【新人講座 積算編①】部位別の拾い方 ― 器具・配線・盤・弱電で数え方が変わる

こんにちは、HARITAの設計室です。今回から、新人講座に「積算編」という新しいトラックが加わります。図面を読めるようになった次にやってくる仕事、「図面を数量に変える」という作業を、6回かけて掘り下げていきます。
第1回のテーマは「部位別の拾い方」。第21回「拾い出しのきほん」では拾いの手順(準備→区切る→数える→測る→まとめる)を学びました。今回はその一段下、「器具・配線・盤・弱電で、そもそも数え方が違う」という話です。
- 配線を「本」で数えると長さ(m)が消える。2mも30mも同じ「1本」になる
- コンセントは添字(ET・LK・WP)で品物も単価も違うので、まとめない
- 盤の中身は盤結線図・盤リストから拾う。平面図にあるのは置き場所だけ




- 拾いが崩れる本当の原因は「単位」にある
- 器具は「記号+添字」が同じものだけを1グループにする
- 配線は平面の長さに、立上り・立下りの縦分を足す
- 盤は「面」で数え、中身は盤結線図から転記する
- 弱電は端末(個)とシステム(式)の2階建て
- 1部屋を「4周」して拾う実践のやり方
拾いが崩れる本当の原因は「単位」にある
新人が拾い出しで失敗するとき、その原因はたいてい「数え間違い」ではありません。数え始める前に、単位を決めていないことです。
たとえば配線。図面を見て「この線とこの線とこの線…全部で12本」と数えてしまうと、その瞬間に長さの情報が消えます。2mの線も30mの線も、同じ「1本」になってしまう。配線は本数ではなく長さ(m)で拾うもの、という前提が抜けているとこうなります。





- 崩れる原因は数え間違いではなく、数え始める前に単位を決めていないこと。
- 配線を「本」で数えた瞬間に長さの情報が消える。2mの線も30mの線も同じ「1本」になる。
- 盤は「面」で数える。「台」と混ざると、集計で同じ盤が2行に割れる。単位はチームで統一しておく。
部位① 器具 ― 「記号+添字」が同じものだけを1グループにする
照明・スイッチ・コンセントといった器具は「個」で数えます。ここでのポイントは、同じ記号でも添字が違えば別の品目だということです。
コンセントの記号はどれも似ていますが、接地極付(ET)、抜け止め(LK)、防雨形(WP)では品物も単価も違います。「コンセント 20個」とまとめてしまうと、後で単価を入れる段階で必ず戻ってくることになります。


- 器具は「個」。同じ記号でも添字が違えば別の品目。
- 接地極付(ET)・抜け止め(LK)・防雨形(WP)は品物も単価も違うので、列を分けて数える。
- 数える回数は増えない。1回まわりながら記号ごとの欄に「正」の字を書くだけ。
- 数え終わった器具には必ず色を塗る。塗った=数えた、の印がないと検算ができない。
部位② 配線・配管 ― 「平面の長さ」だけでは足りない
配線・配管は「m」で拾います。ここで新人がほぼ全員つまずくのが、縦方向の長さです。
図面は上から見た平面図なので、天井裏を走る水平の長さは読み取れます。しかし、天井から器具まで下ろす分、床から立ち上げる分、盤の中でとぐろを巻いている余長は、平面図には映りません。この縦分を足し忘れると、配線量は必ず不足します。




- 配線・配管は「m」。平面図から読めるのは水平の長さだけ。
- 天井から器具へ下ろす分、床から立ち上げる分、盤内の余長は平面図に映らない。足し忘れると必ず不足する。
- 立下りの見方は自分で決めず、先輩の拾い書に合わせる。バラバラだと比較できない。
- 「平面38m+立下り0.5m×8箇所=42m」と式の形で根拠メモに残す。数字だけ残すのはただのメモ。
部位③ 盤・機器 ― 数えるのは「面」、記録するのは「中身」
分電盤や制御盤は「面」で数えます。ただし、面数だけを数えても金額にはなりません。盤の値段を決めるのは中身だからです。
主開閉器の容量、分岐回路の数、予備回路の数、露出か埋込か、屋外用か。この情報がないと、盤は見積もれません。盤の拾いとは「数える」より「転記する」作業だと考えたほうが近いくらいです。


- 盤・機器は「面」。ただし面数だけでは金額にならない。
- 値段を決めるのは中身——主開閉器の容量、分岐回路数、予備回路数、露出か埋込か、屋外用か。
- 盤の拾いは「数える」より「転記する」作業に近い。
- だから盤は平面図ではなく盤結線図・盤リストから拾う。平面図にあるのは置き場所だけ。
部位④ 弱電 ― 「端末」と「システム」を分けて拾う
放送、電話・LAN、インターホン、防犯といった弱電設備は、「個」と「式」の2階建てで拾います。
スピーカ、情報コンセント、カメラといった端末は「個」。一方で、それらをまとめる親機・アンプ・ラック、そして設定や試験調整といった作業は端末数では表せないので、「一式」として別の行に立てます。


- 弱電は「個」と「式」の2階建てで拾う。
- スピーカ・情報コンセント・カメラといった端末は「個」。
- 親機・アンプ・ラック、設定や試験調整は端末数で表せないので「一式」として別の行に立てる。
- 一式の中身は必ず別紙で内訳を作る。説明できない一式は、見積査定でまっさきに削られる。
実践 ― 1部屋を「4周」して拾う
部位ごとに単位が違うということは、部位ごとに拾う周回を分けるのが一番安全だということです。1つの部屋を4回まわる。遠回りに見えて、これが最短です。







| 周 | 拾う部位 | 単位 | 主に見る図面 | 終わったときの印 |
|---|---|---|---|---|
| 1周目 | 器具(照明・スイッチ・コンセント) | 個 | 平面図 | 数えた器具に色を塗る |
| 2周目 | 配線・配管 | m | 平面図+立上り/立下りの取り決め | ルートをなぞって線を引く |
| 3周目 | 盤・機器 | 面 | 盤結線図・盤リスト(平面図は置き場所のみ) | 盤番号を転記して消し込む |
| 4周目 | 弱電 | 個+式 | 平面図+系統図 | 端末数と一式行の両方を書く |
- 部位ごとに単位が違うのだから、部位ごとに周回を分ける。1つの部屋を4回まわる。
- 1回で全部やろうとすると、単位が切り替わるたびに直前まで数えていた数字が飛ぶ。これが数え漏れの正体。
- 4周に分ければ1周ごとに脳が1つの単位だけを扱う。中断されても「今は2周目の途中」で再開できる。
- 周回の順番は一度決めたら変えない。順番が記憶の代わりになる。
💼 実務でこう生きる
逆に、根拠を残していないと再度拾い直すことになり、しかも2回目の答えが1回目と合わないという最悪の事態が起きます。数量が変わった時点で、見積全体の信用が下がります。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
同じ理由で、「m」(全角)と「m」(半角)、「個」と「ヶ」の混在も事故のもとです。単位欄は自由入力にせず、リストから選ぶ形にするのが実務的な対策です。
難しいのはその先、系統図を見て「どの端末がどの親機につながっているか」を追う部分です。ここは先輩と一緒にやる領域なので、端末数を正確に出したうえで「系統は未確認です」と申し送るのが、新人として一番正しい振る舞いです。分からない部分を空欄で出すのではなく、分からないと書いて出すのが大事です。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
むしろ危ないのは、部屋ごとにシートを分けてしまうこと。シートが50枚になった時点で、全体の合計を出すのがものすごく大変になる。データは1枚のシートに縦に積む、集計は式でやる。これが拾い書の鉄則だよ。」
他社から支給された図面、PDFしかない改修図面、線として描いてあるだけの配線。実務ではこういう図面のほうが多い。それに、自動集計の結果が正しいかどうかを判断できるのは、手で拾ったことがある人だけだよ。桁が1つ違っていても、経験がないと気づけない。」
数量が多少ずれていても、根拠が残っていれば直せる。でも根拠のない正解は、次に直せない。だから僕は、拾い書を見るとき数字より先に根拠メモの欄を見るんだ。ここが埋まっている人は、必ず伸びる。」
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 単位を決めずに数え始める:配線を「本」で数えた瞬間に長さが消えます。数え始める前に単位欄を埋めてください。
- 添字をまとめてしまう:「コンセント20個」では単価が入りません。ET・LK・WPは別の行に立てます。
- 立上り・立下りを忘れる:平面図に映らない縦分は、意識して足さないと必ず抜けます。
- 盤を平面図だけで拾う:盤の中身は盤結線図・盤リストにあります。面数が合っていても中身がズレます。
- 弱電を「一式」だけで出す:内訳のない一式は査定で削られます。端末数は必ず個別に出しておきます。
- 部屋ごとにシートを分ける:後で全体集計ができなくなります。1枚のシートに室名列を付けて縦に積みます。
まとめ ― 今日の1枚
拾いとは「数える作業」ではなく、部位ごとに単位を決めてから数える作業です。単位が決まっていないから手が止まり、決めずに数えるから崩れます。今日の1枚は、部位・単位・落としやすい分の対応表です。
部位別・拾い方の早見表
| 部位 | 単位 | 何を1つと数えるか | 落としやすい分 | どこから拾うか |
|---|---|---|---|---|
| 器具 | 個 | 記号+添字が同じもの(ET・LK・WPは別品目) | 添字違いをまとめてしまった分 | 平面図 |
| 配線・配管 | m | ルートの長さ | 立上り・立下り・盤内余長の縦分 | 平面図+社内の標準値 |
| 盤・機器 | 面 | 盤1面(「台」と混ぜない) | 主開閉器容量・分岐回路数・予備の転記 | 盤結線図・盤リスト |
| 弱電 | 個+式 | 端末は個/親機・設定調整は一式 | 一式の内訳、系統のつながり | 平面図+系統図 |
まず単位を決める
- 拾いが崩れる原因は数え間違いではなく、単位を決めていないこと。
- 器具=個/配線・配管=m/盤・機器=面/弱電=端末は個・システムは式。
部位ごとの数え方
- 器具は「記号+添字」が同じものだけを1グループにする。数えたら色を塗る。
- 配線は平面の長さ+立上り・立下りの縦分。根拠メモに式の形で残す。
- 盤は面数より中身(主開閉器容量・分岐回路数・予備)の転記が本体。盤結線図から拾う。
- 弱電は端末(個)とシステム(式)の2階建て。一式には必ず内訳を付ける。
拾い方の実践
- 実践は1部屋を4周。周回の順番は部屋が変わっても固定する。
最後に ― 単位が決まれば、手は動き出す
図面を前にして固まるのは、能力の問題ではありません。「何を、何で数えるか」が決まっていないからです。器具は個、配線はm、盤は面、弱電は個と式。
この4つを口に出せる状態で図面を開けば、最初の1本の線からもう手は動きます。そして4周し終えたとき、手元に残るのは数字だけでなく、その数字の出どころも一緒に残っているはずです。
拾い出しの手順そのものは第21回「拾い出しのきほん」で解説しています。あわせて読むと、今回の「部位別」という考え方がより立体的に見えてくるはずです。
次回・積算編②は、「拾い書のつくり方 ― 様式・単位・根拠の3点セット」。今回何度も出てきた「根拠メモ」を、実際にどんな様式で残すのか。誰が見ても追える拾い書の形を、良い例・悪い例を並べて見ていきます。公開しました!
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