直流と交流・単相と三相の全体像
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

家のコンセントは100V、工場の機械は「三相200V」――同じ電気なのに何が違うの?を今日で解決します。キーワードは「直流と交流」単相と三相。図面に出てくる「1φ2W」「3φ3W」の意味が読めるようになります。

ペン太ペン太
図面の「1φ2W」や「3φ3W」って暗号みたいで…。φって何のことですか?
ハリタハリタ
φは相の数です。単相か三相か、電気の波が1本か3本かの違い。ここが読めると図面が一気に分かります。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 配電が直流ではなく交流になっているのは、何が都合よいからか
  • 図面の「1φ3W 100/200V」は、何をどう表しているか
  • 「200Vのエアコン」と言われたとき、最初に確認するのはどこか

直流と交流 ― 電池とコンセントの違い

トピック1:直流と交流 ― 電池とコンセントの違い
ペンタ
ペンタ(新人)
はりたさん、そもそも「直流」と「交流」って何が違うんですか?スマホの充電器に「AC/DC」って書いてあるのは見たことあるんですけど…。
はりた
はりた(先輩)
いいところに気づいたね。直流(DC)=電池交流(AC)=コンセントと覚えればOK。図①を見て。直流は電気がいつも同じ向きに流れる。交流は向きが1秒に50〜60回も入れかわるんだ。
図1 直流と交流の違い(アニメ):直流は同じ向きに流れ電圧一定、交流は向きが入れかわり電圧が波になる
図① 直流(DC)と交流(AC)― 電池はまっすぐ、コンセントは波
ペンタ
ペンタ(新人)
えっ、コンセントの電気って1秒に50回も向きが変わってるんですか!?なんでそんな面倒なことを…。
はりた
はりた(先輩)
理由はシンプルで、交流は変圧器でカンタンに電圧を変えられるから。前回の「送電は高電圧が有利」の話、覚えてる?発電所から家まで、電圧を上げ下げしながら届けるには交流が都合がいいんだ。ちなみに向きが入れかわる回数が周波数。東日本は50Hz、西日本は60Hzだよ。
直流(DC) 交流(AC)
身近な例 電池 コンセント
流れる向き いつも同じ向き 1秒に50〜60回入れかわる
電圧を変える 変圧器でカンタンに変えられる
配電での役割 発電所から家まで電圧を上げ下げして届ける主役
ここまでのポイント
  • 直流(DC)=電池、交流(AC)=コンセント
  • 直流はいつも同じ向き、交流は1秒に50〜60回向きが入れかわる
  • 交流が主役なのは、変圧器でカンタンに電圧を変えられるから
  • 向きが入れかわる回数が周波数。東日本は50Hz、西日本は60Hz

単相と三相 ― 波が1本か、3本か

トピック2:単相と三相 ― 波が1本か、3本か
ペンタ
ペンタ(新人)
じゃあ「単相」と「三相」は何が違うんですか?工場の図面で「3φ200V」って見ました。
はりた
はりた(先輩)
φ(ファイ)は「相」のこと。単相=波が1本、三相=波を3本、1/3ずつズラして送る方式だよ。図②を見て。単相は波の谷で力がゼロになるけど、三相は常にどれかの波が山でしょ?だからパワーが途切れない。しかもこの3つの波が作る「回転磁界」で、モーターがひとりでに回るんだ。
図2 単相と三相の違い(アニメ):単相は波1本でパワーが脈打つ、三相は3本の波で途切れずモーターが回る
図② 単相と三相 ― 三相は「常にどれかが山」だからモーター向き
ここまでのポイント
  • φ(ファイ)は「相」。単相=波が1本、三相=波を3本、1/3ずつズラす
  • 単相は波の谷で力がゼロになるが、三相は常にどれかの波が山でパワーが途切れない
  • 3つの波が作る回転磁界で、モーターがひとりでに回る
  • 電灯=単相、動力=三相。盤も幹線も契約も、この区別で分かれる


図面の「1φ2W」「3φ3W」はこう読む

トピック3:図面の「1φ2W」「3φ3W」はこう読む

図面や盤図に出てくる表記は「相の数 φ電線の本数 W」のセットです。

  • 1φ2W 100V単相2線式。昔ながらのコンセント回路。
  • 1φ3W 100/200V単相3線式いまの住宅・ビルの標準。真ん中の線(中性線)を使うと100V、両端で200Vが取れる。
  • 3φ3W 200V三相3線式。エアコンの室外機・ポンプ・ファンなどモーター(動力)用
ペンタ
ペンタ(新人)
だから照明・コンセントの図面は「電灯」、モーター系は「動力」って呼ばれてたんですね!つながりました!
はりた
はりた(先輩)
その通り!電灯=単相、動力=三相。この区別は盤も幹線も契約も全部に効いてくる、超重要な分類だよ。

💼 この回が実務でこう生きる

  • 負荷を電灯(単相)/動力(三相)に正しく振り分けられる → 盤・幹線・契約の設計の第一歩。
  • 盤図・単線結線図「1φ3W」「3φ3W」が読める
  • 「この機器、単相200V?三相200V?」という現場の定番確認ができる。
ペン太ペン太
200Vと書いてあれば三相ですよね?家庭のエアコンも200Vですし…
ハリタハリタ
危ない勘違いです。家庭の200Vは単相。三相200Vとは契約も配線も別物なので、必ず銘板で確認します。
図面の表記 方式 どこで使うか
1φ2W 100V 単相2線式 昔ながらのコンセント回路
1φ3W 100/200V 単相3線式 いまの住宅・ビルの標準。中性線を使うと100V、両端で200V
3φ3W 200V 三相3線式 エアコンの室外機・ポンプ・ファンなどモーター(動力)用
ここまでのポイント
  • 図面表記は「相の数φ+電線の本数W」のセット
  • 1φ3W 100/200Vは、中性線を使えば100V、両端で200Vが取れる
  • 負荷を電灯(単相)/動力(三相)に振り分けるのが、盤・幹線・契約の設計の第一歩

📋 実務活用事例|同じ200Vでも「単相」と「三相」を間違えると動かない

トピック4:実務活用事例|同じ200Vでも間違えると動かない

ケース:店舗の改修で「200Vのエアコンを移設してほしい」と言われた。

同じ「200V」でも、家庭用エアコン=単相200V(1φ3Wの両端)業務用パッケージエアコン=三相200V(3φ3W・動力)と、電源がまったく別物。

機器の銘板で「単相200V」か「三相200V」かを確認せずに図面を描くと、電灯盤から動力機器に配線してしまい、動かない・やり直しという典型トラブルに。

結論:機器を見たら銘板の「相」と「電圧」をセットで確認。図面では 1φ/3φ の表記を必ず確かめる。これだけで新人がやりがちな配線ミスの多くを防げます。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

「こんなこと聞いていいのかな…」という質問ほど大事。ここで拾います。

Q.コンセントの穴、左右で長さが違うのはなぜですか?
→ 長い方(左)は接地側といって大地とつながっています。交流にも「基準の側」があるんです。普段は向きを気にしなくて大丈夫ですが、音響機器などでは極性が話題になります。

Q.スマホ充電器の「ACアダプタ」って、何をしているんですか?
→ コンセントの交流100Vを、直流5Vなどに変換しています。だから「AC(交流)アダプタ」。今日の直流・交流の話がそのまま手元にあります。


🔎 深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう

トピック5:深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう

Q.50Hzと60Hzって、混ぜたらダメなんですか?

A.東日本50Hz・西日本60Hzで、境界は富士川(静岡)〜糸魚川(新潟)あたり。最近の機器はどちらでも使える「50/60Hz共用」が多いけど、古いモーターやタイマー系は周波数指定のものがある。移設案件では銘板の周波数チェックも忘れずに。

Q.家のエアコン200Vは三相なんですか?

A.いい質問!あれは単相200V。単相3線式(1φ3W)の両端をつなぐと200Vが取れるんだ。三相200Vを使うには動力の契約が別に必要。「200V=三相」ではない、がポイント。

Q.なんで三相は電線3本で送れるんですか?

A.3つの波は1/3ずつズレているから、3本の電流を足すと常にゼロになる。だから帰り道の線を共有できて、電線が少なくて済む=送電が効率的。三相が世界標準になった理由のひとつだよ。

💬 はりたから新人さんへ:現場で機器を見たら、まず銘板。「単相200V?三相200V?」と口に出して確認する習慣をつけよう。この一言が言える新人は、現場からの信頼が一気に上がります。
ここまでのポイント
  • 東日本50Hz・西日本60Hzの境界は富士川(静岡)〜糸魚川(新潟)あたり
  • 最近の機器は50/60Hz共用が多いが、古いモーターやタイマー系は周波数指定のものもある
  • 三相は帰り道の線を共有できて電線が少なくて済むのも、世界標準になった理由のひとつ

⚠️ ここだけ注意

トピック6:ここだけ注意

三相の電流計算には「√3(約1.73)」という係数が出てきますが、いまは「三相は同じ電力でも電流が小さくて済む」とだけ覚えればOK。くわしい計算は次回・電力とkVAの回でじっくりやります。

ペン太ペン太
単相と三相の違いは分かりました。次は何を押さえれば?
ハリタハリタ
東日本50Hz・西日本60Hzの周波数の違いや、1φ3Wの100/200Vを、図面と実物で結びつけていきましょう。


まとめ

トピック7:まとめ

結論。「相」が読めれば、図面も現場も迷わない。同じ200Vでも、単相か三相かで別物になります。

見分けたいこと 単相(電灯) 三相(動力)
波の数 1本 3本を1/3ずつズラす
力の出方 波の谷で力がゼロになる 常にどれかの波が山でパワーが途切れない
モーター 3つの波が作る回転磁界でひとりでに回る
図面表記 1φ2W/1φ3W 3φ3W
200Vの例 家庭用エアコン(1φ3Wの両端) 業務用パッケージエアコン

電気のかたち

  • 直流=電池、交流=コンセント。交流は変圧器で電圧を変えられるから送電の主役(図①)。
  • 周波数は東日本50Hz/西日本60Hz。
  • 単相=波1本(電灯)、三相=波3本(動力)。三相はパワーが途切れずモーターが回る(図②)。

図面と現場での確認

  • 図面表記は「相φ+線W」:1φ2W/1φ3W 100/200V/3φ3W 200V。
  • 「200V=三相」ではない。銘板で相と電圧をセット確認

現場で機器を見たら、まず銘板。「単相200V? 三相200V?」と口に出して確認する習慣をつけると、新人がやりがちな配線ミスの多くを防げます。

▶ 次回・第3回

電力・電力量・力率ってなに?(kW・kVA・kvar)
「容量」の話に必須のkWとkVAの違いを、ビールジョッキの例えでスッキリ理解します。

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。

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📖次に読むならこれ電気設備の新人が読む順番|配属から1年の教育ロードマップ新人教育
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。