【新人講座 第10回】電灯と動力のちがい ― 建物の電気は「L」と「P」の2つの家系

こんにちは、HARITAの設計室です。第3部もいよいよ締めくくり。前回(第9回)で分電盤の「木」を読めるようになったので、今回はその根っこの話——建物の負荷を電灯と動力の2つの“家系”に分ける考え方です。
実は、第8回で見た「キュービクルに変圧器が2台ある理由」も、盤の名前が「L-1」「P-1」になっている理由も、ぜんぶ今日の話でつながります。


ペン太
ハリタこの3つ、すぐ答えられますか
- 盤の名前にある「L」と「P」は、それぞれ何の頭文字でしょうか。
- エアコンは電灯系でしょうか、動力系でしょうか。
- 家庭の200Vコンセントは「動力」と呼んでよいでしょうか。
- 2つの家系の対比 ― 対象・電源・盤・変圧器
- 負荷分類ツリー ― もれなく正しく振り分ける
- 実務での使いどころ ― 負荷表づくりと他業種図面
- 素朴なギモン ― なぜ「動力」と呼ぶのか、家の200V
- 深掘りQ&A ― 用途別の比率、動力コンセント、幹線
- 注意ポイント ― 機器名で判断しない、将来の負荷
電灯と動力 ― 2つの“家系”を対比で覚える





ペン太
ハリタ| 比べるところ | 電灯系(L) | 動力系(P) |
|---|---|---|
| 主な対象 | 照明、コンセント、小型機器 | 空調、ポンプ、ファン、昇降機 |
| 電源の種類 | 単相 | 三相 |
| 盤の呼び名 | L-1のようにLが付く | P-1のようにPが付く |
| 変圧器 | 電灯用トランス | 動力用トランス |
- LはLight(電灯)、PはPower(動力)。建物の電気は2つの家系に分かれている。
- 三相はモーターを回すのが得意で、同じ容量なら電流も小さくて済む。だから空調やポンプなどの機械は動力系へ。
- 人が直接触れる照明やコンセントは、シンプルで安全な単相の電灯系へ。適材適所の役割分担。
- キュービクルの中で電灯用トランスと動力用トランスに分かれ、そこから電灯幹線と動力幹線が別々に走る。
負荷分類ツリー ― 建物の電気をぜんぶ2つに振り分ける
設計の最初の仕事は、建物にある電気機器を洗い出して、この2つの家系にもれなく・正しく振り分けること。ツリーで見ると整理しやすくなります。





| 機器の例 | 電源 | どちらの家系か |
|---|---|---|
| ルームエアコン | 単相100V/200V | 電灯系 |
| パッケージ空調の室外機 | 三相200V | 動力系 |
| 全熱交換器 | 単相100V | 電灯系 |
| ポンプ・ファン | 三相200V | 動力系 |
- 設計の最初の仕事は、建物の電気機器を洗い出して2つの家系にもれなく正しく振り分けること。
- 家庭用のルームエアコンは単相100Vや200Vなので電灯系。ビルのパッケージ空調は三相210Vなので動力系。
- 名前ではなく電源の種類で決まる。迷ったら仕様書の「電源」欄を見る。
- 電灯負荷と動力負荷の合計は、それぞれの変圧器容量に直結する。分類ミスは変圧器・幹線・盤の容量をすべて狂わせる。
💼 実務でこう生きる
- 空調図・衛生図・厨房図から機器を拾い、電灯/動力に分けた負荷表を作るところから設計が始まる。
- 電灯系と動力系それぞれの合計が、変圧器の容量選定の入力になる。
- 機器表に「単相100V」とあれば電灯盤から、「三相200V」とあれば動力盤から電源を取る。
- 機器表の電源欄からどちらの盤で送るか判断できると、空調・衛生設計者との電源打合せを一人でこなせる。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
- 「動力」は現場の慣習的な呼び名。歴史的にモーターを動かす電源が三相だったため、三相200Vの系統をまとめて動力と呼ぶようになった。
- 電力会社の契約メニューにも「低圧電力(動力)」という名前が残っている。会話では動力=三相200Vと変換すればよい。
- 家のエアコン用200Vコンセントは単相200Vなので電灯系。単相3線のL1-L2間を使うと200Vが取れる。
- 「200V=動力」ではなく「三相=動力」。ここを混同すると打合せで話が食い違う。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
- 負荷の比率は建物用途で全然違う。オフィスは空調が大きいので動力がやや優勢、住宅はほぼ電灯だけ、工場は圧倒的に動力。
- 用途を聞いた瞬間に比率がイメージできると、概算見積が速くなる。
- 三相200Vの動力コンセントもあるが、一般の人が触る場所には置かないのが原則。
- 配線自体は同じケーブルでも、図面では電灯幹線と動力幹線が別ルートで並走して描かれる。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 機器名で判断しない:「エアコン=動力」ではありません。必ず仕様書・機器表の電源欄(単相か三相か)で確認。
- 単相200Vを動力と呼ばない:動力=三相。打合せの言葉の行き違いは事故のもと。
- 将来の動力負荷を聞き漏らさない:あとから厨房やEVが増えると動力変圧器から見直しに。用途変更の可能性は最初にヒアリング。
ペン太
ハリタ- 機器名で判断しない。「エアコン=動力」ではなく、必ず仕様書・機器表の電源欄で確認する。
- 単相200Vを動力と呼ばない。動力は三相で、打合せの言葉の行き違いは事故のもと。
- 将来の動力負荷を聞き漏らさない。あとから厨房やEVが増えると動力変圧器から見直しになる。
まとめ ― 今日の1枚
建物の電気を2つに分ける作業は、地味に見えてすべての計算の入口です。ここが決まらないと、容量もサイズも決まりません。
| 分類が効いてくる先 | 決まること | 間違えたときの影響 |
|---|---|---|
| 変圧器 | 電灯用・動力用それぞれの容量 | 容量が不足または過大になる |
| 幹線 | 電灯幹線・動力幹線のサイズ | 太さの検討がやり直しになる |
| 盤 | 盤の構成と回路の割り付け | 盤の面数や主幹が変わる |
| 打合せ | 他業種への電源の答え方 | どの盤から送るかの合意が崩れる |
2つの家系
- 建物の電気は電灯系(L・単相)と動力系(P・三相)の2家系。盤も幹線も変圧器も2本立て。
- 振り分けの合言葉は「それ、モーターで動く?」「三相200Vが要る?」。決め手は機器の電源欄。
判断の決め手
- ルームエアコンは単相→電灯系、パッケージ空調は三相→動力系。名前でなく電源で判断。
- 家の200Vコンセントは単相200Vなので電灯系。「200V=動力」ではなく「三相=動力」。
分類から始まる
- 負荷の分類は、変圧器容量・幹線サイズ・盤構成すべての入力データ。設計は分類から始まる。
- 将来の厨房やEVなど、あとから増える動力負荷は最初にヒアリングしておく。
盤の名前にあるLとPは、建物の電気の設計図そのものを表しています。この2文字が読めた時点で、幹線系統図の見え方が変わります。
これで第3部「建物に電気が届くまで」完結! 引込→受変電→幹線→分電盤→末端の流れと、電灯・動力の2系統が頭に入りました。次回からは第4部「設計計算の基礎」。第11回は、分類した負荷から容量を決める最初の計算——需要率・負荷率を扱います。いよいよ“手を動かす”設計です。お楽しみに!
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