廊下の赤い消火器、厨房の入口の消火器、電気室の扉の横の消火器。消火器は身近な消防用設備ですが、どの建物に必要か、何本置くか、どこに置くかは、消防法施行令と施行規則で細かく決まっています。2019年10月からは、火を使う小さな飲食店にも設置が必要になりました。この記事では、防火対象物の用途別の早見表と、本数・配置のルールを、3つの質問と動く図で整理します。

①消火器が必要かは用途で「全部」「延べ150㎡以上」「延べ300㎡以上」に分かれ、地階・無窓階・3階以上の階は床面積50㎡以上で必要、②本数は延べ面積を50・100・200㎡で割った能力単位で決まり、③各階のどこからでも歩行距離20m以内に置き、電気設備の場所には100㎡以下ごとに1本を追加します。
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

先に言葉をそろえる

言葉 ひとことで言うと
消火器具 消火器と簡易消火用具(水バケツ・水槽・乾燥砂など)をまとめた呼び方
防火対象物 消防法の規制を受ける建物など。用途ごとに別表第一の(1)項〜(20)項に分かれる
延べ面積 建物の各階の床面積の合計
無窓階 避難や消火活動に有効な開口部が足りない地上階
能力単位 消火器がどれだけ消せるかを表す数値(A-3 など)
歩行距離 直線ではなく、実際に歩いて行く経路の長さ
消防法施行令 第10条、消防法施行規則 第5条の4・第5条の5・第6条〜第8条によります。

質問① どの建物に必要? ― 用途別の早見表

消火器が必要な建物は、用途によって「規模に関係なく全部」「延べ150㎡以上」「延べ300㎡以上」の3段階に分かれます。どの用途でも、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上なら必要です。

消防法施行令 第10条では、用途ごとに消火器具が必要になる条件を決めています。不特定多数の人が集まる用途や、避難が難しい人がいる用途ほど、小さくても必要です。

項 用途 必要になる条件
(1)イ 劇場・映画館・演芸場・観覧場 全部
(1)ロ 公会堂・集会場 延べ150㎡以上
(2)イ〜ニ キャバレー・遊技場・性風俗関連特殊営業店舗・カラオケボックスなど 全部
(3)イ・ロ 待合・料理店・飲食店 火を使う設備・器具があれば全部。なければ延べ150㎡以上
(4) 百貨店・マーケットなどの店舗・展示場 延べ150㎡以上
(5)イ 旅館・ホテル・宿泊所 延べ150㎡以上
(5)ロ 寄宿舎・下宿・共同住宅 延べ150㎡以上
(6)イ(1)〜(3) 病院、入院施設のある診療所、入所施設のある助産所 全部
(6)イ(4) 入院施設のない診療所・入所施設のない助産所 延べ150㎡以上
(6)ロ 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設など、避難が難しい人の入所施設 全部
(6)ハ デイサービス・保育所・障害者の通所施設など 延べ150㎡以上
(6)ニ 幼稚園・特別支援学校 延べ150㎡以上
(7) 小・中・高校、大学、専修学校など 延べ300㎡以上
(8) 図書館・博物館・美術館 延べ300㎡以上
(9)イ・ロ 蒸気浴場・熱気浴場、その他の公衆浴場 延べ150㎡以上
(10) 車両の停車場、船舶・航空機の発着場(旅客の乗降・待合の建物) 延べ300㎡以上
(11) 神社・寺院・教会 延べ300㎡以上
(12)イ・ロ 工場・作業場、映画スタジオ・テレビスタジオ 延べ150㎡以上
(13)イ・ロ 自動車車庫・駐車場、航空機の格納庫 延べ150㎡以上
(14) 倉庫 延べ150㎡以上
(15) 前の各項にあたらない事業場(事務所など) 延べ300㎡以上
(16)イ・ロ 複合用途防火対象物 用途ごとの部分に分け、それぞれの項の条件で判定
(16の2) 地下街 全部
(16の3) 準地下街 全部
(17) 重要文化財などに指定された建造物 全部
(18)・(19) 延長50m以上のアーケード、市町村長が指定する山林 用途や面積による設置の定めはない
(20) 総務省令で定める舟車 全部
上の条件にあたらなくても、次の2つは必要です。①建築物の地階・無窓階・3階以上の階で、床面積50㎡以上の階。②少量危険物(指定数量の1/5以上で指定数量未満の危険物)や指定可燃物を貯蔵し、取り扱う建築物その他の工作物。
ひっかけ注意
「地階・無窓階・3階以上で50㎡以上」は、料理店だけの条件ではありません。
この条件は、すべての用途に共通です(施行令 第10条第1項第五号)。延べ300㎡未満の事務所でも、地階の床面積が50㎡以上あれば、その階には消火器が必要です。判定は「用途と延べ面積」と「階ごとの床面積」の両方で行います。
たとえるなら
用途の3段階は、プールの「監視員の人数」の考え方に似ています。
小さな子どもが多いプールは、狭くても監視員を置きます。大人ばかりの広いプールなら、ある程度の広さになってから置きます。人が集まる・逃げにくい用途ほど、小さくても消火器が必要になるのと同じです。
ここまでのポイント
  • 用途で「全部」「延べ150㎡以上」「延べ300㎡以上」の3段階
  • どの用途でも、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上なら必要
  • 少量危険物・指定可燃物を扱う建物は面積に関係なく必要
  • 複合用途ビルは用途ごとの部分に分けて判定


飲食店は「火を使うか」で変わる

2019年10月から、(3)項の飲食店などは、火を使う設備・器具があれば延べ面積に関係なく消火器が必要です。火を使わない場合や、調理油過熱防止装置などの措置があるものだけなら延べ150㎡以上で必要です。

2016年に新潟県糸魚川市で起きた大規模火災は、小さな飲食店のこんろの消し忘れが原因でした。これを受けて施行令が改正され、2019年10月1日から、(3)項の料理店・飲食店などで火を使用する設備または器具を設けたものは、延べ面積に関係なく消火器具が必要になりました。

ただし、調理油過熱防止装置、自動消火装置、そのほか危険な状態の発生を防ぎ、発生したときの被害を軽くする安全機能を持つ装置を設けた設備・器具だけの場合は、この対象から外れ、延べ150㎡以上の基準で判断します(施行規則 第5条の4)。

ひっかけ注意
「うちの店は150㎡未満だから消火器は要らない」は、今は通用しません。
ガスこんろなど、安全装置のない火を使う器具が1台でもあれば、店の広さに関係なく消火器具が必要です。古い店を居抜きで借りるときは、厨房の器具を必ず確かめます。
ここまでのポイント
  • (3)項の飲食店は、火を使う設備・器具があれば面積に関係なく必要
  • 調理油過熱防止装置・自動消火装置などの措置があるものだけなら延べ150㎡以上
  • 2019年10月1日から

質問② 何本いる? ― 能力単位の計算

必要な能力単位は、延べ面積(または床面積)を用途ごとの面積で割って求めます。劇場などは50㎡、店舗・ホテル・病院・工場などは100㎡、学校・図書館・事務所などは200㎡です。耐火構造で内装が難燃材料なら、この面積を2倍にできます。

消火器具は、置いた消火器の能力単位の合計が、延べ面積を次の面積で割った数以上になるように設けます(施行規則 第6条)。

用途 1単位あたり 耐火+難燃
(1)イ、(2)、(16の2)、(16の3)、(17) 50㎡ 100㎡
(1)ロ、(3)〜(6)、(9)、(12)〜(14) 100㎡ 200㎡
(7)、(8)、(10)、(11)、(15) 200㎡ 400㎡
「耐火+難燃」は、特定主要構造部を耐火構造とし、壁と天井の室内に面する部分を難燃材料で仕上げたもの。水バケツは8L以上3個で1単位、乾燥砂はスコップ付き50Lで0.5単位です。

例として、延べ1,200㎡の事務所((15)項)なら 1,200÷200=6単位。耐火構造で内装が難燃材料なら 1,200÷400=3単位です。実際には次の「歩行距離20m」を満たすために、これより多く置くことがよくあります。

このほかに、少量危険物・指定可燃物を扱う場所、変圧器・配電盤などの電気設備がある場所、ボイラー室・鍛造場・乾燥室など火気を多く使う場所(床面積25㎡ごとに1単位)には、消火器を追加します。屋内消火栓設備やスプリンクラー設備を基準どおりに設けた部分では、適応性が同じなら能力単位を3分の1まで減らせます(11階以上の部分は減らせません。施行規則 第8条)。

たとえるなら
能力単位は、消火器の「消す力のポイント」です。
建物の広さに応じて必要なポイント数が決まり、置いた消火器のポイントを足して、それ以上になればよい、という考え方です。燃えにくい建物(耐火構造+難燃内装)は、必要なポイントが半分で済みます。
ここまでのポイント
  • 延べ面積÷50/100/200㎡で必要な能力単位を出す
  • 耐火構造+内装難燃なら、割る面積は2倍(必要な単位は半分)
  • 電気設備・火気の多い場所・危険物の場所は追加
  • 屋内消火栓・スプリンクラーがあれば3分の1まで減らせる(11階以上は不可)


質問③ どこに置く? ― 歩行距離20mと電気設備

消火器は、各階のどこからでも歩行距離20m以内になるように置きます。変圧器や配電盤がある場所には、電気設備に使える消火器を床面積100㎡以下ごとに1本追加します。

消火器具は、防火対象物の階ごとに、各部分から歩行距離20m以下になるように置きます(施行規則 第6条第6項)。置き場所は、通行や避難のじゃまにならず、使うときにすぐ持ち出せる所です(施行令 第10条第2項)。

電気設備の設計で特に大事なのが、変圧器・配電盤などの電気設備がある場所です。ほかの消火器とは別に、電気設備の火災に使える消火器を、その場所の床面積100㎡以下ごとに1本置きます(施行規則 第6条第4項)。キュービクルを置いた電気室や屋上の受変電設備の近くには、C火災(電気火災)に使える消火器を忘れずに計画します。

ひっかけ注意
二酸化炭素消火器は、どこにでも置けるわけではありません。
二酸化炭素やハロゲン化物(総務省令で定めるものを除く)を出す消火器は、地下街・準地下街や、総務省令で定める換気の悪い地階・無窓階などには置けません(施行令 第10条第2項)。電気室が地階にあるときは、粉末(ABC)消火器などで計画します。
ここまでのポイント
  • 各階のどこからでも歩行距離20m以内に1本
  • 変圧器・配電盤などの電気設備の場所は100㎡以下ごとに1本を追加
  • 二酸化炭素消火器は地下街や一部の地階・無窓階に置けない
ひとことで言うと:「必要かは用途と面積、本数は面積÷50/100/200㎡、置き場所は歩行距離20m以内。電気室は100㎡ごとに1本を追加」。

よくある質問

事務所ビルは何㎡から消火器が必要ですか?

事務所は(15)項で、延べ面積300㎡以上から必要です。ただし、地階・無窓階・3階以上の階で床面積50㎡以上の階には、延べ面積に関係なく必要です。

小さな飲食店にも消火器は必要ですか?

2019年10月1日から、火を使う設備・器具を設けた飲食店などは、延べ面積に関係なく必要です。調理油過熱防止装置などの措置があるものだけなら延べ150㎡以上で必要です。

消火器の本数はどう決めますか?

延べ面積を用途ごとの面積(50・100・200㎡)で割って必要な能力単位を出し、その合計以上になるように置きます。あわせて、各階のどこからでも歩行距離20m以内になるように配置します。

電気室にも消火器が必要ですか?

変圧器・配電盤などの電気設備がある場所には、電気設備の火災に使える消火器を、床面積100㎡以下ごとに1本追加で置きます(施行規則 第6条第4項)。

スプリンクラーがあると消火器を減らせますか?

屋内消火栓設備やスプリンクラー設備を基準どおりに設けた部分では、適応性が同じなら能力単位を3分の1まで減らせます。11階以上の部分は減らせません。


まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
飲食店は延べ150㎡以上から 火を使う設備・器具があれば面積に関係なく必要
50㎡の条件は料理店だけ 地階・無窓階・3階以上の階なら全用途共通
事務所は150㎡以上 事務所・学校・図書館などは延べ300㎡以上
本数は面積だけで決まる 能力単位と歩行距離20mの両方を満たす
電気室は普通の消火器で足りる 電気設備用を100㎡以下ごとに1本追加
「用途 → 延べ面積 → 階ごとの条件 → 能力単位 → 歩行距離 → 追加設置」の順で確かめ、最後は所轄の消防に確認します。

根拠:消防法施行令 第10条・別表第一、消防法施行規則 第5条の4・第6条〜第8条。実際の適用は所轄消防本部の指導により異なる場合があります。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?

タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。

次に読むならこれ消防設備の早見表|(一)項 劇場・集会場等の設置基準について詳しく解説防火対象物別|消防設備の早見表
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。