📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。第3部もいよいよ締めくくり。前回(第9回)分電盤の「木」を読めるようになったので、今回はその根っこの話——建物の負荷を電灯と動力の2つの“家系”に分ける考え方です。

実は、第8回で見た「キュービクルに変圧器が2台ある理由」も、盤の名前が「L-1」「P-1」になっている理由も、ぜんぶ今日の話でつながります。

ペンタ
先輩、盤リストを見てたら「L-1」と「P-1」って盤があるんですけど、このLとPって何の暗号ですか?
はりた
お、いいところに気づいた。L=Light(電灯)、P=Power(動力)。建物の電気は電灯系と動力系の2つの家系に分かれてるんだ。まずは対比で見てみよう。

電灯と動力 ― 2つの“家系”を対比で覚える

電灯回路と動力回路の対比模式図
【図1】電灯系と動力系。対象・電源・盤・変圧器がそれぞれ違う
ペンタ
照明もエアコンも同じ「電気」なのに、どうしてわざわざ2つに分けるんですか?
はりた
理由は第2回でやった単相と三相にある。三相はモーターを回すのが得意で、同じ容量なら電流も小さくて済む。だから空調やポンプみたいな“機械”は三相の動力系へ。一方、人が直接触れる照明やコンセントは、シンプルで安全な単相の電灯系へ。適材適所の役割分担なんだ。
ペンタ
あ、第8回の「変圧器が2台ある」って、電灯用と動力用だったんですね!
はりた
その通り!キュービクルの中で電灯用トランスと動力用トランスに分かれて、そこから電灯幹線と動力幹線が別々に建物中を走る。第7回の「電気の流れ1枚図」が、実は2本立てだったってことだね。

負荷分類ツリー ― 建物の電気をぜんぶ2つに振り分ける

設計の最初の仕事は、建物にある電気機器を洗い出して、この2つの家系にもれなく・正しく振り分けること。ツリーで見ると整理しやすくなります。

建物の負荷を電灯負荷と動力負荷に分類するツリー図
【図2】負荷分類ツリー。合言葉は「それ、モーターで動く?」
ペンタ
ルームエアコンは「小型機器」で電灯側なんですか?エアコンなのに動力じゃないんですね。
はりた
いいツッコミ!家庭用のルームエアコンは単相100Vや200Vだから電灯系。同じ“エアコン”でも、ビルのパッケージ空調は三相210Vだから動力系。名前じゃなくて電源の種類で決まるんだ。だから迷ったら仕様書の「電源」欄を見るのが正解。
ペンタ
もし振り分けを間違えたら、どうなるんですか…?
はりた
けっこう大ごとだよ。電灯負荷と動力負荷の合計は、それぞれ電灯変圧器・動力変圧器の容量に直結してる。分類ミス=変圧器・幹線・盤の容量がぜんぶ狂うということ。逆に言えば、正しく分類できた時点で設計の土台は完成に近いんだ。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:負荷表づくりが設計のスタート
新築テナントビルの設計。空調図・衛生図・厨房図から機器を拾い、電灯/動力に分けた負荷表を作ります。例:電灯系=照明15kW+コンセント20kW+小型機器5kW=40kW、動力系=空調30kW+ポンプ・ファン10kW+EV15kW=55kW。
→ この2つの数字が電灯トランス50kVA・動力トランス75kVAという容量選定の入力になります。第4部でやる負荷計算の入口です。
📋 実務活用事例:他業種図面のチェック
空調設備の機器表に「全熱交換器 単相100V」「パッケージ室外機 三相200V」と書いてあれば、前者は電灯盤、後者は動力盤から電源を取ります。機器表の電源欄→どちらの盤から送るかを判断できると、空調・衛生設計者との電源打合せが一人でこなせるようになります。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 「動力」って言葉、なんで「三相」って言わないの?
現場の慣習です。歴史的に「モーター(動力機械)を動かす電源=三相」だったため、三相200Vの系統をまとめて「動力」と呼ぶようになりました。電力会社の契約メニューにも「低圧電力(動力)」という名前が残っています。会話では「動力=三相200V」と変換すればOKです。
🐣 家のエアコン用の200Vコンセントも「動力」なの?
いいえ、あれは単相200Vなので電灯系です。単相3線(第2回)のL1-L2間を使うと200Vが取れます。「200V=動力」ではなく「三相=動力」。ここを混同すると打合せで話が食い違うので要注意です。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「電灯と動力、どっちの負荷が大きいんですか?」と聞いてみた
はりた「建物用途で全然違う。オフィスは空調が大きいから動力がやや優勢、住宅はほぼ電灯だけ、工場は圧倒的に動力。用途を聞いた瞬間に負荷の比率がイメージできるようになると、概算見積が速くなるよ」
🔎 「動力にコンセントってないんですか?」と聞いてみた
はりた「あるよ、三相200Vの動力コンセント。工場やイベント会場で使う、丸くて大きいやつ。ただし一般の人が触る場所には置かないのが原則。差し間違いや感電のリスクがあるからね」
🔎 「電灯と動力で電線の色とか違うんですか?」と聞いてみた
はりた「配線自体は同じケーブルでも、図面では系統が別々に描かれる。幹線系統図を見ると電灯幹線(L系)と動力幹線(P系)が別ルートで並走してるのが分かるよ。次の第4部で幹線サイズの計算をやると、2本立ての意味がもっと腹落ちする」

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 機器名で判断しない:「エアコン=動力」ではありません。必ず仕様書・機器表の電源欄(単相か三相か)で確認。
  • 単相200Vを動力と呼ばない:動力=三相。打合せの言葉の行き違いは事故のもと。
  • 将来の動力負荷を聞き漏らさない:あとから厨房やEVが増えると動力変圧器から見直しに。用途変更の可能性は最初にヒアリング。

まとめ ― 今日の1枚

  • 建物の電気は電灯系(L・単相)と動力系(P・三相)の2家系。盤も幹線も変圧器も2本立て。
  • 振り分けの合言葉は「それ、モーターで動く?」「三相200Vが要る?」。決め手は機器の電源欄。
  • ルームエアコンは単相→電灯系、パッケージ空調は三相→動力系。名前でなく電源で判断。
  • 負荷の分類は、変圧器容量・幹線サイズ・盤構成すべての入力データ。設計は分類から始まる

これで第3部「建物に電気が届くまで」完結! 引込→受変電→幹線→分電盤→末端の流れと、電灯・動力の2系統が頭に入りました。次回からは第4部「設計計算の基礎」。第11回は、分類した負荷から容量を決める最初の計算——需要率・負荷率を扱います。いよいよ“手を動かす”設計です。お楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
📖次に読むならこれ【新人講座 施工実務編⑧】竣工前の試験・測定 ― 送電は「合格」してから新人教育