拠点があり、海外で電気設備の仕事に携わるチャンスがある。説明会などで海外の受注状況や配属の実態を確認すると、キャリアの選択肢を具体的にイメージできる。

『人』への投資と待遇

教育施設に約400億円を投じるように、きんでんは人材育成を経営の柱に据えている。単体の平均年間給与は約849万円(2024年3月期)で、配当も5年で37円→130円、2027年3月期は240円予想と株主還元を強めている。業績連動の要素があれば、会社の成長が処遇に反映されやすい。ただし平均給与は単体・全社員の平均で、職種・年次・地域による差がある点には注意したい。

このデータの限界

以下は本稿が示していないこと

会計上の報告セグメントは「設備工事業」単一。データセンターや再エネだけを取り出したセグメント売上は非公表で、施工形態別(一般電気・配電・環境関連・情報通信・電力その他)が最も細かい公式の開示粒度だ。施工形態別は2025年3月期(単体)の値で、2026年3月期の内訳は本稿執筆時点で未開示。

受注高・受注残高は単体、売上高・利益は連結。集計範囲が異なるため単純には比べられない。連結の受注高は非公表。

各期の設備投資額は年度別の一次開示が一部確認できなかった。本稿では設備投資の歴史的な推移ではなく、中期経営計画で公表された投資計画の金額を用いている。

平均年間給与は単体・全社員の平均で、直近ではなく2024年3月期の有報値。職種・年次・地域による差や手当の内訳は示されておらず、個人の実際の年収を保証するものではない。

中期経営計画『Sustainable Growth 2026』の数値目標は、すでに実績が大きく上回っている。計画(売上7,000億・営業利益500億・ROE7%)は2026年3月期実績(売上7,507億・営業利益903億・ROE11%)で超過達成済みで、新たな計画が示される可能性がある。最新の目標は公式IRで確認したい。

本稿はきんでんが公表した資料の範囲の事実整理であり、投資勧誘・投資助言ではない。将来の業績や株価を約束するものではない。転職・就活メディアが独自に集計・推定した数値は使用していない。

出典

すべてきんでんの公式開示および適時開示(2026年7月28日取得)。2026年3月期 決算短信・決算説明会資料・有価証券報告書中期経営計画「Sustainable Growth 2026」・資本政策のUpdate(2025年1月31日)、自己株式取得・公開買付けに関するお知らせ(2026年4月27日)、きんでん IR情報。売上高・利益・ROE・自己資本比率は連結、受注高・受注残高・平均年間給与は単体(提出会社)。施工形態別の完成工事高は2025年3月期の決算説明会資料による。億円は百万円を100で除して四捨五入した。