この記事は、連載コンセント設備の設計マニュアル」第5回 施工・検査 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
施工実務編⑧ 竣工前の試験・測定の全体像
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。施工実務編もいよいよ最終回——竣工前の試験・測定。工事が終わっても、すぐには電気を入れられません。「入れても安全」を証明する試験に合格してから。送電までの関所を順に見ていきます。

ペンタ
先輩、工事が終わったらブレーカーを入れて「点いた!完成!」じゃないんですか?
はりた
それ、いちばんやってはいけないやつ(笑)。もし配線に傷があったら送電した瞬間に漏電・短絡だ。だから電気を入れる前に、無電圧のまま測って安全を証明する。関所マップで全体を見よう。
ペン太ペン太
工事が終わったら、すぐ送電していいんですよね?
ハリタハリタ
送電は「合格」してから。目視検査から照度測定まで、関所を順に通ります。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 工事が終わったら、そのままブレーカーを入れてよいでしょうか。
  • メガー測定は電源を入れたまま行ってよいでしょうか。
  • 試験成績書は、受け取ったあと何と見比べるものでしょうか。

送電までの関所マップ

トピック1:送電までの関所マップ
目視から性能実測まで送電前チェック6関所のフロー
【図1】送電までの関所。順番を崩してはいけない理由ごと覚える
ペンタ
絶縁と接地を送電の前に測るのは、「入れてから測ったんじゃ遅い」からなんですね。
はりた
その通り。絶縁抵抗測定(メガー)は電線の健康診断、接地抵抗測定は逃げ道の確認。どちらも無電圧でしか測れない/測ってはいけない試験だ。そして回路の照合——盤の回路が図面どおりの行き先か、2人1組で声を出して確認する。行き先不明の回路に電気を入れるのは、宛先不明の荷物を発送するようなものだからね。
ペン太ペン太
メガーって、電源を入れたまま測るんじゃないんですか!?
ハリタハリタ
無電圧でしか測ってはいけません。低圧回路は0.1〜0.4MΩ以上が基準です。
ここまでのポイント
  • 配線に傷があれば、送電した瞬間に漏電・短絡になる。だから電気を入れる前に、無電圧のまま測って安全を証明する。
  • 絶縁抵抗測定(メガー)は電線の健康診断、接地抵抗測定は逃げ道の確認。どちらも無電圧でしか測れない試験。
  • 回路の照合は、盤の回路が図面どおりの行き先かを2人1組で声を出して確認する。
  • 行き先不明の回路に電気を入れるのは、宛先不明の荷物を発送するようなもの。

試験カタログ ― 何を・なぜ・どう見るか

トピック2:試験カタログ ― 何を・なぜ・どう見るか
絶縁抵抗・接地抵抗・回路確認・相回転・照度の試験一覧表
【図2】竣工試験カタログ。成績書の項目の意味が分かれば立会いが変わる
ペンタ
「相回転」って初めて聞きました。三相の回転方向…?
はりた
三相(第2回)はつなぐ順番で回転磁界の向きが決まる。逆だとポンプやファンが逆回転して、水が上がらない・風が出ない・機器を傷める。検相器という測定器でクルッと確認するんだ。最後は照度測定——設計照度どおりの明るさが出ているか、設計の答え合わせをして竣工だよ。
試験・確認何を見ているか送電との前後使う道具
絶縁抵抗測定電線や器具の絶縁が健全か送電前(無電圧)絶縁抵抗計(メガー)
接地抵抗測定漏電時の逃げ道が確保されているか送電前(無電圧)接地抵抗計
回路の照合盤の回路が図面どおりの行き先か送電前図面と2人1組の声出し
相回転の確認三相の回転方向が正しいか送電時検相器
照度測定設計照度どおりの明るさが出ているか送電後照度計
ここまでのポイント
  • 三相はつなぐ順番で回転磁界の向きが決まる。逆だとポンプやファンが逆回転し、水が上がらない・風が出ない・機器を傷める。
  • 相順は検相器で確認する。3本のクリップを挟むと正相か逆相かを表示してくれる。
  • 最後は照度測定。設計照度どおりの明るさが出ているか、設計の答え合わせをして竣工となる。

💼 実務でこう生きる

トピック3:実務でこう生きる
📋 実務活用事例:試験成績書を「読める」設計者になる
竣工書類に綴じられる試験成績書。回路ごとの絶縁抵抗値・接地種別ごとの接地抵抗値・照度の実測値が、設計値・基準値と並んでいます。数値の意味が分かれば、引渡し後の「なんか調子悪い」の問い合わせにも、成績書から仮説を立てられます。
📋 実務活用事例:検査立会いは「怪しいものを通さない」
立会いで見るのは、値が基準ぎりぎりの回路・行き先不明の回路・表示のない盤。違和感をその場で質問するのが立会い者の仕事です。送電後に直すのは何倍も大変——「今なら1時間、あとなら1日」が試験の世界の相場です。
ここまでのポイント
  • 竣工書類の試験成績書には、回路ごとの絶縁抵抗値・接地種別ごとの接地抵抗値・照度の実測値が、設計値や基準値と並んでいる。
  • 数値の意味が分かれば、引渡し後の「なんか調子悪い」にも成績書から仮説を立てられる。
  • 立会いで見るのは、値が基準ぎりぎりの回路・行き先不明の回路・表示のない盤。違和感はその場で質問する。
  • 送電後に直すのは何倍も大変。「今なら1時間、あとなら1日」が試験の世界の相場。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック4:いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 メガーって、なんで「メガー」なの?
絶縁抵抗の単位がMΩ(メガオーム)だからです。健全な回路の絶縁抵抗は非常に大きく、メガ(100万)単位で測るため、測定器ごと「メガー」と呼ばれるようになりました。測定時は回路に測定電圧をかけるので、電子機器を外してから測るのが作法です。
🐣 検相器って何をする道具?
三相の相順(回転方向)を確認する測定器です。3本のクリップを挟むと、正相か逆相かをランプや回転表示で教えてくれます。ポンプ・ファン・エレベーターなど回転機器のある建物では送電時の必須アイテムです。
ここまでのポイント
  • 絶縁抵抗の単位がMΩ(メガオーム)なので、測定器ごと「メガー」と呼ばれるようになった。
  • メガーは回路に測定電圧をかけるため、電子機器を外してから測るのが作法。
  • 検相器は三相の相順(回転方向)を確認する測定器。回転機器のある建物では送電時の必須アイテム。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック5:深掘りQ&A ― 会話でもっと分かる
🔎 「絶縁不良が見つかったらどうするんですか?」と聞いてみた
はりた「回路を分割して測り直し、不良箇所を絞り込む。ジョイント部の水濡れ、ステップルの噛み込み、器具内部…原因はいろいろ。見つけて直して再測定、合格するまで送電はお預け。ここで妥協しないのがプロだよ」
🔎 「絶縁抵抗の合格ラインはいくつなんですか?」と聞いてみた
はりた「回路の電圧区分で決まっていて、低圧回路なら0.1〜0.4MΩ以上という基準がある。数字の根拠は電気設備の技術基準——つまり法規の世界だから、第5部でみっちりやろう。今日は“回路ごとに基準があり、成績書はそれとの比較表”と覚えて」
🔎 「送電の順番って決まってるんですか?」と聞いてみた
はりた「上流から下流へ、が原則。受電→幹線分電盤の主幹→分岐、と第7回の「電気の流れ1枚図」の順に入れていく。いきなり全部入れず、段階ごとに異常がないか確認しながら。流れの地図がここでも効いてくるんだ」
ここまでのポイント
  • 絶縁不良が出たら回路を分割して測り直し、不良箇所を絞り込む。ジョイント部の水濡れ、ステップルの噛み込み、器具内部など原因はさまざま。
  • 合格するまで送電はお預け。ここで妥協しないのがプロ。
  • 低圧回路の絶縁抵抗は0.1〜0.4MΩ以上という基準がある。根拠は電気設備の技術基準(第5部で扱う)。
  • 送電は上流から下流へが原則。受電→幹線→分電盤の主幹→分岐と、段階ごとに異常を確認しながら入れる。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック6:新人がやりがちな注意ポイント
  • 電子機器をつないだままメガーを当てない:測定電圧で機器を壊します。弱電・電子機器は外してから。
  • 「たぶんこの回路」で送電しない:行き先不明・表示なしの回路は確認が済むまで投入しない。
  • 成績書を「もらって終わり」にしない:設計値と見比べて初めて意味を持ちます。設計の答え合わせまでが仕事。
ペン太ペン太
設計者の仕事は、試験のどこまでですか?
ハリタハリタ
試験成績書と設計値の比較までが責務。成績書は建物の健康診断書ですからね。
やりがちな行動起きること正しい進め方
機器をつないだままメガーを当てる測定電圧で弱電・電子機器を壊す電子機器を外してから測る
「たぶんこの回路」で投入する宛先不明のまま電気を送ることになる照合が済むまで投入しない
一気に全部のブレーカーを入れる異常が出たとき原因の切り分けができない上流から下流へ、段階ごとに確認しながら
成績書をもらって綴じて終わり設計どおりかの答え合わせが残ったまま設計値・基準値と見比べる
ここまでのポイント
  • 電子機器をつないだままメガーを当てない。測定電圧で機器を壊すので、弱電・電子機器は外してから。
  • 「たぶんこの回路」で送電しない。行き先不明・表示なしの回路は確認が済むまで投入しない。
  • 成績書は受け取って終わりにしない。設計値と見比べて初めて意味を持つ。

まとめ ― 今日の1枚

トピック7:まとめ ― 今日の1枚

工事が終わった状態と、電気を入れてよい状態は別ものです。試験は、その二つの間にある関所をひとつずつ通す作業になります。

関所この段階の問い通過の合図
見る取付け・結線・表示に不備はないか目視検査で指摘が残っていない
測る絶縁と接地は基準を満たすか無電圧のまま測った値が基準以上
照合するこの回路の行き先はどこか図面と現物が2人で一致確認できた
送電する上流から順に異常はないか段階ごとに確認して投入できた
実測する設計の意図どおりの性能が出たか相回転と照度が設計値と合った

順番と無電圧

  • 送電前は見る→測る(絶縁・接地)→照合→送電→実測の関所を順に通る。
  • 測定は無電圧で先に。「入れても安全」を証明してから入れる。

送電時に見るもの

  • 相回転の確認を忘れると回転機器が逆回転。検相器でクルッと確認。
  • 送電は上流から下流へ。受電→幹線→主幹→分岐と、段階ごとに異常を確認しながら入れる。

成績書の使い道

  • 試験成績書は建物の健康診断書。設計値との答え合わせまでが設計の仕事
  • 値が基準ぎりぎりの回路・行き先不明の回路・表示のない盤は、立会いでその場で質問する。

送電の瞬間は現場のクライマックスですが、そこに至る静かな測定の積み重ねが建物の安全を決めています。施工実務編で見てきた工程は、すべてこの日のためのものでした。

これで施工実務編(全8回)完結! 現場の1日から送電の瞬間まで、設計が形になる道のりを一気に駆け抜けました。本編は第11回(第4部開幕:需要率・負荷率)から計算の世界へ。引き続きお楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。