【新人講座 第8回】引込・受変電のきほん ― キュービクルの中身と「50kWの分かれ目」

こんにちは、HARITAの設計室です。前回(第7回)は電柱からコンセントまでの「電気の流れ1枚図」を手に入れました。今回はその旅の最初の関門、①引込 → ②受変電の区間をぐっとズームインします。
主役はあの金属の箱、キュービクル。「開けたら何が入ってるのか」「そもそもなぜ変圧するのか」を、図解と会話で一気に片づけましょう。


この3つ、すぐ答えられますか
- キュービクルの中身を、どんな順番で覚えるとよいでしょうか。
- 断路器とVCB、どちらも「切る」道具なのに2種類あるのはなぜでしょうか。
- 高圧受電と低圧受電の分かれ目は、どこにあるでしょうか。
- キュービクルの中身 ― 電気が通る順路で覚える
- 2つの受電方式 ― 50kWを境に何が変わるか
- 実務での使いどころ ― 受電方式の一次判断
- 素朴なギモン ― 設置場所の決まり方、変圧器のうなり音
- 深掘りQ&A ― PASの役割、変圧器2台、50kWギリギリ
- 注意ポイント ― 扉を開けない、将来の増設、搬入経路
キュービクルの中身は「通る順番」で覚える





ペン太
ハリタ| 順路 | 機器 | 役割を一言で |
|---|---|---|
| ① | PAS | 構内の門番。事故を街へ波及させない |
| ② | VCT | 使った電気を計るための計器用の機器 |
| ③ | 断路器 | 無電圧で切り離す縁切り専用 |
| ④ | VCB | 事故の大電流も断ち切る本気のスイッチ |
| ⑤ | 変圧器 | 高い電圧を建物で使える電圧に落とす主役 |
| ⑥ | 低圧側 | ここから幹線として建物へ配られる |
- キュービクルの中身は電気が通る順番に並んでいる。配置ではなく旅の順路で覚えるのが正解。
- 役割で訳せば、PASは門番、VCTは料金メーター、断路器は縁切り用、VCBは本気のスイッチ、変圧器が主役。
- この5つでキュービクルの会話はおおむねついていける。
- 断路器は電気が流れていない状態で切り離す縁切り専用。VCBは短絡事故の大電流でも断ち切れる。
なぜ変圧する?― 高圧受電と低圧受電の分かれ目
「そもそも、なんで6,600Vなんて高い電圧で受け取るの?」。その答えが、契約電力50kWを境にした2つの受電方式です。





| 比べるところ | 低圧受電 | 高圧受電 |
|---|---|---|
| 分かれ目 | 契約電力が50kW未満 | 契約電力が50kW以上 |
| 変圧する人 | 電力会社(電柱の変圧器など) | 自前の設備で行う |
| 必要な設備 | 建物側にキュービクルは不要 | キュービクルと設置スペースが必要 |
| 単価と維持 | 単価は高めだが設備負担は軽い | 単価は安いが設備と保安は自分持ち |
- 低圧受電は変圧を電力会社にまかせられる方式。戸建てにキュービクルがないのは電柱の変圧器が代わりを務めているから。
- 50kW以上使う建物は高圧受電になり、変圧を自前でやるかわりに電力量単価が安くなる。
- 負荷を合計して契約電力を見積もり、50kWを超えそうかを判断するのが受電設計の第一歩。
- ここで方式が決まると、キュービクルの要否・電気室のスペース・主任技術者の選任まで建物計画に響く。
💼 実務でこう生きる
- 境目に近い建物では、高圧受電案と50kW未満に収める案を並べて比較提示できる。
- 高圧受電にはキュービクルの設置費と保安管理費がかかるため、その比較が判断材料になる。
- 「電気は足りるか」の相談は、まず受電方式と契約電力を確認するところから。
- 高圧受電なら変圧器の余裕を、低圧受電なら契約容量の上限を見る。どの階層で詰まるかを順に見れば一次回答は数分でできる。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
- キュービクルの設置場所は、重い機器を搬入できる・引込に近い・点検スペースが取れる・浸水しにくい、で選ばれる。
- 屋上、1階外構、電気室が三大定番。設計では搬入経路まで考える。
- 変圧器のうなり音は、鉄心が磁化のたびにわずかに伸び縮みすることなどによる正常な音。
- ただし「いつもより明らかに大きい」「音色が変わった」は異常のサインなので主任技術者に報告する。
🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる
先輩への追い質問で、理解をもう一段深めます。
- PASの一番大事な仕事は波及事故の防止。構内で地絡事故が起きたとき自動で切れて建物を切り離す。
- これがないと事故が配電線に波及してしまう。PASはご近所に迷惑をかけないための装置でもある。
- 変圧器が2台あるのは、照明・コンセント用と動力用で分けるのが定番構成だから。
- 50kWギリギリのときは、設置費と単価差・保安管理費を並べて何年で逆転するかを試算し、将来の増設予定まで聞く。
⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- キュービクルの扉を開けない・機器に触れない:内部は高圧充電部。点検・操作は電気主任技術者の領域です。
- 「今の負荷」だけで受電方式を決めない:将来の増設・テナント変更まで確認してから容量を決める癖を。
- 設置スペースと搬入経路を後回しにしない:変圧器は数百kg〜数トン。図面上は置けても搬入できない事故は実在します。
ペン太
ハリタ- キュービクルの扉を開けない、機器に触れない。内部は高圧充電部で、点検・操作は電気主任技術者の領域。
- 「今の負荷」だけで受電方式を決めない。将来の増設・テナント変更まで確認してから容量を決める。
- 設置スペースと搬入経路を後回しにしない。図面上は置けても搬入できない事故は実在する。
まとめ ― 今日の1枚
金属の箱の中身は、電気が通る順番に並んでいます。順路で覚えれば、機器名の暗号もそれぞれの役割としてつながります。
| 決めること | 見るもの | 後段に響くこと |
|---|---|---|
| 受電方式 | 負荷合計から見た契約電力 | キュービクルの要否 |
| 設置場所 | 搬入経路・点検スペース・浸水 | 建物計画そのもの |
| 将来対応 | 増設やテナント変更の予定 | 受電方式ごと作り直しになるか |
| 変圧器の構成 | 電灯系と動力系の負荷 | 盤が電灯盤・動力盤に分かれる |
箱の中の順路
- キュービクルの中身はPAS→VCT→断路器→VCB→変圧器→低圧側の順路で覚える。
- 断路器は縁切り専用、VCBは事故電流も切れる本気のスイッチ。役割が違う。
受電方式の分かれ目
- 受電方式の分かれ目は契約電力50kW。高圧は単価が安いが設備と保安は自分持ち。
- 負荷を合計して契約電力を見積もり、境目を超えそうかを判断するのが受電設計の第一歩。
責任の境目
- PASが責任分界点。構内事故を街に波及させないための門番。
- 構内で地絡が起きたときPASが自動で切れて建物を切り離す。
受電方式が決まると、設備の要否もスペースも保安体制も連動して決まります。だからこの判断は、設計のいちばん早い段階に置かれています。
次回・第9回は、変圧された電気の続きの旅。幹線・分電盤・回路のきほんを、盤の中身を展開する“ツリー図”で見ていきます。お楽しみに!
30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?
タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。
ご回答ありがとうございます!
よければ、あと3つだけ教えてください(任意・答えなくてもOK)
ありがとうございました。いただいた声は記事の改善に使わせていただきます。
この記事に関連する無料ツール
- 盤・キュービクル基礎 作図ツール(セコサポ・ブラウザで無料)

ハリタ