「関電工って上場してるんですね。じゃあ河村電器も?」

「いや、河村電器産業は非上場だよ」

「えっ、あんなに図面で書いてるのに?」

見習いのペン太くんが不思議そうな顔をしています。実はこれ、けっこう多くの設計者がひっかかるところなんです。

毎日図面に書いているメーカー、毎週見積をもらっている商社。そのうち「株式市場に出ている会社」と「出ていない会社」は、シェアの大きさとはまったく関係なく分かれています。

この記事では、電気設備の設計・施工に関わる上場企業を5つの分類で整理しました。投資をすすめる記事ではありません。目的は、いつも見ている会社が業界のなかでどんな位置にいるのかを、外側の地図として持っておくことです。


📊なぜ設計者が株式市場を見ると仕事の理解が深まるのか

「でも僕、株はやらないですよ」

そういう方にこそ読んでほしい話です。理由は3つあります。

① 決算資料は「無料で読める業界レポート」だから

上場企業は3か月ごとに決算短信を公開します。加えて多くの企業が、年1回は決算説明資料も公開しています。そこには受注の状況、価格転嫁が通っているか、どの分野が伸びているかが、会社自身の言葉で書かれています。

しかもすべて無料です。有料の業界レポートを買わなくても、関電工やきんでんのIRページを開けば、電設業界がいま何を考えているかが読めてしまいます。

② 現場の実感を「数字で裏づけ」できるから

「最近キュービクルの納期が異常に長い」

「電線がまた値上がりした」

こうした現場の感覚は、たいてい上場企業の決算数値に現れています。実感と数字が一致すると、施主や上司への説明が一気にしやすくなります。

③ 会社の将来を考える材料になるから

自分の会社が発注している先、あるいは転職を考えるときの相手先。その会社が伸びているのか苦しいのかは、株式市場のほうが先に反応していることがよくあります。

ポイント!

株価そのものを追う必要はありません。見るべきは「受注残高」と「工事粗利率」の2つだけです(記事の後半で解説します)。


電気設備に関わる上場企業を施工・受変電機器・盤・電線・電材商社の5分類で示した図
図1:電気設備に関わる上場企業の5分類

🏗①施工|電設サブコン

まずは施工側です。電気工事を主業とする上場企業を「電設サブコン」と呼びます。電力会社系の会社が各エリアに1社ずつあるのが、この業界のいちばんの特徴です。

電力会社系

コード 社名 系統
1942 関電工 東京電力系
1944 きんでん 関西電力系
1959 クラフティア 九州電力系
1941 中電工 中国電力系
1946 トーエネック 中部電力系
1934 ユアテック 東北電力系
1939 四電工 四国電力系
1930 北陸電気工事 北陸電力系
1832 北海電工(旧・北海電気工事/札証単独上場) 北海道電力系

注意点|社名が変わっている会社が2社あります

1959は「クラフティア」です。2025年10月1日に九電工から商号変更しました(証券コードは1959のまま)。

1832も「北海電工」に変わっています。2024年10月1日に北海電気工事から商号変更しました。なお1832は札幌証券取引所の単独上場です。

どちらも旧社名で検索すると古い情報にあたるので注意してください。

鉄道系・その他

コード 社名 特徴
1950 日本電設工業 JR東日本系。鉄道電気設備に強い
1938 日本リーテック 鉄道・送配電
1945 東京エネシス 発電所工事
1948 弘電社
1960 サンテック
1968 太平電業 発電所メンテナンス
1434 JESCOホールディングス

通信系(電気工事も手がける)

コード 社名
1721 コムシスホールディングス
1417 ミライト・ワン
1951 エクシオグループ

注意点|住友電設はもう上場していません

1949 住友電設は2026年3月3日に上場廃止となりました。大和ハウス工業によるTOB(1株9,760円、公表前営業日の終値に対して約28%上乗せ)のあと、株式併合によって上場廃止に至っています。

ネット上の「サブコン銘柄一覧」記事の多くがまだ現存扱いで掲載しているので、参照するときは日付を確認してください。


⚡②受変電・変電機器|図面で名前を見る会社

単線結線図に機器を書くとき、頭に浮かぶメーカーたちです。ここは上場企業が比較的そろっています。

コード 社名 電気設備での接点
6501 日立製作所 変圧器、系統ソリューション
6503 三菱電機 受変電機器、VCB、シーケンサ
6504 富士電機 受変電機器、パワー半導体、UPS
6508 明電舎 変圧器、開閉装置
6617 東光高岳 変圧器、GIS、スマートメーター
6622 ダイヘン 柱上変圧器、大形変圧器
6623 愛知電機(名証単独上場) 変圧器(中部電力系)
6643 戸上電機製作所 開閉器、高圧受電設備
6637 寺崎電気産業 配線用遮断器、船用配電盤
6653 正興電機製作所 配電制御システム
6654 不二電機工業 制御用スイッチ、表示灯
6644 大崎電気工業 電力量計、スマートメーター
6506 安川電機 インバータ
6507 シンフォニアテクノロジー 電源装置
5333 NGK(旧・日本ガイシ) 碍子、NAS電池

注意点|東芝と日新電機はすでに上場廃止

東芝は2023年12月20日に上場廃止(日本産業パートナーズ主導の買収)、日新電機は2023年に住友電工のTOBを経て上場廃止となっています。どちらも受変電の世界では大きな存在ですが、いまは株式市場では追えません。


🔲③盤・キャビネット|「定番ほど株が買えない」という不思議

ここがいちばん面白い分野です。

分電盤・キュービクルの定番ブランドほど、非上場という、シェアと株式市場が一致しない構造になっています。

社名 上場の有無 備考
日東工業 6651(東証・名証) 配電盤・分電盤・キャビネットで高シェア
かわでん 6648 配電盤・キュービクル
河村電器産業 非上場 分電盤の定番ブランド
内外電機 非上場 分電盤・制御盤・監視盤・キュービクル
パナソニック エレクトリックワークス 非上場(6752 パナソニックHDの事業会社) 配線器具・分電盤

「毎日カワムラって書いてるのに、株は買えないんですね」

そうなんです。上場しているかどうかは、経営者がどう資金を調達してきたかという歴史の問題であって、製品の実力やシェアとは別の話です。

ポイント!

この分野の情報を取るときは、非上場メーカーの動向はカタログの改訂や納期情報から、上場メーカーの動向は決算資料から、と情報源を使い分けることになります。日東工業の決算説明資料は、盤業界全体の需給を知るうえで貴重な公開情報です。


🔌④電線・ケーブル

電線メーカーは上場企業が多く、しかも銅価格の影響をまともに受けるので、資材価格の動きがそのまま業績に出ます

コード 社名
5801 古河電気工業
5802 住友電気工業
5803 フジクラ
5805 SWCC(旧・昭和電線ホールディングス)
5816 オーナンバ
5817 JMACS
5819 カナレ電気
5820 三ッ星
5821 平河ヒューテック

注意点|沖電線も上場廃止済み

沖電線(旧5815)は2018年3月28日に上場廃止となり、現在は沖電気工業の完全子会社です。古いまとめ記事にはまだ掲載されていることがあります。


🚚⑤電材商社|見積で毎週やりとりする会社

意外に思われるかもしれませんが、電材商社にも上場企業がたくさんあります。

コード 社名
9934 因幡電機産業
9824 泉州電業
9906 藤井産業
8159 立花エレテック
8081 カナデン
3153 八洲電機
8085 ナラサキ産業
7619 田中商事
7673 ダイコー通産

商社の決算は、電設資材が実際にどれだけ動いているかを映す鏡です。ゼネコンやサブコンの決算よりも、現場の資材の動きに近いところにいます。


🏷株式市場ではどんなテーマに分類されているのか

株式市場では、企業を業種だけでなく「テーマ」でも分類します。電気設備に関係するテーマを挙げると、次のようになります。

テーマ名 主に含まれる会社
電力設備投資関連 電設サブコン+受変電機器+電線を横断する親テーマ(2026年7月時点で約70銘柄/株探)
受変電設備 正興電機製作所、愛知電機、八洲電機、カナデン、立花エレテック ほか
送電 巴コーポレーション(送電鉄塔)、NGK(碍子)、電線各社、那須電機鉄工
電線 電線メーカー各社+電材商社
電線地中化 コムシスHD、中電工、関電工、きんでん、日本コンクリート工業 ほか
データセンター 電設サブコン+空調サブコン(高砂熱学工業、ダイダン、日比谷総合設備 ほか)
蓄電池 GSユアサ、住友電工、NGK ほか
スマートグリッド 関電工、きんでん、NGK、ENECHANGE ほか
電気自動車充電器 東光高岳、ダイヘン、日東工業、平河ヒューテック ほか
省エネ関連 三機工業、テクノ菱和、テスHD、グリムス ほか
洋上風力発電 五洋建設、日揮HD、太平電業、大手ゼネコン各社

ポイント!

「電気工事」という名称のテーマは見当たりません。近いものとして「電力工事」「電力設備投資関連」があり、実質的な親テーマは後者です。電気設備の情報を株式市場側から探すときは、このテーマ名で調べるのが近道です。


📄決算資料は「この2つ」だけ読めばいい

「決算短信って、あの数字だらけのPDFですよね……」

全部読む必要はありません。設計者が業界動向を知るために見るべきなのは、次の2つだけです。

①受注残高|今後1〜2年の先行指標

受注残高は、すでに契約したけれどまだ工事が終わっていない金額のことです。

工事は着工から完成まで1〜3年かかるので、受注残高はそのまま今後1〜2年の売上の予約を意味します。ここが増えていれば、業界はまだ忙しい。減り始めたら、その1〜2年後に現場が空きます。

②工事粗利率|値上げが通っているかの指標

工事粗利率は、工事の売上からその工事にかかった原価を引いた利益の割合です。

資材が値上がりしているのに粗利率が維持できているなら、価格転嫁がきちんと通っているということ。逆に粗利率が落ちていれば、値上がり分を自社でかぶっていることになります。

見積で値上げの交渉をするとき、「業界全体で粗利率が改善している」という事実は、意外と強い後押しになります。

ポイント!

決算短信は各社のIRページか、東証の適時開示サイト(TDnet)で誰でも無料で読めます。まずは自分がよく使うメーカー1社の決算説明資料を開いてみてください。業界紙より詳しいことが書いてあります。


受注残高と工事粗利率という2つの指標を示した図
図2:設計者が決算資料で見るべき2つの指標

✅まとめ

  • 電気設備に関わる上場企業は、施工/受変電機器/盤/電線/電材商社の5分類で整理できる
  • 電設サブコンは電力会社系が各エリアに1社ずつという構造。1959はクラフティア(旧・九電工)、1832は北海電工(旧・北海電気工事)、1949 住友電設は2026年3月に上場廃止
  • 盤の分野は定番ブランドほど非上場(河村電器産業、内外電機、パナソニックEW)。シェアと上場は無関係
  • 東芝・日新電機・沖電線も上場廃止済みで、株式市場からは追えない
  • 5333は2026年4月にNGKへ商号変更(旧・日本ガイシ)
  • 株式市場では「電力設備投資関連」が電気設備の親テーマ。「電気工事」という単独テーマはない
  • 決算資料で見るべきは受注残高(今後1〜2年の先行指標)と工事粗利率(価格転嫁が通っているか)の2つ

図面に書いている会社が、外の世界からどう見られているか。それを知っておくだけで、資材の値上がりや納期の遅れといった日々のできごとが、少し違って見えてくるはずです。


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⚠️免責事項

本記事は電気設備業界の動向を理解するための情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。また、将来の株価や業績を保証するものでもありません。

記載した企業名・証券コード・上場状況は2026年7月30日時点で確認したものです。企業の商号変更・上場廃止・経営統合などにより、内容が変わる可能性があります。

投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と判断において行ってください。当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業には該当しません。

参考にした主な情報源

  • 各社IR(決算短信・決算説明資料)
  • 日本取引所グループ(JPX)上場廃止等の決定
  • 株探・みんかぶ 株式テーマ一覧