太陽光は「何kW載せるか」より「何%自分で使えるか」|売電8.3円時代の自家消費率
結論
2026年に太陽光を載せると、売電単価ははじめの4年が24円、5年目から10年目は8.3円です。一方で電気を買う単価は30円台。つまり5年目からは、同じ1kWhでも「売る」と「自分で使う」で価値が4倍ちがうことになります。だから太陽光の損得は、発電量ではなく自家消費率で決まります。
- 売電8.3円に対して、買電はおよそ30〜40円(実質単価)
- まずやるのは使う時間を昼へ寄せること。費用ゼロで自家消費率が上がる
- 蓄電池は自家消費率を買う装置。元が取れるかは自分で計算できる
- 太陽光そのものは、初期4年24円のぶん以前より回収が早い
「太陽光は何kW載せればいいですか」とよく聞かれます。ただ2026年の制度では、その問いより先に決めるべきことがあります。発電した電気を、どれだけ自分の家で使えるかです。理由を数字で説明します。
2026年8月15日時点の情報です。制度・料金は変更されることがあります。必ず一次情報でご確認ください。
💬 はりた&ペン太(まずは疑問から)
🐧 見習いペン太
「たくさん発電すれば、たくさん売れて得ですよね?」
🦔 はりた
「そこが2026年で変わったところ。売っても8.3円にしかならない年がくるんだ。同じ電気を自分で使えば30円以上の値打ちがある」
🐧 見習いペン太
「4倍……。じゃあ売らずに全部使ったほうが?」
🦔 はりた
「そういうこと。でも昼に家に誰もいないと使えない。そこをどうするかが本題だよ」
5年目から、売った1kWhは8.3円にしかならない
住宅用(10kW未満)のFIT買取価格は、2025年10月から初期投資支援スキームという形に変わりました。10年間ずっと同じ単価、ではありません。
住宅用(10kW未満)の売電単価
| 期間 | 単価 | 従来との比較 |
|---|---|---|
| 1〜4年目 | 24円/kWh | 従来の一律15円より高い |
| 5〜10年目 | 8.3円/kWh | 市場価格の水準まで下がる |
| 11年目以降(卒FIT) | おおむね8〜8.5円/kWh | 大手電力の標準的な買取プランの場合 |
では、買う側の単価はいくらか。これは検針票から自分で出せます。請求金額を使用量(kWh)で割ってください。基本料金も燃料費調整額も再エネ賦課金も含んだ、その家の実質単価が出ます。多くの家庭で30円台になるはずです。
2026年度の再エネ賦課金は4.18円/kWh(2026年5月分〜2027年4月分)で、前年度の3.98円から上がり、過去最高を更新しています。この賦課金は買う電気にかかるので、買電単価が上がるほど、自家消費の値打ちも上がります。
だから経済性は「自家消費率」で決まる
自家消費率とは、発電した電気のうち、売らずに自分の家で使えた割合のことです。図にすると分かりやすくなります。

発電の山は昼、家庭の消費の山は朝と夕方。形がずれています。共働きで昼に誰もいない家では、この重なりがとても小さくなります。逆に在宅勤務や小さいお子さんがいる家では、重なりが大きくなります。
同じ5kWの太陽光を載せても、自家消費率が20%の家と50%の家では、手元に残るお金がまったく違います。発電量は同じでも、1kWhの値打ちが8.3円か35円かで分かれるからです。
自家消費率を上げる3つの方法(安い順)
順番を間違えないでください
| 方法 | 費用 | 効き方 |
|---|---|---|
| 1. 使う時間を昼へ寄せる | 0円 | 洗濯・食洗機・掃除機を昼のタイマーへ。いちばん先にやる |
| 2. 大きな機器の運転時間を変える | 0円〜 | エコキュートの沸き上げやEV充電を昼に。設定変更だけで済むことが多い |
| 3. 蓄電池を入れる | 高い | 昼に余った分を夜へ回す。上の2つでは埋まらない差を買う |
とくにエコキュートは効果が大きいです。従来は深夜の安い電力で沸かす設定が普通でしたが、太陽光があるなら昼に沸かすほうが理にかないます。深夜電力を買う代わりに、8.3円で売るはずだった電気を使うわけですから。機種によっては「太陽光連携」「おひさまモード」といった名前で用意されています。
EV充電も同じです。V2Hがあれば車を蓄電池として使えます。ただしEVは昼に出かけていることが多いので、生活パターン次第です。設備の考え方は住宅の非常用電源の記事にまとめています。
蓄電池は元が取れるのか|自分で計算する
ここは営業資料ではなく、自分の電卓で確かめてください。蓄電池が生む金額は、突き詰めると「安い電気(売れば8.3円)を、高い電気(買えば35円)の代わりに使う」差額だけです。式にすると、こうなります。
年間メリット = 1日に実際に充放電できるkWh × 365 ×(買電の実質単価 − 売電単価)
実効容量5kWhの蓄電池を、毎日きっちり使い切れたとして計算してみます。
計算例(5kWh・買電35円・売電8.3円)
| 年間メリット | 5kWh × 365日 ×(35円 − 8.3円)= 約48,700円 |
|---|---|
| 本体・工事が150万円なら | 150万円 ÷ 4.87万円 = 約31年 |
| 補助金で実質100万円なら | 100万円 ÷ 4.87万円 = 約21年 |
蓄電池のメーカー保証は10〜15年が一般的です。上の数字と並べると、何が起きているか見えてきます。いまの価格では、金額だけで元を取るのは簡単ではありません。しかも毎日満充電・満放電できる前提の、かなり甘い計算です。梅雨や冬は発電が減りますし、電池は使うほど容量が落ちます。
これは蓄電池が悪い設備だという話ではありません。買っているものが「電気代の節約」ではなく「停電時に電気がある状態」だ、ということです。台風や地震で数日止まる可能性をどう見るか。そこに何十万円の値打ちを感じるなら、判断としては筋が通っています。逆に「電気代がゼロになりますよ」という説明だけで進める話ではありません。
見積を見るときの3点。①保証年数と、保証されるのは容量か本体か。②実効容量(カタログの容量より小さいのが普通です)。③停電時に使えるのが特定の回路だけか、家全体か。3つ目は工事内容で変わり、金額も変わります。「停電しても安心」の中身は製品ごとに違います。
それでも太陽光そのものは、計算が合いやすい
蓄電池の話が厳しめなので誤解されそうですが、太陽光パネル単体の経済性は、以前より良くなっています。理由は2つです。
ひとつは、初期4年の24円。従来の一律15円と比べると、最初の回収が明らかに速くなりました。制度の名前が「初期投資支援スキーム」なのは、まさにそこを狙っているからです。
もうひとつは、買電単価が上がり続けていること。再エネ賦課金は過去最高を更新し、電気・ガス料金支援は9月使用分で終わります。自家消費した1kWhの値打ちは、これからも上がる方向です。売電を当てにする投資としては渋くなり、自家消費のための設備としては良くなった——これが2026年の姿です。
💬 はりた&ペン太(というわけで、解決!)
🐧 見習いペン太
「まず生活時間を変える。それから蓄電池を考える、という順番ですね」
🦔 はりた
「そう。0円でできることを飛ばして150万円の設備から入るのは、もったいない。それに自家消費率が低いままだと、蓄電池を入れてもためる電気が足りないんだ」
🐧 見習いペン太
「蓄電池は、電気代というより停電への備え、と考えるんですね」
🦔 はりた
「そこを正直に見たうえで納得できるなら、いい買い物だと思うよ」
- 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
- 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
- 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事)
よくある質問
自家消費率は、実際どれくらいになりますか?
生活パターンと設備容量で大きく変わるため、一律の数字を当てにしないでください。昼に人がいない家ほど低く、在宅時間が長い家ほど高くなります。また同じ生活でも、パネルを多く載せるほど余りが増えるので自家消費率は下がります。
販売店の試算を見るときは、その前提として何%を置いているかを必ず確認してください。ここを高めに置くと、シミュレーションはいくらでも良く見えます。
売電単価が下がるなら、パネルは少なめがいいですか?
単純にそうとも言えません。パネルは1kWあたりの単価が容量を増やすほど下がる傾向があり、また屋根の面積や形で載せられる量は決まってきます。少なくすれば工事費の割合が重くなります。
考え方としては「自家消費でどれだけ使えるか」を先に見積もり、そのうえで屋根に載る範囲で決めるのが現実的です。余った分は8.3円でも収入にはなるので、ゼロよりは足しになります。
蓄電池の補助金は使えますか?
国と自治体の両方に制度があり、年度ごとに内容も予算も変わります。とくに自治体の補助は地域差が大きく、金額も締切もばらばらです。お住まいの市区町村の名前と「蓄電池 補助金」で最新を確認してください。
補助金は先着順で予算に達すると終わる形が多く、交付決定より前に契約・着工すると対象外になる制度もあります。順番を間違えると、金額そのものを失います。
蓄電池を入れると、停電のとき家中で電気が使えますか?
10年たったあとはどうなりますか?
FITの買取期間が終わり、いわゆる卒FITになります。売電先を自分で選ぶことになり、大手電力の標準的なプランではおおむね8〜8.5円/kWh、条件つきのプランではもう少し高い設定もあります。
ここでも結論は同じで、売るより使うほうが値打ちがある状態が続きます。10年目が近づいたら、蓄電池やエコキュートで自家消費に回す検討をする家が多いのは、この理由です。
参考にした情報
- 資源エネルギー庁・調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等について」(住宅用10kW未満の初期投資支援スキーム:前半4年24円/kWh、後半6年8.3円/kWh、調達期間10年)
- 経済産業省「再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2026年度以降の買取価格等と2026年度の賦課金単価を設定します」
- 東京電力エナジーパートナー「賦課金等について」(2026年度の再エネ賦課金単価 4.18円/kWh、2026年5月分〜2027年4月分)
- 各社の卒FIT買取プラン(大手電力の標準的な買取単価はおおむね8〜8.5円/kWh)
※単価・制度は年度で変わります。契約前に必ず最新の一次情報と、お住まいのエリアの条件をご確認ください。
つぎに読む




