建築消防|住宅用火災警報器と特定小規模施設用自動火災報知設備|令和6年7月の緩和と条例で決まる範囲
住宅用火災警報器と特定小規模施設用自動火災報知設備は、どちらも「小規模だから簡易でよい」という発想の設備です。ところが根拠法令の位置が独特で、数値が消防法施行規則に載っていない、最終的な義務は市町村条例で決まるという、他の消防用設備等とは違う読み方が要ります。
さらに特定小規模施設用自動火災報知設備は、令和6年7月23日に大幅な緩和が行われました。対象範囲が広がり、警戒区域が2以上でも使えるようになっています。2024年前半までに書かれた資料では追えない改正です。
この記事では、消防法第9条の2・令第5条の6〜第5条の9・平成16年総務省令第138号、そして平成20年総務省令第156号(令和6年改正後)にあたって整理します。
住警器の数値は「消防法施行規則」には載っていない
住宅用火災警報器を調べるとき、多くの人がまず消防法施行規則を引きます。しかし消防法施行規則には住宅用防災機器の条文が存在しません(第5条の6から第5条の9は欠番で、目次にも該当する章がありません)。
法第9条の2は「条例で定める」と言っているだけ
消防法第9条の2
第1項 住宅の用途に供される防火対象物(その一部が住宅の用途以外の用途に供される防火対象物にあつては、住宅の用途以外の用途に供される部分を除く。以下この条において「住宅」という。)の関係者は、次項の規定による住宅用防災機器(略)の設置及び維持に関する基準に従つて、住宅用防災機器を設置し、及び維持しなければならない。
第2項 住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準その他住宅における火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例で定める。
第1項のかっこ書きが重要です。併用住宅では住宅以外の用途に供される部分が除かれ、住宅部分だけが対象になります。1階が店舗、2階が住居という建物なら、2階だけの話です。
そして第2項。実体的な義務内容を決めるのは市町村条例で、政令と省令は「条例をつくるときの基準」を定めているにすぎません。「全国一律のルール」として説明されることが多いのですが、条文の建付けは違います。
令第5条の8は「附加」ではなく「適用除外」
令第5条の6が住宅用防災機器の定義、令第5条の7が条例の制定に関する基準、令第5条の9が準用規定です。そして令第5条の8は緩和の規定です。
消防法施行令第5条の8
法第九条の二第二項の規定に基づく条例には、住宅用防災機器について、消防長又は消防署長が、住宅の位置、構造又は設備の状況から判断して、住宅における火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、住宅における火災による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおける当該条例の規定の適用の除外に関する規定を定めるものとする。
台所への設置義務のような上乗せ(附加)の根拠は法第9条の2第2項そのもので、令第5条の7の基準は最低基準として働きます。第5条の8を「附加条例の根拠」と説明している解説を見かけますが、条文は逆方向の規定です。
設置場所は「寝室と階段」。台所は条例の話
令第5条の7第1項第1号が設置場所を定めています。
消防法施行令第5条の7第1項第1号
住宅用防災警報器又は住宅用防災報知設備の感知器は、次に掲げる住宅の部分(ロ又はハに掲げる住宅の部分にあつては、総務省令で定める他の住宅との共用部分を除く。)に設置すること。
イ 就寝の用に供する居室(建築基準法第二条第四号に規定する居室をいう。ハにおいて同じ。)
ロ イに掲げる住宅の部分が存する階(避難階を除く。)から直下階に通ずる階段(屋外に設けられたものを除く。)
ハ イ又はロに掲げるもののほか、居室が存する階において火災の発生を未然に又は早期に、かつ、有効に感知することが住宅における火災予防上特に必要であると認められる住宅の部分として総務省令で定める部分
原則は就寝の用に供する居室と、そこへ通じる階段だけです。台所は令に出てきません。台所への設置を義務づけている自治体があるのは、市町村の火災予防条例による附加です。設計時に「この地域は台所も要るか」を確認する必要があるのはこのためです。
また共同住宅・複合用途の共用廊下・共用階段は対象から除かれます(省令138号第3条)。共用部は法第17条側の自動火災報知設備で守る、という整理です。
ハの「総務省令で定める部分」は3つ
省令138号第4条が、寝室と階段以外に追加される部分を定めています。
①避難階より上方に2階以上離れた階における階段の下端(階段の上端に既に設けている場合を除く)、②住宅の部分が避難階のみに存する場合で、居室が存する最上階から直下階に通ずる階段の上端、③感知器を設置する階以外で床面積7㎡以上の居室が5以上ある階の廊下(廊下がなければ階段の上端、それもなければ階段の下端)。
③は3階建て住宅や大きな二世帯住宅で効いてきます。
0.6m・0.15〜0.5m・1.5m の根拠
取付け位置の数値は省令138号第7条第1項です。
平成16年総務省令第138号 第7条第1項
第2号 住宅用防災警報器は、天井又は壁の屋内に面する部分(略)の次のいずれかの位置に設けること。
イ 壁又ははりから0.6メートル以上離れた天井の屋内に面する部分
ロ 天井から下方0.15メートル以上0.5メートル以内の位置にある壁の屋内に面する部分
第3号 住宅用防災警報器は、換気口等の空気吹出し口から、1.5メートル以上離れた位置に設けること。
自動火災報知設備の煙感知器(規則第23条第4項第7号ニ、第8号)と同じ数値です。→ 建築消防|自動火災報知設備の感知器|警戒区域・感知区域・感知面積と設置してはならない場所
「熱式は0.4m」は法令ではない
台所に設ける定温式の場合「壁やはりから0.4m以上」と説明されることがありますが、省令138号にこの数値はありません。出典は消防庁の「定温式住宅用火災警報器に係る技術ガイドライン」で、令第5条の7第1項第1号に定める部分以外の部分(台所、じんあい・煙等が滞留するおそれのある居室、ガレージ等)に定温式を設ける場合の基準です。
つまり0.4mは全国一律の義務ではなく、台所への設置を条例で求める市町村での運用基準という位置づけになります。
種別は「寝室・階段は光電式」
省令138号第7条第1項第4号の表で、寝室・階段は光電式、廊下はイオン化式または光電式と定められています。寝室にイオン化式だけを付ける設計は条文上できません。
免除・資格・点検・検定
4つの設備のいずれかがあれば免除される
省令138号第6条は、①スプリンクラー設備(標示温度75度以下・種別1種の閉鎖型ヘッドに限る)又は自動火災報知設備、②共同住宅用スプリンクラー設備等、③特定小規模施設用自動火災報知設備、④複合型居住施設用自動火災報知設備、のいずれかを設けた場合に、その有効範囲内の住宅の部分について住警器を免除しています。
③が後半で扱う設備です。小規模な福祉施設やグループホームでは、特定小規模施設用自動火災報知設備を入れることで住警器の話が消える——この接続を知っておくと設計の整理が早くなります。特定共同住宅等については別記事にまとめています。→ 建築消防|特定共同住宅等の消防用設備|構造類型と階数で決まる早見表
消防設備士の工事対象でも、点検報告の対象でもない
令第36条の2は、消防設備士でなければ行えない工事・整備の対象を列挙しています。自動火災報知設備は入っていますが、住宅用防災警報器は入っていません。取付け・取外し・電池交換を誰でも行えるのはこのためです。
点検も同じです。規則第31条の6の点検は「法第17条の3の3の規定による消防用設備等の点検」であり、対象は法第17条の消防用設備等。住警器は法第9条の2と市町村条例に基づくものなので、この枠の外にあります。→ 建築消防|消防用設備等の点検・報告|機器点検6か月・総合点検1年の実務
ただし維持義務そのものは法第9条の2第1項にあります。省令138号第7条第5号・第9号・第10号が、電池交換、交換期限が経過する前の交換、自動試験機能の異常表示時の交換を求めています。「点検制度がない=放置してよい」ではありません。
検定は平成26年4月1日から
住宅用防災警報器は消防法施行令第37条第7号で検定対象機械器具等に掲げられています。検定制度への移行は平成26年4月1日。それ以前は日本消防検定協会の鑑定(NSマーク)制度でした。
NSマーク品は「検定品と同等の性能を有する」として平成31年3月31日まで販売が認められ、平成31年4月1日以降は検定合格の表示のないものは販売・設置できません。すでに設置済みのNSマーク品は、本体記載の有効期限(自動試験機能付きは交換サインが出るまで)まで使えます。
規格省令が定める数値
規格は「住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令」(平成17年総務省令第11号)です。
規格省令の主要な数値
第3条第10号イ(音圧) 警報音により火災警報を発するものにおける音圧は、無響室で警報部の中心から前方1メートル離れた地点で測定した値が70デシベル(公称音圧)以上であり、かつ、その状態を1分間以上継続できること。
第3条第11号ロ(電池切れ) 有効に作動できる電圧の下限値となつたことを72時間以上点滅表示等により自動的に表示し、又はその旨を72時間以上音響により伝達することができること。
第8条第6号(表示) 交換期限(自動試験機能を有するものを除く。)を見やすい箇所に容易に消えないように表示すること。
「10年で交換」とよく言われますが、法令が定めているのは「交換期限を表示すること」であって年数そのものではありません。年数は製品ごとの設定です。
義務化の時期
新築住宅は平成18年6月1日から。既存住宅は市町村条例の定める日からで、平成21年版消防白書は「平成23年6月までには全国で義務化される」としています。
東京都(東京消防庁管内)は全国に先行し、新築・改築住宅は平成16年10月1日、既存を含むすべての住宅は平成22年4月1日からです。「平成16年6月から」と書かれた資料を見かけますが、東京消防庁が示している施行日は10月1日です。
特定小規模施設用自動火災報知設備——令和6年7月に大きく変わった
特定小規模施設用自動火災報知設備は、令第29条の4(必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等)に基づいて、通常の自動火災報知設備に代えて用いることができる設備です。根拠は平成20年総務省令第156号。
この省令が令和6年7月23日に大きく改正されました(令和6年総務省令第74号、あわせて令和6年消防庁告示第11号)。公布日即施行です。
対象の書きぶりが変わった
改正前は「(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)〜(3)・ロ・ハ、(十六)項イの一部」という限定列挙でした。改正後の第2条第1号イはこうなっています。
平成20年総務省令第156号 第2条第1号イ(現行)
令第二十一条第一項(第三号から第六号まで、第八号、第十一号、第十二号、第十四号及び第十五号を除く。)に掲げる防火対象物又はその部分のうち、延べ面積又は床面積が三百平方メートル未満のもの
「令第21条第1項の号を引く」形に一般化されたことで、(十三)項ロ(航空機格納庫)、(十七)項(重要文化財等)、(九)項イ200㎡以上、(二)項・(三)項の地階・無窓階100㎡以上、駐車の用に供する部分200㎡以上300㎡未満などが新たに対象になりました。ロは(十六)項イ、ハは延べ面積300㎡以上500㎡未満の(十六)項イです。
なお「延べ面積300㎡未満」という上限そのものは維持されています。
警戒区域が2以上でも使えるようになった
改正前は「警戒区域が一」の場合に限られていました。ここが最大の使いにくさでしたが、改正でこうなりました。
省令第3条第2項第2号(現行)
警戒区域が二以上で、全ての感知器を火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令第二条第十九号の六に規定する連動型警報機能付感知器とする場合にあっては、当該感知器を同令第八条第十八号ハに定める火災の発生した警戒区域を特定することができるものとすること。
「どの区域で火災が起きたかを特定できる」連動型警報機能付感知器を全数使えば、警戒区域が2以上でも成立します。あわせて告示第25号も改正され、すべての感知器が連動型警報機能付感知器であれば受信機を設けないことができるようになりました(改正前は「警戒区域が一の場合」限定)。
さらに特定一階段等防火対象物にも設置できるようになっています(第3条第2項第3号ハ(3))。
そのかわり、階段・廊下にも感知器が要る場合がある
緩和の裏返しで、警戒区域が2以上の防火対象物などでは階段・傾斜路、廊下・通路、エレベーターの昇降路・リネンシュート・パイプダクト等にも感知器を設けることが求められます(第3条第2項第3号ハ)。「1住戸1警戒区域で受信機なし」という単純な構成から広げるときは、ここを見落とさないようにします。
警戒区域は通常の自火報と同じ
第3条第2項第1号は「令第21条第2項第1号及び第2号の規定の例による」としています。つまり600㎡以下・一辺50m以下、2以上の階にわたらないという原則がそのまま適用されます。「小規模施設用だから警戒区域は緩い」ということはありません。
感知器を設ける場所
第3条第2項第3号は、イ建築基準法第2条第4号の居室および床面積2㎡以上の収納室、ロ倉庫、機械室その他これらに類する室、ハ一定の場合の階段・廊下・たて穴を挙げています。天井(天井がない場合は屋根)または壁に設けますが、壁に設けられるのはイの場所で床面積30㎡以下のものに限られます。
細目は消防庁告示第25号で、感知器の位置は規則第23条第4項各号の例によります。熱式・煙式・熱煙複合式それぞれに位置基準が置かれており、「煙感知器に限る」という限定規定は現行の省令・告示の条文上は確認できません(実務上は階段・廊下等で煙感知器が必要になります)。
連動型警報機能付感知器は「使用制限」の形で規定されている
規則第23条第4項第七号の六は、連動型警報機能付感知器のうち一定のもの——電力供給が停止した旨の信号を発信できないもの、電池電圧低下を受信機に自動発信できないもの、一定の試験を行わなかったもの——について、特定小規模施設用自動火災報知設備以外の自動火災報知設備には用いることができないと定めています。
裏を返せば特定小規模施設用自動火災報知設備には使えるという書き方です。定義そのものは感知器規格省令第2条第19号の6、警戒区域を特定する機能は同第8条第18号ハにあります。
解説書で確認しておきたい点
確認ポイント
①住警器の細目省令 消防法施行規則ではなく平成16年総務省令第138号です。0.6m/0.15〜0.5m/1.5mはすべて同省令第7条第1項。
②令第5条の8 附加条例の根拠ではなく、適用除外(緩和)の条例基準です。
③台所 全国基準は「就寝の用に供する居室と階段」。台所は市町村条例による附加です。
④熱式0.4m 省令にはなく、消防庁の「定温式住宅用火災警報器に係る技術ガイドライン」によるものです。
⑤東京都の先行時期 東京消防庁が示す施行日は新築・改築が平成16年10月1日、既存を含む全住宅が平成22年4月1日です。
⑥特定小規模施設用自動火災報知設備 令和6年7月23日に対象範囲・警戒区域・受信機の要否が大きく緩和されました。2024年前半までの資料は改正前の内容です。
⑦警戒区域 特定小規模施設用でも600㎡以下・一辺50m以下・2以上の階にわたらないという原則は変わりません。
まとめ
住宅用火災警報器は、①法第9条の2で義務の枠を確認 → ②令第5条の7で設置場所(寝室・階段)を押さえる → ③省令138号で取付け位置と種別を決める → ④所在地の市町村火災予防条例で台所などの附加を確認、という順序です。④を飛ばすと図面が現地基準に合いません。
特定小規模施設用自動火災報知設備は、①令第29条の4の代替設備であることを押さえ → ②省令156号第2条で対象に入るかを確認(令和6年改正後の条文で)→ ③第3条第2項で警戒区域・感知器・非常電源を決める → ④告示第25号で細目を詰める、という流れです。
特に令和6年7月23日改正で警戒区域が2以上でも使えるようになった点は、小規模福祉施設・グループホーム・小規模宿泊施設の設計を大きく変えます。手元の資料が改正前のものでないか、まず確認してください。→ 建築消防|自動火災報知設備(自火報)の設置基準をわかりやすく解説
参考にした条文・告示・通知
- 消防法 第9条の2
- 消防法施行令 第5条の6〜第5条の9、第29条の4、第36条の2、第37条
- 住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成16年 総務省令第138号)
- 住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令(平成17年 総務省令第11号)
- 特定小規模施設における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成20年 総務省令第156号)
- 特定小規模施設用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成20年 消防庁告示第25号)
- 令和6年 総務省令第74号、令和6年 消防庁告示第11号(令和6年7月23日公布・施行)
- 消防法施行規則 第23条第4項第七号の六、第31条の6
- 火災報知設備の感知器及び発信機に係る技術上の規格を定める省令 第2条第19号の6、第8条第18号ハ
- 定温式住宅用火災警報器に係る技術ガイドライン(消防庁)
- 予防行政のあり方に関する検討会 報告書(令和5年10月)
この2つの設備は、法令の階層が深く、最後は条例や告示に着地します。条文だけを追うと数値が出てこず、数値だけを覚えると根拠が言えません。階層ごとに何が書いてあるかを持っておくのが近道です。




