建築消防|漏電火災警報器の設置基準|契約電流50A超と鉄網入りの壁、1級・2級は廃止済み
漏電火災警報器は、電気設備設計者が担当する消防用設備等のなかで、もっとも「調べ直したほうがいい」設備です。理由は2つあります。
1つは、1級・2級の区分が平成25年に廃止されているのに、いまも級別を前提にした解説が流通していること。もう1つは、実務で当たり前のように使われている電源の専用回路・15Aヒューズ・検出漏洩電流100〜400mAといった数値が、消防法施行令にも施行規則にも書かれていないことです。
この記事では、令第22条・規則第24条の3・漏電火災警報器に係る技術上の規格を定める省令にあたって、条文にある基準と各消防本部の運用基準を分けて整理します。
まず柱書。「準不燃材料以外の下地」+「鉄網入り」が入口
令第22条第1項は、いきなり用途と面積の話から始まりません。柱書で構造要件を先に置いています。
消防法施行令第22条第1項 柱書
漏電火災警報器は、次に掲げる防火対象物で、間柱若しくは下地を準不燃材料(建築基準法施行令第一条第五号に規定する準不燃材料をいう。以下この項において同じ。)以外の材料で造つた鉄網入りの壁、根太若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの床又は天井野縁若しくは下地を準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入りの天井を有するものに設置するものとする。
読み落としやすいのが3点あります。
1つめ。「不燃材料」ではなく「準不燃材料」です。しかも定義を建築基準法施行令第1条第5号から直接引いています。2つめ。壁・床・天井それぞれに「間柱若しくは下地」「根太若しくは下地」「天井野縁若しくは下地」と書き分けられています。3つめ。この柱書にただし書はありません。
要するに「燃える下地の上に金網が張ってある」建物が対象です。屋内配線の被覆が傷んで漏電すると、電流がメタルラスに流れ、金網の重ね継ぎ部の接触不良でスパークし、木下地に着火する——これが漏電火災警報器の想定する火災です。
逆に、下地が軽量鉄骨など準不燃材料以上であれば、鉄網が入っていても対象外です。ここは意匠図の仕様表で確認するところで、電気の図面だけを見ていても判断できません。
ラスモルタルは防火構造の定番だから、当たりやすい
木造の外壁を防火構造にする方法として、鉄網モルタルは平成12年建設省告示第1359号に明記されています(屋外側の防火被覆として塗厚さ15mm以上、仕様によっては20mm以上の鉄網モルタル)。建築側の要求で防火構造にした結果、消防側の令第22条にも該当する——この連鎖が起きやすい構造になっています。
なお令第22条には「主要構造部」という語が一度も出てきません。そのため令和6年4月1日施行の「主要構造部→特定主要構造部」改正の影響を受けません(改正対象は令第8条・第11条第2項・第21条第2項・第25条第1項ほか。消防予第2号)。
用途と面積、そして契約電流容量50A超
柱書の構造要件を満たしたうえで、第1号から第7号のいずれかに当たれば設置義務が生じます。
第7号は「用途・面積によらず、電気の容量で決まる」
設計実務でいちばん効くのが第7号です。第1号から第6号までに当たらなくても、(一)項から(六)項まで、(十五)項、(十六)項の建築物で契約電流容量が50Aを超えれば対象になります。(十五)項(事務所等)が入っているので、ラスモルタル造の小規模テナントビルはここで拾われます。
令第22条第1項第7号
前各号に掲げるもののほか、別表第一(一)項から(六)項まで、(十五)項及び(十六)項に掲げる建築物で、契約電流容量(同一建築物で契約種別の異なる電気が供給されているものにあつては、そのうちの最大契約電流容量)が五十アンペアを超えるもの
かっこ書きが重要です。契約種別が異なる複数契約があるときは、合算ではなく「そのうちの最大」で判定します。従量電灯と低圧電力が別契約で入っている建物でも、それぞれの最大値が50Aを超えるかどうかを見ます。
一方、同一契約種別で複数契約がある場合の扱いは条文に書かれていません。合計値とする運用、同一敷地内に複数棟あるときに需要係数を乗じる算定式など、各消防本部の審査基準で扱いが分かれます。所轄に確認すべきポイントです。
規則第24条の3は全5号しかない
技術上の基準は令第22条第2項にありますが、条文はたった一文です。
令第22条第2項(全文)
前項の漏電火災警報器は、建築物の屋内電気配線に係る火災を有効に感知することができるように設置するものとする。
号立てはなく、具体的な内容はすべて規則第24条の3に委任されています。そしてその規則も全5号だけです。
条文が定めているのはこの5つ
消防法施行規則第24条の3
一 変流器は、警戒電路の定格電流以上の電流値(B種接地線に設けるものにあつては、当該接地線に流れることが予想される電流以上の電流値)を有するものを設けること。
二 変流器は、建築物に電気を供給する屋外の電路(建築構造上屋外の電路に設けることが困難な場合にあつては、電路の引込口に近接した屋内の電路)又はB種接地線で、当該変流器の点検が容易な位置に堅固に取り付けること。
三 音響装置は、次のイ及びロに定めるところにより設けること。
イ 音響装置は、防災センター等に設けること。
ロ 音響装置の音圧及び音色は、他の警報音又は騒音と明らかに区別して聞き取ることができること。
四 検出漏洩電流設定値は、誤報が生じないように当該建築物の警戒電路の状態に応ずる適正な値とすること。
五 可燃性蒸気、可燃性粉じん等が滞留するおそれのある場所に漏電火災警報器を設ける場合にあつては、その作動と連動して電流の遮断を行う装置をこれらの場所以外の安全な場所に設けること。
変流器の設置位置は「屋外の電路」が原則で、構造上困難な場合に限って引込口に近接した屋内、あるいはB種接地線という順です。B種接地線に設ける場合は、警戒電路の定格電流ではなくその接地線に流れることが予想される電流で電流値を選びます。
音響装置の設置場所は防災センター等と明記されています。→ 建築消防|防災センターと中央管理室|設置義務と兼用の可否
条文に「書かれていない」ものを把握しておく
実務で当然のように出てくる次の内容は、令にも規則にも存在しません。条文を検索しても該当する語句が一つも出てこないことを確認しています。
・受信機の設置場所(屋内の点検が容易な位置)
・電源は電流制限器の一次側から専用回路として分岐すること
・開閉器に漏電火災警報器用である旨を赤色で表示すること
・15A以下のヒューズ付き開閉器、又は20A以下の配線用遮断器
・検出漏洩電流設定値100〜400mA(B種接地線は400〜800mA)
これらは各消防本部の審査基準(行政の運用基準)に書かれているものです。さいたま市や船橋市の審査基準に同旨の記載があります。数値まで含めてほぼ全国共通ですが、法令ではないので所轄によって差が出ることがあります。「条文の義務なのか、所轄の指導なのか」を区別しておくと、協議での話が早くなります。
1級・2級はもう存在しない
漏電火災警報器の解説でいちばん多い誤りが、いまも級別を現行制度として説明していることです。
消防予第120号・消防危第46号(平成25年3月27日)
【規格省令関係】非互換性型の変流器及び受信機並びに2級受信機を廃止し、関係規定を削除した。遮断機構の定義及び関係規定を削除した。
【施行規則関係】現在、2級の漏電火災警報器については存在しないことから、1級と2級の区分について見直しを行う等の漏電火災警報器の実態を踏まえた規定の整備を行った。
旧制度では「警戒電路の定格電流が60Aを超える場合は1級、60A以下なら1級または2級」「警戒電路が分岐していてそれぞれの分岐回路が60A以下なら2級でよい」と整理されていました。現在この区分はありません。
現行の規則第24条の3第1号は「変流器は、警戒電路の定格電流以上の電流値を有するものを設けること」という書き方に置き換わっています。級を選ぶのではなく、変流器の定格を警戒電路の定格電流以上にする——それだけです。規格省令第3条の変流器の種別も屋外型と屋内型の2つで、級別ではありません。
現行の規格省令が定める数値
現行の規格は「漏電火災警報器に係る技術上の規格を定める省令」(平成25年総務省令第24号)です。旧省令を全部改正したもので、2020年以降の改正はありません。
規格省令の主要な数値
第2条第1号(定義) 漏電火災警報器 電圧600ボルト以下の警戒電路の漏洩電流を検出し、防火対象物の関係者に報知する設備であつて、変流器及び受信機で構成されたもの
第7条 公称作動電流値は200ミリアンペア以下でなければならない。感度調整装置を有するものは、その調整範囲の最小値について適用する。
第8条 感度調整装置を有するものの調整範囲の最大値は1アンペア以下でなければならない。
第5条第1項第1号ロ 定格電圧における音圧は、無響室で定位置に取り付けられた音響装置の中心から1メートル離れた点で70デシベル以上であること。
よく「公称作動電流値は100mAまたは200mA」と説明されますが、法令が定めているのは「200mA以下」という上限だけです。100mAは製品の設定値であって、法令上の区分ではありません。
また集合型受信機は第2条第4号で「二以上の変流器と組み合わせて使用する受信機で、一組の電源装置、音響装置等で構成されたもの」と定義されています。変流器を複数点設ける建物では、この集合型を使うことになります。
漏電遮断器(ELB)とはまったく別の設備
電気設備設計者がいちばん質問を受けるのが「漏電遮断器を付けているのに、なぜ漏電火災警報器も要るのか」です。
漏電火災警報器は遮断しない
規格省令第2条第1号の定義が決定的です。「漏洩電流を検出し、防火対象物の関係者に報知する設備であつて、変流器及び受信機で構成されたもの」——遮断機能は定義に含まれていませんし、構成要素にも入っていません。平成25年改正で旧規格省令の「遮断機構」の定義と関係規定が削除されたことも、この位置づけを裏づけます。
遮断が要求されるのは規則第24条の3第5号の場面だけです。可燃性蒸気・可燃性粉じん等が滞留するおそれのある場所では、警報器の作動と連動する遮断装置をその場所以外の安全な場所に設けます。遮断装置自体を危険場所に置かない、という趣旨の規定です。
目的も所管も違う
漏電遮断器の根拠は電気設備に関する技術基準を定める省令第15条です。
電気設備に関する技術基準を定める省令 第15条
電路には、地絡が生じた場合に、電線若しくは電気機械器具の損傷、感電又は火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。ただし、電気機械器具を乾燥した場所に施設する等地絡による危険のおそれがない場合は、この限りでない。
これを具体化するのが電気設備の技術基準の解釈第36条で、使用電圧60Vを超える金属製外箱を有する低圧機械器具への地絡遮断装置の施設義務と、乾燥した場所・対地電圧150V以下かつ水気のない場所・二重絶縁構造などの適用除外が並びます。目的は感電防止と電線・機器の焼損防止です。
対して令第22条は、メタルラスへの漏電による建物火災の早期覚知が目的です。守ろうとしている対象が違うので、互いの代わりになりません。
ELBがあっても免除規定はない
令第22条にはただし書がなく、規則第24条の3にも漏電遮断器を設けた場合の適用除外はありません。したがってELBを設置しても、消防法上の漏電火災警報器の設置義務は免除されません。
緩和の経路は令第32条(基準の特例)だけです。
消防法施行令第32条
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
ただしこれは個別に消防長・消防署長の認定を要する一般的な特例規定で、「ELBがあるから」という理由で自動的に適用されるものではありません。
点検は総合点検もある。資格は乙種第7類だけ
漏電火災警報器の点検は機器点検6月+総合点検1年です(平成16年消防庁告示第9号)。誘導灯や消火器のように「機器点検だけ」ではありません。
消防庁の点検要領「第12 漏電火災警報器」も「1 機器点検」「2 総合点検」の両方で構成されています。総合点検の項目は作動範囲、漏電表示灯、音響装置の音圧、電流遮断装置の遮断の確実性。作動試験を伴うので、テナントが入った後の実施には調整が要ります。→ 建築消防|消防用設備等の点検・報告|機器点検6か月・総合点検1年の実務
甲種第7類は存在しない
消防設備士の区分は規則第33条の3で定められています。甲種は特類と第1類から第5類まで、乙種は第1類から第7類まで。つまり漏電火災警報器は乙種第7類のみで、甲種第7類という免状は存在しません。
第6類(消火器)と第7類(漏電火災警報器)は、乙種しかない2つの類です。工事の着工届が甲種消防設備士による届出であることとの関係も含めて整理しておくと混乱しません。→ 建築消防|誘導灯・誘導標識の設置基準|A/B/C級の有効範囲と免除・非常電源60分
解説書で確認しておきたい点
確認ポイント
①1級・2級の区分 平成25年3月の規格省令・施行規則改正で廃止されています(消防予第120号)。「定格電流60A超は1級」という記述は旧規定です。現行は「変流器は警戒電路の定格電流以上の電流値を有するもの」(規則第24条の3第1号)。
②準不燃材料 柱書は「不燃材料」ではなく「準不燃材料以外の材料で造つた鉄網入り」です。定義は建築基準法施行令第1条第5号。
③設置対象 用途×面積の7つの号(とくに第7号の契約電流容量50A超)に触れていない解説書があります。設計の入口はここです。
④契約電流容量 契約種別が異なる複数契約は合算ではなく最大値で判定します(第7号かっこ書き)。
⑤電源・受信機・検出漏洩電流の数値 専用回路、15Aヒューズ/20A配線用遮断器、赤色表示、100〜400mAは法令ではなく各消防本部の審査基準です。条文には一語も出てきません。
⑥公称作動電流値 法令が定めるのは「200mA以下」という上限のみ(規格省令第7条)。100mAは製品設定であって法令上の区分ではありません。
⑦遮断機能 漏電火災警報器は報知するだけで遮断しません。遮断が要求されるのは規則第24条の3第5号(可燃性蒸気等が滞留するおそれのある場所)だけです。
⑧点検 機器点検6月に加えて総合点検1年があります。
まとめ
漏電火災警報器の判定は、①柱書の構造要件(準不燃材料以外の下地+鉄網)に当たるかを意匠の仕様表で確認 → ②令第22条第1項の各号(用途×面積、または契約電流容量50A超)に当たるかを確認 → ③規則第24条の3の5号で変流器の位置と音響装置を決める → ④所轄の審査基準で電源・受信機・設定値を詰める、という順序です。
④が法令ではないことを知っているかどうかで、協議の進め方が変わります。そして級別はもう選ばない——ここだけは、古い資料を見ながら設計しないよう注意してください。
参考にした条文・告示・通知
- 消防法施行令 第22条(漏電火災警報器に関する基準)、第32条(基準の特例)
- 消防法施行規則 第24条の3(漏電火災警報器に関する基準の細目)、第33条の3(消防設備士免状の種類)
- 漏電火災警報器に係る技術上の規格を定める省令(平成25年 総務省令第24号)
- 消防予第120号・消防危第46号(平成25年3月27日)
- 消防予第2号(令和6年1月17日)消防法施行令の一部を改正する政令の公布について
- 消防用設備等の点検要領 第12 漏電火災警報器、点検の期間(平成16年 消防庁告示第9号)
- 電気設備に関する技術基準を定める省令 第15条、電気設備の技術基準の解釈 第36条
- 防火構造の構造方法を定める件(平成12年 建設省告示第1359号)
- 建築基準法施行令 第1条第5号(準不燃材料)
漏電火災警報器は条文が短い設備です。短いぶん、実務の細部は運用基準が埋めています。どこまでが条文でどこからが所轄の指導かを分けて持っておくと、判断に迷いません。




