「接触防護措置」「簡易接触防護措置」「活線作業」「停電作業」「接近限界距離」。どれも電気の安全で必ず出てくる言葉ですが、用語集の一行だけでは、何を何cm離せばいいのか、どの順で確かめればいいのかまでは分かりません。この記事は、この5つの言葉だけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
接触防護措置と簡易接触防護措置、名前が似ていて違いが分かりません。
ハリタハリタ
違いは高さだよ。屋内なら2.3mと1.8m、屋外なら2.5mと2m。高さが取れなければ、囲えばいいんだ。

結論

設備側の対策が接触防護措置(屋内2.3m・屋外2.5m以上か、囲う)、作業側の対策が停電作業と活線作業です。止められるなら止めて確かめてから触り、止められないなら保護具と器具で守ります。高い電圧には、近づいてよい距離が決まっています。

  • 簡易接触防護措置は、屋内1.8m・屋外2m以上
  • 停電作業は、切る・表示・放電・検電・短絡接地の順
  • 活線作業は、絶縁用保護具と活線作業用器具で守る
  • 高圧は頭上30cm・躯側60cm、特別高圧は電圧ごとの接近限界距離
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

接触防護措置と簡易接触防護措置 ― 高さで離すか、囲う

ペン太ペン太
「簡易」のほうなら、どの設備にも使っていいんですか?
ハリタハリタ
どちらが求められるかは、設備ごとの条文で決まっているんだ。まずは条文で、どちらが必要かを確かめよう。

電気設備に人が触れないようにする方法は、電技解釈 第1条で2段階に定義されています。どちらも、高さで離す(イ)か、さく・へいや金属管で囲う(ロ)かのどちらかです。

接触防護措置屋内2.3m・屋外2.5m以上
簡易屋内1.8m・屋外2m以上
触れない範囲手を伸ばしても/容易に
囲うさく・へい・金属管
接触防護措置 簡易接触防護措置
屋内の高さ 床上2.3m以上 床上1.8m以上
屋外の高さ 地表上2.5m以上 地表上2m以上
触れない範囲 人が通る場所から手を伸ばしても触れない 人が通る場所から容易に触れない
囲う方法 さく・へいを設ける、金属管に収めるなど 同じ

どちらが求められるかは、設備ごとの条文で決まります。たとえば、屋外照明の対地電圧を300V以下まで使える条件の1つとして、簡易接触防護措置が出てきます。

たとえるなら
接触防護措置は、薬を小さなお子さまの手が届かない棚の上に置くようなもの
高い棚に置けば、手を伸ばしても届きません。棚が低いなら、鍵のかかる箱に入れます。電気設備も同じで、手を伸ばしても届かない高さに置くか、さく・へい・金属管で囲って、人が触れないようにします。
ここに注意!
「1.8mの高さなら、どこでも大丈夫」ではありません。
床上1.8m以上でよいのは、簡易接触防護措置を求められる場面です。接触防護措置が求められる設備は、屋内で床上2.3m以上、屋外で地表上2.5m以上が必要です。どちらが求められるかは、電技解釈のそれぞれの条文で決まります。
ここまでのポイント
  • 接触防護措置は、屋内2.3m・屋外2.5m以上か、囲う
  • 簡易接触防護措置は、屋内1.8m・屋外2m以上か、囲う
  • どちらが必要かは、設備ごとの条文で決まる


停電作業と活線作業 ― 止めて確かめるか、止めずに守るか

ペン太ペン太
ブレーカーを切ったら、もう触っていいですよね?
ハリタハリタ
まだだよ。表示して、放電して、検電して、短絡接地してから。誰かが入れてしまうこともあるからね。

電気設備に触れる作業は、電気を止めて行う停電作業と、止めずに行う活線作業に分かれます。安全なのは停電作業で、労働安全衛生規則には、電気を止めたあとに何を確かめるかが決められています。

停電作業切る・表示・放電
確かめる検電して短絡接地
活線作業保護具と器具で守る
優先できるかぎり停電作業
  1. 開路に使った開閉器に施錠するか、「通電禁止」の表示をする(監視人を置く方法もある)
  2. 電力ケーブルやコンデンサに残っている電気(残留電荷)を、確実に放電する
  3. 検電器具で停電を確かめ、短絡接地器具で確実に短絡・接地する
  4. 作業が終わったら、作業者が離れたこと、短絡接地器具を外したことを確かめてから送電する

止められない設備を扱うときが活線作業で、低圧でも高圧でも、絶縁用保護具(ゴム手袋など)を着る、活線作業用器具を使うなどの対策をとります。検電器具の使い方は、検電器の使い方で説明しています。

たとえるなら
停電作業の手順は、手術の前の確認のようなもの
手術の前には、患者さん・場所・手順を何度も確かめますよね。停電作業も、切る・表示する・放電する・検電する・短絡接地する、と順に確かめてから、はじめて手を触れます。1つでも抜けると、思わぬところで電気が来ます。
ここに注意!
「ブレーカーを切ったから、すぐ触ってよい」ではありません。
切ったブレーカーをほかの人が入れてしまう、ケーブルやコンデンサに電気が残っている、別の回路と思い違いをしている、ということがあります。施錠か表示、放電、検電、短絡接地まで済ませてから作業します。
ここまでのポイント
  • 停電作業は、施錠・表示、放電、検電、短絡接地の順に確かめる
  • 活線作業は、絶縁用保護具と活線作業用器具で守る
  • できるかぎり停電作業にする


どこまで近づいてよい? ― 高圧は頭上30cm・躯側60cm、特別高圧は接近限界距離

ペン太ペン太
触らなければ、高圧の線の近くにいても平気ですか?
ハリタハリタ
高い電圧は、近づくだけで放電することがあるんだ。高圧なら頭上30cm・躯側60cmが目安の線だよ。

電圧が高くなると、触れなくても、近づいただけで放電して感電するおそれがあります。そこで、近づく作業にも決まりがあります。

高圧頭上30cm・躯側60cm
22kV以下20cm
66kV以下50cm
154kV以下120cm
電圧 決まり 根拠
高圧 頭上30cm・躯側(足下)60cm以内に近づくおそれがあれば、絶縁用防具を付けるなどの対策 安衛則 第342条
特別高圧 22kV以下 接近限界距離 20cm 安衛則 第344条
特別高圧 33kV以下 接近限界距離 30cm 同上
特別高圧 66kV以下 接近限界距離 50cm 同上
特別高圧 77kV以下 接近限界距離 60cm 同上
特別高圧 154kV以下 接近限界距離 120cm 同上

特別高圧の表は抜粋で、220kVを超えると200cmまで決められています。これは法令で守るべき最小の距離で、電力会社や現場では、これより余裕を持たせた距離で管理することが多くあります。

ここに注意!
「触らなければ、近づくのは大丈夫」ではありません。
高い電圧は、触れなくても、近づいただけで放電して感電することがあります。だから特別高圧では、電圧ごとに身体や持ち物を近づけてはいけない接近限界距離が決められています。脚立や工具の先も「身体の一部」として考えます。
ここまでのポイント
  • 高圧は、頭上30cm・躯側60cmが目安の線
  • 特別高圧は、電圧ごとに接近限界距離が決まっている
  • 脚立や工具の先も含めて、近づけない

まとめ|結論

結論

設備は、接触防護措置(屋内2.3m・屋外2.5m以上)か簡易接触防護措置(屋内1.8m・屋外2m以上)、または囲って人が触れないようにします。作業は、できるかぎり停電作業にし、切る・表示・放電・検電・短絡接地の順に確かめます。止められないときは活線作業として保護具と器具で守り、高い電圧には近づいてよい距離を守ります。

作業の前に、この順で確かめます。

  1. その設備は止められるか。止められるなら停電作業にする
  2. 止めたら、施錠・表示、放電、検電、短絡接地まで済ませる
  3. 止められないなら、保護具と器具をそろえ、近づいてよい距離を確かめる
  4. 作業のあとは、全員が離れたことを確かめてから送電する


よくある質問

接触防護措置とは何ですか?

人が電気設備に触れないようにする措置で、電技解釈 第1条で定義されています。屋内は床上2.3m以上、屋外は地表上2.5m以上の高さに、手を伸ばしても触れない範囲に置くか、さく・へいを設ける、金属管に収めるなどで人が近づけないようにします。

簡易接触防護措置との違いは何ですか?

高さの基準と、触れない範囲の言い方が違います。簡易接触防護措置は、屋内が床上1.8m以上、屋外が地表上2m以上で、「容易に触れることのない範囲」に置けばよいとされています。さく・へいや金属管などで囲う方法は両方に共通です。

停電作業では、何をしてから触ればいいですか?

開閉器を切って施錠か通電禁止の表示をし、残留電荷を放電し、検電器具で停電を確かめ、短絡接地器具で短絡・接地してから作業します。終わったら、作業者が離れたことや短絡接地器具を外したことを確かめてから送電します(安衛則 第339条)。

活線作業とは何ですか?

電気を止めずに、充電されている電路を扱う作業です。低圧でも高圧でも、絶縁用保護具を着る、活線作業用器具を使うなどの対策が求められます(安衛則 第341条・第346条など)。

接近限界距離とは何ですか?

特別高圧の充電電路に対して、身体や持ち物を近づけてはいけない距離です。22kV以下で20cm、66kV以下で50cm、154kV以下で120cmなど、電圧が高いほど長くなります(安衛則 第344条)。高圧では、頭上30cm・躯側60cm以内に近づくおそれがあれば、防具や保護具の対策をとります(第342条)。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。