この記事の計算を、その場でツールで

変圧器容量・需要率 計算ツール(補正係数を自動適用)

負荷と需要率・補正係数から変圧器容量(kVA)を計算。計算書として保存できます。

セコサポ(電気設計・工事ツール集)で開きます。登録不要で、入力した値はお使いのブラウザに保存されます。

この記事は、連載「引込・受電設備の設計マニュアル」の 第2回 契約電力の想定 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

変圧器の容量は、負荷を全部足した数字で決めると、たいてい大きすぎになります。建物の照明もコンセントもモーターも、同じ瞬間に全部がフルで動くことはないからです。そこで使うのが補正係数(需要率)。区分ごとの合計容量に係数を掛けて「同時に使う分」だけにしてから、標準容量を選びます。この記事では、その4ステップを、食堂のたとえと動く図でひとつずつ確かめ、単相と三相の計算例まで通してやってみます。

単相の例。負荷を全部足すと130kVAで150kVAの変圧器が要りそうですが、補正係数を掛けると92.4kVA。100kVAで足ります。
この記事で読めるようになる用語:変圧器・需要率・最大需要電力・力率

変圧器容量の決め方 ― 拾う・分けて足す・掛ける・選ぶ

①負荷を拾い出し、②区分ごとに合計し、③区分の合計容量で読んだ補正係数を掛け、④標準容量から直近上位を選びます。

手順は4つだけです。大事なのは②で区分を分けてから③で掛けること。全部を足してから1つの係数を掛けるのではなく、照明は照明、コンセントはコンセントで合計し、それぞれの係数を掛けます。区分ごとに「同時に使う割合」がちがうからです。

この記事の係数と計算方法は、国土交通省の建築設備設計基準にある変圧器容量の算定方法にもとづいています。官庁施設の設計で使われる基準ですが、民間の建物でも考え方の目安としてよく使われます。

ここまでのポイント
  • ①拾い出し → ②区分ごとに合計 → ③補正係数を掛ける → ④標準容量を選ぶ
  • 係数は区分ごとにちがうので、分けてから掛ける
  • 単相(照明・コンセント)と三相(動力)は別々に計算する

補正係数(需要率)とは ― 「同時に使う割合」

たとえるなら
変圧器は、社員食堂の広さのようなものです。
社員が300人いても、昼休みに同じ時間に座るのは一部だけ。席を300人分つくると、いつもガラガラです。変圧器も同じで、つながっている負荷の合計(社員の人数)ではなく、同時に使う分(同時に座る人数)に合わせて広さを決めます。この「同時に座る割合」が補正係数です。

補正係数は、需要率と同じ考え方です。補正後の容量=区分の合計容量×補正係数。たとえば照明が80kVAあって係数が0.76なら、同時に使う照明は約60.8kVAと見込みます。

係数には、次のような性質があります。

  • 合計が大きいほど小さくなる:機器の数が多いほど、全部が同時にそろって動くことは少なくなります。社員が多い会社ほど、昼休みの時間がばらけるのと同じです。
  • よく動く負荷ほど大きい:OA機器は1日じゅう動くので1.0(割り引かない)。たまにしか使わない一般のコンセントは小さめです。
ひっかけ注意
「0.76%」ではありません。
補正係数は倍率です。0.76は「76%」の意味で、80kVA×0.76=60.8kVAと計算します。「0.76%」と書くと100分の1の大きさになってしまうので、表記に気をつけます。
ひっかけ注意
予備回路は、合計に入れません。
建築設備設計基準の算定表では、ΣL・ΣC・ΣFC・ΣOAに予備を含まないことになっています。拾い出すのは実際につながる負荷だけ。将来の増設分は、最後に容量を選ぶところで考えます。
ここまでのポイント
  • 補正係数=同時に使う割合(需要率と同じ考え方)
  • 補正後の容量=区分の合計容量×補正係数
  • 合計が大きいほど係数は小さくなる。OAは1.0
  • 係数は倍率(0.76=76%)。予備回路は合計に入れない


単相(照明・コンセント)は5つに分ける

照明・コンセント・FCU用コンセント・OA・その他の5つに分けて合計します。右の数字は、合計容量が小さいときから大きいときまでの補正係数の範囲です。
区分 入れるもの 係数の範囲
照明(L) 照明器具につながる負荷 1.00〜0.68
コンセント(C) 一般のコンセント。OA用・FCU用は除く 0.55〜0.27
FCU用(FC) ファンコイルユニット専用のコンセント 0.94〜0.75
OA パソコン・サーバーなどOA専用のコンセント 1.0
その他 上のどれにも入らない負荷 1.0が基本
係数は建築設備設計基準の曲線を読み取った値(セコサポの計算ツールと同じ)。

FCU(ファンコイルユニット)は、ビルやホテルで各部屋に置かれる空調の末端機器です。冷水や温水をもらって、送風機で部屋に風を送ります。単相100Vや200Vで動くことが多く、図面では「FCU」「FAN COIL」などと書かれています。空調なので夏や冬はずっと回り、一般のコンセントより係数が大きくなります。

ひっかけ注意
コンセントとOAを、いっしょに足さない。
同じ「コンセント」でも、一般のコンセントは0.55〜0.27、OAは1.0です。OA用をコンセントの合計に混ぜると、1日じゅう動くOA機器まで小さい係数で割り引いてしまい、容量が足りなくなります。盤の負荷表で、OA用の回路は別に集計します。
ここまでのポイント
  • 照明L・コンセントC・FCU用FC・OA・その他の5つに分ける
  • FCUは空調の末端機器。専用コンセントは一般のコンセントと分ける
  • OAは1.0。一般のコンセントに混ぜない

係数を読んで掛ける ― 単相の計算例

照明80kVAなら0.76、コンセント20kVAなら0.30、FCU用20kVAなら0.78。区分の合計容量から縦に上がって、曲線とぶつかったところが係数です。

係数は、区分の合計容量からグラフを読みます。コンセントとFCU用は、合計が小さいうちにぐっと下がり、40kVAくらいから先はほぼ横ばい。照明はゆるやかに下がり続けます。表のちょうど間の容量なら、前後の値のあいだを比例で読みます(計算ツールも同じように補間しています)。

区分 容量と係数(目安) 読み方
照明 f1 0kVA 1.00/60kVA 0.81/80kVA 0.76/120kVA 0.71/160kVA以上 0.68 ゆるやかに下がる
コンセント f2 0kVA 0.55/20kVA 0.30/40kVA以上 0.27 小さいうちに急に下がる
FCU用 f3 0kVA 0.94/20kVA 0.78/40kVA以上 0.75 小さいうちに下がる
OA・その他 容量によらず1.0 割り引かない
建築設備設計基準の曲線を読み取った値(セコサポの計算ツールと同じ)。
ひっかけ注意
係数は「回路ごと」ではなく「区分の合計」で読む。
照明の回路が1つ2kVAでも、照明の合計が80kVAなら、係数は80kVAで読んだ0.76です。回路ごとに2kVAで読むと、係数はほぼ1.0になってしまい、補正の意味がなくなります。

では、照明80kVA・コンセント20kVA・FCU用20kVA・OA10kVAの建物で計算してみます。

灰色が負荷の合計、色のついた部分が補正後の容量。照明とコンセントは大きく縮み、OAは1.0なので縮みません。
区分 合計×係数 補正後
照明 L 80kVA×0.76 60.8kVA
コンセント C 20kVA×0.30 6.0kVA
FCU用 FC 20kVA×0.78 15.6kVA
OA 10kVA×1.0 10.0kVA
合計 足しただけなら130kVA 92.4kVA
補正後の合計92.4kVAから、単相100kVAを選べます。足しただけの130kVAなら150kVAが必要でした。
ここまでのポイント
  • 係数は区分の合計容量でグラフを読む。間は比例で読む
  • 例:L80×0.76+C20×0.30+FC20×0.78+OA10×1.0=92.4kVA
  • 足しただけの130kVA(150kVA)から、100kVAに1ランク下がる


動力は、まず「kW」を「kVA」に直す

モーターの銘板のkWは軸から取り出す出力。変圧器が見るのは、効率と力率のぶん大きい入力のkVAです。
たとえるなら
モーターのkWは、給料の「手取り」のようなものです。
手取り(出力のkW)の前には、税金や保険料(効率と力率のぶん)が引かれています。変圧器が用意しなければならないのは、引かれる前の「額面」(入力のkVA)。手取りのまま足すと、必要な額を少なく見積もってしまいます。

動力の負荷は、銘板の定格出力(kW)ではなく、負荷容量(kVA)で拾います。建築設備設計基準には標準電動機の負荷容量の表(表2-2)があり、たとえば3.7kWのモーターは200Vで5.82kVAです。

定格出力 負荷容量(200V) 規約電流(200V)
0.75kW 1.60kVA 4.6A
1.5kW 2.78kVA 8.0A
2.2kW 3.85kVA 11.1A
3.7kW 5.82kVA 16.8A
5.5kW 8.53kVA 24.6A
7.5kW 11.8kVA 34.0A
11kW 16.7kVA 48.0A
15kW 22.2kVA 64.0A
22kW 31.9kVA 92.0A
37kW 52.7kVA 152A
建築設備設計基準 表2-2(標準電動機の負荷容量、200V)の値。400Vの電流はおおむね半分です。

インバーター機器やパッケージ形空調機のように、機器表に入力のkVAや電流が書いてあるものは、その値を使います。

ここまでのポイント
  • モーターのkWは出力。変圧器は入力のkVAで見る
  • 標準電動機は表2-2の負荷容量で拾う(3.7kW→5.82kVA、200V)
  • 入力が機器表にあるものは、その値を使う

動力の補正係数 ― 三相の計算例

動力は、冷凍機・空調関係・衛生関係・エレベーター・その他に分けて合計します。

動力も、区分ごとに合計して係数を掛けます。長い時間回り続ける冷凍機は係数が大きく、ほとんど割り引きません。空調関係の送風機やポンプはそこそこ。いちばん小さいのが衛生関係の0.21です。

たとえるなら
衛生関係のポンプは、家のトイレの水のようなものです。
家じゅうのトイレや洗面台を全部いっぺんに流すことは、まずありません。揚水ポンプや排水ポンプも、交互運転で片方が休んでいたり、動いても短い時間だったりします。だから係数は、容量によらず0.21と小さく決まっています。
冷凍機は1.00から0.94へ、空調関係は1.00から0.75へ、容量が大きいほど下がります。衛生関係はどの容量でも0.21です。
区分 容量と係数(目安) 読み方
冷凍機 f5 0kVA 1.00/80kVA 0.96/160kVA以上 0.94 ほとんど割り引かない
空調関係 f6 0kVA 1.00/40kVA 0.83/100kVA 0.775/160kVA以上 0.75 ゆるやかに下がる
衛生関係 f7 容量によらず0.21 大きく割り引く
エレベーター・その他 1.0 割り引かずに見込む
建築設備設計基準の曲線を読み取った値(セコサポの計算ツールと同じ)。

冷凍機80kVA・空調関係100kVA・衛生関係50kVA・エレベーター20kVAの建物で計算してみます。

衛生関係は0.21なので50kVAが10.5kVAまで縮みます。補正後の合計184.8kVAから、三相200kVAを選べます。
区分 合計×係数 補正後
冷凍機 80kVA×0.96 76.8kVA
空調関係 100kVA×0.775 77.5kVA
衛生関係 50kVA×0.21 10.5kVA
エレベーター 20kVA×1.0 20.0kVA
合計 足しただけなら250kVA 184.8kVA
補正後の合計184.8kVAから、三相200kVAを選べます。足しただけの250kVAなら300kVAが必要でした。
ひっかけ注意
「エレベーターも冷凍機と同じ0.94」ではありません。
0.94は、冷凍機の合計がかなり大きい(160kVA以上)ときの冷凍機の係数です。エレベーターは、この記事と計算ツール(初期値)では割り引かずに1.0で見込んでいます。区分をまちがえると、係数もまちがいます。
ここまでのポイント
  • 動力は冷凍機・空調関係・衛生関係・エレベーター・その他に分ける
  • 冷凍機1.00〜0.94、空調関係1.00〜0.75、衛生関係は0.21で一定
  • エレベーターとその他は1.0で見込む
  • 例:250kVA → 184.8kVA、300kVAから200kVAに下がる


最後は、標準容量の「直近上位」を選ぶ

補正後の合計より大きく、いちばん近い標準容量を選びます。92.4kVAなら単相100kVA、184.8kVAなら三相200kVAです。

補正後の合計が出たら、変圧器の標準容量の中から、それより大きく、いちばん近い容量を選びます。ぴったりの容量がなければ1つ上です。

ただし、補正後の合計が標準容量のすぐ下にあるときは要注意です。三相の例の184.8kVAは200kVAの約92%。将来の増設や、テナントの入れ替えで負荷が増えそうな建物なら、増える分を見込んでから選び直します。どこまで見込むかは、施主と決めておく設計条件です。

ひっかけ注意
「余裕を見て、とりあえず1ランク上」はムダになりやすい。
変圧器は、容量が大きいほど価格も、電気を流していないときの損失(無負荷損)も大きくなります。補正係数で絞った意味がなくなるので、上げるなら「何kVA増える見込みがあるか」をはっきりさせてからにします。
ひとことで言うと:「分けて足して、区分の合計で読んだ係数を掛けて、直近上位を選ぶ」。

受電設備全体の最大需要電力(契約電力の見込み)は、変圧器ごとの容量とは別に考えます。引込の計画での考え方は、冒頭の連載記事で扱っています。変圧器の結線や台数の決め方は、この記事の最後の連載リンクから進めます。

ここまでの計算は、セコサポの計算ツールで、負荷を入れるだけで係数の読み取りから容量の選定まで自動でできます。

ブラウザでそのまま使える登録不要ツール

この記事の方法で変圧器容量を計算するなら、姉妹サイト「セコサポ」の変圧器容量・需要率 計算ツール(補正係数を自動適用・登録不要)が便利です。

本記事をもとにした計算書式は変圧器需要率計算ツールの解説、Excel版はnoteで配布しています。幹線のサイズを需要率で選ぶ方法は幹線サイズの選定手順と計算方法で扱っています。

ここまでのポイント
  • 補正後の合計より大きく、いちばん近い標準容量を選ぶ
  • 標準容量のすぐ下なら、増設の見込みを確かめてから選ぶ
  • 根拠のない「とりあえず1ランク上」はコストと損失が増える


よくある質問

変圧器容量はどうやって決めますか?

①負荷を拾い出し、②区分ごとに合計し、③区分の合計容量で読んだ補正係数(需要率)を掛け、④補正後の合計より大きく、いちばん近い標準容量を選びます。

補正係数と需要率はちがうものですか?

考え方は同じです。「同時に使う割合」で、区分の合計容量に掛けて、実際に同時に使う容量を見込みます。

係数は、回路ごとの容量で読むのですか?

いいえ。照明なら照明の合計、コンセントならコンセントの合計、というように区分の合計容量で読みます。

OA機器の補正係数はいくつですか?

1.0です。OA機器は1日じゅう動くことが多いので割り引きません。一般のコンセントとは分けて集計します。

モーターは銘板のkWで足してよいですか?

いいえ。kWは出力なので、入力の負荷容量(kVA)に直してから足します。標準電動機なら、3.7kWは200Vで5.82kVAです。

衛生関係の係数はなぜ0.21と小さいのですか?

揚水ポンプや排水ポンプは交互運転で片方が休んでいたり、短い時間しか動かなかったりするためです。容量によらず0.21で見込みます。

予備回路は合計に入れますか?

入れません。建築設備設計基準の算定表でも、合計には予備を含めないことになっています。増設の見込みは、最後に容量を選ぶところで考えます。

まとめ ― 取り違えやすいところ

取り違えやすいところ 正しくは
負荷を全部足して容量を決める 区分ごとに補正係数を掛けて、同時に使う分で決める
全部足してから1つの係数を掛ける 区分ごとに合計し、それぞれの係数を掛ける
係数は回路ごとの容量で読む 区分の合計容量で読む
0.76%と書く 係数は倍率。0.76=76%
OAもコンセントに混ぜる OAは1.0で別に集計する
モーターはkWのまま足す 負荷容量(kVA)に直して足す
予備回路も合計に入れる 予備は入れない。増設は選ぶときに考える
「分けて足して、区分の合計で読んだ係数を掛けて、直近上位を選ぶ」で取り違えを防げます。
📘 体系的に学びたい方へ
このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。
関連する回:⑨ 変圧器部 ― 容量・結線・台数
ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。引込・高圧受変電・幹線・接地を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。