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家で電子レンジとドライヤーを同時に使ってブレーカーが落ちても、落ちるのはその部屋の分岐ブレーカーで、家じゅうが真っ暗になることはあまりありません。事故に近いところから順に切れるよう、はじめから順番が決められているからです。キュービクルでこの順番を決め、「今、切れ」と判断しているのが保護継電器です。第7回は、単線結線図に「51」「67」と番号で描かれる継電器の読み方です。

結論

保護継電器は切れと判断する役で、切るのは遮断器です。図面では器具番号(51・51G・67・27・59)で描かれ、下位ほど速く、上位ほど遅く動くよう整定して、事故に近いところだけを切ります。

  • 保護は検出(変成器)→判断(継電器)→実行(遮断器)の3段
  • 51はOCR、51GはGR、67はDGR、27はUVR、59はOVR
  • OCRは限時要素と瞬時要素の2つで動く
  • 上下で0.3秒ほどの時限差をつける
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
ビルの2階でショートが起きると2階の分岐MCCBだけが0.02秒ほどで切れ、幹線ACBと受電VCBのOCRは待って動かずほかの階は停電しない場面から、検出・判断・実行の3段と器具番号51・51G・67・27・59、OCRの限時要素と瞬時要素の特性、分岐0.02秒・幹線0.3秒・受電0.6秒・変電所1.0秒の保護協調を示す動く図解
約50秒でくり返します。使っている場面から、器具番号、OCR、保護協調の順に見ます。

継電器は「審判」、切るのは遮断器

サッカーの審判は、反則を見て笛を吹きますが、自分でボールを止めるわけではありません。保護継電器も同じで、事故を見て「切れ」と合図を出す役です。実際に電気を切るのは遮断器(VCB)です。

段 受け持つ機器 していること
検出 CT・ZCT・VT・ZPD 事故の電流や電圧を、測れる大きさに落とす
判断 保護継電器(51・67・27など) 整定値と比べて「切れ」と決める
実行 引外しコイル52T → 遮断器52(VCB) 実際に回路を開く
どれか1つが欠けても保護は成り立ちません。制御電源(トリップ電源)も必要です。
読み方のコツ:単線結線図では、CTから細い線で「51」の箱へ、そこからVCBへ線がつながっています。この細い線をたどると、検出・判断・実行の組が見えてきます。検出側の変成器は第6回で見ています。
ここまでのポイント
  • 継電器は判断役
  • 切るのは遮断器
  • 3段がそろって守れる

器具番号で読む ― 51・51G・67・27・59

継電器は、図面では名前ではなく器具番号(JEM 1090)で描かれることがほとんどです。まずは次の5つを覚えれば、受電設備の図面は読めます。

器具番号 略号 名前 見ているもの
51 OCR 過電流継電器 負荷電流が整定値をこえたか
51G GR 地絡継電器 零相電流I0の大きさ(向きは見ない)
67 DGR 方向性地絡継電器 I0とV0の関係から、地絡が構内か構外か
27 UVR 不足電圧継電器 停電や電圧の低下(発電機の始動の合図にも)
59 OVR 過電圧継電器 電圧の上がりすぎ(系統連系の保護に多い)
ZPDがあればDGR(67)、なければGR(51G)と見分けられます。

GRは地絡の大きさだけを見るので、構内の高圧ケーブルが長いと、構外の地絡でも動いてしまうことがあります(もらい事故)。DGRは向きまで見るので、構内の地絡のときだけ切ります。引込のPASに付くDGRは第2回で扱っています。

ここまでのポイント
  • 51はOCR
  • 51GはGR、67はDGR
  • 27はUVR、59はOVR


OCRは「待つ要素」と「すぐ切る要素」の2つ

OCR(51)は、2つの要素を持っています。電流が大きいほど早く動く限時要素と、とても大きな電流ならすぐ動く瞬時要素です。

整定するもの 意味
電流タップ(整定電流) 何Aから過電流とみなすか。CTの二次側の値(例 4A)で設定する
時間レバー 限時要素の曲線を上下に動かすつまみ。大きいほど遅く動く
瞬時要素 近くで短絡したとき、待たずに切る電流。変圧器の励磁突入電流では動かない値にする
整定は「いつ切るか」を決める作業です。速すぎれば誤動作、遅すぎれば被害が広がります。
読み方のコツ:単線結線図では「51」の小さな箱1つですが、整定値は図面に書き添えるか、別紙の整定表にまとめられています。動作の中身まで追うときは展開接続図を見ます。主遮断装置との組み合わせは第5回で見ています。
ここまでのポイント
  • タップで何Aからを決める
  • レバーで時間を調整
  • 瞬時は近くの短絡用

保護協調 ― 下位ほど速く、上位ほど遅く

ビルの2階で事故が起きたとき、受電のVCBが先に切れてしまうと全館停電です。そうならないよう、事故にいちばん近い遮断器が先に動くように、上下の動く時間をずらしておきます。これが保護協調です。

遮断器 動作時間の例 役目
分岐MCCB 0.02秒 事故の回路だけを切る
幹線ACB 0.3秒 分岐が切れなかったときの予備
受電VCB(51) 0.6秒 構内全体の最後のとりで
電力会社の変電所 1.0秒 構内で止まらなかったときに配電線を切る
数値は考え方を示す例です。実際の整定値は電力会社との協議で決まります。

上位と下位の時間差(時限差)は、0.3秒ほどが目安です。確かめるには、時間と電流の関係を対数目盛で重ねた保護協調図を使います。構内の事故で変電所まで動かしてしまうと、近所まで停電させる波及事故になります。

ここまでのポイント
  • 事故に近い所から切る
  • 時限差は約0.3秒
  • 電力会社より先に止める


間違えやすいところ

よくある読み違い

  1. 継電器が電気を切ると思う:継電器は判断するだけで、切るのは遮断器です。
  2. 継電器が動けば必ず切れると思う:引外しコイル52Tまでの回路と制御電源が生きていないと切れません。
  3. 整定値を1台ずつ決める:保護は系統全体で1つの設計です。上から下まで1枚の協調図で確かめます。
  4. 速く切れるほど安全と思う:上位までみな速いと、分岐の事故で全館が止まります。
  5. GRとDGRを同じものと読む:番号(51Gと67)とZPDのあるなしで見分けます。

次回は、6,600Vを使える電圧に下げる変圧器バンクの読み方です。全体の流れは第1回で見ています。

ここまでのポイント
  • 継電器は判断だけ
  • 52Tと制御電源も確かめる
  • 協調は系統全体で

よくある質問

保護継電器とは何ですか?

事故の電流や電圧の変化を見て、「遮断器を切れ」と判断する機器です。自分で電気を切るわけではありません。変成器が検出し、継電器が判断し、遮断器が実行する、という3段で受電設備を守ります。

図面の「51」「67」は何の番号ですか?

JEM 1090で決められた器具番号です。51は過電流継電器(OCR)、51Gは地絡継電器(GR)、67は方向性地絡継電器(DGR)、27は不足電圧継電器(UVR)、59は過電圧継電器(OVR)です。単線結線図では、四角や丸の中にこの番号だけが書かれることがよくあります。

GRとDGRはどう違いますか?

GRは零相電流の大きさだけを見て動きます。DGRは零相電流と零相電圧の関係から、地絡が構内か構外かを見分け、構内のときだけ動きます。ZPDがあればDGR、なければGRと見分けられます。

OCRの限時要素と瞬時要素とは何ですか?

限時要素は、電流が大きいほど早く動く特性で、過負荷や遠くの短絡を受け持ちます。瞬時要素は、とても大きな電流が流れたときに待たずにすぐ動く要素で、近くの短絡を素早く切ります。

保護協調とは何ですか?

事故の場所にいちばん近い遮断器だけを動かして、停電の範囲を小さくする考え方です。下位(負荷側)ほど速く、上位(電源側)ほど遅く動くように整定し、上下で0.3秒ほどの時間差をつけます。

継電器が動けば必ず遮断器は切れますか?

切れるとはかぎりません。継電器は接点を閉じるだけで、そこから引外しコイル(52T)までの回路と制御電源が生きていて初めて遮断器が開きます。竣工時や定期点検で動作試験をするのは、このつながりを確かめるためです。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。