技術図書館内部雷保護はゾーンの境界でつなぐ雷保護ゾーン(LPZ)、引込口の等電位ボンディング、SPDのクラスⅠ・Ⅱ・Ⅲと施工この資料をスライドで見る資料一覧を見る

避雷設備(外部雷保護)で雷を受けて地面に流しても、それで建物の中が安全になるわけではありません。雷電流の一部は、電源線・通信線・金属管を通って建物の中に入ってきます。それを止めるのが内部雷保護です。この記事では、雷保護ゾーン(LPZ)の考え方、引込口の等電位ボンディング、SPDのクラスと選び方、施工のポイントを整理します。

結論

内部雷保護は等電位ボンディングとSPDで、建物の中に危険な電位差をつくらないこと。雷保護ゾーンの境界ごとに、金属管は直接、電線はSPDを通してボンディングします。

  • 外部雷保護は「受けて流す」、内部雷保護は「中に電位差をつくらない」
  • 引込口(LPZ0→1)にはクラスⅠ試験SPD、分電盤にクラスⅡ、機器のそばにクラスⅢ
  • 入ってくる金属は引込口の主ボンディング用バーに集める
  • SPDの接続線は合計0.5m以下。分離器と電圧防護レベル Up も確認
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
建物の外側をLPZ 0A・0B、建物の中をLPZ 1、さらに内側の部屋をLPZ 2とし、引込口にクラスⅠ、分電盤にクラスⅡ、機器のそばにクラスⅢのSPDを置いた図
雷保護ゾーン(LPZ)の考え方。ゾーンの境界を電線が通るところに、SPDを段階的に置きます。
この記事で読めるようになる用語:等電位ボンディング SPD 受雷部 引下げ導線

外部と内部 ― 「受けて流す」と「電位差をつくらない」

雷保護システム(LPS)は、外部雷保護内部雷保護の2つでできています。

外部雷保護 内部雷保護
目的 雷を受けて、安全に地面へ流す 建物の中に危険な電位差や火花放電をつくらない
主な要素 受雷部・引下げ導線・接地極 等電位ボンディング・SPD・離隔距離
守るもの 建物(火災・破損) 人(感電)、電気・電子機器(故障)
規格 JIS Z 9290-3 JIS Z 9290-3(ボンディング・離隔)、JIS Z 9290-4(電気・電子システム)
JIS Z 9290-3・JIS Z 9290-4 をもとに作成

雷電流が引下げ導線と接地極を流れると、接地極の電位は一時的に大きく上がります。このとき、建物に入ってくる電源線や通信線は遠くの大地の電位のままなので、両者の間に大きな電位差が生まれます。これが機器の故障や、配線と金属部の間の火花放電の原因です。内部雷保護は、この電位差をつながりで消す考え方です。

たとえるなら、大雨で川の水位が一気に上がり、つながった用水路を通って水が家の中へ逆流してくるようなものです。SPDは、その入口に付けた逆流防止の弁にあたります。

雷が受雷部に落ちて接地の電位が上がり、電源線を通ってサージが建物に入り、分電盤のSPDで大地へ逃がされる流れを示した動く図解
動く図解:雷電流が流れると接地の電位が上がり、電線との電位差でサージが入ってきます。
ここまでのポイント
  • 外部雷保護は受けて流す。内部雷保護は電位差をつくらない
  • 雷電流が流れると接地の電位が上がり、引込線との間に電位差ができる
  • この電位差を、ボンディングとSPDで消す

雷保護ゾーン(LPZ)― 境界で守りを一段ずつ

JIS Z 9290-4 では、雷の影響の大きさで建物の内外を雷保護ゾーン(LPZ)に分けます。

ゾーン 状態 主な場所
LPZ 0A 直撃雷・全雷電流・全雷電磁界にさらされる 受雷部の保護範囲の外
LPZ 0B 直撃は受けないが、雷電流の一部と強い電磁界にさらされる 受雷部の保護範囲の中(屋外)
LPZ 1 雷電流は制限され、電磁界も弱まる 建物の中
LPZ 2 さらに誘導電流・電磁界が弱まる シールドされた部屋・盤の中
JIS Z 9290-4 の雷保護ゾーンの定義をもとに作成

考え方はシンプルで、ゾーンの境界を通るものは、境界でボンディングすることです。金属管やケーブルのシールドは直接つなぎ、電線(充電部)はSPDを通してつなぎます。外側の境界ほど大きな雷電流が来るので、強いSPDを置きます。

ここまでのポイント
  • LPZ 0A → 0B → 1 → 2 と、内側ほど雷の影響が小さい
  • ゾーンの境界を通る金属と電線は、境界でボンディング
  • 外側の境界ほど強いSPDを置く


引込口の等電位ボンディング ― 入ってくる金属を1か所に

建物の引込口で、電力と通信はSPDを通して、水道管とガス管は直接、主ボンディング用バーに接続し、接地極へつなぐ図
引込口では、入ってくる金属をすべて主ボンディング用バーに集めます。電線はSPDを通してつなぎます。

内部雷保護でいちばん大事なのが、引込口(LPZ 0 と LPZ 1 の境界)での等電位ボンディングです。建物に入ってくる金属を、できるだけ地面に近い1か所で、主ボンディング用バーにつなぎます。

  • 金属管(水道管・ガス管・金属製の配管):直接ボンディング。ガス管の絶縁継手は、分離用スパークギャップで橋絡するなど、事業者と協議します
  • 電源線:SPDを通してボンディング(クラスⅠ試験)
  • 通信線:ケーブルのシールドは直接、心線はSPDを通してボンディング
  • 建物の鉄骨・鉄筋、引下げ導線、接地極:主ボンディング用バーにつなぐ

引込口を1か所にまとめると、ボンディングの経路が短くなり、効果が上がります。電源と通信の引込位置が離れている建物では、それぞれの引込口でボンディングし、接地極どうしをつないでおきます。等電位ボンディングの基本は「【接地・雷保護の設計マニュアル④】等電位ボンディング ― つながっていれば、差は生まれない」でも解説しています。

ここまでのポイント
  • 引込口で、入ってくる金属を主ボンディング用バーに集める
  • 金属管は直接、電線はSPDを通して
  • 引込口はできるだけ1か所にまとめる

SPDの選び方 ― クラス・耐量・電圧防護レベル

SPDのクラスⅠ試験・クラスⅡ試験・クラスⅢ試験の試験波形、主な性能値、役割、設置場所を比べた図
SPDの3つのクラス。上流から段階的に置いて、エネルギーを分担させます。

SPD(サージ防護デバイス)は、JIS C 5381-11 の試験方法でクラスⅠ・Ⅱ・Ⅲに分かれます。選ぶときに見るのは、次の3つです。

見るところ 内容
クラス 避雷設備のある建物の引込口はクラスⅠ試験(直撃雷の分流を流せる)。分電盤はクラスⅡ、機器のそばはクラスⅢ
耐量 クラスⅠはインパルス電流 Iimp(10/350μs)、クラスⅡは公称放電電流 In(8/20μs)。雷保護レベルと引込の条件から決める。Iimp を計算できない場合、12.5kA がよく使われる目安
電圧防護レベル Up SPDが動作したときに残る電圧。守る機器が耐えられる電圧(インパルス耐電圧)より十分低くする
JIS C 5381-11・JIS Z 9290-4 などをもとに作成

クラスⅠだけでは Up が高く、機器まで守りきれないことがあります。そこで、上流から Ⅰ → Ⅱ → Ⅲ と段階的に置き、エネルギーを分担させます(協調)。組み合わせと必要な距離はメーカーの資料で確認します。クラスⅠとⅡの両方の試験に合格した製品もあります。

⚠️ 屋上機器をボンディングしたら

屋上の機器を受雷部にボンディングした場合、その機器の電源線・信号線にも雷電流の一部が流れます。建物に入るところのSPDは、クラスⅠ試験のものを選びます。詳しくは「屋上の機器と避雷設備|室外機・太陽光・アンテナ・キュービクルを守る保護範囲・離隔距離・ボンディング」で整理しています。

ここまでのポイント
  • 引込口はクラスⅠ、分電盤はクラスⅡ、機器のそばはクラスⅢ
  • 耐量は雷保護レベルと引込の条件で決める。Iimp 12.5kA は目安
  • Up は機器の耐電圧より十分低く。段階的に置いて協調させる


SPDの施工 ― 付けただけでは効かない

分電盤の中のSPDの接続線a・bを短くすること、分離器(ブレーカ)、電圧防護レベルUpの3つの施工のポイントを示した図
SPDは、接続線の長さと分離器、Up の選び方で効き目が変わります。
  • 接続線は短く:SPDの電源側 a と接地側 b の長さは、合計0.5m以下が目安です。長いと、接続線に生じる電圧が Up に上乗せされます。できるだけ太く、まっすぐに配線します
  • 分離器(ブレーカ・ヒューズ:SPDが寿命や故障で短絡したとき、回路から切り離すためのものです。メーカーが指定する定格のものを使います
  • 接地側は主ボンディング用バーへ:SPDの接地線は、引込口のボンディング用バーに最短でつなぎます
  • 劣化の確認:SPDは雷を受けるたびに劣化します。表示窓や警報接点で状態が分かる製品を選び、定期点検で確認します
ペン太ペン太
SPDって、盤に付けておけば安心なんですよね?
ハリタハリタ
付け方しだいです。接続線が1mもあると、せっかくの Up が意味をなさなくなることもある。盤の設計の段階で、SPDを引込の近くに、接地バーのすぐそばに置けるよう配置を決めておくのがコツです。
ここまでのポイント
  • 接続線 a+b は合計0.5m以下が目安
  • 分離器はメーカー指定。接地は主ボンディング用バーへ最短で
  • 劣化が分かる製品を選び、点検で確認

よくある質問

内部雷保護とは何ですか?

建物の中の人と電気・電子機器を、雷によるサージや火花放電から守る対策です。受雷部・引下げ導線・接地極でつくる外部雷保護が「雷を受けて地面へ流す」のに対し、内部雷保護は等電位ボンディング、SPD(サージ防護デバイス)、離隔距離の確保で「建物の中に危険な電位差をつくらない」ことを目的にしています。

雷保護ゾーン(LPZ)とは何ですか?

雷の影響の大きさで建物の内外を区切った区域です。直撃雷を受ける LPZ 0A、直撃は受けないが雷電流の一部や強い電磁界を受ける LPZ 0B、建物の中の LPZ 1、さらに内側の LPZ 2 のように分けます。ゾーンの境界を通る電線や金属管は、境界でボンディングし、電線にはSPDを付けます。

SPDのクラスⅠ・Ⅱ・Ⅲの違いは何ですか?

試験の方法と、流せる雷の大きさが違います。クラスⅠ試験は 10/350μs の波形で試験し、直撃雷の分流を流せるため、外部雷保護のある建物の引込口に使います。クラスⅡ試験は 8/20μs の波形で、分電盤で誘導雷サージを抑えます。クラスⅢ試験は機器のそばで、残ったサージから機器を守ります。

避雷設備のある建物では、引込口にどのSPDが必要ですか?

外部雷保護(避雷設備)がある建物では、雷電流の一部が電源線や通信線に流れるため、引込口にクラスⅠ試験のSPDを付けるのが基本です。必要な耐量(インパルス電流 Iimp)は雷保護レベルと引込の条件で決まり、計算できない場合の目安として 12.5kA がよく使われます。

SPDの接続線はなぜ短くするのですか?

SPDが動作したとき、接続線のインダクタンスによる電圧が、SPDの電圧防護レベル Up に上乗せされて機器にかかるからです。SPDの両側の接続線は、合計0.5m以下にするのが目安です。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?

タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。

次に読むならこれ工作物の避雷設備|煙突・鉄塔・広告塔・高架水槽など金属の工作物の考え方接地設備の設計
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。