家の電気を使うたびに照明が明るくなったり暗くなったりする。家電がいくつも同時に壊れた――。こうしたときに疑うのが、単相3線式の中性線の断線です。この記事は、中性線が切れると何が起きるのか、どう守るのかだけにしぼって説明します。

結論

単相3線式で中性線が切れると、L1側とL2側が200Vを分け合う形になり、使っている電力が小さい側の100V機器に、100Vを超える電圧がかかって壊れることがあります。中性線欠相保護付きの主幹ブレーカーが、この異常を検出して電気を切ります。

  • 重い側は電圧が下がり、軽い側は電圧が上がる
  • 例:1,000Wと200Wなら、約33Vと約167V
  • 単相3線式の遮断器には、中性線欠相保護が求められる
  • 症状が出たら主幹を切り、電力会社か電気工事店に連絡する
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

中性線が切れると ― 100Vのはずが、片側だけ高い電圧に

住宅の多くは単相3線式で電気を受けています。L1・N(中性線)・L2の3本で、L1とN、NとL2のあいだがそれぞれ100V、L1とL2のあいだが200Vです。中性線は、変圧器の側で接地されていて、2つの100Vをそろえる真ん中の線です。

ふだんどちらの側も100V
中性線が切れると2つの側が200Vを分け合う
重い側電圧が下がる
軽い側100Vを超えて家電が壊れる

中性線が切れると、L1側の100V負荷とL2側の100V負荷が、直列につながったまま200Vにかかる形になります。2つの負荷が同じなら100Vずつに分かれますが、ふつうは同じではありません。負荷の軽い側に高い電圧がかかり、その側の100V用の家電が壊れたり、発熱したりします。

たとえるなら
中性線は、シーソーの真ん中の支点のようなもの
シーソーは、真ん中の支点があるから、左右どちらに誰が座っても高さが落ち着きます。支点が外れると、軽い人のほうがはね上がりますよね。単相3線式の中性線も、L1側とL2側の100Vを支える支点です。切れると、負荷の軽い側の電圧がはね上がります。
ここに注意!
「中性線は電気が流れていないから、切れても困らない」ではありません。
中性線には、L1側とL2側の負荷の差の分の電流が、ふだんから流れています。そして何より、100Vの電圧をそろえる役目を持っています。切れると、片側の家電に100Vを大きく超える電圧がかかります。
ここまでのポイント
  • 単相3線式は、L1・N・L2の3本で100Vと200Vを取る
  • 中性線が切れると、2つの側が200Vを分け合う
  • 負荷の軽い側に、100Vを超える電圧がかかる

どのくらい片寄る? ― 1,000Wと200Wなら、33Vと167V

電圧の片寄りは、負荷を抵抗に置き換えると計算できます。100Vで使う負荷の抵抗は、R = 100² ÷ Wです。L1側で1,000W、L2側で200W使っている場合を考えます。

抵抗に置き換えR = 100² ÷ W
電流200V ÷ 60Ω≒ 3.3A
重い側約33V
軽い側約167V
L1側(重い側) L2側(軽い側)
使っている電力 1,000W 200W
抵抗(100² ÷ W) 10Ω 50Ω
中性線が切れたときの電圧 約33V 約167V

2つの抵抗は直列なので、200V ÷(10+50)Ω ≒ 3.3A が流れ、それぞれの電圧は 電流×抵抗 で決まります。軽い側の機器には、ふだんの1.7倍近い電圧がかかる計算です。片側の負荷がほとんどないと、軽い側は200V近くまで上がります。実際の機器は電圧で抵抗が変わるので、計算は目安です。第二種電気工事士の試験で出る計算は、配電理論(電圧降下・電力損失・単相3線式の中性線断線)で練習できます。

ここに注意!
「重い側が危ない」ではありません。
中性線が切れたとき、高い電圧がかかるのは、使っている電力(W)が小さい側です。小さい負荷ほど抵抗が大きく、200Vの多くを受け持つからです。待機中のテレビやパソコンなど、軽い側につながっている機器ほど壊れやすくなります。
ここまでのポイント
  • 負荷を R = 100² ÷ W の抵抗に置き換えて計算する
  • 200Vを抵抗の比で分け合う
  • 使っている電力が小さい側ほど、電圧が高くなる


どう守る?どう気づく? ― 欠相保護付きの主幹と、ふだんと違う症状

この事故から家電を守るのが、中性線欠相保護の機能です。100V側の電圧が異常に高くなったのを検出して、主幹ブレーカーごと電気を切ります。単相3線式の回路に設ける遮断器には、この機能を持つものが求められます(内線規程 1360-3-3・1375-2-5。二次側に同じ機能の遮断器がある場合を除く)。いまの住宅用分電盤の主幹には、たいていこの機能が付いています。

欠相保護異常な電圧で主幹ごと切る
症状1明るさがゆれる
症状2家電が同時に壊れる
すること主幹を切って連絡する

次のような症状があれば、中性線の接続不良を疑います。中性線が切れかけてゆるんでいると、電気の使い方によって電圧がゆれることがあります。

  1. 電気を使うたびに、部屋ごとの照明が明るくなったり暗くなったりする
  2. 家電がいくつも同時に壊れた、焦げくさいにおいがする
  3. 部屋によって、照明が異常に明るい・暗い

原因の多くは、引込線の接続部、電力量計(メーター)まわり、分電盤の中性線の端子のゆるみや劣化です。引込線やメーターまでは電力会社、分電盤から先は電気工事店が見る範囲です。症状に気づいたら、すぐ主幹ブレーカーを切り、連絡します。

たとえるなら
欠相保護は、シーソーが傾きすぎたら止める安全バー
シーソーに、傾きすぎたら止まる安全バーが付いていれば、はね上がる前に止められます。中性線欠相保護も同じで、100V側の電圧が異常に高くなったところで、主幹ごと電気を切って家電を守ります。
ここに注意!
「主幹が落ちたら、すぐ入れ直せばいい」ではありません。
中性線欠相保護で主幹が落ちたときは、中性線の接続が悪いままかもしれません。入れ直すと、また家電に高い電圧がかかるおそれがあります。原因が分かるまで入れ直さず、電力会社か電気工事店に見てもらいます。
ここまでのポイント
  • 中性線欠相保護付きの主幹が、異常な電圧で電気を切る
  • 明るさがゆれる、家電が同時に壊れる、は中性線を疑う
  • 主幹を切って、電力会社か電気工事店に連絡する


まとめ|結論

結論

単相3線式の中性線が切れると、2つの100V側が200Vを分け合い、使っている電力が小さい側に高い電圧がかかります。中性線欠相保護付きの主幹ブレーカーがこれを検出して電気を切ります。症状に気づいたら主幹を切り、原因が分かるまで入れ直さずに、電力会社か電気工事店に連絡します。

迷ったら、この順で確かめます。

  1. 照明の明るさがゆれる、家電が同時に壊れた、などの症状がないかを見る
  2. 症状があれば、すぐ主幹ブレーカーを切る
  3. 主幹に中性線欠相保護の表示があるかを、分電盤で確かめる
  4. 電力会社か電気工事店に連絡し、原因が分かるまで入れ直さない

よくある質問

中性線が切れると、なぜ家電が壊れるのですか?

単相3線式では、中性線が切れると、L1側とL2側の負荷が直列になって200Vを分け合います。使っている電力(W)が小さい側ほど高い電圧がかかるので、その側の100V用の家電に、100Vを大きく超える電圧がかかって壊れることがあります。

どのくらいの電圧になりますか?

負荷のバランスで変わります。たとえば片側で1,000W、もう片側で200W使っていると、重い側は約33V、軽い側は約167Vになります。片側の負荷がほとんどないと、軽い側は200V近くまで上がることがあります。

中性線欠相保護とは何ですか?

中性線が切れて100V側の電圧が異常に高くなったことを検出し、主幹ブレーカーごと電気を切る機能です。単相3線式の回路に設ける遮断器には、この機能が求められます(内線規程 1360-3-3・1375-2-5。二次側に同じ機能の遮断器がある場合を除く)。

照明が明るくなったり暗くなったりします。中性線の断線ですか?

電気を使うたびに部屋ごとの明るさが大きく変わる、家電がいくつも同時に壊れた、といった症状は、中性線の接続不良の疑いがあります。すぐ主幹ブレーカーを切り、電力会社か電気工事店に連絡します。

中性線が切れる原因は何ですか?

引込線の接続部、電力量計(メーター)まわり、分電盤の中性線の端子のゆるみや劣化が主な原因です。引込線やメーターまでは電力会社、分電盤から先は電気工事店が見る範囲です。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。