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受変電設備の設計|変圧器容量の計算方法と需要率の適用基準について詳しく解説

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あなたの変圧器、でかすぎます

 

今回の疑問

 

変圧器容量の計算方法について知りたい

 

本記事のおすすめの方
  • 変圧器容量の計算方法について知りたい方
  • 需要率の採用方法について知りたい方
本記事にてわかること
  1. 単相変圧器容量の計算方法
  2. 三相変圧器容量の計算方法
  3. kW⇒kVAの換算方法
  4. 需要率の適用方法

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負荷容量に基づく補正係数の算出書式

📚 参考文献について

本記事の内容は、「建築設備設計基準(国土交通省)」の記載内容をもとに、電灯・コンセント系統の変圧器容量算定に関する考え方をわかりやすく整理・解説したものです。

なお、実際の設計にあたっては、用途や施設規模に応じた補正係数の判断や、最新の設計基準・法令等を参照のうえ適切に対応することが求められます。

変圧器の容量はどう決める?|電灯・コンセント・OA機器ごとの負荷計算と補正係数の考え方

受変電設備を設計する際、最も重要なステップのひとつが**「変圧器容量の算定」**です。これは、建物内で使用する照明・コンセント・動力機器などの負荷をもとに、変圧器に必要な容量(kVA)を導き出す作業です。


⚙ 補正係数とは?

建物の使用状況によって、すべての機器が同時に動くとは限りません。そのため、使用実態に合わせて容量を「補正」する係数を掛けて、変圧器容量の算定を行います。


💡 設計のポイント

  • 計算に用いる負荷容量は、「予備回路を除いた実使用分」で見積もること。

  • OA機器のように長時間稼働するものはf₄=1.0を基本にすると安全。

  • 用途や建物規模によって、係数の適用判断が変わるため、建物の使用目的や運用方法に応じて柔軟に対応することが求められます。


📘 需要率の考慮は、安全かつ経済的な変圧器選定のカギ

変圧器の容量選定では、単に負荷を積み上げるだけでなく、**「どの程度同時に使用されるか」という需要率(補正係数)**を考慮することが重要です。

適切な補正係数を用いることで、変圧器を必要以上に大きくせずに済み、コストの最適化や省スペース化にもつながります。


見習いペン太
見習いペン太
へぇ〜、ぜんぶの照明とかコンセントをフル稼働させることって、あんまりないんだね。だから“補正係数”で実際の使い方に合わせて調整するんだ〜。

はりた
はりた
そのとおり!必要以上に大きな変圧器を選ぶとムダが多くなるし、逆に小さすぎるとブレーカーが落ちたりするから、設計にはちょうどいいバランスが大事なんだよ。

🔍負荷の種類を分ける|電灯負荷を中心に

まずは電灯回路の負荷を、どのように分類して集計すべきかを確認しておきましょう。

負荷の種類を分ける|電灯負荷

  • 電灯負荷
     → 照明器具に接続される負荷

  • コンセント負荷
     → 雑用・汎用のコンセント(OAやFCU用を除く)

  • ファンコイル用コンセント負荷
     → FCU(ファンコイルユニット)専用のコンセント

  • OA負荷
     → オフィス内のPCやネットワーク機器など

  • その他
     → 上記に当てはまらない特殊用途の負荷


📊用途ごとの需要率【上限目安】

集計した負荷に、以下の**需要率(最大値)**を乗じて変圧器容量を求めます。

需要率の最大値

負荷区分 最大需要率
電灯負荷 0.68
コンセント負荷 0.27
ファンコイル用コンセント負荷 0.75
OA負荷 実状に応じて適宜考慮する


📌負荷区分の見分け方|具体的にどう見る?

「コンセント負荷とOA負荷って何が違うの?」という疑問、よくありますよね。

負荷区分についての解釈と解説

  • 照明負荷:照明器具として明確に接続される負荷
  • コンセント負荷:汎用のコンセント(掃除機などを挿すような雑用用途)
  • ファンコイル用コンセント:空調設備(FCU)のための専用コンセント
  • OA負荷:PCやネットワーク機器など、オフィス機器に供給するコンセント


❓ファンコイルって何?|FCUの見分け方

ファンコイル用コンセントの分類に迷ったら、こちらをチェック!

ファンコイルとは

ファンコイルユニット(FCU)は、中央空調システムの末端で温風・冷風を出す装置のこと。
病院、ホテル、オフィスビルなどで使われていて、単相100Vまたは200Vで運転する空調機器です。

設備図には【FCU】や【FAN COIL】などの表記があります。
わからない場合は、空調や換気系の負荷として記載されている単相機器かを確認するのがポイントです!


✅負荷を分類して適切な需要率をかけよう

変圧器容量の計算において、負荷の分類と需要率の設定は設計の基礎中の基礎です。
「どの機器がどの負荷区分に該当するか」を丁寧に整理し、基準に則った需要率で安全かつ効率的な電力供給設計を行いましょう。

電灯負荷の補正係数

電灯負荷の補正係数

負荷が表の中間にある場合は表から読み取ろう!

見習いペン太
見習いペン太
負荷容量が15kVAとかだった場合はどうするんだい?

はりた
はりた
中間にある場合は表から読みとって求めよう!。

例|照明の負荷容量が60kVAの場合

  • 表から読み取る

需要率を概ねの表にまとめると(参考値)

容量【kVA】 f1 f2 f3
0 0.94 0.56 1
10 0.91 0.5 0.97
20 0.88 0.45 0.93
30 0.85 0.4 0.9
40 0.81 0.34 0.86
50 0.8 0.33 0.84
60 0.79 0.32 0.82
70 0.78 0.31 0.8
80 0.76 0.3 0.78
90 0.75 0.3 0.78
100 0.74 0.3 0.77
110 0.73 0.3 0.77
120 0.71 0.29 0.76
130 0.71 0.29 0.76
140 0.7 0.29 0.76
150 0.69 0.28 0.76
160 0.68 0.27 0.75

単相変圧器の計算手順

『L』 =電灯負荷の負荷合計容量       【kVA】

『C』 =コンセント負荷の負荷合計容量    【kVA】

『FC』=ファンコイル用コンセント負荷合計容量【kVA】

各々の負荷合計が下記容量だとします

『L』 =電灯負荷の負荷合計容量       【kVA】⇒80kVA

『C』 =コンセント負荷の負荷合計容量    【kVA】⇒20kVA

『FC』=ファンコイル用コンセント負荷合計容量【kVA】⇒20kVA

この容量を先ほどの表に当てはめます

『L』 :80kVA ⇒ 0.76%

『C』 :20kVA ⇒ 0.3% 

『FC』:20kVA ⇒ 0.78%

kのパーセントを負荷容量にかけ合わせたものが変圧器容量となります

『L』 :80kVA × 0.76% =61kVA

『C』 :20kVA × 0.3%  =12kVA

『FC』:20kVA × 0.78% =16kVA

結果

  1. 単純な負荷容量の集計だと120kVAのため150kVAの単相変圧器を選定します
  2. 需要率を考慮した場合、89kVAのため100kVAの単相変圧器でよいことになります


📦負荷の集計をする前に|動力負荷を正しく分類しよう

まず、変圧器につながる動力機器の種類を確認しましょう。
機器ごとに分類し、必要に応じて集計を行います。

負荷の種類を分ける|動力負荷

  • 冷凍機

  • パッケージ型空調機

  • エレベーター負荷

  • 空調および換気関係負荷

  • 衛生関係負荷(ポンプ・ブロワなど)

  • その他負荷


📊需要率の最大値を適用する

分類した各負荷に対して、以下の**需要率(最大値)**を掛けることで、三相変圧器容量を求めるための実効負荷容量が算出されます。

需要率の最大値

負荷区分 最大需要率
冷凍機 0.94
パッケージ型空調機 0.94
エレベーター 0.94
空調および換気関係 0.75
衛生関係(ポンプ等) 0.21
その他負荷 実状に応じて適宜判断


🤔需要率を掛ける理由は?

すべての機器が同時に最大出力で運転されることはまれです。
そのため、負荷に応じて適切な需要率を設定することで、過剰な容量設計を避けるとともに、安全性と経済性を両立させることができます。


✅用途別の注意ポイント

  • 冷凍機・エレベーター・パッケージ型空調機
     → 高い稼働率が見込まれるため、0.94という高い需要率が採用されます。

  • 衛生関係(ポンプなど)
     → 定期的な運転が主であり、同時使用率も低いため0.21と控えめな設定。

  • その他負荷
     → 使われる頻度やタイミングが大きく異なるため、設計者の判断で適宜考慮します。


🔚まとめ|動力負荷は「分類」と「需要率」で決まる!

三相変圧器の容量計算では、動力負荷を細かく分類し、適切な需要率を乗じることが鍵になります。
誤った分類や過剰な見積もりは、機器の選定やコストに大きな影響を与えます。

✅ 機器ごとの負荷を正確に集計する

✅ 最大需要率を基準に、必要な容量を算出する

✅ 運転パターンや設備用途も加味して調整する

これらを踏まえて、バランスの取れた設備設計を目指しましょう!

動力負荷の補正係数

需要率を概ねの表にまとめると(参考値)

【kVA】 f5 f6 f7
0 1 0.83 0.21
10 1 0.82 0.21
20 0.99 0.81 0.21
30 0.99 0.8 0.21
40 0.98 0.79 0.21
50 0.98 0.79 0.21
60 0.97 0.78 0.21
70 0.97 0.77 0.21
80 0.96 0.76 0.21
90 0.96 0.76 0.21
100 0.96 0.76 0.21
110 0.96 0.76 0.21
120 0.95 0.75 0.21
130 0.95 0.75 0.21
140 0.95 0.75 0.21
150 0.95 0.75 0.21
160 0.94 0.75 0.21

 

三相変圧器の計算手順

『Pa』 =冷凍機       【kVA】

『Pa』 =パッケージ型空調機 【kVA】

『Pa』 =エレベーター    【kVA】

『Pb』 =空調機       【kVA】

『Pb』 =換気扇       【kVA】

『Pc』=衛生         【kVA】

各々の負荷合計が下記容量だとします

『Pa』 =冷凍機       【kVA】⇒40kVA

『Pa』 =パッケージ型空調機 【kVA】⇒40kVA

『Pa』 =エレベーター    【kVA】⇒40kVA

『Pb』 =空調機       【kVA】⇒60kVA

『Pb』 =換気扇       【kVA】⇒60kVA

『Pc』 =衛生        【kVA】⇒60kVA

この容量を先ほどの表に当てはめます

『Pa』 :120kVA ⇒ 0.95%

『Pb』 :120kVA ⇒ 0.75%

『Pc』 : 60kVA ⇒ 0.21%

kのパーセントを負荷容量にかけ合わせたものが変圧器容量となります

『Pa』 :120kVA × 0.95% =114kVA

『Pb』 :120kVA × 0.75% = 90kVA

『Pc』 : 60kVA × 0.21% = 13kVA

結果

  1. 単純な負荷容量の集計だと300kVAのため300kVAの三相変圧器を選定します
  2. 需要率を考慮した場合、217kVAのため300kVAの三相変圧器を選定しますが容量に余力があるため将来の増設も含めて検討することができます。

 

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需要率のまとめ

需要率を適用する手順

単相変圧器|負荷を用途別に分ける

  • 電灯負荷
  • コンセント負荷(OA負荷とファンコイルを除く)
  • ファンコイル用コンセント負荷
  • OA負荷コンセント
  • その他

単相変圧器|集計した容量を需要率表に当てはめる

負荷区分 需要率【最大】
電灯負荷 0.68%
コンセント負荷 0.27%
ファンコイル用コンセント負荷 0.75%
OA負荷 実状に応じて適宜考慮する

 

 

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はじめまして、ハリタといいます。 電気設備の計画や設計、むずかしいと感じたことはありませんか? 「先輩に聞けない」「相談できる人がいない」 ――そんな悩みを抱える方の力になりたくて、このサイトを立ち上げました。 現場で迷ったとき、ふと立ち寄ってヒントが得られるような、そんな場所を目指しています。 あなたのモヤモヤが少しでも晴れることを願って――どうぞよろしくお願いします。
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