【新人講座 施工実務編⑧】竣工前の試験・測定 ― 送電は「合格」してから

こんにちは、HARITAの設計室です。施工実務編もいよいよ最終回——竣工前の試験・測定。工事が終わっても、すぐには電気を入れられません。「入れても安全」を証明する試験に合格してから。送電までの関所を順に見ていきます。


ペン太
ハリタこの3つ、すぐ答えられますか
- 工事が終わったら、そのままブレーカーを入れてよいでしょうか。
- メガー測定は電源を入れたまま行ってよいでしょうか。
- 試験成績書は、受け取ったあと何と見比べるものでしょうか。
- 送電までの関所マップ ― 順番を崩せない理由
- 試験カタログ ― 絶縁・接地・照合・相回転・照度
- 実務での使いどころ ― 成績書を読む、立会いで見る
- 素朴なギモン ― メガーの語源、検相器の役割
- 深掘りQ&A ― 絶縁不良、合格ライン、送電の順番
- 注意ポイント ― 機器を外す、行き先不明を投入しない
送電までの関所マップ



ペン太
ハリタ- 配線に傷があれば、送電した瞬間に漏電・短絡になる。だから電気を入れる前に、無電圧のまま測って安全を証明する。
- 絶縁抵抗測定(メガー)は電線の健康診断、接地抵抗測定は逃げ道の確認。どちらも無電圧でしか測れない試験。
- 回路の照合は、盤の回路が図面どおりの行き先かを2人1組で声を出して確認する。
- 行き先不明の回路に電気を入れるのは、宛先不明の荷物を発送するようなもの。
試験カタログ ― 何を・なぜ・どう見るか



| 試験・確認 | 何を見ているか | 送電との前後 | 使う道具 |
|---|---|---|---|
| 絶縁抵抗測定 | 電線や器具の絶縁が健全か | 送電前(無電圧) | 絶縁抵抗計(メガー) |
| 接地抵抗測定 | 漏電時の逃げ道が確保されているか | 送電前(無電圧) | 接地抵抗計 |
| 回路の照合 | 盤の回路が図面どおりの行き先か | 送電前 | 図面と2人1組の声出し |
| 相回転の確認 | 三相の回転方向が正しいか | 送電時 | 検相器 |
| 照度測定 | 設計照度どおりの明るさが出ているか | 送電後 | 照度計 |
- 三相はつなぐ順番で回転磁界の向きが決まる。逆だとポンプやファンが逆回転し、水が上がらない・風が出ない・機器を傷める。
- 相順は検相器で確認する。3本のクリップを挟むと正相か逆相かを表示してくれる。
- 最後は照度測定。設計照度どおりの明るさが出ているか、設計の答え合わせをして竣工となる。
💼 実務でこう生きる
- 竣工書類の試験成績書には、回路ごとの絶縁抵抗値・接地種別ごとの接地抵抗値・照度の実測値が、設計値や基準値と並んでいる。
- 数値の意味が分かれば、引渡し後の「なんか調子悪い」にも成績書から仮説を立てられる。
- 立会いで見るのは、値が基準ぎりぎりの回路・行き先不明の回路・表示のない盤。違和感はその場で質問する。
- 送電後に直すのは何倍も大変。「今なら1時間、あとなら1日」が試験の世界の相場。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
- 絶縁抵抗の単位がMΩ(メガオーム)なので、測定器ごと「メガー」と呼ばれるようになった。
- メガーは回路に測定電圧をかけるため、電子機器を外してから測るのが作法。
- 検相器は三相の相順(回転方向)を確認する測定器。回転機器のある建物では送電時の必須アイテム。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
- 絶縁不良が出たら回路を分割して測り直し、不良箇所を絞り込む。ジョイント部の水濡れ、ステップルの噛み込み、器具内部など原因はさまざま。
- 合格するまで送電はお預け。ここで妥協しないのがプロ。
- 低圧回路の絶縁抵抗は0.1〜0.4MΩ以上という基準がある。根拠は電気設備の技術基準(第5部で扱う)。
- 送電は上流から下流へが原則。受電→幹線→分電盤の主幹→分岐と、段階ごとに異常を確認しながら入れる。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 電子機器をつないだままメガーを当てない:測定電圧で機器を壊します。弱電・電子機器は外してから。
- 「たぶんこの回路」で送電しない:行き先不明・表示なしの回路は確認が済むまで投入しない。
- 成績書を「もらって終わり」にしない:設計値と見比べて初めて意味を持ちます。設計の答え合わせまでが仕事。
ペン太
ハリタ| やりがちな行動 | 起きること | 正しい進め方 |
|---|---|---|
| 機器をつないだままメガーを当てる | 測定電圧で弱電・電子機器を壊す | 電子機器を外してから測る |
| 「たぶんこの回路」で投入する | 宛先不明のまま電気を送ることになる | 照合が済むまで投入しない |
| 一気に全部のブレーカーを入れる | 異常が出たとき原因の切り分けができない | 上流から下流へ、段階ごとに確認しながら |
| 成績書をもらって綴じて終わり | 設計どおりかの答え合わせが残ったまま | 設計値・基準値と見比べる |
- 電子機器をつないだままメガーを当てない。測定電圧で機器を壊すので、弱電・電子機器は外してから。
- 「たぶんこの回路」で送電しない。行き先不明・表示なしの回路は確認が済むまで投入しない。
- 成績書は受け取って終わりにしない。設計値と見比べて初めて意味を持つ。
まとめ ― 今日の1枚
工事が終わった状態と、電気を入れてよい状態は別ものです。試験は、その二つの間にある関所をひとつずつ通す作業になります。
| 関所 | この段階の問い | 通過の合図 |
|---|---|---|
| 見る | 取付け・結線・表示に不備はないか | 目視検査で指摘が残っていない |
| 測る | 絶縁と接地は基準を満たすか | 無電圧のまま測った値が基準以上 |
| 照合する | この回路の行き先はどこか | 図面と現物が2人で一致確認できた |
| 送電する | 上流から順に異常はないか | 段階ごとに確認して投入できた |
| 実測する | 設計の意図どおりの性能が出たか | 相回転と照度が設計値と合った |
順番と無電圧
- 送電前は見る→測る(絶縁・接地)→照合→送電→実測の関所を順に通る。
- 測定は無電圧で先に。「入れても安全」を証明してから入れる。
送電時に見るもの
- 相回転の確認を忘れると回転機器が逆回転。検相器でクルッと確認。
- 送電は上流から下流へ。受電→幹線→主幹→分岐と、段階ごとに異常を確認しながら入れる。
成績書の使い道
- 試験成績書は建物の健康診断書。設計値との答え合わせまでが設計の仕事。
- 値が基準ぎりぎりの回路・行き先不明の回路・表示のない盤は、立会いでその場で質問する。
送電の瞬間は現場のクライマックスですが、そこに至る静かな測定の積み重ねが建物の安全を決めています。施工実務編で見てきた工程は、すべてこの日のためのものでした。
これで施工実務編(全8回)完結! 現場の1日から送電の瞬間まで、設計が形になる道のりを一気に駆け抜けました。本編は第11回(第4部開幕:需要率・負荷率)から計算の世界へ。引き続きお楽しみに!
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