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家の電気は、電柱の上にあるバケツのような変圧器で6,600Vから100V・200Vに下げて届いています。キュービクルのある建物は、この変圧器を自分の敷地に置いているようなものです。しかも1台ではなく、エアコンやポンプ用、照明やコンセント用と、用途ごとに何台も並べます。第8回は、単線結線図の真ん中に並ぶ変圧器バンクの読み方です。

結論

変圧器バンクは一次側の開閉器・変圧器・二次側の主幹・B種接地のまとまりです。動力は三相3線210V、電灯は単相3線210V/105Vと用途ごとに分け、容量は負荷の合計×需要率から標準容量に切り上げます。

  • 記号の横の「相・電圧・容量・結線」を読む
  • 動力と電灯を分けて、照明のちらつきを防ぐ
  • 105V・210Vは電圧降下を見込んだ出口の電圧
  • 大きすぎる変圧器は鉄損を払い続ける
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
夏の午後のビルでエアコンやポンプは動力の三相変圧器300kVAから、照明やコンセントは電灯の単相変圧器150kVAから電気を受ける場面から、PF付LBS・変圧器・ACB・B種接地の4点セットで読むバンク、三相3線210Vと単相3線210V/105Vの二次側、負荷の合計に需要率をかけて標準容量に切り上げる容量の決め方と鉄損・銅損を示す動く図解
約50秒でくり返します。使っている場面から、バンクの読み方、三相と単相、容量の順に見ます。

変圧器は用途ごとに分ける

大きな変圧器を1台置けば済みそうですが、ふつうは動力用と電灯用に分けます。必要な電気の形がちがううえに、エアコンやポンプが起動したときの電圧の落ち込みで、事務室の照明がちらつくのを防ぐためです。

用途 変圧器 二次側 おもな負荷
動力 三相変圧器(3φ) 三相3線 210V エアコン・ポンプ・ファン・エレベーター
電灯 単相変圧器(1φ) 単相3線 210V/105V 照明・コンセント・OA機器
大きな建物では、動力・電灯のほかに、非常用や特定の設備用のバンクを分けることもあります。
読み方のコツ:丸が2つ重なった記号がいくつ並んでいるかを数え、それぞれの下に書かれた負荷名称(一般動力、一般照明など)を見ます。台数には、負荷の性格と運用がちがうという理由があります。受電から変圧までの全体の流れは第1回で見ています。
ここまでのポイント
  • 動力と電灯を分ける
  • 照明のちらつきを防ぐ
  • 片方ずつ止めて点検できる

バンクは「開閉器・変圧器・主幹・B種接地」の4点セット

1つのバンクは、高圧母線から下に向かって、一次側の開閉器、変圧器、二次側の主幹の順に並びます。変圧器の二次側には、高圧と低圧が混ざったときの危険を防ぐB種接地が付きます。

図面の表記 読み方
PF付LBS(またはPC) 一次側の開閉器。PFは励磁突入電流で切れない定格を選ぶ
丸2つと「3φ 6,600/210V 300kVA」 相数・電圧比・容量
「Δ-Δ」「Δ-Y」「V」 結線。単線結線図では省略されることもある
%Z(%インピーダンス) 短絡電流や電圧変動の計算に使う値
ACB・MCCB 二次側の主幹。低圧の幹線を守る
EB(B種) 変圧器の二次側の接地
相数・容量・一次二次電圧・用途は、変圧器のそばに必ず書かれます。

小さな変圧器では、一次側に高圧カットアウト(PC)を使うこともあります。どちらを選ぶかと、ヒューズの大きさの決め方は変圧器一次側開閉器(PC・LBS)の選定方法でくわしく扱っています。主遮断装置のPF・LBSとのちがいは第5回とあわせて見てください。

ここまでのポイント
  • 一次側の開閉器
  • 相・電圧・容量・結線
  • 二次側の主幹とB種接地


三相3線と単相3線 ― 二次側の形がちがう

動力用の三相3線は、3本の線のどの2本の間も210Vです。モーターを回すのに向いた電気です。電灯用の単相3線は、外側の2本(L1・L2)の間が210V、真ん中の中性線(N)との間が105Vになり、家の分電盤と同じ形です。

結線 特徴 使いどころ
Δ-Δ 動力用の標準。1台が故障してもV結線として運転を続けられる 一般動力
Δ-Y 二次側に中性点が取れる 三相4線式にしたい大きな建物
V-V 単相変圧器2台で三相をつくる。2台合計の約86.6%まで使える 費用を抑えたい小さめの動力
単相3線 210V/105Vをつくる 照明・コンセント
V結線の容量の計算は単相変圧器2台をV結線にすると何kVAで使えるかで扱っています。
読み方のコツ:定格二次電圧の105V・210Vは、配線で電圧が下がる分を見込んだ出口の電圧です。機器が使う100V・200Vとは別のものなので、図面で「210V」と書かれていても間違いではありません。
ここまでのポイント
  • 動力は三相3線210V
  • 電灯は単相3線210V/105V
  • 105V・210Vは出口の電圧

容量は「負荷の合計×需要率」から標準容量へ

つながる機器の容量をそのまま足した値で変圧器を選ぶと、大きすぎます。すべての機器が同時にいっぱいで動くことはないからです。

手順 考え方 例
① 負荷の合計 つながる機器の容量を足す 400kVA
② 需要率をかける 同時に使う割合 ×0.6=240kVA
③ 不等率で割る グループどうしで最大の時刻がずれる分 複数のグループを合わせるとき
④ 標準容量に切り上げ 50・75・100・150・200・300・500kVAなど 300kVA
数値は考え方を示す例です。需要率は建物の用途や負荷の種類で変わります。

変圧器の損失には、つないでいる間ずっとかかる鉄損と、負荷の2乗で増える銅損があります。大きすぎると鉄損を払い続け、小さすぎると過熱します。負荷率40〜60%ほどが経済的といわれます。需要率の取り方は変圧器容量の選定・計算方法、設計の考え方は設計マニュアル⑨ 変圧器部で扱っています。

ここまでのポイント
  • 合計に需要率をかける
  • 標準容量に切り上げる
  • 鉄損と銅損のバランス


間違えやすいところ

よくある読み違い

  1. 負荷の合計をそのまま変圧器容量と読む:需要率をかけた最大需要電力から選ばれています。
  2. 210Vを200Vの書き間違いと思う:電圧降下を見込んだ定格二次電圧です。
  3. V結線を2台分の容量で読む:使えるのは2台合計の約86.6%です。
  4. B種接地を見落とす:変圧器の二次側に必ず付きます。接地は第11回で扱います。
  5. 変圧器の容量と受電設備容量を混同する:受電設備容量は変圧器とコンデンサなどの合計です。

次回は、力率をよくするSC(進相コンデンサ)とSR(直列リアクトル)の読み方です。保護継電器は第7回で見ています。

ここまでのポイント
  • 需要率を見る
  • 210Vは正しい
  • V結線は約86.6%

よくある質問

変圧器バンクとは何ですか?

変圧器1台と、その前後に付く機器をひとまとまりにした呼び方です。一次側の開閉器(PF付LBSや高圧カットアウト)、変圧器、二次側の主幹(ACBやMCCB)、B種接地で1つのバンクになります。

なぜ変圧器を1台にまとめず、何台にも分けるのですか?

動力(三相)と電灯(単相)では、必要な相数と電圧がちがうからです。まとめると、エアコンやポンプの起動で照明がちらつくこともあります。分けておけば、片方を止めて点検しながら、もう片方を生かす運用もできます。

二次電圧が100V・200Vではなく105V・210Vなのはなぜですか?

変圧器から機器までの配線で電圧が下がる分を見込んで、出口の電圧を少し高めにしているからです。105V・210Vは変圧器の定格二次電圧で、使う側の電圧100V・200Vとは別のものです。

図面の「Δ-Δ」「V結線」は何を表していますか?

変圧器の巻線のつなぎ方です。Δ-Δは動力用の標準、Δ-Yは二次側に中性点が取れる結線、V結線は単相変圧器2台で三相をつくる結線です。V結線は、2台の合計容量の約86.6%までしか使えません。

変圧器の容量はどう決めますか?

つながる機器の容量を合計し、需要率(同時に使う割合)をかけて最大需要電力を出します。いくつかのグループを合わせるときは不等率も考えます。そこから50・75・100・150・200・300kVAなどの標準容量に切り上げます。

変圧器は大きめにしておけば安心ですか?

大きすぎると、負荷が少なくても鉄損(無負荷損)を払い続けることになります。小さすぎると過熱します。負荷率40〜60%ほどが経済的といわれ、将来の増設も見て決めます。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。